★★★★ 2021年/日本 監督/今泉力哉
これは青春ノスタルジック物語というより、“あの頃”は大目に見られていた男たちの集団行動の否定(終焉)を描いた作品ではないのか。男性監督と男性脚本家が真摯に考え表現した内省的な作品と感じられて仕方ない。それらを一番体現していた彼が悲しい末路をたどるという点においても。
もちろん、ノスタルジーにばかり浸るなというクレしんオトナ帝国のテーマも垣間見える。しかしラストに劔が引用する、あるモー娘。メンバーの言葉が象徴的なのだ。2021年の今見ると目を覆いたくなる一連の内輪ノリ・悪ノリ行動。本作をMe tooの流れの中にある1本と見る見方は間違っているのだろうか。
また、恋愛研究会の地下イベントの悪ノリ・悪ふざけは昨今問題になっていた松江監督の一連の騒動を思い出してしまった。好きなもの同士なら何やっても許される感じ、それを観衆と共有し、共犯関係を作ってしまうノリ。
それにしても今泉監督は街の切り取り方がうまい。ロケ地は関東のようだが大阪の下町と言われてもわからない。橋のシーンも南港あたりかと思った。そしてどの俳優も人間らしさが光る。松坂桃李の映画と思っていたら仲野太賀の映画だった。そこも含めて何もかも思っていたのと違う映画だった。いい意味で。