Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ある愛の風景

2009-09-27 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2004年/デンマーク 監督/スサンネ・ビア

「みんな実直過ぎる」


夫としても父親としても完璧なミカエル、美しい妻のサラと可愛い2人の娘。一家は幸福そのものだった。しかし、軍人のミカエルがアフガニスタンへ派兵され、突如もたらされた訃報によってその幸せな暮らしは一変する。悲しみに暮れるサラと娘たちを支えたのは、刑務所帰りで、今までは常にトラブルの種だったミカエルの弟ヤニックだった。ようやく平穏な日々が戻りつつあった矢先、戦死したはずのミカエルが帰還する…。

とても考えさせられる良い作品だと思いますが、私には真面目すぎるという印象の方が大きかったです。

人間というのは、愚かで、弱くて、己の意志とは裏腹に誰かを裏切ったり、傷つけてしまう生き物だと思います。常に兄と比べられはみ出し者となった弟、愛する夫を亡くした哀しみにくれる妻。互いの空洞を埋め合うかのように、両者が惹かれあうのは仕方のないことであり、また極限状況の中で奇跡的に生を勝ち取った夫が精神に異常をきたしてしまうことも仕方のないことでしょう。

しかし、監督はこの物語をあくまでも倫理的に逸脱しない方向で締めくくってしまう。みんながみんな真面目すぎて、敢えて非難を承知で言うならば、面白味に欠ける。心に深く突き刺さらないラストになってしまっているように感じました。何も夫を捨てて、新しい愛に走って欲しいというわけではありません。そもそも、ここで示されている問題提議は深いです。家族のために他者を犠牲にして生き延びるということ。そのテーマに足を突っ込んだのならば、とことん泥沼の中でもがいて、あがいて、這い上がってくる(物語としての)プロセスが必要ではないでしょうか。

ただ、人間の心理を丁寧に描き出そうとする監督の手法は決して嫌いではありません。スクリーンの四隅が暗い、というのは、だからどうなのという感じがしなくもありませんが…。ともかく、新進気鋭の女性監督。他の作品も見てみようかとは思っています。

ツルボ

2009-09-26 | 四季の草花と樹木
薄紫のつくしみたいなかわいらしい花です。
以前投稿した記事を見るに、
これはまるっとした部分がつぼみで下から花が咲いていくんですかねえ…。


やっぱり下から花が咲いていますね。
もっと一面びっしりってな具合に咲いてくれたらいいなあ。


ミスト

2009-09-24 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2007年/アメリカ 監督/フランク・ダラボン
「霧の中の光」

ホラーは苦手なのですが、「一番怖いのが人間」を見せることがホラーの本質であるならば、もっとホラーを見るべきだなあと思わせてくれる作品でした。基地で発生した謎の怪物は狂言廻しにしか過ぎず、よってこれらのゲテモノ生物たちがいかに荒唐無稽であろうが関係ありません。いや、むしろそんなことはどうでもいいと思わせるほど、人間の集団心理と狂気が際立つ。その演出の見事さに圧倒されます。

閉じこめられたスーパーが全面ガラス張りであるということ。この装置の巧さには唸ります。ぼんやりと霧が立ちこめる外界が見えるようで見えないことで、安心と不安を行ったり来たり。私も思わず目を凝らしそうになりました。

集団心理の恐ろしさでは、数々の名作があり、つい先日レビューした「実録 連合赤軍」や「es」など枚挙にいとまがありません。しかし、この「ミスト」ではあくまでも「正義」「人道」をもって戦い抜く一握りの人々がおり、全ての観客は彼らに望みを託します。ラスト近く、彼らが乗り込んだ4WDのヘッドライトが霧を照らすシークエンスが実に印象的です。走り去る車の後、ゆっくりとカメラはガラス越しに彼らを見送る狂気に満ちた人々を映し出す。果たして、それは「見葬る」という言葉がふさわしいのか。霧の中で浮かび上がる光は、希望への階段を照らす唯一無二の明かりとすら見えるのに。それまでの展開から、あのヘッドライトの光に宗教的な意味合いを感じずにはいられませんでした。

