OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スタジオは魔界?

2006-10-10 17:25:33 | Jimi Hendrix

世間は某国の核実験で騒然としており、我国はキツイ態度を表明しておりますが、まずは核実験そのものが本当に行われたのか、間違いない証拠を掴んでからにしてほしいです。

つまり自制をうながしたいですねぇ、某国も含めて世界中に!

もちろん「顔」を潰された大国や戦争で金儲けしたい国の思惑が見えますが、我国としてはねぇ……。

お互い逆の事をやられたら、どう思うのか、熟慮してほしいものです。

と、本日はちょっと政治に走ってしまいましたが、気分はファンキーロックに入っていますので――

Carsh Landing / Jimi Hendrix (Polydor)

夭折した天才ギタリストのジミ・ヘンドリクスが、死後に発表されてしまった作品集です。

「されてしまった」というのは、これがけっしてジミヘン本人が納得して、望んだものではないからです。それはジミヘンが生前に仕上げることが出来なかった、つまり未完成のものばかり……。

しかし、このアルバムがそういうクズや断片ばかりかというと、そうではありません。個人的にはジミヘンの死後に発売されたアルバム中、最高の1枚だと思っています。

その理由と内容は、ジミヘンが残した未完成の録音から、使える部分だけを厳選抽出し、それにスタジオミュージシャンが補完演奏をダビングして完成させたものだからです。

プロデュースはジミヘンの理解者だったアラン・ダグラスとエンジニアのトニー・ボンジョビで、ほとんどの曲がジミヘンの歌とギターしか使っていません。そしてそこにジェフ・ミロノフ(g)、ボブ・バビット(b)、アラン・シュワルツバーグ(ds) という超一流のスタジオミュージシャンがバック演奏をダビングしたわけですが、凄腕の彼等にしても、これは壮絶な仕事だったと、後に語り草になったほどの荒業でした。

そして1975年に発売されたこのアルバムは、忽ち大ヒット! その内容は、あまりの凄さに陶然とするほどです――

A-1 Message To Love / 恋のメッセージ
 この曲にはほとんど手が加えられておらず、ジミヘン(g,vo)、ビリー・コックス(b)、バディ・マイルス(ds,vo)、ジューマ・サルタン(per) というバンド・オブ・ジプシーズが中心のスタジオセッションです。録音はおそらく1970年頃でしょう。
 その演奏はブラックロックの極致で、しなやかなジミヘンのギターが圧巻! 全体の荒っぽさが逆に魅力で、これはあえて残したものでしょうか?
 ちなみに女性コーラスが後のダビングだと思われます。

A-2 Somewhere Over The Rainbow
 さて、こここからがスタジオミュージシャンが仕上げた演奏です。
 オリジナル演奏は1968年3月頃とされていますが、そこからジミヘンのギターと歌だけ取り出し、ジェフ・ミロノフの非常に上手いギターで全体が装飾してあります。流石に間奏のギターソロはジミヘンでしょうが、オカズやリズムギターはジェフ・ミロノフでしょう。
 とても混濁した仕上がりですが、実は最高の素晴らしさです。

A-3 Crash Landing
 オリジナルは1969年に録音されたデモテープとされており、そこにダビングで様々なギターとコーラスを被せ、リズム隊をダビングするためにテープスピードの操作もあるようです。
 しかしこれが、本当に強烈な仕上がりで、おそらくジミヘンが生き続けていたら、このセンをねらった!? という説得力があります。元祖ファンキーロック♪

A-4 Come Down Hard On Me
 これも強烈なファンキーロックです。
 その源はダビングされたドラムスとベースによる16ビートのグルーヴですが、ギターもほとんどジェフ・ミロノフが弾いているように思います。
 つまりジミヘンはボーカルだけ……? しかしこれまた、最高なんですねぇ~!

B-1 Peace In Mississippi
 このアルバムのハイライト!
 初っ端からシャープで重いジミヘンのギターが大爆発です!
 これには凄腕のスタジオミュージシャンも付いていくのがやっと、という雰囲気が充満していますねぇ~♪
 オリジナルは1968年10月の録音とされており、もちろんノエル・レディング(b) &ミッチ・ミッチェル(ds) によるエクスペリエンスの演奏でしたが、きっとジミヘンのギターが凄過ぎたのでしょうかねぇ~、リズムが乱れまくったらしいです。
 したがってここで再生された演奏がベストなんでしょう。実際に物凄い出来です! 必聴ですよ!

