落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

男は大陸(40代から)

2005年05月15日 | movie
『インファナル・アフェアⅢ 終極無限』
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シリーズのを観たらなんか義務感で観ちゃうんだよね・・・前評判はあんまりよくなかったし、観ないでもいっかな〜っと思わないでもなかったけど。
あのねー、長いよ!疲れたよ!あんなラストならもっとすっきりしゃっきりした構成でもよかったと思うよ。もおー。ラストがあれしかなかったのかもしれないけど、それはそれでいいとしてもねー、話ややこしくし過ぎですってー。陳道明(チェン・ダオミン)のキャラクター設定なんかめちゃめちゃ無理あるよ。厳しいよ。彼が出て来た意味がよく分からない。それに人死に過ぎ。黎明(レオン・ライ)は死なんでもよかったで。梁朝偉(トニー・レオン)は話の本筋に直接関係のない役柄のせいか、随分リラックスして演じてるように見えました。可愛らしかった。カワイイって40代の俳優に云うことじゃないんだけど。

それとこれは上映環境のせいかすっごい画面が暗くて観づらかったです。目が疲れた。とりあえず3本ハシゴの最後に観るべき作品ではなかったってことですかねー。

男は大陸(40代から)

2005年05月15日 | movie
『わが家の犬は世界一』
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現在は法律が改正されて空前のペットブームに沸いていると云う北京。この映画の舞台は90年代、犬を飼うのに警察で高額な登録料を支払わなくてはならなかった頃のお話です。だから一般市民の経済状態も貨幣価値もたぶん今とちょっと違う。
予告編ではお父さん(葛優グー・ヨウ)が主役みたいだったけど、実際には一家全員が主役。鉄道関係の肉体労働者であるお父さん、専業主婦のお母さん(丁嘉麗ディン・ジャーリー)、生意気盛りの高校生の息子(李濱リー・ビン)。どこにでもいる普通の家族と同じように、彼らもイマイチぱっとしない。すごく仲が悪いってワケでもないけど、特に仲良くもない。息子は反抗期だし、お母さんはお父さんの浮気を疑い続けているし、お父さんには少々思いやりが足りない。めちゃめちゃ普通です。誰が観てもなんとなく共感しちゃうと思う。

そんな一家はそれぞれ愛情表現は違うけど、それぞれなりにワンちゃんを愛している。だけどやみくもにただ一途に愛しているという描き方はされていない。あんなにワンちゃんを溺愛してるように見えたお父さんもいろいろとこすからい真似をしてなんとか登録料を払わずに済まそうとする。お母さんは自分が連れてる時に摘発された罪悪感からか登録料を払うのになかなか乗り気にならない(普通に考えたら逆なんだけど、罪悪感の反動で自分を正当化しようとしている)。息子は処分に運び出されるワンちゃんの声を聞いて泣いてしまう。

犬が連れて行かれてから登録手続きのタイムリミットまでの18時間を描いたシンプルなストーリーだけど、キャラクター描写やエピソードの構成がこまやかで、全体にすっごく丁寧につくられた映画、と云う感じがしました。
建設ラッシュで古い町並みと取壊し中の瓦礫の山と近代的なビルが混ざりあった街の風景とか、一人っ子政策で誰もが微妙に過保護気味な親子関係とか、何よりもコネがものを云う共産主義社会とか、北京市民の生活描写がとてもビビッド。あとこの映画のミソは犬がちっとも可愛くないってとこですね。季節が夏なのに出て来る犬がどいつもこいつも長毛種ばっかりってのは絶対狙ってるね。だって見た目にチョー暑苦しいもん。それにみんななんとなく薄汚れてる。

ぐりちょこっと注目の李濱クンはねー、可愛かったです。がりがりに痩せてて声も甲高くてホントにまだまだ子どもっぽいけど、表情が豊かだしなんか雰囲気あるね。それと意外に夏雨(シャ・ユイ)がかっこよかった。スマートに男らしくて、キリッとしたおまわりさん役がハマってました。前は「袁泉(ユエン・チュエン)みたいな美女がなんでこの子とつきあってんだろー」とか思ってたけど、撤回します。ごめんなさい。
テレサ・テンの「舐蜜蜜」がバックに流れてたり、息子が朝ラジオで聴いてたのが『藍宇』にも出て来た番組だったり、ちまちまと中華電影好きのココロをくすぐるネタも盛込まれてて、いろいろ楽しめる映画でした。


男は大陸(40代から)

2005年05月15日 | movie
『PTU』
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すんごい台詞が少なくて驚き。必要最低限以下の台詞しかないです。ホントに少ない。
これってたぶん中国人の民族性だと思うんだけど、中国語圏の映画って大抵すっごく台詞が多いのね。聞くところによれば、日本では「沈黙は金」とも云うように寡黙さや言葉を介在させないコミュニケーションも美徳のひとつとされるけど、中国ではいかに喋れるか、話術が巧みであるかがその人の社会能力を示すとも考えられているような傾向があり、だから中華電影に出て来る人物ってみんなよく喋る。だからこう云う台詞の少ない映画は香港映画じゃ珍しい部類じゃないかなぁ。全くなくはないけど。
珍しいと云えば香港のエンターテインメント映画って大体スターとかアイドルが出てるけど、この映画にはそれらしい人は出ていない。ぐりが知らないだけで出てんのかもしんないけどね。強いて云えば任達華(サイモン・ヤム)はスターっちゃスターだけど。黄浩然(レイモンド・ウォン)はアイドル・・・じゃないよね?

PTUってのは字幕だと「機動部隊」となってるけど日本の機動隊とは全然別個のものです。正式名称は民衆安全服務隊(茶通さんの香港電影迷宮+blog参照)。いわゆる憲兵ってやつじゃないですかね。イタリアにいるカラビニエリ。おまわりさんよりしっかり武装してて、主な職務は小隊単位でのパトロール、治安維持の最前線処理。
だからハードボイルドアクションと云えど『インファナル・アフェア』とかみたいに大スターがバンバン出て来る警察の花形とは全く違う、警察組織でも最底辺のひとたちが主役のお話です。舞台は香港の繁華街でのある一夜。チンピラグループに銃を盗まれたノンキャリアの刑事(林雪ラム・シュ)が、馴染みのPTUと協力して朝までに銃を取り返そうと奔走するのだが、問題のチンピラのリーダーが殺されてしまい・・・さぁどうなる、みたいな。

ぶっちゃけた話、物語自体はシンプルだし目新しい意外性はあまりない。ただ香港金像奨監督賞を穫っただけあって演出はすごくスタイリッシュ。これから何が起ころうとしているのか、夜の暗闇の向こうに潜んでいるのは一体何なのか、と云うぴりぴりとした緊迫感と臨場感の再現性はとにかく素晴しい。
今思ったけど、これってテニスの試合の空気感と似てますね。「お願い誰か何とか云って〜」みいないたたまれなさを感じる沈黙、ひとりであれこれ工作する刑事とパトロールの延長で銃を探すPTUとのシーンが交互に出て来る構成とか、ちょうどコートのあっちとこっちで同時進行なドラマって感じで。
異様なまでに徹底して無表情な主人公(任達華)、常に真上から人物を照らしだすハイコントラストなライティング、背景音を誇張した音響、台詞が無いことによって生まれる奇妙な間など、全編の統一感も無理がない。
難を云えば台詞が少な過ぎて緊張感のあまり観客の方も疲れて来るってとこぐらいでしょうか。でもホント、よく出来た映画だと思います。拍手。