Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ナミヤ雑貨店の奇蹟

2019-07-02 | 日本映画(な行)
★★★ 2017年/日本 監督/廣木隆一

(WOWOW録画)

林遣都が見たくて鑑賞。彼は美しいお顔をそのまま美しく出すのがお好みではないようで、汚い方汚い方へともっていくのはなんでなの?
1980年の売れないミュージシャン設定とはいえ、ボサボサ頭と無精髭でなければいけない理由があまりわからない。がんばって習得したというハーモニカと歌が聞けたのはよかった。

さて、映画の方だが、登場人物は多いし、時系列はあっちこっち行くし、とっちらかってるなあというのが正直な感想。さまざまな出来事や人と人の縁が次々とつながっていくわけだけど、ピースが合わさったカタルシスがあまり感じられない。各エピソードが繋がってはいるけど、だからどうしたみたいな話になっちゃってるのがもったいない。

凪待ち

2019-06-29 | 日本映画(な行)
★★★★ 2019年/日本 監督/白石和彌

(映画館)

舞台が海辺の町で主人公が犯した取り返しのつかないやらかしとその欠落を擬似家族の絆で取り戻す物語としてマンチェスター・バイ・ザ・シーを想起させる。香取慎吾もケイシーアフレックに負けない熱演ぶりだ。何をやってもうまくいかない。わかっていても悪い方へ悪い方へ流れてしまう。悪いのは全部俺のせいなんだ。大なり小なり人生でそんな経験をした人は郁男の自暴自棄に共感するだろう。脇を固める役者陣もすばらしいがとりわけ持っていくのは吉澤健。白石作品では「牝猫たち」の演技もすばらしかった。

ラストシーン、郁男はあるものを海に沈める。そこから、エンドロールに映し出されるものがあまりに不意打ちで胸を締め付けられた。津波は新しい海を作った。ようやく郁男に訪れた凪を3人で穏やかに航行していくのだろうか。余韻の残るラストシークエンスだ。

ただ、ポスターキャッチにもなっている「誰が殺したのか なぜ殺したのか」については消化不良感が残る。犯人の動機についてはもっと描き込んでも良かったんじゃないだろうか。また、他の白石作品と比べるとエロも暴力もそれほど突き抜けてはいない。郁男と亜弓の夜のシーンはもっと突っ込めなかったか。やはりそこは香取慎吾主演の限界なんだろうか。

寝ても覚めても

2018-10-25 | 日本映画(な行)
★★★☆ 2018年/日本・フランス 監督/濱口竜介

引きつけられるショットは多数あるのだけど、どうもその演出が意図的過ぎてノレず。また(共感できるかどうかという文脈ではなく)終盤の朝子の選択に納得感がなかったことも、モヤモヤの一因。

物語的になんで?ということもあるのだけど、それ以上に朝子という女性があまり伝わってこなかった。裏切った男の元に帰るのは肝が座ってるのか、図々しいのか、彼への愛を再確認したのか、彼女の行動に対する想像の翼が広がらなかった。
東出くんは相変わらずスクリーン映えする存在感を発揮していて良かった。

野良犬

2017-11-10 | 日本映画(な行)
★★★☆ 1949年/日本 監督/黒澤明

(CS)

スリに拳銃奪われること自体間抜けで(それをいっちゃあおしめえか)、最初ノレなかったんだけど、
エネルギッシュな三船と老刑事の志村のコンビの面白さがじわじわ出てくる。
温厚そうな志村が意外と悪い奴を突き放した物言いをするんだけど、
「天国と悪魔」にも通じる黒澤の「悪とは何か」がすでにここで垣間見える。
しかし、三船はイケメンだね。
あと、本多猪四郎が実際に東京を練り歩いて撮影したという闇市のシーンはちょっと長くてだれたなあ。
でも、奪われた拳銃を取り返せるのかというサスペンスは
二度三度と仕掛けが張ってあって面白かった。
あと黒澤は音声聞きにくいので字幕入りで見ている。

二重生活

2017-07-16 | 日本映画(な行)
★★★★ 2016年/日本 監督/岸善幸

(Amazonプライム)

これは掘り出し物。
修士論文で現代人の実存について書くため「無作為に選んだ人間を尾行する」主人公。
人は誰かに見られていることで初めて何者かになるのか。
見る、見られることで浮かび上がる実存の意味とは。
そして、尾行を示唆した教授の意図とは。
現代人の孤独を描く秀作。
またもや、リリーフランキーの演技が光る。

