Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

BLUEブルー

2021-09-24 | 日本映画(は行)
★★★☆  2021年/日本 監督/吉田恵輔

吉田恵輔なので、誰がいつダークサイドに落ちるのかと見てたら予想外の王道。タッパのでかい松山ケンイチと東出昌大、両名並ぶと映画が映える。そしてダークホース柄本時生。ずっと負けでもいいじゃないか。本当の強さとは何だ?好きと才能について描く秀作。

不気味なものの肌に触れる

2021-07-02 | 日本映画(は行)
★★★☆ 2013年/日本 監督/濱口竜介

異世界から来たような染谷将太の存在感がすばらしい。川の底、古代魚、触れそうで触れないダンス。心の奥底に秘めた触れたい欲望は打ち上げられた魚が草むらで跳ねているようだ。エロティックな佇まいや湿度を感じる映像が唯一無二。

his

2021-06-18 | 日本映画(は行)
★★★★ 2020年/日本 監督/今泉力哉

ゲイの恋人を通じて描く、子育てとは?家庭とは?という普遍的な物語。田舎だからこそ偏見もあるし、そう上手くはいかないだろうと思うが、それでも希望を持ちたいという前向きな展開が心地いい。女だって子育てはうまくいかないことにもスポットを当てる、その公平な視点も好きだ。

「his」というタイトルに惹かれる。彼の子供、彼の元妻、彼の悲しみ、彼の喜び…。それらを共有することから始めようという意味だろうか。いろいろと想像して楽しんでしまう。子役の女の子の素直な演技が良かった。子供の素直な言葉に大人はいつもハッとさせられるもんだよね。

半世界

2021-02-26 | 日本映画(は行)
★★★★ 2019年/日本 監督/阪本順治

田舎の片隅で炭作りをして暮らす男、世界の果ての紛争地で辛い体験をした男。与えられた場所でもがいて、つまづいて、それでも人は生きるしかない。田舎の閉塞さに止まらず、緩やかに世界は繋がっていることを示してくれる。欠点だらけの3人の中年男たちが愛おしい。秀作。

ひとよ

2019-11-27 | 日本映画(は行)
★★★★ 2019年/日本 監督/白石和彌

キャスト全員演技巧者で見ごたえたっぷり。隙がなさ過ぎるのが欠点とも言いたいくらい。個人的には自分至上最高に美しい佐藤健(しかもやさぐれてるのが最高)。それだけでも大満足。不満点と言えば家族とその内側だけの話に終始しており、家族と社会の接点が見えないところ。

主要キャスト以外の佐々木蔵之介、MEGUMI(しゃべり方変えてるよね)、音尾琢真、筒井真理子、韓英恵、浅利陽介(あの変な髪型が最高)。全員完璧。それから牝猫たちでとろサーモン村田を抜擢したように、千鳥の大悟も実に自然に嘘のない演技で魅了する。白石監督は芸人俳優の発掘眼がピカイチ。

それにしてもみなさん白石作品への期待値が高すぎる気がする。いや、わかりますよ、毎回映画料金払った分だけの充実感与えてくれるもの。しかもバイオレンス中心で年に何本も商業映画の公開作あるのすごいし。取り急ぎ見ても間違いなしはもはや白石和彌かイーストウッドでしょ。言い過ぎ?



武士の献立

2019-01-15 | 日本映画(は行)
★★★ 2013年/日本 監督/朝原雄三

(Amazonプライム)

包丁侍なのに料理には興味ない夫、その陰で支える妻は料理の腕も確かで舌も一級品。この夫婦関係を現代の観客に向けてアレンジしたら、もっと面白くなりそうなんだけどね、夫を立てることに終始するのは時代劇だから仕方がないのではなく、この物語を今届ける意味を持たせても良かったんじゃないのかと思ってしまう。何も妻が包丁侍の代わりに大活躍しろ!と言っているわけではないんだけど、才能はあれど社会的には評価されない女性を描くという点において、もう少し作り手の提案があってもいい。面白いテーマなのにもったいないなあ。上戸彩の料理シーンは非常にていねいに撮られていて、そこは良かった。

パンク侍、斬られて候

2018-07-22 | 日本映画(は行)
★★☆ 2018年/日本 監督/石井岳龍

町田康の世界を映像化するのはこんなにも難しい。作品の世界観を示し、観客を引きずり込むような冒頭にして欲しかったが、どうしても語りが気になり、最初からノレず。「銀魂」見るような感覚であれば良かったのかと思っても、時すでに遅し。最後はまさかのキングスマン。個人的な好き嫌いが別れると思う。

羊の木

2018-02-04 | 日本映画(は行)
★★ 2018年/日本 監督/吉田大八

(映画館)

私の感性がおかしいのでしょうか?というくらいつまらなかった。
元殺人犯6人の過去やトラウマを丁寧に描いているわけでもないし、
6人に翻弄される役人の悲哀というわけでもないし、
物語の軸足をどこにも見つけられず、退屈で仕方なかった。
6名のキャストの個性が全然活かされていないのが致命的。
というか、役柄はいずれも個性的なキャラクターなのに、
配置された役者がその役で生きていないというアンビバレンツ。
これ、どうしようもないダメージなんだが。
田中眠なんて、わざわざ彼にやってもらうほどの役でもない。
また「見てはいけない伝説の怪物のろろ様」が
殺人犯の過去にこだわるか否かの問題とかぶさっているのはわかるが、
作品内で回収できていない感が否めない。
まさか、吉田大八でこんな気分になるとは。
というか観賞前のハードル上げ過ぎてしまったのかもしれない。