スーパーで演説をぶちかまし、あっというまに教祖に祭りあげられてしまう女性。生け贄を差し出せという彼女の詭弁に「だからキリスト教は嫌よ」なんて、思ってしまったものですが、新型インフルエンザがまだ豚インフルエンザと呼ばれていた今年の春先、ある方のエピソードを聞いて浅はかな考えを改めました。話はこうです。ある日地下鉄のベンチに腰掛けていたら、マスクを付けたひとりのオバサンがつかつかと無言でやってきて、彼に携帯の画面を見せたそうです。そこにはこう書かれていたとか。「今流行しているインフルエンザは強毒性に変わり、やがて多くの人が死ぬことになる。伊勢神宮の○○札を買えば、感染することはない」と。私は身震いしてしまいます。宗教の種類なんて関係ないんですね。自分だけ助かればいいという究極のエゴイズム。この醜い感情はウィルス以上に、凄まじい勢いで伝染していくのです。

無情のラストは賛否両論。しかし、不思議と不快感はありませんでした。成り行きだけを見れば、人間なぞ何をしても変えられぬ宿命の元に生きるもの、と虚無的にもなりかねません。それでも、私はこのラストがすんなりと胸に落ちてきます。これも人間、あれも人間。まるで無我の境地に至ったかのような余韻にいつまでも浸り続けたのです。過ぎゆく戦車の行列は、この現実世界においてデヴィッドの選択を生み出さないために我々はどうするべきか、という問題を突き付けているように思えて仕方ありませんでした。

マーサの幸せレシピ

2009-09-23 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2001年/ドイツ 監督/サンドラ・ネッテルベック

「オンナを強調しない展開がすばらしい」

キャサリン・ゼタ・ジョーンズ主演でハリウッドでリメイクされた作品のオリジナルです。

毎度邦題の付け方をとやかく言うのも詮無いことですが、「幸せレシピ」なんてウキウキ加減から、冴えない女シェフが意中の男に出会って料理でオトす話かと思ってましたが、ああカン違い。ウキウキなんてのとは無縁の、地味で実直なドラマなのでした。とても味わい深い余韻に包まれました。秀作だと思います。

私が本作において最も気に入ったのは、マーサの人物描写です。死んだ姉が残したひとり娘、そして性格が真逆の陽気なイタリア男との交流を通じて、少しずつ変わってゆくマーサですが、これ、一歩間違うと「オンナ」に目覚めるという展開になりかねない。日本でこのプロットで映画を作ったら、十中八九「オンナの手料理」で大団円的展開になると思う私は偏見の固まりかしら?(笑)

つまり、マーサ、姪、イタリア男。この三者の交わりをスムーズにするカギとして「マーサの女性性」に頼っていないというところが大変に好感度大なんです。ツンケン女がようやく男をつかまえられたよ、なんてノリは全く見えないんですね。すばらしい。エンディングも彼女のシェフとしての感性をアピールする大変クールなシークエンス。ややもすると、イタリア男と姪に手料理をふるまって、「やっと私にも家庭が手に入ったわ~」的描写になりそうなもんですけどね。

仕事から帰ってひとりで料理するマーサの描写にしても、日本だと「仕事はできても孤独な独身オンナって、ああ可哀想」といういかにもな感想が出そうな演出になりがちでねえ。サンドラという名前から察するにこの監督は女性なんでしょうか。不器用な女性シェフの料理人としてのプライドをとても大事にして描ききっていますね。リメイク版ではその辺りどうなっているのでしょう。やはり、ハリウッドらしくラブストーリー的な盛り上がりはきっちり押さえているんだろうか。見比べてみたくなりました。


クライマーズ・ハイ

2009-09-22 | 日本映画(か行)
★★★☆ 2008年/日本 監督/原田眞人  

「ひとり残らず自分勝手」


ドラマの方が面白いという意見をたくさん聞いていたせいか、そんなにも悪くないというのが率直な印象です。クレーンを使ったカメラワーク、豪華なキャスト陣の使い方など、映画ならではスケール感は随所に感じます。

新聞社面々の行動に倫理観を持ち込みたくなる人のお気持ちもわかります。しかし、現場にいるとこんな風になってしまう、その状況はわからなくもありません。私は出版社勤務の経験があるのですが、締め切りギリギリまで粘って粘って校了を迎えた時の達成感って、ちょっとしたハイ状態。それが味わいたくて、むしろ締め切り間際まで原稿を引っ張っているのかという錯覚に陥ってしまうことすらあります。そんな彼らの心理状態はある程度理解できるのですが、一番引っかかったのは、どいつもこいつも自分のことしか考えてないということです。そして、原作以上にそう見せている演出に疑問を感じます。