22年目の告白-私が殺人犯です-

2017-06-26 | 日本映画(な行)
★★★★☆ 2017年/日本 監督/入江悠

(映画館)

震災とオウム事件が起きた1995年にこだわり、様々なカメラを駆使してリアリティを追求。
「絶歌」出版などメディアの問題定義がメインかと思いきや、ラストは中東テロまで持ち込む。
もちろん、どんでん返しにも仰天。

とにかく、練られた脚本がすばらしい。
邦画で本格的なミステリー作品を作りたいという入江監督の意気込みをびしびしと感じる。
この手の作品ではツッコミどころがあるものだが、ほとんど隙を見せない。
日本ならではの時効制度を利用しているのも巧み。
さすが37稿まで改訂した脚本だ。
キャストでは伊藤英明がよい。かなり抑えた演技で渋みを出している。

とにかく演出のテンポが良く、最後まで観客を惹き付け続けるすばらしい仕上がりだ。
入江悠監督、ついにメジャーで大成功。めでたい。

にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活

2016-11-01 | 日本映画(な行)
★★★★☆ 1970年/日本 監督/今村昌平

これを見たいために一瞬、チャンネルnecoに加入。あるひとりのバーのマダムをインタビューしながら、戦中戦後の人々の暮らし、世相を浮かび上がらせる。いやあ、面白かった。今村昌平って人は、人を見る目があるんですね。コイツを追っていれば面白いことが起きるという鼻が利くといいますかね。主人公のマダムの人生をなぞるんですが、これがちゃんと庶民の戦後史になっているんですよ。堕ちていく様を含めて。そう転がるか~という風に話が転がっていて、「人間蒸発」にもあるように、それがどこまで本当なのか、やらせなのか、ハラハラします。しかも、ちゃんと戦中戦後の庶民の人生について、考えさせられて。今村にしかできない仕事だと思います。

のぼうの城

2013-10-01 | 日本映画(な行)
★★☆ 2011年/日本 監督/犬童一心 、 樋口真嗣
(WOWOWにて鑑賞)

「設定もセリフもよくわからずモヤモヤ」

評価が真っ二つのようですが。私はあまり面白くありませんでした。
まず、各武将の関係性がわからない。(そこ!笑)
ということに加えて、セリフが聞き取りづらい。
だから、何がどう動いているのか、わからない。
ラストカットでそれぞれの武将がどういう末路をたどったか、ナレーションされるのですが、
そこでようやく腑に落ちる始末。
主人公のでくのぼうは隠れ蓑で本当は策士だったのか、
それともやっぱりただのバカだったのかが不明瞭。
舟の上の舞踊は一世一代の博打であるのに、構成上の盛り上がりにも欠ける。
監督の演出にも疑問を感じました。
てか、犬童一心と樋口真嗣が監督って、業務を分担したのかなあ。
作風からして相容れない2人のようにも思うのだけど。

日本の悲劇

2013-09-25 | 日本映画(な行)
★★★★ 2013年/日本 監督/小林政広
(映画館にて鑑賞)

「希望のない国」


いつもはクドい仲代達矢の演技ですが
こちらでは希望を失った老人の哀しみを切々に演じておりました。
固定カメラが延々と食卓を映し続け、仲代の背中を撮り続けます。
ほぼ全編モノクロ映画で、しかもモノクロのトーンがくすんでいるんですね。
もちろん、そのくすみは監督の意図だろうと思うのですが、
いかんせん第七芸術劇場のハコがまっ暗闇ではなく、微妙に明るい。
ので、スクリーンがぼやけた感じに見えて、残念でした。
淡々としているので睡魔にも襲われること数度。
それでも、鬱病で仕事も家庭も失った息子と妻に先立たれ自分も余命幾ばくもない父。
ふたりの家庭の有りようがあまりにもリアルで、本当に身につまされました。

唯一カラーになるのが、息子が結婚してから孫を連れて帰る一連のシークエンス。
孫の誕生を頂点に下り坂を転げ落ちる。老年期ってそういうものなんでしょうか。
頭をうなだれるばかりです。

人間蒸発

2012-01-09 | 日本映画(な行)
★★★★★ 1967年/日本 監督/今村昌平

「唯一無二の世界」

今村作品が好きだ。
ねっとりと蠢く人間模様。反して、鮮烈なカットが屹立する映像。
本作は、ドキュメンタリーなんだけども、凄い。凄すぎる。
ドキュメンタリーって何だ?創作との境界はどこにあるのだ?
今、こんなの撮れないよね。プライバシーも何もあったもんじゃない。
見終わってからいろんな思いが交錯して、頭の中がぐちゃぐちゃ。

