Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

未知との遭遇<ファイナル・カット版>

2012-09-04 | 外国映画(ま行)
★★★★★ 1977年/アメリカ 監督/スティーブン・スピルバーグ
(Blu-rayにて観賞)

「オブセッション」


恥ずかしながら初めての観賞。
あまりに説明の少ない、省略的な手法の映画で驚きました。
もっと説明的なセリフの多いエンタメ映画だとばかり思っていたものですから、ちょっと衝撃。
これを見ると今のSF映画はおしゃべり過ぎですね。

宇宙人が人類に接触を試みようとしているという事態そのものよりも、
その裏でうごめく人々の心理に最もスポットが当てられている。そのことに非常に感動しました。
特に主人公のロイ。
ごく普通の平凡な男が宇宙人に何としても会いたいという考えに取り憑かれてしまう。
ロイは宇宙人によって導かれているのかも知れませんが、
神秘体験をした人がすっかりその存在に魂を奪われてしまうのは誰しも理解できることではないでしょうか。
人は自分の知見を超えたものの存在を認識した時、一体どのような心理状態になるのか。
実に根源的な問題だと思います。
その宇宙人がどこからやってきて、何が目的で、どんな文化を持っているかということよりも、
我々は我々の想像を超えたものを受け入れる心の準備ができるのかということです。

私の好きなSF作品にジョディ・フォスター主演の「コンタクト」があるのですが、
いざ本当に宇宙人のいる惑星に行けるとなった時、本当にそれでいいのかと逡巡するくだりがあります。
人間としてそれは当然の反応であって、こういう心理描写がきちんとされているSF作品でないと私は楽しめません。

取り憑かれてしまったロイと共に我々観客もまだかまだかと宇宙船との遭遇を待ちわび、
ついに現れたマザーシップのまばゆいほどのきらめき。
これはBlu-Rayで見た甲斐がありました。
そして、ロイが最後に取る行動。
彼の選択は、私にとっては恐怖でしかないのですが、取り憑かれた者にとっては恍惚の瞬間。
まさに未知との遭遇が「畏れ」と「興奮」をもたらすことを示すラストシークエンスでした。