Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ヤクザと家族 The Family

2021-08-19 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 21021年/日本 監督/藤井道人

なんと切ない物語か。ケン坊という孤独な青年の一生を軸に、その背景である日本社会の変化を描き出す。個人と日本社会、この2つのテーマを融合させる脚本が見事。助手席のカメラがそのまま急ハンドルで衝突し人物を捉えるなどのワンカットの迫力ある撮影もすばらしい。

19歳から39歳まで20年間の人生を生き切った綾野剛の演技が圧巻。元陸上選手の身体能力が存分に活かされている。車に撥ねられるシーンもスタントなしのようでその気合がびんびんに伝わる。舘ひろし、磯村勇斗も出色。カーネーション熱狂ファンなので綾野剛と尾野真千子が同じ画面に収まるだけで胸熱。

公開時、西川美和「すばらしき世界」と並べて評価されていたのがよくわかる。同じテーマでラストが真逆。西川美和独特の物事を斜めから見るような皮肉な視線と違い、本作は正面突破。綾野剛の熱演もあり20年の歳月の重みがずっしりと伝わる。私は本作の方が好きかもしれない。綾野剛、主演男優賞決定。


私をくいとめて

2021-04-30 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2020年/日本 監督/大九明子

のんの主演に目が行きがちだが(もちろんすばらしい)大九節とも言える色とりどりの観客を飽きさせない演出と編集にやられた。人を食ったようなシーンの挿入も雑音にならず、ワクワク感がどんどんアップ。ひとりはラクだが、ひとりのママもつらい。Life goes on.お一人様に幸あれ。

のんと橋本愛。フォーカス浅めにして捉える両名のクロースアップの美しさ。その意図的なカメラワーク。何としても美しく撮るのだという意気込みがビンビンに伝わり、我々観客も彼女らを応援せねばならない、そんな気分にさせられた。本作はのんさん応援歌でもあるのだね。見事な主演ぶりだった。

多田くんについて。 公開時、映画ファンの林遣都評がTLにあまり流れて来ず(湖民アカは別)寂しかったが、それはのんの存在感があまりに大きかったからだね。ちょっと鈍くてKYな年下営業マン。クセのある役をさらっとこなして、主演を輝かせるのが、林遣都の真骨頂。

Red

2020-12-11 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2020年/日本 監督/三島有紀子

商社マンの夫、可愛い娘。何不自由ない暮らしの主婦が昔の男と再会する。手垢のついたネタである。安い不倫映画になりそうなものだが、全編吹きすさぶような寂寥感を漂わせ、孤独な男女の逃避行として魅力ある作品になっている。不倫のゲスさを極限まで削ぎ落とした三島監督の手腕が光る。

再会シーンの妻夫木聡の色気がすごいよ。ふわっとカーテンの隙間から現れて。あれはエロい妻夫木をお見せします!という宣言だ。無愛想でミステリアス。SEXシーンもリアル。妻夫木聡、惚れ直した。同僚を演じる柄本佑、夫を演じる間宮祥太朗。演技巧者が抑えた演技で作品の質をさらに高めている。

嵐電

2019-06-30 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★ 2019年/日本 監督/鈴木卓爾

(映画館)

夜も更けた頃、祇園囃子と共に現れる狸と狐の車掌が乗った嵐電。恋人たちはその不思議な魔力に導かれて列車に乗り込むが…果たして嵐電は縁切り列車か、それとも縁結びの列車なのか。ドキュメンタリー的な演出にファンタジー要素も加わり不思議な手触りとなった作品。

祇園囃子に妖しげなキツネ車掌など、京都ならではのモチーフがファンタジックな雰囲気をさらに醸し出す。3組のカップルは出演するが、主役はもはや嵐電と言ってもよく、人々の生活に根ざす路面電車の存在が時にノスタルジックに映し出される。路面電車のそばで暮らすということがちょっと特別な人生のようにも見え、羨ましく思った。

舞台挨拶付き上映で鑑賞したが、井浦新さんもご参加。「ワンダフルライフ」の頃から出演作の多くを見て来たファンとしては大感激。井浦さん(未だにARATAくんと言ってしまう)はこれまでも自身の出演作では、地方の小さなミニシアターを衷心にあちこちの映画館に挨拶に出向いておられて本当にいい人だな。挨拶時に来ていたのが若松プロのTシャツで、さらにテンションが上がった。