物語は当初行方不明になった婚約者を探す早川佳江という女性を
追いかけるドキュメンタリーとしてスタートする。
するんだけれども、事態はとんでもない方向に進んでいく。
行方不明になった男性を追いかけるはずが、
早川佳江という女性自身の心の闇がだんだん浮き彫りになってくる。
姉との確執、そして婚約者は姉と通じていたのではないかという疑い。

そして、レポーターに扮する露口茂に対して、
なんとその女性が恋心を抱き始める。
その揺れるさまをカメラは如実にとらえはじめる。

「この被写体は面白い」今村監督が思い始めたのは果たして撮影期間中であったのか。
それとも、当初からこうした狙いをもって取り始めているのか。

和室のひと部屋で心の内を切々に訴える早川佳江。
ところが、監督のひと声で、彼女の周りの壁があっという間に取り払われる。
カメラがどんどん引いてゆくとなんとそこはセットだった。

撮影されるという立ち位置が決まったら、
撮られし者は誰もが女優になってしまうのか。
カメラを構える。そう決まった時から撮影者は貪欲に対象者をえぐる運命なのか。

嘘と真の境界が果てしなく曖昧になっていく。
今村監督にしか描けない世界に圧倒される。


西の魔女が死んだ

2011-04-26 | 日本映画(な行)
★★★★ 2008年/日本 監督/長崎俊一

「少女と穢れ」

自分自身が田舎暮らしをしていることもあって、ロハスな暮らしで癒されま~すってノリは受け入れがたいものがあるんだよね。で、この作品もその手の映画のひとつかと思ってて敬遠してたんだけど、大森クンが出ているので鑑賞。

原作はもっと奥深いものがあるのかもしんないんだけど、木村祐二演じるがさつなオッサンの存在に尽きるよね。これがなければ、ホントどってことない癒し映画だったわけで。自分なりの暮らし方に土足で入り込んでくるような人ってのは、どこにいてもいるんだ。少女にとっての祖母及びこの家は聖域なんだけど、あのオジサンはその聖域を侵す穢れた存在。ほんとは、そことどう折り合いを付けるのかってところをもっと踏み込んで欲しかった。私は彼は実は祖母の暮らしを影で支える重要な役目を負っていて、少女は祖母の死後そのことを知るってな展開になるかと思ったんだけどなあ。

というのもね、薪を運んでいるシーンがあったんだ。薪を薪棚に運ぶ作業も管理する作業もとっても重労働なんだよ。しかも、4分割の細めの薪、あれは斧で細かく割らないとできない。老女が薪割りするの?いやいやそれをやってるのが木村祐二だ、わたしは踏んでたんだけどね。

小さな庭も畑もやっているので、あのワイルドベリーの収穫は笑った。ワイルドベリーってね、うちの庭でもできるけど直径1センチも満たない実なの。それをバケツ3杯分どっさり!そんな量ありえないし、1日で収穫できないし!とか。まあ、ガーデンに関しては突っ込みまくりだったなあ。こんな暮らしステキ!と思っている方には申し訳ないんだけど。で、それもこれも、魔女の魔法ってオチ?と思ってエンディングを予想したんだけど、違ってた。

とまあ、もろもろ消化不良な部分もあるけど、総じて楽しめたのは、サチ・パーカーの魅力かな。物静かで優しくて。どこか達観したようなところはあるんだけど、それも人間的な魅力に繋がっている。子役の女の子も至ってフツーな感じなのが良かったよね。少女のひと夏の体験物語としては、そのほろ苦さが際立っていて良かったと思う。

のだめカンタービレ 最終楽章 後編

2011-04-05 | 日本映画(な行)
★★★★ 2010年/日本 監督/武内英樹、川村泰祐
「さよなら、のだめちゃん」

前編より楽しめました。それは、のだめがピアノを弾くシーンが多かったからです。何度も言うように、私がこのドラマを好きだったのは上野樹里の演技に魅了されていたからで、とりわけ彼女がピアノを弾くシーンが好きなのです。ピアノの前に立つと、普段のバカっぷりから豹変し、天才の資質とこれでもかと見せつけるのだめ。そのギャップがいいのです。

