2016年10月20日、松井府知事は記者会見で今回の大阪府警の機動隊員による差別発言について、擁護する姿勢を示し、反論した。この発言にみられる思想は、先日の安倍首相による「所信表明演説」や「自民、強行採決を考えたことない」国会答弁の背景となっている思想と同一のものである。
松井氏の発言を拾い上げてみると、
「彼自身、命令に従って沖縄のために無用な衝突がおこらないように職務を遂行しているわけで、あまりにも個人を特定されて、大メディアも含めて徹底的にたたく。これやり過ぎでしょう」
「もともと混乱地で、無用な衝突を避けるために、警察官が全国から動員されている。じゃあ、混乱を引き起こしているのはどちらなんですか」
「日米ガイドラインに従い、基地返還のためにヘリパッドを造っている。反対派の皆さんもね、その反対行動、あまりにも過激なんじゃないか」
「発言は不適切だが、個人を徹底的にたたくのは違うのではないか。相手もむちゃくちゃ言っているのに、すべて許されるのか」
「人間ができていないのだろうが、『売り言葉に買い言葉』で口がすべったのではないか」
「沖縄に圧倒的な基地負担してもらっているのは申し訳ないが、全国の警官が無用な衝突を防ぐため一生懸命働いているのは事実」
などの発言が見られる。
安倍首相をみると
所信表明演説では、
「現場では、夜を徹して、今この瞬間も、海保、警察、自衛隊の諸君が、任務に当たっています。極度の緊張感に耐えながら、強い責任感と誇りを持って、任務を全うする。その彼らに対し、今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」
国会答弁(TPP承認案を審議する衆院特別委)では、
「我が党においては1955年の結党以来、強行採決をしようと考えた事はない」と発言している。
両者に共通する思想は、安倍政権や松井府知事が、警察機動隊が命令に従って職務を遂行しているとして「称賛」し「敬意」を表している事、「差別発言」や「強行採決と批判される結果」に至った原因について、差別発言を発するに至らしめたり強行な採決に至らしめた原因が、自民党や機動隊員らにあるのでなく、「野党」や「基地建設反対派」の姿勢にあるのだという「判断認識」をしている事である。つまり、原因は「相手側」にあるとする「責任転嫁」の「判断認識」なのである。このような「判断認識」があらゆる事象に対するベースとなっており、彼らの「歴史認識」のベースにもなっているという事である。先の侵略戦争を「東洋平和のための自衛戦争」とみなしているように。
さて、「差別発言」(人権侵害発言)など人権に関する事象については、常に事後の適切な指導研修をする事が大切である。その規模も、当事者だけでなく組織全体を対象とするのが常識である。この後国民が重視し考えなければならない事は、その指導研修を各機関に要求し、それを、誰が、どこで、どのように責任を持って実施するかを公表させ、厳しく検証する事である。
菅官房長官は19日には「警察官が不適切な発言を行った事は大変残念だ」と述べ、20日には「許すまじき行為であって、警察において再発防止など適切に厳しく対応する」の述べている。
また、警察庁長官は20日に「機動隊員の発言は不適切で、極めて遺憾だ。今後このような事案の絶無を期すとともに、適切な警備を行うよう指導を徹底していきたい」と述べている。
また、大阪府警警備総務課は「不適切な発言があった。今後このような事がないよう、指導を徹底したい」と述べている。
各機関は、自ら進んで組織全体での指導研修を実施すべきであるのは当然であるが、国民は各機関に対し、人権尊重についての指導研修を要求すべきである。
このような事に意識が及ばない事こそ「松井府知事」の知事としての資格が問われるべきなのである。知事失格である。
何といっても、公務員という国民に奉仕すべき立場にある存在なのだから、憲法第99条「憲法尊重擁護の義務」の「天皇及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」という規定を順守する事は当然であり、国民はそれを要求する事は当然の権利なのである。
大阪府警については、その募集ポスターをみても、その人権意識や品性において、このようなものを公的機関のポスターとして責任者が許可しているのかと思い異常な印象をうけているが皆さんはどうですか。
(2016年10月21日投稿)