Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

半世界

2021-02-26 | 日本映画(は行)
★★★★ 2019年/日本 監督/阪本順治

田舎の片隅で炭作りをして暮らす男、世界の果ての紛争地で辛い体験をした男。与えられた場所でもがいて、つまづいて、それでも人は生きるしかない。田舎の閉塞さに止まらず、緩やかに世界は繋がっていることを示してくれる。欠点だらけの3人の中年男たちが愛おしい。秀作。

波止場

2021-02-26 | 外国映画(は行)
★★★☆ 1954年/アメリカ 監督/エリア・カザン

マフィアに中抜きされて波止場で働く男、マーロンブランドが己の自尊心を取り戻すため立ち上がる。なんのこたない、今の社会と同じ構造ではないか。やりきれないね。

エリアカザンは赤狩りで密告行為を行った後に本作を撮った。裏切られた仲間たちは、一体どんな気持ちでこれを見たのだろうか。非常にねじれた映画だ。

アンオーソドックス

2021-02-23 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

女性としての様々な呪縛に囚われた主人公が自由を得るまでの話だが、とにかく超正統派ユダヤ教の儀式が驚きの連続。ユダヤ人差別からドイツから逃れアメリカに来たのに、ベルリンで自由を知るという皮肉な展開。これほど人間の尊厳を奪う宗教とは何だろうか。

舞台がNYという事にも驚く。数ブロック先では自由な服装で自由を謳歌する女性がごまんといるのだ。彼女たちを身近に感じながら、このあまりに厳格な日々を送る心理はどういうものなのだろう。まだまだ世界には自分の知らないことがあると痛感させられた。ユダヤ教徒を演じるキャストも熱演。

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー

2021-02-23 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/デビッド・ロウリー

不慮の死を遂げた男。幽霊となり彼女の元に止まる事を決めた…と思ったら、 何この予想外の展開。 セリフのない長回し、たゆたう時の流れ、時空を超える魂。宇宙を見れば人の生死はたわいもない。が、それでも誰かを思うことの切なさがじんわりと心に残る。

MOTHER マザー

2021-02-23 | 日本映画(ま行)
★★★★☆ 2020年/日本 監督/大森立嗣

救いようのない物語はファーストカットが大事だ。息子の膝を舐め、母子で自転車で坂道を下るショットで確信。ロングショット、手持ちカメラ、クロースアップ。全てが爽快なほどに決まっている。映画の教科書のようなカメラ使いが閉じた親子の世界と愛憎を見事に映し出す。

大森立嗣監督は決して褒められることはない人間のエゴや業を描き出すのが本当にうまい。「さよなら渓谷」の真木よう子のように、誰も触れることができない女の奥底に秘めた闇を長澤まさみに見る。寂しい親子のロングショットと対照的に、彼女のクロースアップのカットはどれもすばらしすぎた。

さらば愛しきアウトロー

2021-02-18 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/デビッド・ロウリー

何とも心地いい、肩の力の抜け具合。フォレストタッカーの振る舞いと同様に映画も紳士的でやさしい語り口。まさにレッドフォードのフィナーレにふさわしいエレガンスを纏った作品。力みゼロ、80%程度の出力の演技でレッドフォードに合わせるケイシーアフレックもナイス。

サバハ

2021-02-18 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2019年/韓国 監督/チャン・ジェヒョン

オカルトにホラーやミステリーの要素をぶっ込み、見事にエンタメに昇華した力作。コクソンほど難解ではなく結末もスッキリしているが、事件の背景にはマニアックな仏教の教義を巧みに織り込んでいる。カルト宗教のおぞましさもがっつり見せる胆力は流石の韓国産。見応え十分。

1987、ある闘いの真実

2021-02-18 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2017年/韓国 監督/チャン・ジュナン

警察、検察、報道、市民。それぞれの人間ドラマが濃密に描かれ、互いに絡み合い、国家を揺るがす事態に突入する。これらを130分という尺に収めていることに驚く。歴史的事実の重みもあるが、群像劇としての「うねり」の凄みに圧倒された。傑作。

娯楽作にするためドラマチックに盛っている部分は多少なりあるのだろうが、それが全く雑音にならない。容赦ない暴力や悲惨な現実にエンタメとして盛り上げる演出を加える。これが韓国映画は実にうまい。「工作」しかし「国家が破産する日」しかり。また、作品の持つ説得力は役者の力も大きいのだろう。

ダッシュ&リリー

2021-02-09 | TVドラマ(海外)
★★★☆

書店で見つけた一冊のノートを巡るラブコメ。NYでクリスマスだし、ダッシュ君もシャラメみたいだし。これはもう完璧にウディアレンの世界。日系女性が主演ということもあり、多様化時代のラブストーリーを若者に発信するNetflixらしいドラマ。1話30分なのであっという間に完走。