映画の公開に合わせるかのように原作が終了。その肩透かしなエンディングから察するに、きっとフジテレビは原作とは違う別のエンディングを用意し、その違いを確認させるために観客動員を狙うものと踏んでいました。しかし、蓋を開ければ同じ結末。これはこれで物足りない感じもします。のだめは本当に演奏家として生きていく決心をしたのか、千秋と奏でたあの二重奏では動機付けとしてとても弱いですよね。もうちょっと、ひねりの効いたエンディングにならなかったものか…まあ、ストーリーをとやかく言ってもしょうがありません。

さて、「樹里のだめ」とは、これにておさらば。何だかちょっと寂しい気もします。しかし、上野樹里自身にとっては、のだめのイメージを引きずらないことが俳優としての将来を左右するんでしょう。織田優二がいつまでも青島刑事に引っ張られてしまったことを反面教師にしないとね。とはいえ、大河ドラマはどう見ても「のだめ江」に見えてしまうのですが。

ノルウェイの森

2010-12-18 | 日本映画(な行)
★★★★ 2010年/日本 監督/トライ・アン・ユン
<TOHOシネマズ梅田にて観賞>

「月も太陽も輝かない」


同じクヨクヨ男が主人公でも、太宰は大好きなのに、春樹は受け付けない。
なぜだろうとずっと思っていたけど、最近ある結論に達した。
太宰作品のダメ男は自分みたいな男は吐いて捨てるべきだととことん自虐的なのに対して、
春樹作品のダメ男はこんな自分にも何かできることがあると思っているところだ。
そして、太宰作品のダメ男のそうした確信犯的な部分に対しては、
女性よりもはるかに男性の方が嫌悪感を感じるらしい。
私なんて、「俺なんて駄目」と頭を抱えながら、
本当は見えないところで舌を出しているかも知れない、
そんな男を愛おしいと感じてしまう困った性分なんである。
一方、春樹作品の「こんなボクでもなんとかできるはず」という懸命さに対して
男性たちは、身に詰まらされてエールを送りたくなるんであろうか。
私にいわせりゃ、それって傲慢じゃない?身の程知らずっていうか。
あっ、ちょっと言い過ぎましたね。

さて、そんなこんなで「ノルウェイの森」。
原作は2度ほど読んでますけど、やっぱりワタナベのうじうじっぷりが
鬱陶しくてあまり好きではないです。
じゃあ、なんで見に行ったのか…というと、松ケンのラブシーンがみた~い、
というかなり不純な動機です、はい。
あんまり評判もよろしくなかったので期待せずに行きましたけど、 そこそこ面白かったです。
気に入ったのはファッションの作り込み方。
私は60~70年代のファッションが好きなのですけど、
すごくオシャレに再現されてましたね。
エンドロールをじっと見ていたら、突撃洋服店とか下北沢の有名な古着店が出てました。

松ケンを美しく撮ろうというカメラの明確な意図が見て取れ、
それはある程度成功していたと思うのですが、直子を演じる菊地凜子がねえ。。。
申し訳ないけど、ベッドシーンでアップになっても美しくない。
エキセントリックな女性を演じるにあたって、
しゃべり方や動作などはずいぶん役作りしていたんですが、裸になるとダメです。
直子が別の女優だったら、私はもっと楽しめたように感じます。
緑を演じていた女優(モデルさんらしいですね)は、
トライ・アン・ユン監督がいかにも好きそうな感じ。
ちょっとベトナム人にも見えなくもないアジアンビューティー。
映画初出演としてはがんばっていたと思いますけど、
直子の影からワタナベを引きずりだすほどの引力を放っていたかというと難しい。

緑と直子は太陽と月の関係なんですけど、
そのコントラストが映画ではあまり感じられず残念でした。
原作では対称的な女性に挟まれて悩むワタナベですが、
あれだと両天秤にかけてるだけのいいかげん男ですよね。
原作そのまま?とも覚えるセリフが随所にあって、
非常に文学的なテイストにあふれていまして、人によっては
それが受け付けられないかも。私はそういうところが好きでした。
そして、ずいぶんセックスが作品全体の主題テーマとして押し出されているんですよね。
原作ではそこまでではなかったと思うのですけど、
いざ映像化するとそれがぐんと前に出てくるってのは、ちょっと興味深かった。

脇役で細野晴臣と高橋幸宏が出てくるんですけど、
だったら大学教授役を糸井重里じゃなく、“教授(坂本さん)”にやらせれば良かったのに、
と思うYMOファンでした。
あと、玉山鉄二ね。めっちゃかっこよかったー。
整髪料でぴたっと撫でつけた古くさいヘアスタイルなのに、オ・ト・コ・マ・エ。
彼だけ見ていると、ウォン・カーウァイ作品のようにも感じられて。
アジア映画にどんどん進出して欲しいですね。
トニー・レオンと共演して「ブエノスアイレス」の続編なんてぴったり来そうです。



