夫と二人でキッチンに立っていた時のことだ。
別の作業をしていた夫が、私の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「ねえ、僕の小さなお願い聞いてくれる?」
なんだ、改まって、と思ったが
「いいよ、なあに?」
と優しい妻の顔で言うと、夫は手にしていたお醤油の小瓶を見せながら言った。
「できたら、でいいんだけど、使ったあとはちゃんとキャップを締めてくれると大変うれしい」
お醤油のキャップが緩んでいた、っていうのか。
たまたま締める力の具合で、そうなっただけなのに、そんな瑣末なことで私を非難するのか。
黙って締めなおしてくれればいいじゃないか。
というようなことを、穏便に伝えた。(いや、ほんとに穏便に)
すると夫は申し訳なさそうな顔をして言った。
「お醤油だけじゃないの、ドレッシングも、オリーブオイルも、ソースもなんだよね」
「あらぁ、そりゃ悪かった。今日はどうかしてるね、私」
と反省して言うと、夫は 今言わないでいつ言うのだ という勢いで言い足した。
「今日だけじゃないんだよね、ずーーーーっと前からそうなんだよね」
夫によると、私が使った引き出しは数センチあいている。
使ったビンはちゃんと締まっておらず、うっかりキャップを持つと本体が落ちてしまう。
キッチンの棚の扉は、開いたまま。
使った椅子は、一応テーブルに寄せておくが、中途半端で引っかかる。
引き戸は、あと数センチ押せば全開するところで止まっている。
「毎回、どんな時でも、ってわけじゃないけど、かなりそういう傾向があるってことで・・・」
話を聞いていた私の顔が般若に見えたのか、慌ててそう付け加えた。
言わせてもらえば、私にも多少の言い訳はある。
たとえば棚からラップを出して、使ったらまたすぐしまおうと思うから、開けたままにしておく。
でも、すぐにしまわないで他の作業をするから、そういう開けたままの扉が増えてゆく、というわけだ。
指摘されるまで気づかなかった。
でも確かに、引き出しを使ったあとで振り返ると、数センチあいていることが多い。
すごくきっちりした人が、私のような人と一緒に暮らしたら、さぞやストレスがたまることだろう(ひとごと)
以前、職場に潔癖症の先輩OLがいて、私も同僚も相当気を遣ったものだけど、彼女の不機嫌の原因は私にもあったのかも?気づくの遅いけど・・・
でも同僚もかなりおおらかな人だったからなあ。
そういえば、昔、姉からも小さなお願いをされたことがあった。
二人でカフェでケーキセットを食べていた時、姉が私をまじまじと見つめ、ため息混じりにこう言った。
「ねえ、お願いだから、もうちょっとこう、おしゃべりを楽しみながらゆっくり、ってできないかなァ?」
姉の言い分はこうだ。
せっかくのティータイムだから、ケーキは少しずつ、コーヒーも少しずつ、おしゃべりに合わせてゆっくり食べよう。
私のやりかたは、フォークを置かずにケーキを食べ終えてしまい、コーヒーも、グイッと飲んでしまうから情緒がない、らしい。
確かにフォークを置かずにケーキは食べるけど、早食いのように食べるわけじゃない。おしゃべりしながら、けっこうゆっくり食べているつもりだ。
コーヒーに関しては、冷めてしまったらまずいじゃないか。
それに、駆けつけ1杯、じゃあるまいし、一息で飲み干しはしない。
まあとにかく、姉の感覚から言ったら、姉がケーキの三角の小さい方から、ちょっとずーつ崩して食べている向かい側で、私が豪快にケーキをたいらげているのは、かなりガッカリな情景なのだろう。
余談だが、友人とお茶をしていて、さあ帰ろうという時になり、私が立ち上がり様にグラスのお水を飲み干したのを見て、
「シロ、B型でしょ」
と言われたことがあった。同時に、それはオヤジみたいだから、好きな人の前では慎むように、という訓戒もくれた。
図星なのでドキリとした。以後、つとめてそれをしないように気をつけている。
人に指摘されて初めて気づく、自分の特性。
私ってそうだったんだ!という感動の一方で、なんでそんなこといちいち気にすンの、という思いもあり、でも言ってもらってよかったとも思う。
知らない自分を見つけるのは、案外おもしろいものだ。
その癖が治るかどうかはまた別として(一応努力はしている)、そういう場面になれば、きまって心のどこかから、そう言われたことを思い出すのである。