LION ライオン 25年目のただいま

2019-01-31 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2016年/オーストラリア 監督/ガース・デイビス

(Amazonプライム)
養子縁組によって相応の環境で育ち、大学まで行ったサルー。なぜ彼はそれほど故郷インドへの郷愁を掻き立てられているのか。そこんところがよくわからない。Google Earthを使って、故郷を見つけ出すプロセスも割と普通だし。いいネタがゴロゴロ転がっているのに、なんとも中途半端でもったいない。確かに主人公サルーの生涯はドラマチックであるが、むしろ衝撃を受けたのは終盤のスーの告白である。ニコールキッドマン演じるスーと夫のジョンの志や生き方にもっともっとスポットを当てて欲しかった。素直に育ったサルーと環境に馴染めなかった弟の相克ももっと深められたはずだ。序盤の迷子になるまでに時間を取り過ぎ。むしろ、ジョンとスーがふたりを引き取るシーンから始めてよかったくらい、この家族の物語を見たかった。

リバーズ・エッジ

2018-08-11 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2018年/日本 監督/行定勲

1993年の原作を2018年に送り出す意図はどこにあるのか。それこそが本作の肝と思うが、原作ほぼ完コピで岡崎リアル世代がノスタルジーに浸るだけの作品になったような気がしてならない。山田や吉川が感じていた死への憧憬と憎悪を現代に蘇らせるのは実に困難な作業だ。

岡崎ファンとしては「ヘルタースケルター」で散々懲りたので落胆するのは想定内。映画化を熱望したという二階堂ふみの演技が見たくて鑑賞した。それにしても二階堂はじめメンバー全員高校生に見えないよね…。ドキュメンタリー風のインタビューシーンも狙い過ぎでしらけてしまった。

湯を沸かすほどの熱い愛

2018-04-27 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★ 2016年/日本 監督/中野量太

たばこを買いに出かけて2年も失踪していた夫と妻の関係性がきちんと描かれないことにモヤモヤした。宮沢とオダジョーを夫婦にしたのはミスキャスト。何も言わなくても通じ合う夫婦の空気が伝わらない。娘役の杉咲花はすばらしい。表情や手の仕草で伝えられる。しかし、夫同様ここで描かれる母と娘の関係性も観客を納得させるだけの材料(脚本と演出)が足りないように感じる。余命わずかという設定に甘えていないだろうか。

リップヴァンウィンクルの花嫁

2018-03-05 | 日本映画(や・ら・わ行)
★☆ 2016年/日本 監督/岩井俊二

(Amazonプライム)

もともと岩井俊二は肌に合わないのだが、キネ旬ベスト10に入っていたので観賞。
見始めて5分くらいで嫌な予感が漂う。
黒木華があまりに嫌な女でムカムカして、もう何度止めようと思ったことかわからない。
斜のかかった映像でメイド姿の黒木華とCoccoがあははは、あはははと踊るとか寒い。寒過ぎる。
レンタル家族とか、園子温がとっくの昔にやっとるぞ。
綾野剛の謎めいた雰囲気だけを頼りに最後まで観賞。
結局、奴は天使だったのか、悪魔だったのかとか、そんなんどうでもええわ。
拷問の180分。

酔いどれ天使

2017-12-18 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 1948年/日本 監督/黒澤明

(CS)

結核になったヤクザを三船敏郎。腕はあるがアル中の医者を志村喬。
「生きたい」と「助けたい」、それぞれの思いがすれ違う結末が切ない。
作中何度もインサートされる黒い泡を吹く泥池。
それは誰もがまだまだそこから這い上がれない泥沼の戦後社会を表しているのか。
肺病を患いながらも意気がって彷徨う男の物語だが、
エンタメとして飽きさせない映像になっているのがすごいと思う。
そして、これは両者ツンデレというBL作品ではないのか。

それにしても三船があんまりカッコ良くて見とれてしまう。
黒澤映画に初めて出た三船、この色気じゃそりゃ一躍スターになるよね。

ロスト・バケーション

2017-11-13 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/ジャウム・コレット=セラ

(WOWOW)

