Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ノッティングヒルの洋菓子店

2022-01-09 | 外国映画(な行)
★★★☆  2020年/イギリス 監督/エリザ・シュローダー

3世代の女性が協力し合い洋菓子店を経営する人間ドラマ。とにかくノッティングヒルの街並みが絵になる。そして美味しそうな洋菓子の数々。祖母ミミが住む家も本当にステキ。移民の多い街ロンドンならではの展開と街、食、家の美しいショットの三拍子揃う良作。

「ノッティングヒルの恋人」が好きな人はきっとこの映画も満足じゃないでしょうか。街も登場人物の1人のように大事な要素なんですよね。どこを切り取っても絵になる。数年前に訪れた時は残念なことに土砂降りで…。絶対リベンジしに行きたい。

ノマドランド

2021-04-06 | 外国映画(な行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/クロエ・ジャオ

これほど米国国土の美しさを見せる映画が近年あったろうか。それがアメリカ社会から追い出された初老の女を通じて描かれるという皮肉。しかし、広大な自然に立つファーンの姿には住み慣れた土地を追い出された敗者の影はない。ノマドの友にひたすら耳を傾けるマクドーマンドが圧倒的。

誰しも己の生き方を自分で選べる訳ではない。しかし、それは悲劇なのだろうか。ファーンの生き様をケンローチ的なアプローチで描く事も可能だが本作はそうはしない。ここには否定も肯定も批判もない。それが実に清々しい。そしてミナリ同様アメリカで生きることをアジア系監督が描いているのが感慨深い。

ナイチンゲール

2020-12-22 | 外国映画(な行)
★★★★ 2018年/オーストラリア・カナダ・アメリカ 監督/ジェニファー・ケント

19世紀の豪州タスマニア。強姦され夫と赤ん坊を殺されたクレアはアボリジニのビリーを案内人に復讐の旅に出る。極限状態における人間の醜さを容赦ないバイオレンス描写で描く。社会の除け者同士が友情深めるバディものとか思ってると強烈なビンタを食らう。壮絶の一言。

アイルランド流刑囚にアボリジニの虐殺。よくぞまあ、イギリス黒歴史にここまで切り込んだもんだ。また、クレアが見る悪夢はまるでホラーのような禍々しさで、さすが「ババドック」の監督と思い至る。それにしても美青年サム・フランクリン、最近嫌な奴の役が多くて少し気の毒。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2020-08-31 | 外国映画(な行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/ライアン・ジョンソン

高評価も多い中、自分にはピンと来ず。大邸宅での大金持ちの殺人事件となると、もろにクリスティ。ライアンジョンソンもその世界観を目指したようだけど、ミステリーとしては物足りないなあ。ポワロでもなくミスメープルでもない、独自の探偵像をもっと追求して欲しかった。

二重生活

2020-05-24 | 外国映画(な行)
★★★★ 2012年/中国・フランス 監督/ロウ・イエ

豪雨のひき逃げ事件。そして武漢の街を俯瞰で映すカメラ。一気に引き込むプロローグ。不倫ものだがベタな演出は皆無。男と妻と愛人。三者の問題に留めず、男の不実を発端に中国社会が抱える問題を浮かび上がらせる。タイトルから想像する単なる愛憎劇と思うなかれ。

顔のクロースアップが多用され、人物の感情に肉薄するも、誰もその真意が見えない。そこが殺人事件ともあいまって、ミステリアスなムードを全編に漂わせる。そして殺人犯に関する意外な顛末。ラストもロングショット。街は重苦しい何かを心に抱える人を呑み込んでいく。

2010年

2018-11-20 | 外国映画(な行)
★★★★ 1984年/アメリカ 監督/ピーター・ハイアムズ

(NHK-BS)

2001年の熱狂的ファンからすると、いつのまにやら「見なくていい映画」に位置づけされていたわけだけど、
今年70mmフィルム、IMAXと立て続けに2001年を観賞したわけで、タイミングよくNHK-BSで放送。もう見るしかないよね。
というわけで、早々にロイシャイダーは全然フロイド博士とはイメージ違う!とアッパー食らう。
ヘレンミレンとジョンリスゴーが出てたんかいな…と驚きの連続である。いかに自分が本作を無視して来たかを痛感。
それにしても、BSクオリティなのか、映像が美しい。さすが2001年を8K放送するだけのことはあるよ。
HALとディスカバリー号が無地に成仏したのを見届けられたのは良かった。HALを見捨てたボーマンが戻ってきただんだね。うん、これは泣くな。
ヒューマンドラマ的演出がもっと抑えられていれば、もっと良かったんだが。
2001年の謎解き映画と思えば、その役割はきっちり果たしているので、「見なくていい作品」ではなかったね。反省。

2001年宇宙の旅 IMAX版

2018-10-27 | 外国映画(な行)
大阪エキスポシティ最後列センターにて鑑賞。
やあ、もう大迫力&大音響で最高だああああ!
18m×26mの大スクリーンの威力はハンパない。
IMAXドセンターから突入するスターゲイトはトリップ感満載至福の時でした。