右から左へとひっきりなしに動くカメラ、次から次へと飛ぶ罵声、丁々発止の腹の探り合い。画面からMAXの緊張感を出してやろうという魂胆が見え見え。しかし、際立ってくるのは、緊張感なんぞより「オレの主張を通せよ、この野郎」と息巻く人々のエゴイズムだけです。事件の大小に関わらず、日々の新聞もよくこのメンツで発行できているようなあと思わず首を傾げたくなります。作品全体の緩急で言えば、「緩」の部分に相当するのは山崎努演じる社長のシークエンスになるのかも知れません。しかし、これまたエゴイズムの権化みたいなオッサンですから、全編総エゴ祭りみたいになっていて、やりきれません。

人の不幸で大騒ぎしやがって。そう言われるのがメディアに関わる人間の宿命です。ゆえに、その苦悩がいちばん前面に出てこなければ、この現実に起きた事件を映像化する意味がありません。原田監督はスポットの当てどころを間違ったように感じます。悪役ばかりに見える強烈なキャラクターたちの内面をもっと描くべきだったのではないでしょうか。


ドラマ版「クライマーズ・ハイ」の感想はコチラ

ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢

2009-09-17 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2008年/アメリカ 監督/ジェームズ・D・スターン、アダム・デル・デオ

「奇跡的な出会い」


ミュージカル「コーラスライン」の出演者を決めるオーディション風景をカメラが追ったセミ・ドキュメンタリー。最近見た同様の手法の作品「ヤング@ハート」を思い出しました。1本道を突き進む姿がとても感動的。動物モノや子どもモノなんかより、この手の作品の方が何倍も泣けますね。ごまかしがないもの。

ある審査員が言う。「好感度が大事」と。この発言は、ある意味矛盾している。だったら、基本審査の後は、ドアを開けて少しおしゃべりをするだけで決めれば良いと思うもの。でも、言わんとしていることはわかる。長い長い期間をかけて、ライバルとしのぎを削って、様々な要因が相互作用する中だからこそ、キラリと光るものが受験者と審査員の間に生まれれば、これぞ運命と思えるんじゃないだろうか。

オーディションの世界は確かに厳しい。何千人という規模、8ヶ月という期間。こうなりゃ、何が何でも相手を蹴倒して、私がその役を勝ち取るわ!って?いや、私には不思議とそうは見えなかった。他人のことなんて、構ってやいられはしない。要は、決められたその日、その時間に自分のベストのパフォーマンスができるかどうかなんだもん。「8ヶ月前の演技なんて忘れたわ」と嘆く女性の気持ちが痛いほどに伝わる。

何事も、「出会い」なんだなと。もちろん、それぞれの受験者がそれまでに凄まじいほどのトレーニングを積み上げてきた。その努力あってのものだけど。最後の最後は横一線。受験者と審査員、両者の間に不可視な「何か」が生まれるかどうか。役をつかみ取ることそのものが奇跡であり、そんな彼らが生み出す舞台に感動がないわけがない。私はミュージカルが苦手なんだけれども、これは見てみたいなあと心底思わされました。

各エピソードで印象的なシーンは多数あるのだけど、最も私の心に残ったのは、初代コニーを演じた審査員のバイヨーク・リー。沖縄出身の日本人ダンサー高良結香さんの演技終了後、好感触を示す他の審査員に彼女はこう言い放つ。「選ばれるべきは、5歳の頃からこのアメリカで舞台の切符を待つ行列に並んでいる者なのよ!」と。あまりに生々しい本音ではありませんか。だって公平に審査するからオーディション形式なんだもの。もし、そこが肝心なのなら、履歴書の段階でアメリカ在住歴の浅い者は落としてしまえばいい。

また、インド人の母と中国人の父を持つバイヨーク、小さい頃からアメリカ社会で偏見や差別に合ったことは想像に難くない。そんな彼女が高良さんをよそ者として排除するようなセリフを言うなんて。でもきっとこの差別的発言は、海千山千の業界でバイヨークがコニーの役を得るまでに数え切れないほどの苦難を乗り越えてきたことの裏返しなんだろう。そして、最後まで頑なだったバイヨーク(ラストの舞台審査でも彼女は渋面だった)の意向を乗り越えて、この役を得た高良結香さんに盛大な拍手を贈りたい。その後は「RENT」に出演とか。きっと、彼女もバイヨークのようにタフな業界で輝き続けるのだろう。いや、輝いて欲しいと心から思う。

そばの花

2009-09-13 | 四季の草花と樹木
畑一面にびっしり、ですねえ。
風に揺れるように、咲いています。
ここ、我が家の目の前です。

いつのまに、こんなにそば栽培が進んでいたのだろうか(笑)
ってくらい、集落の中にそば畑がたくさん。


春先によく休耕田にアカツメクサ(シロツメクサのピンクバージョン)が
ぎっしり咲いていてとてもきれいなことがあるけど、
また違った趣きがありますねえ。



涼しげで可憐ですね。
青空が見えて、風が吹く。
いちばん、いい季節かも知れません。
まあ、この辺りは秋を味わう暇もなく、
さっさと冬に突入してしまうんですけどねえ…。
貴重なこの時期を仕事も気にせずのんびり楽しみたいけど、
まあ、そういうわけにも行きませんよね。


テネイシャスD 運命のピックをさがせ!

