Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ドリームガールズ

2020-03-27 | 外国映画(た行)
★★★★★ 2006年/アメリカ 監督/ビル・コンドン

気分がへこんだときはこれ。もう何度見たかわからない。冒頭ドリームズが舞台に上がった瞬間にもう涙。そして終了までに少なくとも5回は号泣。 なんでこんなに泣けるのか。 これは女性が男性中心のエンタメ業界に搾取され、どん底から再び自尊心を取り戻す話だからだ。

モータウンとシュープリームスがモデルの本作。 カーティスが違法行為も厭わず自社レーベルを大きくするのには白人による黒人音楽の搾取への怒りがある。 ところが成功すると彼は搾取する側へ変貌する。才能あふれるエフィーをリードボーカルから外し、ディーナの意見には耳をかさず人形のように扱う。

白人による黒人文化の搾取の物語が、いつのまにか男性による女性搾取の話へと転換する。そしてカーティス自身がそのことに全く無自覚であるというのがリアルで恐ろしい。自身のアイデンティティーを取り戻そうとするディーナを演じるビヨンセ、何回見てもまぶしいほどに美しくて感動する。

それにしてもエディマーフィは本作でアカデミー取ってほしかった。

ドクター・スリープ

2020-01-05 | 外国映画(た行)
★★☆ 2019年/アメリカ 監督/マイク・フラナガン

尺が長い。
タイトルにもなってるんだからDr.スリープとして働いている所から始めれば良かった。
しかも、Dr.スリープって、すごい面白い仕事じゃん。父親に殺されかけ、ろくに自己実現もせず、大人になってしまった、いわゆるアダルトチルドレンのダニーが死を間近にした人と交流できるなんてさ。なんで、ここもっと広げないの。
ラスト決戦地はOverlook Hotel!ってのもホラー対戦として見れば楽しいんだろうけど、怪物対決よりダニーのトラウマ克服をもっと深堀りして欲しかったなあ。
期待しすぎた自分が悪い。

テナント 恐怖を借りた男

2019-11-29 | 外国映画(た行)
★★★★★☆ 1976年/フランス・アメリカ 監督/ロマン・ポランスキー

アパートの住人が自分を嵌めようとしていると被害妄想を膨らませ、狂気に落ちる男の話。ポランスキーお得意の幻惑的で薄気味の悪い妄想映像がすばらしい。ポランスキーの過去を知っていれば主人公がユダヤ人で周囲が迫害する人のメタファーであることはすぐにわかる。

言葉のすれ違いで相手を信用できなくなったり、音がうるさいと隣人とトラブルになるなど誰でも感情移入できる話だと思う。しかし、どうも主人公は自ら悪い方へと向かっているとしか思えず、強迫神経症的な自身の性格が招いた当然の結果のようにも見え、かつループ構造になっているのが本作の味わい。

それにしても改めてポランスキーの俳優としての資質の高さに感心させられる。いつもビクビクして愛想笑いのユダヤ人の小男。悲しいかな接する相手は不信感を覚えずにはいられない挙動不審ぶり。最終的には極限状態になり、女装して狂っていく姿はおぞましくとも、圧倒的な存在感で魅了する。

テナント 恐怖を借りた男

2019-11-29 | 外国映画(た行)
★★★★★☆ 1976年/フランス・アメリカ 監督/ロマン・ポランスキー

アパートの住人が自分を嵌めようとしていると被害妄想を膨らませ、狂気に落ちる男の話。ポランスキーお得意の幻惑的で薄気味の悪い妄想映像がすばらしい。ポランスキーの過去を知っていれば主人公がユダヤ人で周囲が迫害する人のメタファーであることはすぐにわかる。

言葉のすれ違いで相手を信用できなくなったり、音がうるさいと隣人とトラブルになるなど誰でも感情移入できる話だと思う。しかし、どうも主人公は自ら悪い方へと向かっているとしか思えず、強迫神経症的な自身の性格が招いた当然の結果のようにも見え、かつループ構造になっているのが本作の味わい。

それにしても改めてポランスキーの俳優としての資質の高さに感心させられる。いつもビクビクして愛想笑いのユダヤ人の小男。悲しいかな接する相手は不信感を覚えずにはいられない挙動不審ぶり。最終的には極限状態になり、女装して狂っていく姿はおぞましくとも、圧倒的な存在感で魅了する。

時計じかけのオレンジ

2019-10-28 | 外国映画(た行)

