トヨタ自動車労組は2019年1月28日、今春闘において、賃金の底上げ分に当たる「ベアの具体額を明示しない」と決めたようだ。労組委員長・西野勝義氏は「ベアだけに焦点が当たった交渉では格差は縮まらない」と経営側と同じ考え方をしている。しかし、マツダ系列労組幹部は「トヨタ労使のやり方では回答の中身がブラックボックスになる。本当に賃上げしたのかも検証できない」と批判している。また、大手電機メーカー組合員は「会社によって働き方は大きく変わらず、ベアという同じ目標に向かって闘うのが本来のあり方だ。個別に交渉すると労働側の力を削ぎ、全体の賃金の底上げにつながらない」と主張している。しかし労働者にとって大きな問題は、ベア率を方針の前面に打ち出してきた労働組合中央組織連合会長である神津里季生氏がそれを今年から見直し、トヨタ労使と同様な考えに傾き、各労組が理想の月額賃金を提示して交渉(個別交渉)するよう勧めている事である。この姿勢は労働者に保障されている労働三権(団結権・団体交渉権・争議権)を含む労働者の権利を自ら放棄するもので、労働者としては「自殺」行為である。
※以下は昨年4月6日に投稿したものですが、改めて投稿します。神津里季生氏についても別に投稿していますので参考にしてください。
2018年4月4日の新聞に、「トヨタ ベア非公表波紋」「春闘 回答不明で検証できず」「政権への配慮か」との見出し、小見出しの記事が載っていた。
経営側の要請である「ベア非公表」に対し、労働組合側が「どのように対応したのか」という点に非常に関心をもったが、その際、一旦は「拒んだ」ようであるが、結果的には「受け入れた」という事である。
この動きに対し新聞記事は、「政権への配慮か」という評価に終わっていたが、この問題はそれだけではない。新聞は労働組合運動におけるもっと重要な点を見落としている。それは、トヨタの労働組合が労働運動の基本原則である「団結」原則を打ち捨てたという事であり、それは「これまでの労働組合運動スタイルから離脱する道を選んだ」事である点である。経営側の思惑通りに労働組合運動が分断されたという事なのである。
(2022年2月12日投稿)