2009-09-10 | 外国映画(た行)
★★★★ 2006年/アメリカ 監督/リアム・リンチ

「猪突ガイ、JBに涙」

ロックつながりで行くと、「スクール・オブ・ロック」の方が断然完成度は高いですね。本作は、そのタイトルでもある「手に入れたらギターの神様が降りてくる運命のピック」を探しにいくお話。本来ならば、そのピックを手に入れるプロセスや入手後がどんどん盛り上がるハズなんですが、ピックを取り戻したい悪魔の出現と言うありえない展開でストーリーとしてはすっかり破綻しちゃうんですよね。

むしろ、この作品は前半がいいんですよ。俺にはロックしかない、俺はロックでビッグになる、って言う主人公JBの強烈な思い込みっぷりには、あきれるを通り越して感嘆。だって、なりふり構わぬ猪突猛進な生き方をしてみたいって、誰しもきっと思ってるんじゃないかなあ。海岸でKGに出会って一方的に「おまえは凄い」って賛美するシーンがあるでしょう?JBのあまりの人の良さとピュアさに笑うどころか、胸がじーんと熱くなったりして。こういう男に巡り会いたいよなあって本気で思っちゃいました。

JB見てると勇気もらうよね。人間、ここまでドアホウでいいんだって。みんないろんな足枷があって、ドアホウになりきれないのをジャック・ブラックが代わりにやってくれてるんだよなあって、思う。行け行け、ジャック・ブラック、どこまでも。



オクラの花

2009-09-09 | 野菜作りと田舎の食
観賞用に購入する人がいるっていうのも納得の美しさです。
本当にゴージャスな花。
咲いたら意外とすぐにしおれちゃう。
なので、撮り逃していることも多いです。



一家でオクラを消費するには、
何本くらい植えるのがいいんでしょうねえ。
オクラって、1日に1個や2個採れたところで調理のしようがないでしょう?
やっぱりある程度の収穫量は欲しいですよね。

今年、我が家で植えたのは2本の苗。
ちょっと物足りないかなあ。来年は3本にしよう。

オクラって、ちょうどいい大きさに育ってから、
あっという間にでかくなる。


でかい方は15㎝くらいあります。
これくらい大きくなると、ゆがいてもちょっと固い(笑)。
こまめなチェックが必要です。


ナイト・ミュージアム2

2009-09-08 | 外国映画(な行)
★★★★ 2009年/アメリカ 監督/ショーン・レヴィ
<TOHOシネマズ二条にて鑑賞>

「ドタバタにサイドストリーを加えて欲しかった」

この夏、息子が一番楽しみにしていた作品。時間が取れず、なかなか映画館に行けないまま、9月に突入。時間の都合上、やむなく吹替版。「20世紀少年」直後のハシゴ鑑賞です。

前作「1」よりも面白さは落ちたという感想が耳に入ってきていたのですけど、私は十分楽しかったです。おそらく、155分という長尺の「20世紀少年」を見てすぐだったので、このコンパクトさとシンプルさが良かったのかも知れません。

前作のキャラクターに新たにスミソニアンの人物が加わって、歴史上のキャラクターがごちゃまぜ状態になってしまうわけですが、引き続きジオラマの小人(写真上)ふたりが大活躍なのがとても面白かった。「わーっ!」と一気呵成した後、引きのショットになって「シーン」としていると言う、アレね。何度見ても笑ってしまう。

前作以上に、有名人カメオ出演的お遊びが多くて、一発ギャグの連打が作品全体を散漫な印象にしてしまっているのは、ちょっともったいない。ダースベーダーとか、いらないんじゃないの?と。

ラリーが取る最終的な選択はとても清々しくて、いかにもハリウッド的おもしろ楽しいエンディングになっています。だから、夜の騒動においても、博物館の外ではラリーの会社が一大事に巻き込まれているとか、「警備員を取るか」「会社を取るか」を盛り上げる伏線が欲しかったですね。

