Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

TOKYO!

2011-02-26 | 日本映画(た行)
2008年/フランス・日本・韓国・ドイツ


オリジナリティ溢れる作風で世界的にファンの多いクリエイター、ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノが東京を舞台に競作した豪華なオムニバス・ムービー。

★★★ 第1話:ミシェル・ゴンドリー監督「インテリア・デザイン」
映画監督の恋人と上京したばかりのヒロインに降りかかる不思議な出来事を綴るファンタジー・ストーリー。主演は藤谷文子と加瀬亮。

この監督の映像の浮遊感ってのは、とても独特なものがあって、観る人を選ぶと思う。ウマが合う人は面白いんだろうけど、私は苦手かもなあ。映画監督になりたい加瀬クンが小さな劇場で繰り広げるドタバタの手作り感なんて、好きな人には受けるんだろうけど…。自分の居場所を見つけられない藤谷文子ちゃんが、ひょんなことであるモノになっちゃう。とってもシュールな展開。そのモノを拾うのが大森南朋クンだんだけど、南朋クンにあんなに大事にされちゃうんだったら、私もその「モノ」になってもいいかもぉー。もしかして、これって、乱歩の名作へのオマージュなんでしょうか。乱歩のアレが女性の重みを感じたいエロ路線なのに対して、こちらはこんなカタチでも誰かの役に立ちたいという現代人の悲しさが映し出されているのかもなあ。

★★★★☆ 第2話:レオス・カラックス監督「メルド」
監督の盟友ドニ・ラヴァンが東京中を震撼させる謎の怪人に扮する不条理劇。

これは溜まりません。ドニ・ラヴァンと石橋連司が同じスクリーンに入っているというだけで、お宝映像ではないでしょうか。このふたりの対決ですっかり満腹。
さて、ドニ扮するモンスターが東京中を破壊するわけですが、演出がかなり挑発的。ドニが現れるシーンではゴジラのテーマが流れるし、裁判中にも日本人を馬鹿にしたようなセリフのオンパレードです。人によっては不快千万でしょうねえ。このカラックスの挑発的な態度を楽しめるかどうかがポイント。「死刑」という文字がダダーンと出てくるのは、大島渚の「絞死刑」に間違いなく、ここに至って、この作品はシネマ・ジャポンのカラックス的コラージュ映画ではないかと思えてきます。このコラージュにピックアップされているのは、まさしく日本の「怪」。ゴジラは日本の怪物で、石橋連司は日本の怪優。日本の奇怪が怪人ドニ・ラヴァンによって次々と顕わになってゆくという、奇っ怪な作品。

★★★☆ 第3話:ポン・ジュノ監督「シェイキング東京」
香川照之と蒼井優を主演に迎え、引きこもり男とピザの宅配少女との奇妙な心の交流を描くファンタジー・ラブストーリー。
ポン・ジュノが絵から入るとこうなるのかな、という作品でしたね。引きこもりの部屋に整然と並べられた宅配ピザの空箱とか、誰もいなくなった東京の街とかね。私がいちばん気に入ったのは、起動ボタンの付いた蒼井優の生足。こういう目を引くインパクトのある映像作りにおいては、ポン・ジュノの才能が発揮されていたと思うけど、ストーリーはちょっと中途半端でした。やっぱ、ポン・ジュノはロングストーリーの方が面白いね。

MW

2011-02-11 | 日本映画(ま行)
★★★☆ 2009年/日本 監督/岩本仁志

「B級香港映画みたいなのさ」

ダメな映画の最後の砦。それは、そのダメさ加減を笑って楽しめるかどうかだと思う。「踊る大捜査線」がダメ映画だよなあって頭抱えてしまうのに対して、この作品はそのダメさ加減を面白がって見ちゃった感じです。

原作は読みました。だから、原作ファンから酷評を受けたというのもうなずけます。ふたりが同性愛だということは原作の大事なテーマだもんね。映画では一切そんな描写はナシ。でも、冒頭のうさん臭いスタートからして、この作品が原作の持つものを引きだそうという映画かどうかはすぐに判別できるわけで、ぶっちゃけ原作は横に置いといてみるしかないと割り切っちゃった。