87分というコンパクトさがいいね。
そしてさまざまな表情をとらえる海の映像が本当に美しい。
サメに立ち向かうブレイク・ライヴリーも美しい(めっちゃタイプだわ~)。
ラストのサメ撃退はちょっとありえない展開っぽいが、必死の攻防は見応えあった

雪之丞変化

2016-11-02 | 日本映画(や・ら・わ行)
完璧にアートフィルム。横長のスクリーンの物理的な大きさと、光と影、色彩を自由自在に駆使して、どうしたら美しい画になるかをやり尽くしている。真っ暗な画面に突然ぴーんと白い糸が張ったり、武家屋敷の幾何学模様の壁にポツンと人がいるのをロングで撮ってたりとか、すごいすごい。デザインの勉強になる。最高。

わが母の記

2014-08-07 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2011年/日本 監督/原田眞人
DVDにて観賞

この人たち、そこそこの裕福な暮らしをしているから、
こういう温かい目で認知症の母親を介護できるんだよねーという意見もあるのですけど。
それを言ってもしょうがないんじゃないかと思う。
家庭にはそれぞれの形があって、そこで生まれた介護の問題をどんな風に受け止め乗り越えていくかは、
それぞれの家族のやり方に委ねられているのだから。
壮絶な介護もあれば、こうして温かく見送れる介護もある。
ぼけていく母親のそばで、自分が勝手に思いこんでいた過去の出来事が誤解だったとわかる。
ぼけていくからこそ、真実が見えるなんて、人生って皮肉だ。
どうして、しっかりしている時に親ときちんと向き合って話さなかったんだろう。
今のうちに親と話しておくべきことがあるんじゃないか。全ての子世代に通じる作品だと思う。
まあ、とにもかくにも樹木希林のぼけ老人の演技の素晴らしさが光ります。
宮あおいはいつもの優等生で飽き飽きなんだが。

私の男

2014-07-06 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2014年/日本 監督/熊切和喜

(映画館にて観賞)

原作既読。
予想以上に浅野忠信がメインだった。
原作は 禁断の愛欲関係が延々続くのに対して、映画では娘に溺れて堕ちていく男がよりクローズアップされている。
その斬り方はアリだと思うが、2人が育った環境が全く語られず、かなり説明不足。
ゆえに作品としては、冗長に感じられる。
二階堂ふみのエロパワーで何とか引っ張れた感じでしょうか。
ラストカットの二階堂ふみの微笑みが、
ふたりの関係がさらに底なし沼に堕ちていくような予感を感じさせていいんだけれども、
全体的にノレなかったなあ。禁断の愛とか大好物なんですけど。残念。

リアル~完全なる首長竜の日~

2013-06-25 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 20013年/日本 監督/黒沢清
(映画館にて鑑賞)

「御用達俳優勢揃い」

あの黒沢清がメジャー作品を撮ったということで、興味津々でスクリーン観賞。
それにしても、変なタイトルだなあ(笑)。と思ってたらこれ原作があるんですね。

前半はいつもの黒沢節でファンとしてはそれなりに満足。
パースの歪んだ部屋や中谷美紀の無機質感やフィロソフィカルゾンビなる者たちの不気味さなど、
この調子じゃ普通の観客はついてこれんだろうなあと余計な心配をしてしまう。
漫画の中の変死体が突然現れるシーンでは、
レディースデーでついでに来ちゃったような前列のオバサンたちがのけぞってた。

しかし、ラスト30分くらいあたりから、なんで首長竜?という物語そのものの疑問とか、
CGバリバリの恐竜が暴れまくるとか、どうにもこうにもノレなくなってくる。
原作ものだからしょうがないのかなあ。

全体的に見れば中谷美紀がいたから何とか緊張感を保てていたように感じる。
小泉今日子やオダギリジョーなど、黒沢作品におなじみの面々。
超メジャー級の俳優ながら、黒沢作品に出ると何だか居心地悪いというか、
どうも存在そのものが亡霊みたいに見えて実体がつかめない感じとか、
いわゆる黒沢作品の特徴的なものが醸し出されていた。
で、やっぱり主役は綾瀬はるかが適任ではなかったなと思うのである。