ちなみに。。。
インターミッションの時にスクリーン入り口付近で何やら揉めているカップル。再開時には戻ってきませんでした。お前らーーーー

ネオン・デーモン

2018-04-28 | 外国映画(な行)
★★★☆ 2016年/フランス・アメリカ・デンマーク 監督/ニコラス・ウィンディング・レフン

レフンにしか出せない世界観、唯一無二の映像美を堪能。ハイブランドに身を包んだモデルのシューティングシーンが超絶かっこいい。そして、スーパー美人大集合の中、変人管理人を演じるキアヌのおかしみ。レフン絶対「ヘルタースケルター」読んでるよねえ。絵だけで十分堪能できる。

野いちご

2018-01-30 | 外国映画(な行)
★★★☆ 1957年/スウェーデン 監督/イングマール・ベルイマン

名誉博士号を授与されることになった老教授が車で授与式場へと向かう道のりを、老教授の回想や悪夢を織り交ぜながら描いていく。

自身の過去を振り返りつつ、現実と妄想が入り乱れるというタイプの原型と言われている作品だそうだ。確かに老人が出くわす妄想には心惹かれる映像もあるが、作品全体としてはあまりピンと来ず。人生の終着点でこうなってしまったのも爺さんの自業自得だろうという、元も子もない感想を抱く。

ノクターナル・アニマルズ

2017-11-29 | 外国映画(な行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/トム・フォード

(映画館)

冒頭シークエンスが圧倒的だけに、どんなすげえ映画が始まるんだと期待高まるが、
南部の荒野で繰り広げられる小説にどうも入り込めず。。。
また、エイミーアダムス、モード系ファッションが似合わない。
それはテキサス出身ゆえのあか抜けなさの表現かもしれんが、
アート界に生きる人間としてはファッションこそキャラクターを雄弁に物語るアイテムのはず。
でも、どうも着させられてる感が否めない。それが気になって気になって。

結局は、ふられた女への腹いせ小説だったのか、と思うとそこにも好感持てず。
しかし、ラストの展開含め、様々な読みができる作品だけに
しばらく経つとじわじわ面白さがこみ上げるから摩訶不思議。
「シングルマン」もそうだったなあ。後から効いてくる作品。

ノスフェラトゥ

2016-12-05 | 外国映画(な行)
★★★★ 1978年/西ドイツ・フランス 監督/ベルナー・ヘルツォーク

独特の世界観にハマる。もちろんクラウスキンスキーの怪演ぶりも夢に出てきそうなくらいで圧巻。しかし、個人的には吸血鬼モノにどうしてもノレナイ。なぜだろう。ドラキュラに対して、憐れみとか全然共感値低いんだよなあ。もう少し古典に触れるべきなんだろうとは思うが。

嘆きのピエタ

2014-08-12 | 外国映画(な行)
★★★★ 2012年/韓国 監督/キム・ギドク
DVDにて観賞

ミソンを演じる女優さんが岸本加世子にしか見えない。
ということは置いといて。

とても賛否両論の作品で否定的な人の意見もよくわかるのだけど、
私は好きだなあ。
こういう絶望のどん底をややナルシスティックに描くというやり方が鼻につく人がいるのもよおく理解できる。
そういう意見もわかった上での、俺にはこういう見せ方しかできないんだよというギドクの嘆きが聞こえてきそう。
母の愛に飢え続けてきた男の成れの果て。残酷非道な生き方の始末の付け方。
援交していた友人を死なせてしまって、その友達が懺悔のためか、友人が体を売った男を訪ね歩くという
「サマリア」を思い出させる。
罪と懺悔。ギドクって、いつまでもおんなじテーマを描きつつけている。
ショッキングなラストにやられました。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

2014-08-02 | 外国映画(な行)
★★★★ 1968年/アメリカ 監督/ジョージ・A.ロメロ
(DVDにて観賞)


このジャンルは未開地なので、
とにかく名作と言われるようなものは、ちゃんと見ておこうじゃないかということで観賞。
うん、良かったです。なんか、「カリガリ博士」とか「フランケンシュタイン」とか、
あの辺の古典ホラーのムードをすごく感じましたねえ。
そしてストーリーがいたってシンプルなのがよい。
モノクロームっだから、余計な情報が目に入ってこないんだよね。
スクリーンに集中できるっていうか。
ラストの無常観もいいですねえ。

何がジェーンに起ったか?

