Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

テナント 恐怖を借りた男

2019-11-29 | 外国映画(た行)
★★★★★☆ 1976年/フランス・アメリカ 監督/ロマン・ポランスキー

アパートの住人が自分を嵌めようとしていると被害妄想を膨らませ、狂気に落ちる男の話。ポランスキーお得意の幻惑的で薄気味の悪い妄想映像がすばらしい。ポランスキーの過去を知っていれば主人公がユダヤ人で周囲が迫害する人のメタファーであることはすぐにわかる。

言葉のすれ違いで相手を信用できなくなったり、音がうるさいと隣人とトラブルになるなど誰でも感情移入できる話だと思う。しかし、どうも主人公は自ら悪い方へと向かっているとしか思えず、強迫神経症的な自身の性格が招いた当然の結果のようにも見え、かつループ構造になっているのが本作の味わい。

それにしても改めてポランスキーの俳優としての資質の高さに感心させられる。いつもビクビクして愛想笑いのユダヤ人の小男。悲しいかな接する相手は不信感を覚えずにはいられない挙動不審ぶり。最終的には極限状態になり、女装して狂っていく姿はおぞましくとも、圧倒的な存在感で魅了する。

テナント 恐怖を借りた男

2019-11-29 | 外国映画(た行)
★★★★★☆ 1976年/フランス・アメリカ 監督/ロマン・ポランスキー

アパートの住人が自分を嵌めようとしていると被害妄想を膨らませ、狂気に落ちる男の話。ポランスキーお得意の幻惑的で薄気味の悪い妄想映像がすばらしい。ポランスキーの過去を知っていれば主人公がユダヤ人で周囲が迫害する人のメタファーであることはすぐにわかる。

言葉のすれ違いで相手を信用できなくなったり、音がうるさいと隣人とトラブルになるなど誰でも感情移入できる話だと思う。しかし、どうも主人公は自ら悪い方へと向かっているとしか思えず、強迫神経症的な自身の性格が招いた当然の結果のようにも見え、かつループ構造になっているのが本作の味わい。

それにしても改めてポランスキーの俳優としての資質の高さに感心させられる。いつもビクビクして愛想笑いのユダヤ人の小男。悲しいかな接する相手は不信感を覚えずにはいられない挙動不審ぶり。最終的には極限状態になり、女装して狂っていく姿はおぞましくとも、圧倒的な存在感で魅了する。

ひとよ

2019-11-27 | 日本映画(は行)
★★★★ 2019年/日本 監督/白石和彌

キャスト全員演技巧者で見ごたえたっぷり。隙がなさ過ぎるのが欠点とも言いたいくらい。個人的には自分至上最高に美しい佐藤健(しかもやさぐれてるのが最高)。それだけでも大満足。不満点と言えば家族とその内側だけの話に終始しており、家族と社会の接点が見えないところ。

主要キャスト以外の佐々木蔵之介、MEGUMI(しゃべり方変えてるよね)、音尾琢真、筒井真理子、韓英恵、浅利陽介(あの変な髪型が最高)。全員完璧。それから牝猫たちでとろサーモン村田を抜擢したように、千鳥の大悟も実に自然に嘘のない演技で魅了する。白石監督は芸人俳優の発掘眼がピカイチ。

それにしてもみなさん白石作品への期待値が高すぎる気がする。いや、わかりますよ、毎回映画料金払った分だけの充実感与えてくれるもの。しかもバイオレンス中心で年に何本も商業映画の公開作あるのすごいし。取り急ぎ見ても間違いなしはもはや白石和彌かイーストウッドでしょ。言い過ぎ?



ザ・スクエア 思いやりの聖域

2019-11-25 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2017年/スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク 監督/リューベン・オストルンド

最高。15分に1回くらい爆笑した。アート業界界隈の自称常識人たちの無意識の差別意識や偽善がどんどんずれていって関わる人を厭な気持ちにさせる意地悪映画。前作のフレンチアルプスもずいぶん意地の悪い話だったが今作もツボにどハマりした。

誰も話聞いてねえなあと思ったら大声出したり、トークショー中に野次飛ばす人がいたり、場の和が乱れるいたたまれなさって日本人にも共通した意識。あと固定カメラの使い方が巧い。主人公が馬鹿言い出すと横で聞いてる人の「こいつまたバカ言ってんなあ」という表情を映し続ける。ああ意地が悪い。