午前十時の映画祭にて鑑賞

暴力と権力について描いた史上最強のウルトラブラックコメディ。おぞましくて、恐ろしくて、美しくて、圧倒的。DVDで何度も見た本作を映画館で見られてもう思い残すことはない。近年何度も映画館で鑑賞する機会に恵まれた2001年と比べると長い道のりだった。

スクリーンで見ると脇役陣のオーバーアクトな怪演が本作を支えているのがよくわかる。顔芸のオンパレードじゃんね。笑っちゃイカンのに笑っちゃうよ、これは。本作のイッちゃってる感を見ると、ジョーカーなんてもの凄く真面目な映画だなあと思わされる。建築やアートにおいても洗練されている事もありこんな非人道的な主人公の作品ながら何度も見たいと人々に思わせてしまう。これから何十年も何百年もキューブリックは本作を通じ観客に快楽と苦痛、内省を与え続けるのだと思うと映画の力と怖さを痛感する。そしてそれこそが、映画のすばらしさでもあるんだよね。


トイ・ストーリー4

2019-08-23 | 外国映画(た行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ジョシュ・クーリー 

(映画館)
息子の成長と完全にリンクしてきたトイストーリーには並々ならぬ思い入れがある。アンディを喜ばせること、アンディと共に生きることに必死なおもちゃたちは子どもを育てる親の姿そのものであり、我が姿を重ねて本シリーズを見てきた。そして見たシリーズ4作目は、とどのつまり「早く子離れしろ!」って話だったので、鑑賞後実にしんみりするのであった。

それにしても、ウッディの選択に対して「こんなのトイストーリーじゃない」という意見出るあたり個の尊重より仲間の絆のニッポン的価値観にげんなりしてしまう。まあ、これだけおもちゃ仲間の奮闘ぶりを描いて来たのに、イチ抜けたは寂しい部分もあるけどね。それから、ボーピープの人物造詣があまりにポリコレを意識しすぎているのも少しやり過ぎ感を感じてしまった。

デトロイト

2019-07-16 | 外国映画(た行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/キャスリン・ビグロー

閉鎖空間での手持ちカメラが不安を煽り、見る者を手汗をかきそうなほどの緊張に引きずり込む。冒頭、無防備な黒人を背後から撃つシーンを見せているだけに、全く状況が好転するとも思えず鑑賞にはかなりの体力を必要とした。いやあしんどい…でも見るべき作品。

人種差別主義者の白人警官を演じたウィル・ポールター。黒人を殴りまくる役があまりにつらくて撮影現場がしんどかったそうで。作品内でもそこまでクズになりきれてない印象を受けた。いい人っぽさがちょっとにじみ出ているというか。偶然居合わせた黒人の警備員ディスミュークスの存在が物語を動かすキーになるのかと思ったんだけど、それが特になかったのは残念だった。でも、白人女性であるキャサリンビグローが監督したということにも意義のある作品だと思う。

大統領の陰謀

2019-04-08 | 外国映画(た行)
★★★☆ 1976年/アメリカ 監督/アラン・J・パクラ

すいぶん昔にトライしたのだが人物関係がさっぱりわからず、なんと途中でリタイア。どんなにつまらなくてもだいたい最後まで見る事が常だが、本作はレアケースだった。それが10年ほど前。で。昨年、ペンタゴンペーパーズを見たのを機に、いつか見直そう、見直そうと思っていたので、がんばって再観賞。いやあ、それでもしんどかった。人物関係も事件の背景も全然語られないんだもの。ペンタゴンペーパーズでワシントンポストの記者陣の気骨を注入されていたので、今回はふたりの記者のブンヤ魂に感情移入できた。新聞記者って、ほんと地味な仕事だよね。でも、その積み重ねこそが大事なんだと思わされた。

誰よりも狙われた男

2019-01-14 | 外国映画(た行)
★★★★ 2013年/アメリカ・イギリス/ドイツ 監督/アントン・コービン

(Amazonプライム)

「スパイ物だけど地味」としつこく言われるルカレだが、本作はF・S・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライトとなんとまあ俳優陣の豪華なことよ。主役クラスの俳優陣が全員揃って抑えた演技に徹底しているのがすばらしい。各国諜報機関の駆け引きが実にスリリングで、ロシアから密入国した男の身柄がどうなるのか最後までハラハラさせられる。本作が遺作となったF・S・ホフマンのラストの慟哭が胸を打つ。惜しむらくはドイツが舞台なのに、全員英語なこと。ドイツ、アメリカ,ロシアなど各国の策略入り乱れる展開なのに、全員英語を話すもんだから、関係性がわからなくなる&緊迫感が薄れることしばしば。多国籍語を話せるダニエル・ブリュールまで投入しているのにもったいない。