B-2 With The Power
 これは「A-1」と同時期・同様のメンツによるバンド・オブ・ジプシーズの演奏ですが、明らかにダビングと手直しが入っています。
 う~ん、それにしてもジミヘンのボーカル♪ 実はギターよりも好きなほどです。もちろんギターも発狂しそうに凄いですよっ! あくまでも推察ですが、「A-1」とカップリングでシングル発売を目論んでいたのかもしれません。

B-3 Stone Free Again
 これはもう、有名な演目の再演バージョンです。
 演奏は完全にスタジオミュージシャン達で、ボーカルだけを加工してオリジナルの別テイクから持って来たのでしょうか?
 なかなかスマートなファンキーロックです。ちょっと綺麗すぎるほどですけどね……。

B-4 Captain Coconut
 さてこれが問題の演奏で、元々は映画「レインボウ・ブリッジ」のためのサントラ音源を加工したものですが、実はそのオリジナル音源にジミヘン本人がどこまで演奏に加わっていたか、明らかにされていないようです。
 しかし実際に聴かれる演奏は非常に魅力的で、宇宙とサイケの有機的化学変化とでも申しましょうか、伸びやかで煮詰まったジミヘンの二律背反するギターが強烈です。もしかすると色々なセッション音源から集めてきたものかもしれません。
 とにかくアルバムの大団円には相応しく、スタジオミュージシャン達も各々の立場をわきまえた好演を聴かせてくれるのでした。

ということで、その経緯から、現在では全く無かったことにされているアルバムで、もちろん廃盤状態かと思われますが、実はこれ以上無いほどに最高の仕上がりです。

イノセントなファンからは忌み嫌われていますが、リアルタイムでは大ヒットしていますし、無残な出来とはいえ、忽ち続篇までもが作られたのですから、天才は死しても名盤を残すという証明の1枚です。

魔界からの贈り物かもしれませんが……♪

機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。アナログ盤なら入手は比較的容易かと思います。

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燃えるぜっ!

2006-02-08 14:57:40 | Jimi Hendrix

今日は夕方から仕事での大一番が控えているので、絶対にこれを聴いてテンションを高めようと決めていました。

また本日から、ちょっと書き方を変えてみました。と言うか、敬愛するジミ・ヘンドリクスのアルバムなので、書いているうちにそうなったわけですが――

Jimi Hendrix : Blues (MCA)

ジャズにおいて誰も乗り越えられないのがチャーリー・パーカー(as) だとしたら、ロックの世界ではジミ・ヘンドリクスでしょう。これは単に楽器奏者としての腕前だけでなく、その生き様、音楽に対する姿勢、さらに後々への影響等々、いろいろな角度から検証してみても、断言出来ると思います。

等と、本日も独断と偏見に満ち溢れた書き出しですが、実際、ジミヘンが演じて残した全ての音源には、聴く度に圧倒されます。しかもチャーリー・パーカーと同様、この人もまたドラッグの悪影響で道半ばで早世、しかも残された音源は次々に発掘されているという、ファンならば感涙の世界にいる天才です。

したがってジミヘンなどと軽々しく呼んではならない人なのですが、私の世代では憧れと畏敬の念、そして親しみをこめて、あえてジミヘンと呼ぶことをご理解願います。

で、そのジミヘンが残した音源の中からブルースに関するものに的を絞って編集したアルバムが、今回ご紹介のCDです。もちろん内容は既発と未発表の混ぜ合わせですが、黒人としてはややブルース味が希薄だと言われていたジミヘンの、それに対するアプローチが存分に楽しめます。その内容は――

01 Hear My Train A Comin' (録音:1967年12月19日) 
 ジミヘンが生ギターだけで弾き語る有名なプロモ・フィルムからの音源です。これは映像が色々なDVDで復刻されていますので、そちらもご覧下さい。

02 Born Under The Bad Sign (録音:1969年12月15日)
 このアルバムが初出となる演奏で、メンバーはジミヘン(g,vo)、ビリー・コックス(b)、バディ・マイルス(ds) からなるバンド・オブ・ジプシーズによるスタジオ録音です。元曲はご存知、アルバート・キングの大ヒットですが、同じ左利きの黒人ギタリストということで、そのあたりを意識したのでしょうか? ジミヘンにしては、やや煮え切らない演奏です。しかしそれでも真似出来ないエモーションが渦巻いていますよ♪ ちなみにほとんどが演奏パートばかりで歌が出ないのが残念……。

03 Red House (録音:1966年12月13日)
 あまりにも有名なジミヘン自作のブルースですが、ここに収められたものがオリジナル・バージョンです。メンバーはジミヘン(g,vo)、ノエル・レディング(b)、ミッチ・ミッチェル(ds) からなるエクスペリエンスで、演奏は素晴らしいの一言に尽きます。
 で、この曲の初出は1967年5月にイギリスで発売された1stアルバムですが、それがアメリカで発売された時には、なんとこの曲が外され、その後、ベスト盤に入れられた時には別バージョンに差し変えられていたのです。さらにそれがCD化の際にもそのまんまになっているというわけで、もちろん両方が大名演なのですが、個人的にはこのオリジナル・バージョンの方が、ジミヘンのエモーションナルな掛声なんかがあって、好きです。

