原子力資料情報室の連続ウェブ講座第6回(2021年9月21日)で講演した金森絵里・立命館大学教授(会計学)によると、原発の「廃炉会計」は会計として成立していないという。以下に講座要旨を紹介したい。
「電源別発電コストで、原子力は2020年に11.5円、2030年に11.7円と試算しているが、高レベル放射性廃棄物の最終処分費用は0円としている。政府は現時点で分からない金額を限りなく安く見積もっており、実際には10万年後までの処分費用がいくらになるか会計学者も計算不能であり、原発は安いという主張は欺瞞である。
「東京電力を潰すと福島への責任が果たせない」という主張があるが、東京電力は2011年の事故から2年間は赤字であったが、13年からは黒字に転じ自己資本率はV字回復した。事故後一度も債務超過にはならず、事故前に約2兆円だった純資産は2021年3月には約3兆円となっている。
「廃炉を円滑に進める会計制度」は、総括原価方式から託送料金へと変わった。廃炉に資産性をもたせるため、料金回収のための料金回収が必要という循環論法に陥っている。電気料金に廃炉会計を乗せるために新しい会計制度を作った事が問題である。会計の自立性が喪失し、廃炉会計は会計として成立しておらず、原発推進を正当化するために会計を利用している。
(2023年8月22日投稿)