で見ていると、この映画には妙なB級テイストとしての味わいがあるんだよね。全くワルが似合わない玉木宏と全く神父には見えない山田孝之。製作者側は敢えてイメージと違う役柄をさせることで予想外の効果を期待したんでしょう。まあ、「ガラスの仮面」で北島マヤが花の王女アルディス、姫川亜弓が氷の女王オリゲルドを演じて大成功を収めたパターンですな。でね、その思惑は見事にすっ転んだんです。そのすっ転び具合がいかにもB級っぽくて面白いのです。特に玉木くんのワルっぷりがすべりまくりなのがおかしい。

そして、B級はB級でも、B級アジア映画みたいなオーラをぷんぷん放っている。それは、石橋凌のせいです。冒頭の舞台がバンコクだって言うせいもあるから、余計にそう感じるんだよね。アジア映画に日本人刑事としてキャスティングされてるのか?みたいな。毒ガスとか、人類滅亡とか、何か「ゴジラ」みたいだし、安い感じを楽しんでしまたんだなあ。まあ、ほとんど開き直り観賞みたいなもんですけど。

ウォンテッド

2011-02-10 | 外国映画(あ行)
★★☆ 2009年/アメリカ 監督/ティムール・ベクマンベトフ

「個性の光らないメンバーたち」

なんも見ずにi-tunesで購入してipadで見たんだけど、大失敗。吹き替えだった。
ジェームズ・マカヴォイの吹き替えを担当しているDAIGOがひどいのなんの。
元々吹き替え嫌いなのに、これは一生にトラウマになるかもしれん、っていうくらい酷かった。

じゃあ、字幕を借りて見直したい作品かっていうとNO。ありえない設定をそれなりに楽しむアクション大作はいろいろあるけど、この作品に関してはそれぞれの俳優が輝いていないっていうのが何よりダメなところじゃないかな。

主演のジェームズ・マカヴォイは個人的にあまり好きな俳優ではないんだけど、この映画でのポジションって、弱気なダメ男がだんだん暗殺者に目覚めていくってことでしょう?その変化がちっとも魅力的に描かれていないんだよね。まあ、その半分以上はDAIGOの責任だけどさ。

何が悲しいって、アンジーがちっとも魅力的じゃないってこと。やっぱり彼女はサポート役には向いていないんだよね。この前見た「ソルト」のカッコ良さとは天と地ほどの違いがあるんだもん。アバズレ女みたいで全然ダメ。

モーガン・フリーマンもこのところこんな役ばっか。じゃあ、モーガンだからこそ生きる役にしないといけないんだけど、これじゃあ誰が演じても同じじゃない?モーガンは
バットマンシリーズにも出てるけど、物静かで腕は確かな熟練技術者としてのピースにピタリとはまってるもんねえ。

それぞれの役者を全く生かし切れていないゆえにストーリーにものめり込めず、「はたおり機のお告げ」って、冗談だろ?って感じで全く乗り切れないアクション作品でした。

スイートリトルライズ

2011-02-09 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2010年/日本 監督/矢崎仁司

「ビョーキな夫婦の観察日誌」

この夫婦はかなりおかしい。病んでいると言ってもいい。一体、いつからおかしいのか。それを示さないことがこの映画のいいところである。どこでどう、ふたりはすれ違い始めたのか。そもそも、人格的に問題があるのか。何もわからないから、いろいろ想像できるのが面白い。だって結婚3年でこの枯れ具合は尋常じゃないもの。

退屈な女だ。家で人形を作り、手の込んだ料理をし、リビングで一緒に過ごすことを拒む夫に何の文句も言わない。こんな退屈な女がいるだろうか。しかし、彼女をこんな退屈な女にしてしまったのは男の責任でもある。呆けた表情でテディベアの目となる小さなボタンを刺す中谷美紀がコワイ。美人だけど抜け殻のようになった女を見事に演じていると思う。