障碍者やホームレス、精神障害者の描写がインサートされ、思いやりとは何かを問う。しかも、その表現手段として主人公が勤める美術館の現代アートを使うという点に監督の才気を感じる。猿人間のくだりは白人インテリをとことんいじめているとしか思えない。監督なんか嫌な思い出でもあるのか? 笑

こうしたインテリ層の差別意識を過剰に可視化した作品として「奇人たちの晩餐会」を思い出す一方、白人インテリの不遜さを自覚的に描くという点において「隠された記憶」等のミヒャエルハネケ作品との共通点も感じる。潜在的な差別意識を不穏な方向に振り切るとハネケみたいになるのではないだろうか

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

2019-11-23 | 外国映画(は行)
★★★★ 2017年/タイ 監督/ナタウット・プーンピリヤ

はい出ました久々の土下座案件。カンニングわちゃわちゃコメディと思ってたら何これ…。序盤の消しゴムカンニングの緊張感あふれる演出で只者ではないと悟った。まるでオーシャンズシリーズのような洗練された映像。学歴社会を痛烈に皮肉る脚本も巧みで唸る。

貧しい秀才のリンとバンク、金で解答を買うセレブのパットとグレース。カンニングという愚かでバカバカしい行為の裏に見え隠れする4人の苦悶、煩悶が実に生々しく迫る。主要4人の息づかいが聞こえるかのような演技がすばらしい。一人ひとりにカリスマ性を感じさせる俳優陣で一級品のエンタメに。

しゃぼん玉

2019-11-21 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2016年/日本 監督/東伸児

強盗犯が田舎の自然と人に触れて改心…というよくある話。しかし市原悦子扮するスマが #林遣都 演ずる伊豆見を呼ぶ「坊」という声、全てを赦し慈しむその声を聞くだけでも見るべきと断言したい。繰り返される「ぼうはええこじゃ」に観客はそれぞれの過去の過ちから解き放たれるのだ。

通り魔に遭い田舎に戻ってきた若い女性の行く末を描ききれていない点は不満が残るのだが、それを凌駕する市原悦子の佇まい。遺作になったのは偶然だが、彼女のこれまでの役者人生が凝縮されたような役どころで田舎の老女の朗らかさとその裏にある諦めを見事に表現し、スマそのものとして存在している。

親の愛を知らない伊豆見を演じるにあたり #林遣都 がひどい箸の持ち方にした事はファンの間では有名な話。スマに会い、人としての心を取り戻していく様を好演している。本作での市原悦子や銀二貫での津川雅彦など既に鬼籍に入った名優との共演で得たものが確実に俳優としての幅や深みとなっているはず

検察側の罪人

2019-11-20 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/原田眞人

WOWOW

大人数映画を多数撮ってきた原田眞人。酒向芳、東風万智子など出演わずかでも輝きを見せる俳優陣多数。演技合戦を楽しんだ。真面目な社会派と見ると突っ込み所満載だがジャニーズ主演を鑑みればこれだけ現政権を揶揄する表現がよくできたなと思う。暗黒舞踏ばりの泣き女は笑った。

脇役陣でいちばん光ったのは松重豊。最近いい人役が多いだけにクセのあるワル役で本領発揮。そして、二宮和也は俳優としての潜在能力を見せつけた。結婚してまた開き直った演技ができるのでは。ジャニーズ主演と公開時スルーしてしまったのを後悔。ちゃんと映画館で見ておくべきだった。

殺さない彼と死なない彼女

2019-11-19 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2019年/日本 監督/小林啓一

普段なら絶対見ない作品だけどTwitterで好評につき観賞。 面白かった。いみじくも先日愛なき森で叫べを見て未だに園さんは自殺サークル当時のノリで死にたい女子高生を描いてるとツイートしたがこれこそが最新版の死にたい女子高生だろう。両者の隔絶ぶりに妙な感慨を抱いた。

ティーン向け映画は飽和状態で危惧する事もあるがこうした良作に巡り会えるならおばちゃんひと安心です。現代の高校生の抑制された生き方を少しでも開放できるなら映画の存在する意味は大きい。高校生が板に付いてる間宮翔太郎の振り幅見直したし、桜井日奈子始め若手俳優陣すばらしかった。

