Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ロスト・ドーター

2022-01-09 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2021年/アメリカ 監督/マギー・ギレンホール

単身避暑に来たレイダ。海辺での少女の迷子をきっかけに若かりし頃の子育ての記憶が呼び覚まされる。悔恨と懺悔の意識。乱れに乱れる心。タイトルにある「ロスト」が二重三重の伏線となり、母の役割とは母性とはを突きつける。知性と危うさが共存するオリビアコールマンが圧巻。

妖精たちの森

2021-10-13 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★☆  1972年/イギリス 監督/マイケル・ウィナー

英国の郊外の大邸宅。下男と家庭教師の淫らな肉体関係。それを日々覗いている幼い姉弟。愛することは憎むこと。愛するものは死をもって繋がる。下男を慕う姉弟は彼らの言動を真似、無邪気な狂気を振るう。いわゆるアンファンテリブルものだが性描写も赤裸々でトラウマ納得の逸品。

本作後にラストタンゴinパリ撮入のMブランドのただならぬ妖気と、子供の心を持ったまま大人になった下男の人物造形が面白い。姉弟がどんどん感化される様は子育ての恐ろしさも感じさせる。そして汚らわしい男だからこそ惹かれる家庭教師の倒錯した愛。愛と憎しみ、清らかと汚らわしさの混沌。

レッド・ファミリー

2021-08-03 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2013年/韓国 監督/イ・ジュヒョン

隣家の声が聞こえるんなら、こちらの会話も隣に筒抜では?など確信犯的とも思える雑なコメディパートと、スパイ家族の恐怖の日常のコントラストが絶妙。終盤の絶体絶命のスパイ家族の会話は、まさにクライマックスと呼ぶにふさわしい脚本の妙。不覚にも泣いてしまった。



LIFE!

2021-07-30 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2013年/アメリカ 監督/ベン・スティラー

地下の写真室からウォルターは飛び出していく。伝説のカメラマンに会うために。人は思い立てばいつでも冒険の旅に出られる。何度見てもそのメッセージに勇気づけられる。コロナ禍の今見るとなおさら旅の郷愁にかられる。ひと目で世界的冒険家と納得させるショーンペンの佇まいにやられる。

いろんな映画でボウイが使われるけど、本作のSpace Oddityが一番好き。酔っ払いの運転するヘリコプターが今飛び立とうとしている。そこで思いを寄せるシェリルがウォルターの空想の中で歌い出す。Ground Control to  major Tom…。ウォルターがジャンプする。なんてエモーショナルなシーンなんだ。

わたしたち

2021-06-16 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2016年/韓国 監督/ユン・ガウン

小学4年の少女たちの人間模様。いじめ、仲間はずれ、嫉妬、喧嘩。しかし、一つひとつの体験が外側の世界に通じる扉になる。友達間のよくある話なのに実にスリリングな脚本。ミサンガ、マニキュア、絆創膏などの子供アイテムが見事に彼女らの心情を表現し、物語をドライブさせる。傑作。

カメラは常に主人公のソンを捉え続ける。尺の半分以上と言っても過言ではなかろう。そのソンの表情。喜び、翳り、憂い、気づき。微細な表情の変化で、物語が進んでいく。実に高難度技。なのに、全く気取らず我々の少年少女時代を回想せずにはいられない温かみも持ち合わせる。すばらしい作品。

ロング・ショット

2021-04-29 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ジョナサン・レビン

女性がステイタス上の格差ロマンスにはノッティングヒルの恋人という大名作があるけど、負けず劣らずチャーミングな作品。シャーリーズセロンは超絶美しいし、一方国務長官というバリキャリなのにお茶目なところもあり。またそれを嫌味なく見せられるのは姐さんさすがです。

昨今ポリコレもあり、美人と醜男というルッキズムの側面をネタとして使うのは難しいが、それも見事にクリア。見た目や金銭格差はあまり触れずに、志のある者同士の結びつきに帰結させる脚本が実に今っぽい。●●となった彼女をフレッドが紹介するラストも今後の社会の希望を投影していて爽快だった。



私というパズル

2021-03-26 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2020年/カナダ・ハンガリー・アメリカ 監督/コーネル・ムンドルッツォ

冒頭の出産シーンがそれはそれは壮絶で主演女優のノミニーも納得。しかし、自宅出産で子を亡くした女性の悲しみがメインテーマだが、その裏にあるのは母と娘の確執。このドラマ部分が非常に弱い。醒めていく夫との関係も深掘りが足りない。凄まじい冒頭ゆえに却って後半失速の印象。
ダメ男、シャイアラブーフはダメっぷりが流石の演技。(褒めてる)

ローサは密告された

2021-01-16 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2016年/フィリピン 監督/ブリランテ・メンドーサ

スラム街の喧騒、映像からも伝わるむんとした湿気。そして突然警察が踏み込む。ドキュメンタリーのような緊張感。次々と無謀な要求を出す腐った警官ども。両親釈放のため奔走する子供たち。フィリピンだけじゃない。市井の人々が金と権力に踏みつけられるあちこちの社会の縮図。

レ・ミゼラブル

2020-12-14 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2019年/フランス 監督/ラ・ジリ