そして見かけは至ってフツーのサラリーマンの南朋くん。最近なぜかビールのCMでも缶コーヒーのCMでもこのスタイルなのだが、悲しいことにあんまり魅力的じゃない。しかし、映画になると俄然違う。後輩に迫られて、三白眼の黒目のところが困ったように右往左往するのがカワイイ。とはいえ、この男のイタさも瑠璃子同様。好きな南朋くんじゃなければ、この男かなりキモいと言える。

さて、原作ではこの不倫は文字通りスイートな寄り道のように描かれているのだろうか。とても気になる。この作品を見て感じるのは、結局、壊す勇気のない、夫婦関係を維持させるための動機付けとして、別の人との恋があるだけ(だから、それはスイートでも何でもない)。夫婦関係を再構築するために、ちょっと別の人とセックスしてみましたってことなワケ。で、私はそれを真っ向否定はしない。そうしないと、互いを確認できない人も存在するからね。しかしそんな馬鹿馬鹿しい作業を経ないと、前に進めないこのふたりは大人になりきれない子どもだ。

瑠璃子は若い男に「愛してるわ」と言うが、これはもうぎょっとして仕方ないのである。それこそ、魂抜かれるようなセックスがあるわけでもなく、何が良くてこの男に惹かれたのか一切の描写はない。一事が万事、ふわふわとしていて、妻は潜在的な心中願望、夫はコミュニケーション不全。ラストは希望でも何でもないよね。一緒に歩くしか選択肢がない、つまり他の選択肢を取ることができない男と女。螺旋階段を登ると言うのは、突破口はどこにもなくて同じところをぐるぐる回るだけというこの夫婦のどうしようもなさを示しているように感じるのだけど。矢崎監督の視点は終始冷徹。だから、とても怖い作品だと思うよ、これ。

それにしても池脇千鶴ちゃん、どうしてそんなにまるまるしちゃったの!むくみまくり。「デブ」ってセリフがあるから、役作りなのかしら?だとしたら凄い。

音楽

2011-02-08 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 1972年/日本 監督/増村保造

「スタイリッシュなのに爆笑。不思議作家、増村保造」


原作は三島由紀夫。

オープニング、でっかいハサミがシャキシャキと閉じたり開いたりする映像に裸の女が足を開いたり閉じたりする映像がかぶさっていく。もう、この映像で胸鷲づかみ。これは「バーバレラ」のストリップオープングに匹敵するくらいいいですよね。女の脚がはさみにかぶさっていくわけですから、男の大事なモノを切り取りたいという歪んだ性的妄想がのっけから炸裂しているわけです。

不感症を治したいと精神科医のもとにやってくる女。いわゆる自由連想方式で治療を施していくわけですが、妄想女の暴走が増村的大げさな演出でずんずんヒートアップ。で、「彼女の不感症は私が治してみせます!」とデカイ声で息巻く精神科医、細川俊之に爆笑。たまらんねー。で、その後続く、フロイトも真っ青の精神分析の数々。角が男のナニになった牛だの次々と出てくる性的妄想の再現フィルムが面白すぎます。

とにかく、主演の黒沢のり子の鼻息の荒さといったら!ダサイんだか、スタイリッシュなんだか、どっちかようわからんのだけど、とにかくエロくてカッコイイ。


28日後…

2011-02-07 | 外国映画(な行)
★★★★ 2003年/アメリカ 監督/ダニー・ボイル
「殺人の記憶の蓄積」

ホラーファンの方々にはイマイチ評価が低いようなのですが、私はそれなりに楽しく観ることができました。

まず、人っ子ひとりいない廃墟となったロンドンの映像が凄くいい。生命のなくなった空間ってのは、独特のムードを醸し出しますね。誰もいなくなったニューヨーク、誰もいなくなったパリ、誰もいなくなった東京を思い描いてみても、それぞれ印象は違うと思う。廃墟のロンドンを見ていると、「スイーニー・トッド」の切り裂きジャックのような、何世紀も前の取り憑かれた者どもが古びた建物で成りを潜めているような感じがします。