ビジランテ

2017-12-25 | 日本映画(は行)
★★★★ 2017年/日本 監督/入江悠

(映画館)

暴力で君臨する父親に抑圧された3兄弟の相克を描くノワール作品。
地方の閉塞感や外国人労働者問題など、様々な問題が絡み合う非常にヘビイな一本。
大変自分好みなテーマなのだが、練りが足りない印象。
俳優陣はみな熱演で挑戦魂が伝わってくるだけにいろいろともったいない。
寒々しい地方都市をロングでとらえるショットなんて、本来大好物。
でも、一郎の愛人の存在は必要なのかとか、薬物ルートを断てばすぐに財産放棄してくれるやろとか、
脚本上いろいろツッコミどころがあり、のめり込めず。
リアルに刺さるネタや振り切った表現も多いのに、本当にもったいない。
銃撃シーンは北野映画の影響を感じた。
日本でバイオレンス映画を作るとき北野作品は避けて通れないはずで
暗い日本家屋やガソリンスタンドで明滅する光を見るにこの乾いたタイトさは本当に映画的だなあと高揚感を感じた。
もっと若手監督は臆することなく北野を真似すればいいと思う。かっこつけずにさ。

昼顔

2017-12-20 | 日本映画(は行)
★★★★ 2017年/日本 監督/西谷弘

(レンタル)

評論家筋から絶賛されていたのも納得。
静かな日常の虚無と狂おしく男を欲する女の内面を捉える演出とカメラがすばらしい。
不倫は人を不幸にするという批判も痛烈に与えつつ、
やはり恋をする女の美しさも存分に見せてくれる。
斉藤工は上戸彩と伊藤歩に死ぬほど愛される男というおいしい役どころながら、完全に影の役割。
カメラは、喪服に生足など上戸彩の色気を引き出すことのみに専念しており、その割り切りぶりがいい。
脇役は黒沢あすかが非常に印象的。この役者の配置も絶妙。
脚本も異様にリアルな所と余白のある所の緩急がいい。
同題のブニュエル作品を貶めることなく、映画的なものに徹した濃厚な昼メロとなった良作。

ばしゃ馬さんとビッグマウス

2017-11-12 | 日本映画(は行)
★★★☆ 2013年/日本 監督/吉田恵輔

(WOWOW)

脚本家志望の「ばしゃ馬さん」が夢とどう折り合いを付けるのかをシニカルに描く。
自分なりに頑張っていることが他者からどう見えるのかって、真理だけどツライ。
吉田恵輔らしいイタい人間のアイタタタな描写は楽しめたが、ちょっと期待し過ぎたかも。
吉田監督にはもっとブラックさを求めてしまうなあ。

ピンクとグレー

2017-09-26 | 日本映画(は行)
★★ 2015年/日本 監督/行定勲

(WOWOW)

久々の時間を返して案件。
前半異様にかったるく、なんじゃこのぬるい映画はと思っていたら、
これがどんでん返し前の○○○だってことで。
じゃあそのぬるさはワザとだとしても
こんな退屈なものに作品の半分を費やすなんて、観客を舐めてる。
そして、どんでん後の後半も全く面白くない。
菅田将暉目当てで見たが、全くの無駄遣い。
前から行定勲は苦手だったが(もう「GO」だけだね、面白いの)、
これでもう見ないと決めた。
夏帆のビッチな演技も陳腐すぎて見ていられない。
とにかく全ての演出が陳腐。

変態家族 兄貴の嫁さん

2015-02-12 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 1984年/日本 監督/周防正行

(DVDにて観賞)
これはもう、爆笑に次ぐ爆笑。
ポルノ映画で小津をやるという、関係者に激怒されなかったのか!?という実験作。
小津ならではの繰り返すセリフ回し、ローアングルのカメラワーク。
パロディでも、オマージュでもないんです。完コピなんです。
大杉蓮の笠智衆っぷりが最高に笑えます。美術が種田陽平という発見も楽し。
小津とは何かを考える上でも貴重な1本。傑作じゃない、これ?

はじまりのみち

2014-08-26 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 2013年/日本 監督/原恵一
DVDにて観賞

いやあ、いい映画だったなあ。
母親をリヤカーに乗せて、峠を越えるという、ただそれだけの話なのにねえ。
これぞ日本映画の真骨頂。
そして田中裕子の演技が鉄板。田中裕子出てりゃ、はずれなし!
空気がゆったりと流れるような静かな演出。原監督、実写初挑戦とは思えないです。
木下恵介生誕100周年プロジェクトという、ある意味、いろんな人の思惑とか、制限とかあるなかで
木下作品を紹介しつつ、木下恵介の素晴らしさもわからせつつ、そして、自分の作品としてのアイデンティティーを確立させるという
非常に難しいことを成功させているんですよね。凄い。
木下恵介の映画を見たくなりました。ほんとに。

フラッシュバックメモリーズ

2014-08-01 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 2013年/日本 監督/松江哲明
(DVDにて観賞)


前からディジリドゥサウンドは好きだったし、GOMAのことも知っていたけど、
彼が記憶障害になっていたとは知らなかった。
今日、この演奏を彼はもう少し立ったら忘れてしまう。
その事実と圧倒的なパフォーマンスに完全にやられました。
見終わって、しばし放心。映画館で3Dで見たかったなあ。