Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ダンケルク

2017-12-31 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン

(レンタル)

もともと時系列をいじるのが得意なノーラン。
そのテクニックが複雑な構成を呈してしまうことが多いのだが、
今作は実にシンプルな形で最後のカタルシスへと突き進むのがいい。
そして、本作はNetflixなどに押される映画の在り方として新たな視点を与えてくれている。
ドラマのアドバンテージは人物や物語を「時間をかけてじっくりと描ける」という点だ。
今後映画は2時間という尺、時間の使い方にもっと向き合うべきかも。
長丁場のドラマに比べりゃたったの2時間。
いかにそこで語り尽くすか、魂を込められるか。
ダンケルクを見てそんなことを思わされた。
Mライランスの渋い演技が印象的だった。

ザ・コンサルタント

2017-12-30 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/ギャビン・オコナー

(レンタル)

自閉症で会計士で暗殺者という独創的な設定は面白い。
思いつきのようなアイデアがちゃんと映像的にも物語的にも
きちんと練られてそこそこのエンタメになっているのはすばらしいと思う。
しかし、この個性が私のツボにはまったかというとイマイチなのであった…
謎のスネゴリゴリなど、面白いシーンを一体どう咀嚼すればいいのやら。
どんなスタンスで見りゃいいいんだ?
というむずかゆさをなくすまでに時間がかかり過ぎてしまったわ。

極道の妻たち

2017-12-29 | 日本映画(か行)
★★☆ 1986年/日本 監督/五社英雄

(Amazonプライム)

春日太一氏の著書「鬼才 五社英雄の生涯」を買ったので、久しぶりに再観賞。
岩下姐さんの艶やかさはすばらしい。
がしかし。無理矢理犯されたヤクザを好きになるという設定はどうしても受け入れがたい。
もちろん、この当時だからできた脚本というのは承知だが。
レイプされて無理やりヤクザの情婦となり、そのうち心からその男を愛しているというね。
そりゃねーよ。とこうなりますわな。
昔はこれほどのやり切れなさを感じなかったなあ。
当時は女性たちに爆発的にウケたからこそのシリーズ化だったわけで、非常に考えさせられます。
岩下姐さんと成田三樹夫のシーンは最高。

飢餓海峡

2017-12-27 | 日本映画(か行)
★★★★ 1965年/日本 監督/内田吐夢

(Amazonプライム)

戦後の貧しさゆえの悲劇だが、犯人三国連太郎にあまり感情移入できず。
むしろ、中盤を盛り上げる左幸子がすばらしい。
金を恵んでくれた三国を私の神様と呼び、切った爪を持ち歩くその純真さ。
真面目に生きたくともやはり身を売るしかなく、その最期が哀しい。
黒澤もそうだが、この時代は貧しさと犯罪がテーマになってるものが多く
豊かな時代に生きる私たちには共感は難しくとも、できる限りその時代の背負うものに思いを馳せようと努力せざるを得なく。
そうした工程を映画を通じて行うことはとても大切ではないかと思うのだった。

犯行シーンなどに使われる白黒が反転した映像が効果的。
フィルムが良好な状態ならもっと効果的に見えるのに。
昔のモノクロ作品は小津に限らず、どんどんデジタル修復してほしい。

スカーフェイス

2017-12-26 | 外国映画(さ行)
★★★ 1984年/アメリカ 監督/ブライアン・デ・パルマ

(Amazonプライム)

デパルマ好きではあるが、映時間の長さから避けてた一本。
品性もクソもないただのバカというパチーノのチンピラっぷりは面白いんだけど、
さすがに2時間50分は長かった。
そんな無茶苦茶してたら、そりゃ破滅するよね。
まあ、そのジェットコースターな荒くれぶりを楽しむ1本と言えましょう。
成金マフィアが建てる豪邸はどれも建築的な面白さ。
透明エレベーター、ギリシャ彫刻、金ピカの置物などがかなり笑える。