そして、車で逃げるシークエンス。ダニー・ボイルってのは、乗り物を撮るのが巧いなあと思う。「スラムドッグ・ミリオネア」でも貧しい兄弟がぎゅうぎゅう詰めの列車に乗ってムンバイから脱出するシーンが一番印象に残っている。本作ではロンドンタクシーみたいな黒い車に乗り込んでロンドンから脱出するんだけど、高速道路の向こう側に噴煙にまみれたマンチェスターが見えてくるシーンなんて、かっこいいなと思った。

でね、ゾンビから逃げ回る恐怖よりも、迫ってきたもの。それは自分が生き残るために「瞬時に人を殺さねばならない」ってこと。感染者かどうかを「瞬時に判断する」んだよ。んなこと、できるワケないよ。あたしゃ、無理。絶対無理。すぐ死ぬね。だんだん本能が研ぎ澄まされていくのかも知れないけどさ。

自分で判断する、という制限がつけ加えられたことによって、この作品は無我夢中に機械的にゾンビを殺していくのとはやや違う様相を帯びているように感じる。それは、「殺す」か「殺さない」かの選択で常に「殺す」を選んでいるという自意識が蓄積されていくってこと。これはとんでもないストレスじゃないかな。戦争で誰でもいいから殺してまわるのとも違うと思う。ラストは希望を見せるけど、彼らがまともな心を取り戻せるのかと思うとぞっとした。




シェルブールの雨傘

2011-02-06 | 外国映画(さ行)
★★★★ 1963年/フランス 監督/ジャック・ドゥミ
「ひねくれ者ですいやせん」

カラフル、カラフル。
ビビッドなピンク、鮮やかなブルー、爽やかなグリーンがスクリーンを満たし、心躍る。色とりどりに滅法弱い私は、この配色の楽しさは大満足。

全編、セリフは音楽に載せて。ミュージカル嫌いの私だけど、何とかがんばって最後まで観ましたよ。

んでもさあ、傑作と絶賛が多い中気が引けるけど。ちょっとオツムが弱いの?とツッコミたくなるようなジュヌヴィエーブちゃん。戦争に行った彼からちゃあんと手紙は届いているけど、やっぱり不安でお金持ちに鞍替え。おいおい。「私って、弱いオンナ」を気取っておいて、ちゃっかりしてやがるぜ。ドヌーブがあまりにも美しいから許しちゃうけどさ、彼女じゃなかったらただの薄情女だぜ。

しかも、あんなに好き、好きってラブラブモード全開で歌ってたじゃないかよー。いんや、冒頭のあの時から、こりゃあ若さゆえの浮ついた恋でさあな、と思ってたわい。彼しか見えなーい♪ってねえ、アンタ頭冷やしなさいよ。いやあ、イカンイカン。これ以上書くと映画ファンから総スカンを食うかもしれん。

ロマンチックなお話にどっぷり浸りきれない、超現実主義のオバハンになってしまった自分が悲しかったりするのであった。

マイノリティ・リポート

2011-02-02 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2002年/アメリカ 監督/スティーブン・スピルバーグ
「スピルバーグがウケ続ける理由」

<ブルーレイにて観賞>

空間スクリーンに映し出される映像に向けて電子手袋をはめたトム・クルーズがパラパラと映像をめくる。トンデモ空想科学をくそ真面目にトム・クルーズが演じているみたいで結構笑えるぅ、なんてバカにしてたらこの技術ホントに実現しそうなんだってね。最先端科学が発達することによって、人間の動きが緩慢化してゆく。これって、見た目はかなり滑稽なことなんだ。よーく考えると、ipadがそうなんだもん。私は愛用しているけど、指でなでたり、ぽんぽん叩いたりしている様子って、端から見るとちょっとおかしい。それは、よくわかる。だから、宮崎駿に「ipadを使っている人は自慰行為そのもので嫌悪感すら覚える」とか言われちゃうんだな。

それに比べて未来の乗り物は俄然カッコイイよ。横滑りに流れていく動きはとても斬新だし、磁力で動いているという設定なのかな、曲線美が美しい銀メタのマシンがするすると猛スピードで高速道路を走る映像はかなりワクワクしたな。ブルーレイで見るべしだね。

