落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

必殺仕事人、北海道へ行く

2011年02月19日 | movie
『隠し剣鬼の爪』

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舞台は幕末。海坂藩の平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)はかつて女中奉公をしていたきえ(松たか子)が嫁ぎ先で病に臥し、ろくな手当ても受けていないと聞き誘拐同然に自宅に引き取り療養させる。
そんな折り、宗蔵の道場仲間の狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反の罪で捕らえられていた牢を破って逃亡するという事件が起きる。藩命で狭間を斬るよう指示された宗蔵だが・・・。
藤沢周平の同名小説を山田洋次が映画化。

山田洋次の藤沢周平シリーズの2本目。1本目の『たそがれ清兵衛』と3本目の『武士の一分』は劇場で観てたけど、間の『鬼爪』はパスしてました。
個人的に永瀬正敏と松たか子がちょっとニガテでさ(爆)。ホントそれだけなんだけど。
けど実際観てみると、このシリーズ3本を比較して一番完成度が落ちるのはやっぱしコレなんだよね。
まず第一にストーリーが『たそがれ』に似過ぎてる。身分違いの恋に悩む男女がいて、男は藩命で人を斬らなくてはならない。そこに仇討ちをプラスしただけでほぼフォーマット化してますやん。
ふたつめは、登場人物全員が喋り過ぎ。いちいち状況説明的にペラペラペラペラ喋られると興醒めしちゃうよ。とくに主人公があんなに喋りまくるのはなんだか武士らしくない気がする。そのせいかモチーフの重さの割りに切実さが感じられない。障害を超えて求めあう男女のせつなさとか、友情と忠誠心の葛藤とか、世の理不尽さへの怒りとか、そういう大事な“心”の部分、実感がまったく伝わってこない。なんか能天気なんだよね。かといって喜劇的かとゆーとそーでもない。
みっつめは、内容盛り過ぎ。主人公たちの恋と藩命、仇討ちにはそれぞれの間にほとんど関係がないのに、そこへ過去の友情やら嫉妬やらよけいなしがらみまで入ってて、全体にゴチャゴチャし過ぎてる。結局何の話だったかよくわかんないよ。散漫なの。

ほんとうに月代を剃って髷を結った永瀬正敏の熱演は素晴らしいと思うし、松たか子の薄幸の美少女ぶりにも文句はないんだけど、前作の高評価に舞い上がっちゃったのか、全体に空回ってる感満載なのが痛々しい。出てくる女性キャラの扱いがあまりにあまりなのも引っかかるしね。田畑智子は無意味にオバカなお嬢さんっぷりがなんかイタイし、松たか子もただただ主人公の愛と慈悲を受ける専用の女みたいな設定だし、高島礼子に至ってはヤリ逃げされるために出て来たみたいで可哀想過ぎます。
頑張ってつくってるのはわかるだけに非常にもったいないです。『たそがれ』の時のあの絶妙なバランス感はいったいどーなっちゃったんだろーね?あの名作は偶然の産物だったの?とまで思っちゃう。
そんなにひどい映画でもないけど、観るべき点もとくには見当たらない、ある意味一番残念な映画でした。無念なり。

ところでクライマックスシーンで使われてる小柄 (こづか)、アレは日本人なら誰でも知ってるアイテムなのかしらん?
ぐりは時代小説で読んで知ってたけど、一般的に時代劇でも活躍するようなアイテムじゃないし、画面に突然出て来てもなんだかわからない観客もいるんじゃないかと思うんだけど。
すごい大事なアイテムなのにいきなり登場したから、ちょっとそこらへん気になってしまいました。