ビジランテ

2017-12-25 | 日本映画(は行)
★★★★ 2017年/日本 監督/入江悠

(映画館)

暴力で君臨する父親に抑圧された3兄弟の相克を描くノワール作品。
地方の閉塞感や外国人労働者問題など、様々な問題が絡み合う非常にヘビイな一本。
大変自分好みなテーマなのだが、練りが足りない印象。
俳優陣はみな熱演で挑戦魂が伝わってくるだけにいろいろともったいない。
寒々しい地方都市をロングでとらえるショットなんて、本来大好物。
でも、一郎の愛人の存在は必要なのかとか、薬物ルートを断てばすぐに財産放棄してくれるやろとか、
脚本上いろいろツッコミどころがあり、のめり込めず。
リアルに刺さるネタや振り切った表現も多いのに、本当にもったいない。
銃撃シーンは北野映画の影響を感じた。
日本でバイオレンス映画を作るとき北野作品は避けて通れないはずで
暗い日本家屋やガソリンスタンドで明滅する光を見るにこの乾いたタイトさは本当に映画的だなあと高揚感を感じた。
もっと若手監督は臆することなく北野を真似すればいいと思う。かっこつけずにさ。

はじまりへの旅

2017-12-22 | 外国映画(は行)
★★★ 2017年/アメリカ 監督/マット・ロス

(レンタル)

森の中で父親から徹底した隔離英才教育を受ける子供たちと世間とのズレ、ここのみに絞ればもっと面白くなったのに。
この問題と母親の葬儀問題とがうまく絡み合ってない。
最終的に子供たちがなぜそっちを選んだのかという根拠も乏しい。そして、●をトイレに流すのは違和感。
また、いくら子供たちに資本主義の悪を説き、平等を教えても、押し付け教育ではファシズムと同じという矛盾がある。
ここも突っ込めば面白いポイントなんだけどなあ。
コメディ色を強くしても良かったと思うし、いろいろもったいない作品。
しかし、これもなんだかなぁな邦題である。原題は「Captain Fantastic」 。

昼顔

2017-12-20 | 日本映画(は行)
★★★★ 2017年/日本 監督/西谷弘

(レンタル)

評論家筋から絶賛されていたのも納得。
静かな日常の虚無と狂おしく男を欲する女の内面を捉える演出とカメラがすばらしい。
不倫は人を不幸にするという批判も痛烈に与えつつ、
やはり恋をする女の美しさも存分に見せてくれる。
斉藤工は上戸彩と伊藤歩に死ぬほど愛される男というおいしい役どころながら、完全に影の役割。
カメラは、喪服に生足など上戸彩の色気を引き出すことのみに専念しており、その割り切りぶりがいい。
脇役は黒沢あすかが非常に印象的。この役者の配置も絶妙。
脚本も異様にリアルな所と余白のある所の緩急がいい。
同題のブニュエル作品を貶めることなく、映画的なものに徹した濃厚な昼メロとなった良作。

フェンス

2017-12-19 | 外国映画(は行)
★★★★ 2016年/アメリカ 監督/デンゼル・ワシントン

(Amazonプライム)

家族の生き様全てを支配する毒父。
自分は正しいと思ってる輩がいちばんやっかいって奴。
なれど、彼には彼なりの苦労した生い立ちがある。

見応えのある人間ドラマでした。
ただし、舞台劇のようで場面転換が少なくダイナミズムにかける。
そして140分と尺が長いのが欠点。
妻役のVデイビス(アカデミー助演女優賞受賞)は耐える女でわかりやすいキャラクターなのに対して、
Dワシントンは感情移入のしづらい複雑なキャラクター。
その損な役回りに徹しているのはとてもいいと思った。

ムーンライト

2017-12-18 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/バリー・ジェンキンス

(レンタル)

