Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

83歳のやさしいスパイ

2022-02-18 | 外国映画(は行)
★★★☆  2020年/チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン 監督/マイテ・アルベルディ

老人ホームにおじいちゃんが潜入。ドタバタ騒動かと思いきや。 セルヒオ爺さんが実に魅力的。そしてご老人が発する滋味深い言葉の数々に感嘆。マジでセリフ仕込んでない? 老年は誰しも孤独だ。しかし豊かな繋がりも存在する。目の前の人に関わる事を手放してはいけないのだ。


ファーザー

2021-10-20 | 外国映画(は行)
★★★★☆  2020年/イギリス・フランス 監督/フロリアン・ゼレール

映画が始まってすぐアンソニーの混沌世界が提示される。この人は誰?ここはどこ?認知症の描写が観客にとってサスペンスになる面白さ。そしてその混沌が一つの世界線にまとまった時、観客は老いることの悲しさを知る。様々な時空をのびやかに演じるサーホプキンスの演技を堪能。

3年前に亡くなった父も認知症だったので、この手の作品は避けていた。どうしてもアン目線で見て、様々な後悔が頭をよぎる。ただ、本作は観客をエモーショナルにさせようという意図がないのがいい。かと言って冷たいかと言うとそうでもなく、多くの人々の慈愛を見せてくれる。

パーム・スプリングス

2021-10-20 | 外国映画(は行)
★★★☆  2021年/アメリカ 監督/マックス・バーバコウ

タイムループは「自分の未来がわかった時、人はどう生きるか」を描くジャンルとも言える。本作はこのままでいいという選択肢を示すところがユニーク。謎の老人が時々(これがミソ)襲撃に来るというスパイスもある。現状維持か可能性に挑戦するか。ラブコメの秀作。

物語が円環構造で閉じた世界なのに対し、舞台は青い空が抜けるリゾート地。そのコントラストが効果的。こんな所ならタイムリープも悪くない。もう何千回もこの世界を生きているというナイルズ。その心地よさが永遠に続くならそれでもいい。これって不老不死のテーマでもある。

弁護人

2021-08-30 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2013年/韓国 監督/ヤン・ウソク

学歴コンプレックスを抱く税務弁護士がお世話になったクッパ店の息子のために立ち上がる。一見ベタなストーリーの予測を遥かに超えてくる迫力の展開。正義のために闘う、その真っ当さがいかに困難な時代だったか。胸が痛くてたまらない。後半は鬼気迫るソンガンホにやられっぱなしだった。

だいたいこの手の作品は悪い奴がムカつくほどにヒートアップするのだが、本作のクァク・ドウォンの悪人ぶりもある意味期待通り、いやそれ以上。まさに蛇の目。睨まれたら終わりの感満載。自国の歴史に堂々と斬り込み、娯楽作品に仕上げる韓国映画。どれを見てもハズレなし。



フランティック

2021-08-16 | 外国映画(は行)
旅先のパリで妻が失踪。夫は事件に巻き込まれていく。異邦人へのパリの人々の不親切さが絶妙にリアル。80年代欧州旅行した時、パリ人それはそれは素っ気なかった。妻がさらわれる作品をポランスキーが撮るとなるとまた違った味わい。そしてパリを彷徨うHフォードがやけに色っぽい。

レゲエやグレイスジョーンズなど、一見パリとはそぐわない選曲がさらに独特の世界観を作り上げている。ポランスキーのセンス、としか言いようがない。

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

2021-08-05 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2014年/ノルウェー・スウェーデン 監督/ハンス・ペテル・モランド

息子の復讐がいつの間にか犯罪組織の抗争に発展する物語は北欧版ファーゴの様相。黒バックに殺された人間の名前と宗教が浮かび上がるカットがおかしい。北欧ならではの闇社会、その歴史的な背景とブラックユーモアが相まった独特の世界観に満足。

怒りの除雪車なんてサブタイ付いてるから、除雪車が殺人マシーンと化すのかと思ったらそうでもないのよ。ファイティングダディみたいな明るさも全然ないし、邦題がダメダメ。でっかい除雪車が走る絵や北欧家具バチバチに決まってる邸宅はフォトジェニックで良い。名優ブルーノガンツ出演も嬉しい驚き。

V.I.P. 修羅の獣たち

2021-08-01 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2010年/韓国 監督/パク・フンジョン

北朝鮮高官の息子が猟奇殺人犯というだけでも攻めた設定なのに、そこへ南北関係、CIAとの政治的な駆け引きが入り乱れて一大クライムアクションへ突入。強引な展開に若干ツッコミどころはあるが、容赦ないバイオレンス描写が圧倒的。久しぶりにかっこいいチャン・ドンゴン見た。

プロミシング・ヤング・ウーマン

2021-07-30 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/エメラルド・フェネル

夜毎、男たちに復讐?私には自傷行為に見える。胸や局部を毎日触れさせるのだよ、シラフで。来る日も来る日も体目当ての男に己の体で警鐘を鳴らす。次のニーナを生み出さないために。緩やかな自殺行為のようだ。映像と音楽はとびきりポップ。そうじゃないと辛すぎる

キャシーは自身の心と体を犠牲にし、赦しを請う者には赦しを与える。キリストみたいだ。ラストに向けての怒涛の展開。現実はそう簡単じゃない。でも、その憤りを現実に持ち込むんだという叫びを聞いたよう。この脚本は魂削らないと書けない。完敗。

ブラス!