2013-02-05 | 外国映画(な行)
★★★★★ 1962年/アメリカ 監督/ロバート・アルドリッチ


「こわれた女ほど恐ろしいものはない」


(DVDにて鑑賞)
映画を見て身震いがしたのは久しぶりです。
ホラーのジャンルでない作品でこれほど恐ろしい思いをしたのは初めてかも知れません。
ジョン・カサヴェテス「こわれゆく女」でジーナ・ローランズが見せた静かな狂気とは真逆。
ベティ・デイビスが見せる激しい狂気は彼女の生き霊が自分にも乗り移ってくるのではないかというほど恐ろしい。
下品で、意地悪で、浴びるように酒を飲む。そして、若作りに化粧した顔の醜悪さ。
ここまでさらけ出すベティ・デイビスに圧倒されない人はいないでしょう。

幼い頃歌っていた歌がレコードから流れてきて、ふと昔の子どもの頃に戻ってしまうジェーン。
その瞬間のベティ・デイビスの表情もすばらしいのですが、
醜い老女がスポットライトを浴びたかのように立ち止まり恍惚の表情をみせる、
その様子を正面から切り取るロバート・アルドリッチの演出も容赦がありません。
前半部に妹は演技が下手とこきおろされるシーンがありますが、
あれは実際のベティ・デイビスの出演作品を使っているというではありませんか。その徹底ぶりに驚きます。
また一番最初のカットでびっくり箱からピエロが出てくるのですが、このイントロも作品のテーマを表していて巧いです。

一方、人のいい姉を演じるジョーン・クロフォード。
冒頭、売れっ子の姉を憎々しく見つめるシーンがあるが(ここは子役)、
ジョーン・クロフォードにバトンタッチしてからは車椅子生活になっても姉を思いやる可憐な妹がそこにいる。
自動車事故を挟んだ姉妹のコントラストが見事で、まんまと観客も監督の罠にはめられてゆくのです。

そしてタイトルが示すとおり、何がジェーンに起こったのか。
事故が起きたシーンの思わせぶりなカット、そして妹の仕打ちにより追い込まれていく姉。
一体どんな結末が待っているのかと、ラスト30分は自分の心臓の鼓動が聞こえるほど興奮しました。
そして、浜辺でアイスクリームを買う老いたジェーン。
そう、彼女はアイスクリームを欲しがっていた。
劇場の出口で父親を罵倒し、アイスクリームをせがんだ時の小さなジェーンはあんなに憎らしかったのに、
今は全ての重荷を下ろしたかのように安心しきって微笑む老女のジェーンがいる。見事なラストシーンでした。

ここからは余談ですが、不仲であったベティ・デイビスとジョーン・クロフォード。
アカデミー賞主演女優賞にベティ・デイビスがノミネートされたのが不満だったジョーン・クロフォードは
他作品でノミネートされたものの当日舞台で参加できないアン・バンクロフトの代理人として出席。
結果、アン・バンクロフトが受賞し、代理人のジョーン・クロフォードは隣に座ったベティ・デイビスの肩をそっと叩いてから、
舞台に上がってスピーチをしたというではありませんか。
映画そのままに大女優の場外乱闘が続くというのも傑作のなせる技だと思います。




2046

2011-06-27 | 外国映画(な行)
★★★★ 2004年/香港 監督/ウォン・カーウァイ

「トニーレオンのまなざし」


「花様年華」の続編的作品ということで、まず「花様年華」を見直しましたら、これがあまりにもすばらしかったもんで、こちらの作品が見劣りしてしまいますね。これはもうしょうがない。

撮影当時、木村拓哉が何度も撮影が中断して困ったという発言をしていましたけど、その混迷ぶりが良くも悪くも作品に現れています。主人公が書く小説内ストーリーということですから、話があっちに飛んだりこっちに飛んだり、突然回想シーンになったり。何でもアリなワケで。映像そのものはウォン・カーウァイらしい幻想的な美しさはあれど、それを楽しもうという意欲がないと退屈かもね。

でも、女性の体のラインの撮り方なんかは狙い過ぎと感じることなく、美しさそのままが伝わる映像づくりというのは、さすがウォン・カーウァイだと思う。ベッドに横たわる女の腰のくびれ、素足にハイヒールのくるぶし、肩の開いたドレスからのぞく鎖骨。次から次へと出てくる細部フェチのカット。のぞき窓からのぞいたようないかにもな構図なんだけど、見ていて醒めるようなことはなくて、すっかりこの世界にとらわれてしまう。のぞき窓ということで言えば、このストーリーそのものがトニー・レオンの覗きで成り立っているんだよね。2047号室から2046号室を常に覗き見る男。だから、対してストーリーは動かないけど、感情移入できるんだと思う。

とはいえ、いちばんの見どころは、アジアンスター総出演ってことなんじゃないでしょうか。私はそこんとこ、素直に楽しみました。トニー・レオン、木村拓哉、コン・リー、フェイ・ウォン、チャン・ツィイー、チャン・チェン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ。みな幻想的なカーウァイ作品の住人になってます。最も、軸となるのはトニー・レオンで、彼の突出した存在感にはやはり唸らされますね。彼の女性を見つめるまなざし。そのワンカットが実に多弁です。昔の女を哀れむまなざし、隣の女を挑発するまなざし、大家の娘を見守るまなざし。トニー・レオンがそれぞれの女を見つめるというカットが随所にあるのですけれど、まるで自分が見つめられているようでドキドキ。私の心はとろけてしまいそうです。

それにしても、なぜ彼の女がカリーナ・ラウなの!?解せん!(ああ、ついに言ってしまった。いや、いつか叫びたかった)