前作は、ダメパパが息子の期待に応えていく、という親子の絆が伏線としてあったでしょう?やっぱり、オレには警備員がイチバン合ってるぜという結論に至るカタルシスがあれば、「1」に迫る面白さが出たんじゃないでしょうか。


ナイト・ミュージアムの感想

20世紀少年<最終章> ぼくらの旗

2009-09-07 | 日本映画(な行)
★★★★ 2009年/日本 監督/堤幸彦
<TOHOシネマズ二条にて鑑賞>

「祭りのあと」


重なりに重なったサブストーリーが破綻なく終結。原作は未読ですが、壮大なお祭り騒ぎをうまく収束した手さばきは、素直に評価してもいいのかな?と言う感じです。それでも、155分は長い。疲れました。

なぜ、<最終章> を見るのかと言えば、その99%が「ともだちが誰かを知りたい」からという理由でしょう。そういう意味で、このラストには納得できました。当たり前と言えば当たり前ですが、これで「えっ?そんな奴がともだちだったわけ?」というエンディングだったら、非難囂々ですよね。試写会では公表されなかった本当のエンディング10分間を含め、ひねりの効いたラストだと思います。

「ともだちのやっていることは、子どもの遊びみたいなもの」というセリフがあちこちで出てくるのですが、これは本作の性質そのものをも意味していて、堤監督は最終章で開き直ったんだろうなという感じです。そうでないと、あれだけいろんな出演者に言わせないでしょう。

花火大会で、最後にドカドカーンと花火が上がりますよね。それを見て観客も終わりだなって言うのがわかる。この最終章もまさにそんな感じです。原作ファンの不満も映画ファンの批評も全て忘れて、一心不乱に堤監督は花火を上げ続けたんでしょう。そんな、やけくそ感が作品のパワーになっていて悪くありません。

万博、オウム真理教、そしてウィルスパニック。時代を象徴する事件をいかにもマンガ的手法でおもしろおかしく展開した本作は、ウッドストックで終了。狂信に打ち勝つのは音楽のチカラ、なんでしょうかねえ。まあ、そんなこと真面目に考えるのも野暮というものかも知れません。

「トヨエツひとりで解決できそうだ」と書いた<第2章>でしたが、<最終章>でもオッチョの活躍ぶりが一番目を引きました。あんなジジイになってもトヨエツならカッコいいのだ。エッヘン。これだけの極限状況、スーダラ歌ってる男より、ロケットランチャーかついでる男の方を私は愛するな。って、やっぱそこに行き着く(笑)。

・第1章の感想
・第2章の感想


チルドレン

2009-09-05 | TVドラマ(日本)
★★★☆ 2006年/日本 監督/源孝志

「強弱のなさゆえの平面的な仕上がり」

WOWOWのオリジナルドラマ。ドラマと割り切れば、まずまずの出来映えと言ったところでしょうね。ただ、昨今の気合いの入った2時間ドラマはえてして映画と同じ土俵で見比べてしまうもので、そうした観点から見るとやや物足りません。

伊坂作品で欠かせない物は、心に刺さる印象的なセリフでしょう。暗示や教訓、人生の道しるべとなるような言葉の数々。それは、非常に詩的です。ゆえにそのセリフを発する時には、どうしてもスカしたような、気取ったようなムードが漂います。誰がどういうシチュエーションでその言葉を言うのかで、作品全体の印象を決定してしまう。本作では、無頼な先輩、陣内を演じる大森南朋にその役割が与えられているのですが、実にさらりと自然にこなして好感が持てます。

そして、伊坂作品のもうひとつの持ち味は、複数エピソードの同時進行。さて、本作はここが問題。主人公武藤の恋バナ、彼が面倒を見ているスリ常習犯の少年、そして先輩陣内との絆。どれが主旋律でどれが副旋律なのかがよくわからない。全てが同等でラストに一気に結びつくようなカタルシスがあるわけでもないし。結局、伏線がたくさんある物語というのは、完全に個々が独立しているか、または軸となる中心人物がいてその周りを各エピソードが絡み合っていくか、そのどちらかでないと全体の印象がぼんやりしてしまいます。これが、どうもどっちつかずという感じなんですよね。

主人公を演じるのが坂口憲二なんですが、正直最初の30分くらいまでは大森南朋が主人公かと思ってたくらいで。融通の利かない堅物調査官、武藤という男をもっと際立たせれば良かった。面白いんだけど、全体的にはのっぺりとした仕上がり。それは、脚本上の強弱のなさが原因のように思います。