靄のかかったような映像、敢えての逆光撮影など、カメラも非常に意欲的。桐島部活の俳優陣が大きく羽ばたいたように、本作の若手俳優陣の将来がとても楽しみ。

ジャッカルの日

2019-11-16 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1973年/アメリカ 監督/フレッド・ジンネマン

ドゴール暗殺計画を描いたサスペンス映画の傑作。早々に警察が計画をキャッチするので果たして暗殺できるのかという緊張感が肝の映画とは思いますが。それよりジャッカルですよ。Dボウイみたいな端正な顔の英国イケメンが粛々と、徹底的に冷酷に計画を進める様子に痺れた。ジャッカルとは一体何者だったのか。謎に包まれるエンディングにふさわしい、エドワード・フォックスの淡々とした演技が見事にハマっている。

キング・オブ・コメディ

2019-11-12 | 外国映画(か行)
★★★★☆ 1983年/アメリカ 監督/マーティン・スコセッシ

(Amazonプライム)

普通のオッサンが最初から狂ってるから怖い。部屋にスタジオセットが出現してさらに震撼。「お帰り下さい」に「わかりました」とニコニコ居座る話の通じない人をスターにしてしまう社会も狂気。俺たちの社会狂ってるよな?イェーイ。その辺のホラーよりよっぽど怖い。彼の狂気の一因であろう母親が一度も姿を見せないというのも良かった。

キング・オブ・コメディ を見るとジョーカーのなぜ悪人になったかのプロセスを見せるってすげえ野暮だなと思う訳です。だからやはりジョーカーという映画は全編ジョークなんだろうと思う。キング〜の影響を受けた映画だと堂々と示しているし。「アーサー可哀想」って見てる観客も彼のジョークの構成要素。その方が凄いジョーカーっぽいし腑に落ちる。






愛なき森で叫べ

2019-11-11 | 日本映画(あ行)
★★★ 2019年/日本 監督/園子温

園ファンだけど、これはイマイチのれず。実際の事件と園流アレンジ(いつもの死にたい女子高生と映画隊)があまりうまく融合していないように感じた。ただし毎度のことながら新進女優の才能発掘映画としては申し分なし。主要キャストの鎌滝えり、日南響子など大迫力の演技合戦。異常なテンションに引っ張られる。

椎名桔平の異常者っぷりもなかなかだけど、もうひと超えという感じ。変なハイテンションっぷりは面白かったんだけど、何かが違うというか…。なので、映画班の描写より、桔平にフォーカス当てて相手をマインドコントロールする狂気をもう少し見せて欲しかった。それにしても冒頭の女子校シーン…園さん、ほんっと変わんないよね。そして、いつまで自殺したい女子高生を描き続けるんだよ、まじで。

いつものごとく人体破壊シーンは早送り…なんか重要なセリフあったかな…ないよね…笑

マチネの終わりに

2019-11-09 | 日本映画(ま行)

★★★★☆ 2019年/日本 監督/西谷弘

(映画館)

原作の持つ気品を損なわず大人の上質な恋愛物語として映画化されている。ゆったりとしたカメラで捉えるパリやNYの風景が美しく、それらが決して冗長に感じられないのがいい。いい年をした大人だからこそ、恋に対して逡巡し、しかし突き上げられる情動は抑えられず苦しむ。

その2人の心の揺れがしっかりと描き出されていた。原作読了後、洋子をイメージしたのは中谷美紀だったが石田ゆり子だったからこの儚さが生まれたのかもしれない。未来が過去を変えるという原作のメッセージにとても共感した、あのときの高揚感に再び浸った。

蒔野と洋子、それぞれにコップを握りしめるシーンがあり、分別のある大人だからこそそれをしないのだと見せる。本作はこうした映画的に豊かな表現にあふれている。かつ、これらが安易な心情表現へのアンチテーゼとも受け取れるのではないか。

福山雅治のターニングポイントは西谷弘監督の「真夏の方程式」だと思っていて、本作で再びタッグを組みさらに俳優としての魅力が増したと感じた。特に微細な表情の変化。なぜ1度しか会っていない女を運命の人と思ったかは冒頭の彼の演技力でしか観客を納得させられない。とても困難な役だったと思う。ギターが弾けるという点においても福山雅治の起用は大正解だったね。