超高層プロフェッショナル

2018-03-06 | 外国映画(た行)
★★☆ 1979年/アメリカ 監督/スティーブ・カーバー

(NHK-BS)

超高層ビルを3週間で9階組み上げなければならないために、
一癖も二癖もある鉄骨の建設プロが集うってことでまあ、七人の侍パターン。
70年代アメリカらしく、豪快な突っ込みどころも多数。
特に責任者である女性が毎回ひらひらのファッショナブルな服装で建築現場に来るところがトホホ。
リーダーとすぐできちゃう、というお決まりパターン含めて、
その荒削りさをどこまで許せるかってとこなんだけど、私にはキツかった。
高所での撮影はすごく気合い入ってるんだろうけど。

手紙は憶えている

2018-01-16 | 外国映画(た行)
★★★ 2016年/カナダ・ドイツ 監督/アトム・エゴヤン

(WOWOW)

次々と供給されるナチ物の中でもなかなかひねった展開で、
そういうこともあったんだと新たな気づきを与えてくれるいい映画ではある。
しかし!始まる前にサイトの紹介文を読み「これって●●ってオチじゃない?」
と言ったら本当にその通りになり、一緒に見ていた夫に睨まれた。
「驚愕のラスト5分」って言うんだけど再生ボタン押す前から勘のいい人はわかるようは話で驚愕はないよねぇ。
また、テーマ的にも非常に社会的意義のあるものなのに、
謎解きの方に観客の意識がいってしまうのはよろしくない。
サスペンスとして面白い作品って、その辺すごく注意深く作らねばならないんだなと改めて思った。

ダンケルク

2017-12-31 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン

(レンタル)

もともと時系列をいじるのが得意なノーラン。
そのテクニックが複雑な構成を呈してしまうことが多いのだが、
今作は実にシンプルな形で最後のカタルシスへと突き進むのがいい。
そして、本作はNetflixなどに押される映画の在り方として新たな視点を与えてくれている。
ドラマのアドバンテージは人物や物語を「時間をかけてじっくりと描ける」という点だ。
今後映画は2時間という尺、時間の使い方にもっと向き合うべきかも。
長丁場のドラマに比べりゃたったの2時間。
いかにそこで語り尽くすか、魂を込められるか。
ダンケルクを見てそんなことを思わされた。
Mライランスの渋い演技が印象的だった。

ドントブリーズ

2017-10-24 | 外国映画(た行)
★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/フェデ・アルバレス

(WOWOW)

楽勝と思って強盗に入った家の爺さんは実は…。
デトロイトの荒廃した街の描写がいい。
行き場のない若者の焦燥感もリアル。
だが、一方爺さんが実は家で●●をしていた、
という筋書きがどうも嘘くさくて引っかかる。
でも、室内で逃げ惑う描写は怖かった。女の子、タフだねえ。

ドリーム

2017-10-06 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/セオドア・メルフィ

(映画館)

冒頭シーンからもう泣く。
不当な扱いに腐らず努力を続け、暴力ではなく言葉を尽くして相手を動かし、
己の仕事をやり遂げる3人に心から感動。
その生き様がまた三者三様なのがいい。
オーソドックスな展開ではあるが、ド直球の感動作品を素直に楽しむべし。観るべし。

それにしても「ドリーム」というタイトルですよ。
これは、一体誰のどんな夢なのか全く意味不明。
すばらしい3人の科学者を描く作品に「ドリーム」という
ぼんやりしたタイトルを適当に付けるその知性のなさに、心の底からがっくりする。
作品への理解や敬意が全く感じられない邦題。

ディーパンの闘い

2017-09-30 | 外国映画(た行)
★★★☆ 2015年/フランス 監督/ジャック・オーディアール

(WOWOW)

2015年のパルムドール作品。
スリランカから難民としてフランスに逃げてきた3人。
異国の地で家族を装い必死に生きようとするが、事件に巻き込まれディーパンは戦わざるを得なくなる。
主役の存在感は抜群だし、見応えはあるが、疑似家族を守るため、父性の象徴として男が立ち上がる。
何度も見たようなストーリーなんで、これでパルムドールかあという気が。
あ。グラントリノもそんな感じよね。
同監督なら「預言者」の方がよかった。
娘の方がさっさとフランス語がうまくなるのは見てて辛かった。
しかし、フランスの郊外の荒れ方もえげつないね。