プライド

2009-09-04 | 日本映画(は行)
★★★★ 2008年/日本 監督/金子修介

「敢えて正面からぶつかった作品」


岡ひろみとお蝶婦人。北島マヤと姫川亜弓。「地味」VS「派手」の女のバトルは少女漫画の王道。読みつつ、燃える。勝者はどっちだ?この「プライド」の面白さは地味女が純粋で天才型という枠をぶちやぶっていること。地味で貧乏で、性根が悪い。そんな萌を若手有望株の満島ひかりが大熱演。

ふたりのバトルが過熱する終盤よりも、むしろ本作の見どころは始まってすぐのオペラ合戦。この小柄な体でオペラもなかろうに、と思うのですが、その堂々たる成りきりぶりが見事。声はもちろん吹き替えで、それは取り立ててあげつらうことでもないだろうと思う。オペラの歌える女優なんて、そうそういないわけだし。ふたりがオペラ歌手然として見えるその要因は、「振り付け」の妙。黒いドレスに身を包んだ満島ひかりがモーツァルト「魔笛」の「夜の女王のアリア」を歌う際、肩胛骨が激しく上下するむきだしの背中をとらえる一瞬のバックショットがあるのですが、ここは唸りました。彼女の歌の上手さはもちろん、激しさとか、したたかさも表現しているんですよね。また、あの背中を作り出せる満島ひかりも凄いと思います。吹き替えだからこそ出る恥じらいが一切ない。

惜しむらくはステファニーの演技力。彼女がもう少しうまければ、一歩抜きんでた力作になったでしょう。脇役の中では高島礼子の存在が大きい。彼女の演技は堅いですね。全体が落ち着きます。また、先生を演じる由紀さおりにしても、社長を演じるミッチーにしても、与えられたセリフは説明的でくどいものばかりですが、ゆっくりと自然に話すよう演技しています。そうそう、新山千春もしかり。そのことで漫画的チャラチャラした世界観とは一線を画している。本来、こうした成り行きで製作に至った映画は、B級的な立ち位置に自然になってしまいがちです。それはそれで悪いことでは全くなく、B級としての面白さに突っ走ってしまっても一向に構わないのですが、この「プライド」という作品は、あくまでも正統に徹して作られている。そこがとてもいいと思います。



グッド・バッド・ウィアード

2009-09-03 | 外国映画(か行)
★★★★ 2008年/韓国 監督/キム・ジウン
<梅田ブルク7にて鑑賞>

「砂塵に舞う3人の男たち」


エンドレス・ドンパチ。それを、おもしれえ!と思うかドラマがない、と思うかは、人それぞれでしょう。私は、中盤の銃撃戦はややだるいと感じた面もありますが、ラストのゴビ砂漠を駆けめぐる追撃のシークエンス。一体全体、どこまで馬を走らせるんだい!素直に凄いと感動しました。ソン・ガンホは、ボロボロのサイドカーを縦横無尽に乗り回し、イ・ビョンホンとチョン・ウソンは馬で激走。それぞれが、ガッツリスピード感のあるアクションシーンを体当たりで演じていて本当にお見事です。中でも、私が惚れ惚れ見とれてしまったのは、チョン・ウソンが出力最大限の馬上で手綱を放したまま、ライフルの廻し打ちをするシーン。あれは、吹き替えなしですよねえ?めちゃめちゃ、カッコイイ。ちょっと、惚れそうになりました。

人間ドラマとしての中身は確かに薄いですが、3人の存在感の際立ちようがすばらしくて、それで全て良しと思えてしまいます。演技派のソン・ガンホですけど、延々と続く銃撃戦の中でこれだけ身のこなしが巧いというのは、すばらしいですね。イ・ビョンホンのワルっぷりも冴えてます。 彼だけスーツってのが、ちょっと違和感感じましたけど、個々の動作がキマっているので、許します。裸のシーンは意外と一瞬で終了。ちょっと、物足りなかったかなあ。

最後にちょっとしたどんでん返しがあるのですが、 それを含めてもうちょっとスッキリしたラストにして欲しかった。 でも、大きなスクリーンで見るべき映画だと思います。 お馬さんたちにも「お疲れ様!」と言いたい。さぞかし大がかりな撮影隊だったでしょうねえ。何にもない砂漠がスクリーンのずっとずっと奥まで続いている。あの環境でこれだけの撮影を行ったスタッフたちの意気込みもビシバシ伝わってくる。その熱さにやられました。