★★★★ 2006年/フランス 監督/パトリス・ルコント
「人間、年を取ると頑なだからね」
<story>美術商のフランソワは、自分の誕生パーティで、君には親友がいないと告げられる。反発するフランソワは仕事仲間のカトリーヌに挑発されて、10日以内に親友を連れてくるという賭けをしてしまう。もし出来なければ、20万ユーロで落札したばかりの大切な古代ギリシャの壷を手放す事態に。さっそく自分が親友だと思っていた人たちを訪ねて回るフランソワだったが…。
お金も地位もあるフランソワがひょんなことから、「賭けに勝つために」親友探しを始める。大体、親友を探すとか見つけるとか、そういう発想自体が間違っている。この時点でこのフランソワって男がいかに嫌な奴かってのはよくわかるんだけども、ちょっとやそっとじゃ彼のねじ曲がった性格は改善されないのね。あんなに尽くしてくれたブリュノをみんなの前で笑い物にしてしまうのよ。
このシーンを見て思い出したのが、大好きなフレンチコメディ「奇人たちの晩餐会」。これはセレブリティが「自分がバカだと思う」人間を招待してはみんなで笑い物にして晩餐会を楽しむっていうとんでもない設定。映画としては大変な秀作なので、ぜひともみなさんに見ていただきたいと思うのだけど、こいつはバカだってのを確認しつつ、嘲笑してはメシを食うって言う、そのメンタリティには驚いた。私がそこにいたら、こんなにまずいディナーはないと思うもの。本作でもフランソワが選んだ相手がタクシー運転手だってのは大きなポイントだと思う。彼を通じて、セレブリティたちが持つ特権意識や傲慢さも皮肉ってるんじゃないだろうか。
さて、そんな嫌味男フランソワをルコント監督は適度に皮肉りながら、時に滑稽に、時に哀しげにうまく転がしていくのね。ちょっとユーモラスなダニエル・オートゥイユの演技はさすがと言う感じ。一方、すぐに誰とでも仲良くなれるブリュノだって、親友と呼べるような相手は実はいない。よく考えて見れば中年にもなって、自分の全てをさらけ出すなんてことそうはできない。女ならまだしも、男は特にね。妻が近所の男とできてしまったなんて、そりゃ誰にも言いたくないよね。でも、それを抱えていることでブリュノは殻に閉じこもっている。でも、そんなの他人に言うくらいなら、俺は友人なんかいらん!ひとりで酒を飲んでいる方がましだ!なんて男性も実は多いんじゃなかと思ったりして。やっぱ、男ってプライドの生き物だからさ。
私はね、最終的に感じたのは、親友がいるのがいいとか悪いとかそういうことじゃなくて、中年を過ぎて新しい価値観を得ることは難しいし、すばらしいってこと。フランソワはいい骨董品を見つけて売りさばいていれば人生万々歳だと思っていたろうし、ブリュノは両親に心配をかけず、波風立たせず生きていくことが第一だった。ふたりの交流は、そこに風穴を開けた。フランソワが本当に感謝しなければいけないのは、「おまえの葬式には誰も来ない」って言った男だったりしてね。
「人間、年を取ると頑なだからね」
<story>美術商のフランソワは、自分の誕生パーティで、君には親友がいないと告げられる。反発するフランソワは仕事仲間のカトリーヌに挑発されて、10日以内に親友を連れてくるという賭けをしてしまう。もし出来なければ、20万ユーロで落札したばかりの大切な古代ギリシャの壷を手放す事態に。さっそく自分が親友だと思っていた人たちを訪ねて回るフランソワだったが…。
お金も地位もあるフランソワがひょんなことから、「賭けに勝つために」親友探しを始める。大体、親友を探すとか見つけるとか、そういう発想自体が間違っている。この時点でこのフランソワって男がいかに嫌な奴かってのはよくわかるんだけども、ちょっとやそっとじゃ彼のねじ曲がった性格は改善されないのね。あんなに尽くしてくれたブリュノをみんなの前で笑い物にしてしまうのよ。
このシーンを見て思い出したのが、大好きなフレンチコメディ「奇人たちの晩餐会」。これはセレブリティが「自分がバカだと思う」人間を招待してはみんなで笑い物にして晩餐会を楽しむっていうとんでもない設定。映画としては大変な秀作なので、ぜひともみなさんに見ていただきたいと思うのだけど、こいつはバカだってのを確認しつつ、嘲笑してはメシを食うって言う、そのメンタリティには驚いた。私がそこにいたら、こんなにまずいディナーはないと思うもの。本作でもフランソワが選んだ相手がタクシー運転手だってのは大きなポイントだと思う。彼を通じて、セレブリティたちが持つ特権意識や傲慢さも皮肉ってるんじゃないだろうか。
さて、そんな嫌味男フランソワをルコント監督は適度に皮肉りながら、時に滑稽に、時に哀しげにうまく転がしていくのね。ちょっとユーモラスなダニエル・オートゥイユの演技はさすがと言う感じ。一方、すぐに誰とでも仲良くなれるブリュノだって、親友と呼べるような相手は実はいない。よく考えて見れば中年にもなって、自分の全てをさらけ出すなんてことそうはできない。女ならまだしも、男は特にね。妻が近所の男とできてしまったなんて、そりゃ誰にも言いたくないよね。でも、それを抱えていることでブリュノは殻に閉じこもっている。でも、そんなの他人に言うくらいなら、俺は友人なんかいらん!ひとりで酒を飲んでいる方がましだ!なんて男性も実は多いんじゃなかと思ったりして。やっぱ、男ってプライドの生き物だからさ。
私はね、最終的に感じたのは、親友がいるのがいいとか悪いとかそういうことじゃなくて、中年を過ぎて新しい価値観を得ることは難しいし、すばらしいってこと。フランソワはいい骨董品を見つけて売りさばいていれば人生万々歳だと思っていたろうし、ブリュノは両親に心配をかけず、波風立たせず生きていくことが第一だった。ふたりの交流は、そこに風穴を開けた。フランソワが本当に感謝しなければいけないのは、「おまえの葬式には誰も来ない」って言った男だったりしてね。