これほど抑制の効いた作品とは思わなかった。
主人公のセリフも極端に少ないが、だからこそ彼の痛みが伝わってくる。
また、カラーコーディネートが徹底されており、月に光る黒人の肌がとても美しかった。
説明セリフを徹底的に排除しているのに心に染みるのがすばらしい。
ラストの「俺が触れられたのは1度だけだ」というセリフの哀しさにもしびれた。
エンタメ要素がほとんどなく、いかにもインディーズなテイストでアカデミー作品賞は異例とも言えるかもしれない。
あと、これだけの出演時間でオスカー獲ったMアリはちょっとずるい。

酔いどれ天使

2017-12-18 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 1948年/日本 監督/黒澤明

(CS)

結核になったヤクザを三船敏郎。腕はあるがアル中の医者を志村喬。
「生きたい」と「助けたい」、それぞれの思いがすれ違う結末が切ない。
作中何度もインサートされる黒い泡を吹く泥池。
それは誰もがまだまだそこから這い上がれない泥沼の戦後社会を表しているのか。
肺病を患いながらも意気がって彷徨う男の物語だが、
エンタメとして飽きさせない映像になっているのがすごいと思う。
そして、これは両者ツンデレというBL作品ではないのか。

それにしても三船があんまりカッコ良くて見とれてしまう。
黒澤映画に初めて出た三船、この色気じゃそりゃ一躍スターになるよね。

素晴らしき日曜日

2017-12-17 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1947年/日本 監督/黒澤明

(CS)

貧しいカップルが日曜を過ごす、ただそれだけの話。
これが黒澤なの?というミニマルさだが、それで1本のエンタメとして成立させているのは凄いことじゃないのか。
しかもラストはハウスオブカードのごとく、観客への呼びかけをして「第四の壁」を破る大胆さ。
無料展示場で夫婦ごっこをする、ダフ屋に殴られるなど、デート中に次々と起きるエピソードに泣ける。
それでも「前を向いて生きるしかない」というメッセージが強く表われているのが黒澤らしい。
金がないとグズグズ言う雄三を常に元気づける昌子。
観客はもちろん、黒澤が戦後の自分自身を鼓舞する作品のようにも思う。

エリートスクワッド

2017-12-14 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2007年/ブラジル 監督/ジョゼ・パジーリャ

(Netflix)

警察のエリート特殊部隊BOPEとギャングの抗争を描く完全ノーマークのブラジル映画。2007年ベルリン金熊賞。
血反吐を吐く厳しい訓練、仲間の裏切り、拷問。と、暴力描写の連続。
緊張感が凄くて見応えあるが、息できなくて疲れた…。
俳優たちはみんな本物かと思うくらい迫真の演技でした。
メキシコ麻薬映画なんかと同じですけど、南米怖くて行けねえです。

幸せをつかむ歌

2017-12-13 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/ジョナサン・デミ

(WOWOW)

家庭を捨てロックミュージシャンとして生きる女の哀しい、けれども骨太な生き様をメリルが好演。
ギターも歌もすばらしい。
のだが、母を恨む娘との関係が修復されるのが性急、かつ予定調和的なのが凄く気になった。
ジョナサンデミの遺作で気合いを入れて見たのが良くなかったか。
なかなか世間的には評価が高いようなのだが、ふつうの良作という印象しか抱けず残念。
また、違う機会に見たらもっと感動できるのかも。
主人公リッキーの恋人がリック・スプリングフィールド!これはナイスな配役でした。

ある過去の行方

2017-12-12 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2014年/フランス・イタリア 監督/アスガー・ファルハディ

(WOWOW)

なんとも重苦しい人間ドラマである。
物語を牽引するのは不倫相手の妻の自殺未遂の理由だが、
背景がほとんど描かれないので複雑な人間関係を咀嚼するので冒頭から頭をフル回転して疲れた。
心理ミステリーとして大変に緻密で人間の心の奥深いところをぐいぐい刺してくるのはさすがだが、
主人公女性の我の強さっぷりにちょっと辟易。