高校生のラブストーリーに中年が耐えうるのかと思いきや、やっぱりクリスマスのNYは魅力的だし、読書好きの男女というのは好感度大だし、NY在住日系人の日本的生活は面白い(どこまで本当なのかはわからないけど)。Netflixドラマはティーン向けでも文学素養が必要で目線が高い。

愚行録

2021-02-09 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2017年/日本 監督/石川慶

最高に好みの映画。 妬み、嫉み、僻みの大洪水。人間の厭な部分が晒し続けられる120分だが、ソリッドで緊張感のある演出と撮影によって、作品に品格が漂っている。クソみたいな人物たちを冷徹に描き切る客観性、距離感がいい。そして、いつもながら妻夫木聡が最高。映画館で見たかった。

ユージュアルサスペクツな冒頭シーンで本作がただならぬ映画だというのがわかり、テンションMAX。また、キャストが全員最高に厭な奴を熱演。特に関西弁のクズを眞島秀和が演じる意外性が面白い。満島ひかりは貫禄の演技だし、濱田マリの目の演技もすばらしい。キャスティングが100満点。原作読もう!

アンビリーバブル たった1つの真実

2021-02-06 | TVドラマ(海外)
★★★★★

大傑作。レイプ被害を取り下げられた少女。その3年後、別の現場でレイプ犯を追う刑事がいた。何としても捕まえるという執念を持つ2人の女性刑事の地を這うような捜査の描写が感動的。少女と刑事、2つの物語が徐々に交錯。この少女を救ってくれと祈りながら見た。

本作、3名の主要キャストが抜群にいい演技をしている。男性警官の横暴でレイプ被害を取り下げられ、その後の人生がズタズタになってしまう少女を演じるのはケイトリン・ディーヴァー。ブックスマートとは別人のよう。深く傷つき、誰にも心を開かなくなった少女を見事に演じている。

州を越えて手を組む2人の刑事は昔気質なトニ・コレットと子育て中のメリット・ウェヴァー。特にメリット・ウェヴァーの役作りが凄い。声が小さく物静か、しかし心の奥底に怒りを秘めた女性。今まで見たことのない刑事像と言っていい。この2人のバディ感が最高なのでシリーズ化して欲しいと思った。

サウンド・オブ・メタル

2021-02-06 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ダリウス・マーダー

聴覚を失った男性の喪失と再生の物語。大切なものを失ったルーベンの悲しみにひっそりと寄り添う優しい人がいる。静かに耳を澄ませることで愛しいものが見えてくる。 ヘッドフォンで見るべしの意味、そういうことかと膝を打つ後半の展開。音を描くことに挑戦した意欲作。

ガールフレンド・ルーの父親、マチュー・アマルリックの登場に驚く。(配信って、事前にキャストチェックせずに見るから、この人出てたんだ!って驚くことが多い) わずかな登場シーンと佇まいで、どういう家柄か家庭環境かが想像できる。さすが。

メランコリック

2021-02-03 | 日本映画(ま行)
★★★★ 2018年/日本 監督/田中征爾

バイト先の銭湯は、闇の死体処理場だった。 平凡な男が裏社会に出くわし、物語はどう転ぶのか。予測をことごとく裏切る展開がうまい。「自分の知らない世界に触れて一皮剥ける話」ではあるが今まで見たことのない語り口。銭湯主人や同僚松本くんのキャラも実にユニークで魅了された。

あの夜、マイアミで

2021-02-02 | 外国映画(あ行)
★★★ 2020年/アメリカ 監督/レジーナ・キング

当時の黒人社会で多大な影響力を持つ4人のある夜の話。ドライブがかかるまで少々退屈。密室会話劇らしい一触即発のスリリングさも感じられず。確かにその後の彼らの運命に思いを馳せれば感傷的にもなるがこの2時間で胸を掴まれるかというと難しい。絶賛評あふれるが私はノレず。

登場人物がほぼ4人だからこそ、内面をもう少し掘り下げて欲しかったし、彼らの心情を伝える映画的なシーンが必要ではないか。それは歴史的有名人だから省略できるものではないと思う。わざわざ戯曲を映画化するなら、なおさら映画的な快感が必要で、それを感じる瞬間があまりなかった。残念。

THE GUILTY ギルティ

2021-02-01 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/デンマーク 監督/グスタフ・モーラー

声を頼りに誘拐された女性を助けようとする警察官。だがしかし。 誰かを救う善意の行動なのに、事件は予期せぬ方向へ。一刻を争う事態の中であぶり出される人間の先入観や保身。観客も現場が見えないだけに最後まで緊張感が持続。どんでん返しの展開に人間ドラマを盛り込む脚本が秀逸。

こういう映画で途中で展開がわかりましたなんて人がいるんですけど、私はそういう試しがなく、「ウヒョー」とソファでひっくり返ったりしているので、我ながら本当にいい観客だと思います。