パリ郊外、モンフェルメイユ。黒人少年がある物を盗んだことから街は一触即発の事態に。刻一刻と変化する事態を臨場感たっぷりに伝える手持ちカメラ。一寸先は闇。高まる動機が抑えられない。子供達にとって現実はあまりに無情。守られるべき側から当事者になるしかない過酷な現実。

シェルブール(!)から異動の警官ステファンを相棒が街案内していく語り口がうまい。我々もステファン同様、警察の横暴やマフィアの癒着に面食らう内に事件が勃発、完全に住民目線で事態を眺めることになる。そして腐った男達にも人の心がある事をチラリと見せるのが憎い。2020年最もズシンと来た。

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

2020-07-11 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ウディ・アレン

恋のときめきと苛立ち。新しい出会いへの有頂天と不安。 クルクル変わる若者たちの心模様が雨のNYを舞台に描かれる。 NYセレブの豪華な暮らしっぷり。現実社会を反映するリアルな作品群が隆盛を誇る中、これもまた映画なり。スクリーンの向こうに広がる別世界。

ティモシーの魅力全開。弾き語りまでしてくれちゃって観てる私が有頂天。何に対してかはわからんが「ありがとう」と心の中で呟いていたらディエゴルナの突然の登場でハートバクバク。「天国の口」から全然変わってねえ!超かわいい!アレンは女子目線でイケメンをさらにイケメンで撮ってくるの一体何!?

リチャード・ジュエル

2020-06-01 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/クリント・イーストウッド

サムロックウェルやキャシーベイツというオスカー俳優を脇に、堂々と主演を務めたポール・ウォルター・ハウザーの演技に驚き。「こいつならやりかねない」と「愚直で誠実」の双方の表現を行き来できるからこそ、最後までハラハラが持続し、一級品のサスペンスに。

色仕掛けのネタ取りにアトランタ紙からクレームが入っていることは看過できないし、その後の改心ぶり(あんな豪胆な女が記者会見で泣くわけない)含め、脚本気になるところ多々。緻密な映画かというと全然でツッコミどころは多い。シリアスな告発物と思ってみると肩透かし。でも十分面白かったけどね。

ルディ・レイ・ムーア

2020-05-25 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/クレイグ・ブリュワー

ドリームガールズのエディ再びかと前のめりに鑑賞したがやや期待はずれ。歌にエロ漫談とエディの魅力は出ているが何せ演出にメリハリがなく、物語がどこに向かっているのかわからない。伝説の映画(らしいが)「ドールマイト」制作風景もドタバタしているばかりでノレず。

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

2020-05-14 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★ 2015年/ベルギー・アイルランド 監督/メアリー・マクガキアン

実際の建物や家具がバンバン出てくるので建築好きにはたまらんです。ですが見所はそれだけ。
本作長年コルビジェ作とされていた住居が実はアイリーンの設計だったというスキャンダルがベース。女の才能に嫉妬した若きコルビジェ。このプロットだけでもワクワクしますよねえ。なのに、カメラはやたらとアイリーンのアンニュイな表情ばかり捉えて、実に退屈。また、コルビジェの嫉妬の裏側をきちんと描いていないので、単に嫌な男というだけにしか見えない。せっかく、本物使って撮影しているのに実にもったいない。中途半端に英語とフランス語が混じるのも何なの。フェミニズム映画として最高の材料そろってるのにこんな調理じゃダメでしょ。

ロッキー・ホラー・ショー

2019-10-27 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 1975年/イギリス 監督/ジム・シャーマン

マサラ上映in塚口サンサン劇場

いやあ、楽しかった!歌って踊って見るのは最高だね。スクリーンに紙吹雪の影が舞うのがこんなに美しいとは。そして観客(コスプレーヤーズ)の手慣れたツッコミとダンスが素晴らし過ぎた。タンバリン鳴らしまくってストレスも発散!

映画オタとしては恥ずかしい限りだが本作は応援上映の形でないと見たことにならないのではないかと自宅で見るのをためらい、これまで未見。ようやくこの機会に巡り会えて良かった。

いわゆる、フランケンシュタイン+ドラキュラの古典ホラーのB級味付けなわけですね。ほかにも様々な映画のオマージュがあって楽しい。やはり主演のティム・カリーの豪快なドラアグクイーンっぷりが最大の魅力だね。スーザンサランドンもかわいかった。

レディ・バード

2019-07-08 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/グレタ・ガーウィグ

(Amazon プライム)

ワガママ自己中女子高生が大人の階段を一歩上る青春物語の秀作。大学進学を機に子供を送り出した親なら共感ポイント満載だ。娘への愛を素直に表現できない母の意固地さがリアル。そしてラストで意味を持つタイトルが秀逸。変な邦題にしなくて本当によかった。

主人公のBFをティモシーシャラメが演じるが、ファンとしては出演時間が短いのがやや不満。とはいえ、陰謀説を唱えたり、プロムには興味なかったり、ちょっと斜に構えた感じが面白いキャラ。元カレがゲイであること含め、94分と短い尺で彼らのキャラは掘り下げていない。リストラされて鬱病になった父親も同様。ただ案外、そのサラッと感がこの作品には合っているのかもしれない。