Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国

2013-05-20 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2009年/日本 監督/ 大森立嗣
(DVDにて鑑賞)


「陽の当たらない若者たち」

工事現場でひたすら壁を壊す“はつり”と呼ばれる仕事をしているケンタとジュン。
低賃金で粉塵にまみれた劣悪な労働環境。
そして職場の先輩・裕也からは、日々理不尽ないじめを受けている。
そんな2人が出会う女、カヨちゃん。愛して欲しくて誰とでも寝てしまう。
ワキガだ臭い、バカだと男から罵られる女。
そんなどうしようもない状況にいる若者3人が、あることを境に逃避行の旅に出る物語。

「ゲルマニウム」もそうなんだけど、大森立嗣監督は映画の使命みたいなものを感じて映画を撮ってるのかなあと思ったりする。

ケンタ、ジュン、カヨちゃんのような社会の底辺にいる人たちを描くということ。
本作で脚本も彼自身が担当しているということを考えると
こうした人たちを描かなければならないという使命感を持って作ってるんじゃないか、そんな気がするのです。

すべてをぶち壊してしまいたい衝動。ぶち壊すことでしか前に進めない環境。
何もかもがどん詰まりで未来を選べない人生を生きるしかない辛さ。
そういうものがひしひしと伝わってきて、本当に胸が痛くなります。
だからって、私が社会を変えられるわけでも何でもないんです。それは、わかってる。
でも、こうした映画からほんの僅かでも彼らの痛みを引き受けることで、少しずつ何かが変わるのかも知れない。

大森立嗣監督って、父親や弟ばっかりクローズアップされるんだけど、
意外と腰の据わった大物かもな、と思います。

主演の3人の若手がいいね。高良健吾って、とってもイケメンなのにこういう暗い役がホント似合うね。
映画界でないと生き残れないや。
松田翔太は映画雑誌のインタビューで、本作が分岐点になってるみたいなことを言っていて、
よほど心に残る現場だったんだろうと思う。

ポテチ

2013-05-19 | 日本映画(は行)
★★★ 2012年/日本 監督/中村義洋
(WOWOWにて鑑賞)


「踏み込まないかっこ悪さ」

68分という短さだから見やすいがしかし物足りない。
という前にこれ、単に尺が短いから物足りないのか?という根本的な疑問がわき起こる。
中村監督が伊坂作品を撮る時のいつものスカした感じの作品。
すっごく真面目な話を敢えてサラッと描きましたよ、でもそこに人生の深淵が見えるだろ?
と言われても、もっと突っ込まんかい!と思ってしまう私。

どうなんでしょ、これが今風ってことなのか。

アメリカ映画だと、たぶんジェイソン・ライトマンなんかもそういう作風だと思うんだけど、
(人生の奥深さをライトタッチで描くみたいなさ)
彼の作品に比べるとずいぶん浅く感じるよね。

もしかしたら、自分と母親は血が繋がってないかも、
というアイデンティティー・クライシスにまつわるストーリー。
主人公と周辺人物の綾を描くことに力を入れすぎていて、
(もちろん作風としては力を抜いているようにがんばって見せている)
根っこの部分には怖くて触れないという感じが否めないんだよね。
うまく描けないから避けてるみたいな。
いつまで、中村監督はこの調子で行くのかな。
そろそろ、すかしはやめて、腹くくって大事なところに切り込まないといけないんじゃないかな。