04 Catfish Blues (録音:1967年11月10日)
 オランダでのテレビ出演からの音源で、メンバーはエクスペリエンスです。オリジナルは黒人伝承のブルースですが、多くの黒人ブルースマンが改作して取上げており、その意味ではこのバージョンもそのひとつというわけです。その演奏は粘りつくような前半のノリから過激な中盤のインスト・パートを経て、ミッチ・ミッチェルのドラムソロ、さらにジミヘンのサイケフレーズが爆発する大団円と、見事な展開を聞かせてくれます。もちろんブルース味は希薄で、全篇がロックしていますよ♪

05 Voodoo Chile Blues (録音:1968年5月2日)
 このCDが初出の音源で、メンバーはジミヘン(g,vo)、ミッチ・ミッチェル(ds) に加えてトラフィックのスティーヴ・ウィンウッド(org) とジェファーソン・エアプレインのジャック・キャサデイ(b) というオールスターによる、大ブルースロック大会が満喫出来ます。もちろん名盤「エレクトリック・レディ・ランド」の没テイクですから、悪いわけがありません。スローな展開の中に情念を吐露するジミヘン、共演者もそれを良く理解したサポートに徹しているところが潔いと感じます。

06 Mannish Boy (録音:1969年4月22日)
 これも初出で、演奏メンバーはバンド・オブ・ジプシーズです。アップテンポの展開の中でボーカルとユニゾンでキメのフレーズを吐き出すジミヘンは。私が最も好むところです。バディ・マイルスのドラムスもワイルドにノッています。う~ん、それにしてもジミヘン、余裕で荒業を繰り出している様が凄すぎます。こんなにギターを弾けたら、楽しい限りでしょうねぇ~♪

07 Once I Had A Woman (録音:1970年1月23日)
 これも前曲と同じく、バンド・オブ・ジプシーズによる未発表曲です。スローな展開でジミヘンが気だるいギターをたっぷりと聞かせてくれますが、誰かさんのハーモニカが加わっているのがミソです。ドロ~ンとしたジミヘンのボーカルも味の世界♪

08 Bleeding Heart (録音:1969年3月18日)
 一応、ここが初出となっていますが、海賊盤では比較的有名な名演でした。メンバーは不明ながら、ミッチ・ミッチェルの参加は確実でしょう。もちろんスタジオ録音で音質も良好、鋭いジミヘンのギター&ボーカルが楽しめます。

09 Jelly 292 (録音:1969年5月14日)
 これも初出とはいいながら、海賊盤では知られていた演奏で、スタジオでのジャムセッションです。参加メンバーはジミヘンの他にスティーブン・スティルス(p)、ジョニー・ウインター(b)、ダラス・テイラー(ds)という豪華オールスターズとされておりますが、真偽のほどは不明です。肝心の演奏はジミヘンが激しく燃えまくり♪ 最初から最後まで強烈なジミヘン節が炸裂するギターが楽しめます。発狂寸前!

10 Electric Church Red House (録音:1968年10月29日)
 エクスペリエンスにバディ・マイルス(ds) とリー・マイケルズ(org) が加わった演奏で、もちろん原曲は「Red House」と同じですが、これも凄いバージョンです。エレキベースはブリブリ蠢くし、オルガンはヒーヒー泣きます。もちろんドラムスはビシバシ! そしてジミヘンのギターはボーカルと一体になって激しくコール&レスポンスを展開してクライマックスに突進していくのでした。やや予定調和的ではありますが、余人には真似の出来ない演奏だと思います。

11 Hear My Train A Comin' (録音:1970年5月30日)
 初っ端に収められた同曲のライブ・バージョンで、もちろんエレキがピンビンです。メンバーはジミヘン(g,vo)、ビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(ds)、名演とされるバークレイ・シアターにおけるファースト・ショウからの音源ですから、もう最高です。ブルースなんですが、全くのロックですね、これはっ♪ こんな激しく情念を爆発させるギタリストは他にいません! 爽快! こんなん生で体験したら……、う~ん、恐くて書けません。

ということで、これはジミヘンのブルースアルバムのはずが、演じている中身は完全にロックです。否、ジミヘンの残した音源は、どんなものでも不滅の価値があるわけですが、それが如何にひとつのジャンルに括ることが出来ないか、はっきりと感じてしまいます。

皆様にはぜひとも聴いていただきたいのは、この作品だけでなく、ジミヘンの全てなのです。

さあ、これからが正念場!

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