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別の作業をしていた夫が、私の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「ねえ、僕の小さなお願い聞いてくれる?」
なんだ、改まって、と思ったが
「いいよ、なあに?」
と優しい妻の顔で言うと、夫は手にしていたお醤油の小瓶を見せながら言った。
「できたら、でいいんだけど、使ったあとはちゃんとキャップを締めてくれると大変うれしい」
お醤油のキャップが緩んでいた、っていうのか。
たまたま締める力の具合で、そうなっただけなのに、そんな瑣末なことで私を非難するのか。
黙って締めなおしてくれればいいじゃないか。
というようなことを、穏便に伝えた。(いや、ほんとに穏便に)
すると夫は申し訳なさそうな顔をして言った。
「お醤油だけじゃないの、ドレッシングも、オリーブオイルも、ソースもなんだよね」
「あらぁ、そりゃ悪かった。今日はどうかしてるね、私」
と反省して言うと、夫は 今言わないでいつ言うのだ という勢いで言い足した。
「今日だけじゃないんだよね、ずーーーーっと前からそうなんだよね」
夫によると、私が使った引き出しは数センチあいている。
使ったビンはちゃんと締まっておらず、うっかりキャップを持つと本体が落ちてしまう。
キッチンの棚の扉は、開いたまま。
使った椅子は、一応テーブルに寄せておくが、中途半端で引っかかる。
引き戸は、あと数センチ押せば全開するところで止まっている。
「毎回、どんな時でも、ってわけじゃないけど、かなりそういう傾向があるってことで・・・」
話を聞いていた私の顔が般若に見えたのか、慌ててそう付け加えた。
言わせてもらえば、私にも多少の言い訳はある。
たとえば棚からラップを出して、使ったらまたすぐしまおうと思うから、開けたままにしておく。
でも、すぐにしまわないで他の作業をするから、そういう開けたままの扉が増えてゆく、というわけだ。
指摘されるまで気づかなかった。
でも確かに、引き出しを使ったあとで振り返ると、数センチあいていることが多い。
すごくきっちりした人が、私のような人と一緒に暮らしたら、さぞやストレスがたまることだろう(ひとごと)
以前、職場に潔癖症の先輩OLがいて、私も同僚も相当気を遣ったものだけど、彼女の不機嫌の原因は私にもあったのかも?気づくの遅いけど・・・
でも同僚もかなりおおらかな人だったからなあ。
そういえば、昔、姉からも小さなお願いをされたことがあった。
二人でカフェでケーキセットを食べていた時、姉が私をまじまじと見つめ、ため息混じりにこう言った。
「ねえ、お願いだから、もうちょっとこう、おしゃべりを楽しみながらゆっくり、ってできないかなァ?」
姉の言い分はこうだ。
せっかくのティータイムだから、ケーキは少しずつ、コーヒーも少しずつ、おしゃべりに合わせてゆっくり食べよう。
私のやりかたは、フォークを置かずにケーキを食べ終えてしまい、コーヒーも、グイッと飲んでしまうから情緒がない、らしい。
確かにフォークを置かずにケーキは食べるけど、早食いのように食べるわけじゃない。おしゃべりしながら、けっこうゆっくり食べているつもりだ。
コーヒーに関しては、冷めてしまったらまずいじゃないか。
それに、駆けつけ1杯、じゃあるまいし、一息で飲み干しはしない。
まあとにかく、姉の感覚から言ったら、姉がケーキの三角の小さい方から、ちょっとずーつ崩して食べている向かい側で、私が豪快にケーキをたいらげているのは、かなりガッカリな情景なのだろう。
余談だが、友人とお茶をしていて、さあ帰ろうという時になり、私が立ち上がり様にグラスのお水を飲み干したのを見て、
「シロ、B型でしょ」
と言われたことがあった。同時に、それはオヤジみたいだから、好きな人の前では慎むように、という訓戒もくれた。
図星なのでドキリとした。以後、つとめてそれをしないように気をつけている。
人に指摘されて初めて気づく、自分の特性。
私ってそうだったんだ!という感動の一方で、なんでそんなこといちいち気にすンの、という思いもあり、でも言ってもらってよかったとも思う。
知らない自分を見つけるのは、案外おもしろいものだ。
その癖が治るかどうかはまた別として(一応努力はしている)、そういう場面になれば、きまって心のどこかから、そう言われたことを思い出すのである。
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