多くの方がご指摘するように、36時間後に見ず知らずの他人を殺害すると予知された主人公が逃げ回って件の映像シーンに辿り着くまでの前半部と、黒幕を暴くために奔走する後半部では、物語の面白さもスピード感も段違いだ。ただ、これはもうこういうお話の性質上、真犯人は誰かでどこまで盛り上げられるのかって難しいよね。メンツ見ればわかっちゃうしさ。

むしろ、社会派、アクション、サスペンス、コメディが渾然一体となって迫るスピルバーグの多様性みたいなものに感心させられた。それは、マイケル・ベイとの違いは何かってことで、犯してもいない犯罪で人間を拘束できるのかという倫理的な問題は終始根底に流しつつ、爆発もCGも謎解きも全部ハイレベルで見せきってしまう凄さ。それは、クリント・イーストウッドが持つ主義主張の多様性を1本にまとめあげる力量と好対照を成す、というかね。

そして、ここに「ラブ」が入ってないってこと。全作品見てないから断言できないけど、それがスピルバーグの特徴かも知れない。確かに「宇宙戦争」では家族愛というラブもどきが入っているし、インディ博士もマリオンとくっついたりはするけど、若い男女の安い恋バナが入らない。それは、私にはとても好ましい映画作りに見える。だって、ラブが入ってくることで俄然つまらなくなってしまう映画って、いっぱいあるんだもん。スピルバーグは頑なにそこを避けてるような気がする。そして、それが彼の映画が恒常的にウケる理由の1つのように思う。

バリー・リンドン

2011-02-01 | 外国映画(は行)
★★★★★ 1975年/イギリス 監督/スタンリー・キューブリック

「185分とためらわれることなかれ」



狂気の宿る殺戮者だろうと、優雅な貴婦人だろうと、キューブリックのカメラは観ている人間が思わず背筋を伸ばしてしまう緊張感を持っている。襟を正して、きちんとスクリーンを見つめなければならない。そんな気分にさせられる。例えば、貴婦人のアップからどんどんカメラが引いて、豪華な宮殿の部屋全景が映し出されるという、ただそれだけのシーンでもその力強さは変わらない。その理由がどこにあるのか、不思議でならないよ。完璧なアングルってことなんだろうけど、その完璧さを生み出す構成要素は何なんだろうってこと。トリミングの仕方?色の配置?風景と人物の比重?一回誰か徹底的にデータ分析してくれないかな。

単調な行進曲の調べに乗って、大勢の兵士が次々と死んでゆく戦闘シーンの馬鹿馬鹿しく虚しいことと言ったら。ただ並列に並んだ軍隊の最前線の者が銃をぶっ放し、運が悪けりゃ銃弾を浴び、その場で即死。運が良けりゃ、後列に回って、また行進に参加する。ほんとにヨーロッパでは、こんな戦争の仕方をしていたのかしら?まさに無駄死に。

登場人物は兵士や将校ばかりですが、衣装にも心奪われる。赤が基調のイギリス軍、濃紺が基調のドイツ軍。ボタンや飾りなど細かい部分まで手抜きがなく、衣装さんが用意しました!というあつらえ感がなく、どれもこれも着こなした感じが良く出ている。俳優の体に衣装がとても馴染んでいてお見事です。

背筋は伸ばして見ているけれど、決して窮屈な気分ではない。静謐で厳かに、すらすらと流れるように物語は紡がれる。185分だけど、あっという間。アイルランドの青年、バリーが激動のヨーロッパで大貴族に成り上がり、そして落ちぶれてゆくお話。このバリーという主人公(ライアン・オニールがとても魅力的)、頭がいいわけでもなく、特別な才覚があるわけでもなし。長いものには巻かれろ精神であれよあれよと大貴族。「エリザベス」とか「つぐない」などのヨーロッパ大河ロマンが好きな方なら、きっと気に入ってもらえる作品。こんなところから、キューブリックに入るっていうのもアリじゃないかな。