ノン子36歳 (家事手伝い)

2010-09-24 | 日本映画(な行)
★★★☆ 2008年/日本 監督/熊切和嘉

「いけすかない女」

私の好物である「ちっぽけな人間がいじいじしている」系の作品なんですが、これはどうもピンと来なかったです。期待値上げすぎたかな(笑)。

坂井真紀演じる主人公ノン子は、東京で芸能人になるもパッとせず、マネージャーと結婚するも離婚して出戻ってきた36歳。まあ、ダメ女のお話ですな。今は全くやる気のない人生でのらりくらりと生きている。坂井真紀の見ているこっちがムカツクようなテキトーぶり全開の演技は、なかなかよいです。彼女は「赤い文化住宅の初子」でも、ものすごくいい加減な女教師を演じており、ちょっと似ています。夜の商店街で店先に出たゴミ箱を自転車に乗りながら蹴り倒していくシーンはすごくいいですね。自転車を左右にぐりんぐりんさせながら、ダーン!ダーン!と蹴り上げてゴミ箱の中身が次々とまき散らされるんですよ。嫌でしょう?こんな女(笑)。

ベッドシーンは全然キレイじゃない、ってのがいいです。もぞもぞしてるのがとてもリアル。ああ、やっぱり寝ちゃうのかあーって、情けなさが出てます。

芸能人をやっていたというノン子ですけど、話が進むに連れ、水着ギャル程度のお仕事だというのがわかります。で、マネージャーでもあった元夫にもうひと花咲かそうと言い寄られる。まあ、アホですよね。嘘に決まってますよね。一蹴するのかと思ったら、前向きに考え始めるノン子。おいおい。なんでやねん。で、ノン子に好意をよせる若い男はひよこ売りからスタートして世界を目指すという…。まったくみんなイタいよ!イタ過ぎるよ!

そんな3人のダメ人間を熊切監督は淡々と描いています。それはそれでいいのですけど、どうも最後まで乗り切れなかったのは、マサルを演じる星野源にあまり魅力を感じなかったから。坂井真紀と鶴見真悟がハマリ過ぎてたせいなのなあ。なんでひよこ?なぜ、世界を目指す?というワケわからなさの妙が味わいとしてにじみ出してこないんですよねえ。残念ながら。大人しそうに見えた彼が最後に暴れまくるんですけど、それもなぜそこでキレる?ってのが、おかしみになるはずなんですけど、どうもイマイチ…。柄本佑くんあたりだったら、ハマり役だったんじゃないかなあと思ったりして。

のんちゃんのり弁

2010-05-13 | 日本映画(な行)
★★★★ 2009年/日本 監督/緒方明

「はい、次行ってみよー」


<下町育ちの永井小巻は、ある日ダメ亭主に愛想を尽かして娘・のんを連れて実家へ戻る。新しい仕事を探そうとするが、ままならない日々。そんなある時、娘に作っていたのり弁がなぜか周りの注目を集めることに…>

赤ん坊にお乳やりながらキーボード叩き、泣きわめく息子を置いて取材に出かけていた身からすると、ざけんじゃねえよ、自立ってそんなにゃ甘くねーぜって感想になるかと言うと、案外そうでもないんですよ、ハイ。

とても清々しかったです、この作品。ダメな男はさっさと見切りをつけりゃあいいんです。後のこと、考えなきゃ?確かにそうかも知れないけど、そうやって、何もできないワタシ像に縛られる必要もないんじゃないかなあって。「ダメだこりゃ。ちゃんちゃん。ハイ、次行ってみよー!」でいいと私は思う。そのノー天気さを世間が認めてくれたら、DV夫から離れられない妻ももう少し減ったりしないだろうか。

ノー天気主婦を演じる小西真奈美の弾けっぷりが気持ちがいい。猪突猛進して大ゲンカ。今までの清楚な役どころとは違った面が見れてなかなか良いです。お気楽主婦に渇を入れて、ピリッと引き締めるのが岸辺一徳。岡田くんはだめんず演じるのが巧いよなあ。

子どもの頃は我が家ものり弁ばっかで、カラフルな友だちのお弁当を覗いては隠すように食べてたっけ。のり弁=手抜きの概念を覆す前半だっただけに、弁当屋は最後までのり弁で突っ走って欲しかったです。