2021-07-28 | 外国映画(は行)
★★★☆ 1996/イギリス 監督/マーク・ハーマン

鉱山閉鎖の危機に直面しながらも、ブラスバンド大会に賭ける男たち描く。リトルダンサー、キンキーブーツなどイギリス炭鉱町物にはハズレがない。ベタな展開ではあるが、バンドが繰り広げる数々の楽曲に心揺さぶられる。そしてなんといっても若いユアンがかわいい。

プラットフォーム

2021-07-22 | 外国映画(は行)
★★★ 2019年/スペイン 監督/ガルダー・ガステル=ウルティア

人間の強欲さがこれでもかと続く、想像以上の地獄絵図ホラーだった。食事量は人数分揃っているはずなのに全員に行き渡らないと言うのは共産主義批判とも受け取れるし、様々な見方が可能。縦構造の牢獄のビジュアルがインパクト大。しかし、こんなに怖いと思わなかったよー。

本当の僕を教えて 

2021-07-20 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/イギリス 監督/エド・パーキンス

Netflixドキュメンタリー

事故で記憶を失った青年。双子の兄は家族の物語を一から教えた。しかし母の死で築き上げた物語が崩れる… 兄が傷つくとわかっていても執拗に真実を迫る弟。35年の時を経て対峙する兄。あまりに暴力的な自分探し。人はそれほどまで真実を求めるものなのか。

兄の態度を見るに、只ならぬ秘密があるのはすぐに想像できる。この作品は観客自身も「真実が知りたい」欲望と「知らない方が彼のためだろう」という思いの狭間でギュインギュインに揺さぶられる。この感覚、あれだ。「ザ・バニシング 消失」。人間の知りたい欲求は底なし沼だな。

バクラウ 地図から消された村

2021-07-19 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/ブラジル・フランス 監督/クレベール・メンドンサ・フィリオ ジュリアノ・ドネルス

突然地図から消えた村で惨劇が始まる。攻撃者は誰か…。 まずバクラウという村の不思議な魅力に引き込まれる。土着文化残る風習に大音量のDJ、売春トラック、不思議な薬。ただ者じゃない感が独特。舐めてた相手が実は系なんだけど、まるで正体が読めない面白さ。

アメリカの南米への軍事介入等のメタファーという仕掛けも面白いが、終盤近く、水の枯れたダムが映し出されるため、ブラジル自身が抱える問題も織り込まれていると推測できる。奇天烈モンド映画というベールを纏った痛烈な資本主義批判映画ではないか。しかもそれらを説明しすぎない手際が見事。

判決、ふたつの希望

2021-06-24 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2017年/レバノン・フランス 監督/ジアド・ドゥエイリ

配管工事の水がかかった、かからないのいざこざが国を揺るがす政治闘争へと発展。身近な話題から切り込み、中東が抱える宗教・政治の闇を万人に理解させ、ハラハラさせる脚本が見事。レバノン?ようわからん…な人でも問題なしの秀作。裁判映画でこれほど高揚したのは久しぶりだ。

中東問題や難民についての知識が乏しい自分でも最後までほとんど何の疑問も持たずに追うことができた。とにかく脚本がすばらしい。「謝れ」「いや、謝らない」という一見大人気ない行為の裏側。後半の裁判劇で明かされる意外な真実。根深い政治問題だがエンタメ作品としても一級品。

ブラックバード

2021-06-14 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/アメリカ・イギリス 監督/ロジャー・ミッシェル

安楽死を選択した母。最期の日を過ごすために家族が集まってくる。究極の選択を前にそれぞれの思いが交錯し、隠されていた事実が露わになる。構造的な既視感はあるが、冒頭からラストまで家族間の小さいさざ波が引いては押しての繰り返し。緻密な脚本で引き込まれた。秀作。

ワンシチュエーションだからこそ、場としての「家」が重要だが、これが実に魅力的。いい建築が出ると作品の印象が格段に上がるので嬉しい誤算。作中では明かされないがリリーの病名はALSと思われ、昨今日本でも衝撃的な事件もあり、静かな佇まいだがテーマは多くの問題を孕んでいると思う。

一人っ子の国

2021-06-08 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ナンフー・ワン ジアリン・チャン

一人っ子政策の悪影響を様々な角度からえぐる問題作。おぞましい事実の連続で身の毛がよだつ。特に不妊治療を受けさせるため、村の男が嫌がる女性たちを次々と医者の家まで引きずる映像は戦慄。バースコントロールを政府が行うことがいかに恐ろしいかを突きつける。必見。

子1人と決められると何が起きるか。国をかけた壮大な実験結果のよう。男の子が欲しいため、捨てられる嬰児。監視人となる村人。何より恐ろしいのは、当の女性も含めこれらの事実を「政府の方針だから仕方なかった」と人々は吐露する。真面目にそう思ってる。近年のドキュメンタリーで断トツの恐ろしさ