★★★★ 2003年/アメリカ 監督/ダニー・ボイル
「殺人の記憶の蓄積」
ホラーファンの方々にはイマイチ評価が低いようなのですが、私はそれなりに楽しく観ることができました。
まず、人っ子ひとりいない廃墟となったロンドンの映像が凄くいい。生命のなくなった空間ってのは、独特のムードを醸し出しますね。誰もいなくなったニューヨーク、誰もいなくなったパリ、誰もいなくなった東京を思い描いてみても、それぞれ印象は違うと思う。廃墟のロンドンを見ていると、「スイーニー・トッド」の切り裂きジャックのような、何世紀も前の取り憑かれた者どもが古びた建物で成りを潜めているような感じがします。
そして、車で逃げるシークエンス。ダニー・ボイルってのは、乗り物を撮るのが巧いなあと思う。「スラムドッグ・ミリオネア」でも貧しい兄弟がぎゅうぎゅう詰めの列車に乗ってムンバイから脱出するシーンが一番印象に残っている。本作ではロンドンタクシーみたいな黒い車に乗り込んでロンドンから脱出するんだけど、高速道路の向こう側に噴煙にまみれたマンチェスターが見えてくるシーンなんて、かっこいいなと思った。
でね、ゾンビから逃げ回る恐怖よりも、迫ってきたもの。それは自分が生き残るために「瞬時に人を殺さねばならない」ってこと。感染者かどうかを「瞬時に判断する」んだよ。んなこと、できるワケないよ。あたしゃ、無理。絶対無理。すぐ死ぬね。だんだん本能が研ぎ澄まされていくのかも知れないけどさ。
自分で判断する、という制限がつけ加えられたことによって、この作品は無我夢中に機械的にゾンビを殺していくのとはやや違う様相を帯びているように感じる。それは、「殺す」か「殺さない」かの選択で常に「殺す」を選んでいるという自意識が蓄積されていくってこと。これはとんでもないストレスじゃないかな。戦争で誰でもいいから殺してまわるのとも違うと思う。ラストは希望を見せるけど、彼らがまともな心を取り戻せるのかと思うとぞっとした。
「殺人の記憶の蓄積」
ホラーファンの方々にはイマイチ評価が低いようなのですが、私はそれなりに楽しく観ることができました。
まず、人っ子ひとりいない廃墟となったロンドンの映像が凄くいい。生命のなくなった空間ってのは、独特のムードを醸し出しますね。誰もいなくなったニューヨーク、誰もいなくなったパリ、誰もいなくなった東京を思い描いてみても、それぞれ印象は違うと思う。廃墟のロンドンを見ていると、「スイーニー・トッド」の切り裂きジャックのような、何世紀も前の取り憑かれた者どもが古びた建物で成りを潜めているような感じがします。
そして、車で逃げるシークエンス。ダニー・ボイルってのは、乗り物を撮るのが巧いなあと思う。「スラムドッグ・ミリオネア」でも貧しい兄弟がぎゅうぎゅう詰めの列車に乗ってムンバイから脱出するシーンが一番印象に残っている。本作ではロンドンタクシーみたいな黒い車に乗り込んでロンドンから脱出するんだけど、高速道路の向こう側に噴煙にまみれたマンチェスターが見えてくるシーンなんて、かっこいいなと思った。
でね、ゾンビから逃げ回る恐怖よりも、迫ってきたもの。それは自分が生き残るために「瞬時に人を殺さねばならない」ってこと。感染者かどうかを「瞬時に判断する」んだよ。んなこと、できるワケないよ。あたしゃ、無理。絶対無理。すぐ死ぬね。だんだん本能が研ぎ澄まされていくのかも知れないけどさ。
自分で判断する、という制限がつけ加えられたことによって、この作品は無我夢中に機械的にゾンビを殺していくのとはやや違う様相を帯びているように感じる。それは、「殺す」か「殺さない」かの選択で常に「殺す」を選んでいるという自意識が蓄積されていくってこと。これはとんでもないストレスじゃないかな。戦争で誰でもいいから殺してまわるのとも違うと思う。ラストは希望を見せるけど、彼らがまともな心を取り戻せるのかと思うとぞっとした。