つれづれなるままに心痛むあれこれ

知る事は幸福度を高める

増補版 石橋湛山首相のプレスクラブ演説(1957年1月25日)抜粋、米ソ両国政府とどう対応するか?

2024-04-27 23:09:56 | 日本人

 石橋湛山は1956年12月23日から57年2月23日まで首相を務めた。その首相が1957年1月25日の行ったプレスクラブでの演説内容である。ここには今日の日本の政治の在り方を考える上で大いに参考になる事がうかがえる。以下にその抜粋を紹介したい。 

「昔から国際間の紛争を見るに、互いに相手を侵略者なり、秩序の破壊者なりと一途に疑いて、これを非難し、その侵略者、破壊者の中にも、互いに心を軟らかにして見直すならば、また仏(ほとけ)を発見し得るにもかかわらず、強いて目をふさいで来た感が強いのです。今日の国際関係を調整する道も、この互いに疑い合う心境から脱却する事が、まず第一の要件ではないでしょうか。私はかようの信念に基づいて、わが国民と共に、世界の平和と繁栄のために、できる限りの努力をして行きたいと考えます。私は、もちろんいかなる主義主張に対しても、もしそれが人類の幸福を増進するに役立つものである事が証明されるならば、これを忌み嫌う理由はないと信じます。だがそのある主義主張を実現する手段として、独裁専制政治を布き、一般国民の自由を窒息せしめるごとき事は、我々の耐えがたきところであります。いわんや他国から何らかの力をもって、さようの独裁専制政治を押し付けられる事になっては、あくまでこれに反抗しなければなりません。さようの危険のない限り、たとい共産主義を国是とする国であろうとも、私は共存共栄の道を歩んで行くべきだと思います。………第2次世界大戦後、列国の軍備が縮減しないのみか、軍備競争がかえって激化した感のある事は、迷惑至極であります。それは、いずれも自衛のためだと唱えられています。だが昔から、いかなる国でも、自ら侵略的軍備を保持していると声明した国はありません。すべての国が自分の国の軍備はただ自衛のためだと唱えて来ました。たぶん彼らはそう心から信じてもいたでありましょう。だが、自衛侵略とは、戦術的にも戦略的にも、はっきりした区別のできる事ではありません。かくて自衛軍備だけしか持っていないはずの国々の間に、第一次世界戦争第二次世界戦争も起こりました。もし同じようにして今後大きな戦争が起こるなら、原子力兵器の発達した世界において、それは人類の滅亡を意味するでありましょう。いな原子力兵器の実験だけでさえも人類の滅亡を招来する危険があります。人類を救わんとするならば、我々は軍備拡充競争を停止し、戦争を絶滅しなければなりません。わが国の国連代表が、近ごろ原子力兵器の実験に関して行った提案(※1)のごときも、いささかさようの趣旨に従ったものであります。………

※1 1956年1月原子力委員会発足。同年4月東海村に原子力研究所設置決定(57年8月点火)、などの事と考えられる。

 わが国は古く19世紀以来自由主義諸国と親好を保ち、これを外交の基調として、国際社会に処して来ました。不幸にしてその関係は第二次世界戦争中一時中絶しましたが、1945年以来再び回復し、爾来一層の親密を加えるに至りました。私は今日この親好関係を変更すべき理由を何ら発見いたしません。昨年(56年12月)ソ連との国交正常化が実現し、今後同国との国交も親善を深めるに至りましょう。深める事を望みます。だがその事は自由諸国との友情を冷やかにし、薄くしなければならない理由にはなりません。

 しかし、そうだからとて私は俗に向米一辺倒というがごとき、自主性なき態度をいかなる国に対しても取る事は絶対に致しません。米国は最近の世界においては自由諸国のリーダーたる位置にあります。また戦後わが国とは最も深い関係にある国です。従って私は米国とは特に緊密の上にも緊密な協調を保って行く覚悟です。だがそのためには、私は米国に向け率直にわが国の要求をぶっつけ、わが国の主張に耳をかしてもらわなければならないと信じます。その結果は、時々主張が一致せず、気まずい思いをお互いにしなければならない事も起こるかも知れません。だが、それは緊密を増進する手段としての一時の不一致である事を知ってもらわなければなりません。米国以外の自由諸国、ソ連その他の諸国についても同様の方針で臨みます。幸いにして諸君を通じて、私の意の存するところの諒解を、これら諸国に求めえられるなら感謝の極みです。」以上。

(2021年6月20日投稿)

                                

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