世間は某国の核実験で騒然としており、我国はキツイ態度を表明しておりますが、まずは核実験そのものが本当に行われたのか、間違いない証拠を掴んでからにしてほしいです。
つまり自制をうながしたいですねぇ、某国も含めて世界中に!
もちろん「顔」を潰された大国や戦争で金儲けしたい国の思惑が見えますが、我国としてはねぇ……。
お互い逆の事をやられたら、どう思うのか、熟慮してほしいものです。
と、本日はちょっと政治に走ってしまいましたが、気分はファンキーロックに入っていますので――
■Carsh Landing / Jimi Hendrix (Polydor)
夭折した天才ギタリストのジミ・ヘンドリクスが、死後に発表されてしまった作品集です。
「されてしまった」というのは、これがけっしてジミヘン本人が納得して、望んだものではないからです。それはジミヘンが生前に仕上げることが出来なかった、つまり未完成のものばかり……。
しかし、このアルバムがそういうクズや断片ばかりかというと、そうではありません。個人的にはジミヘンの死後に発売されたアルバム中、最高の1枚だと思っています。
その理由と内容は、ジミヘンが残した未完成の録音から、使える部分だけを厳選抽出し、それにスタジオミュージシャンが補完演奏をダビングして完成させたものだからです。
プロデュースはジミヘンの理解者だったアラン・ダグラスとエンジニアのトニー・ボンジョビで、ほとんどの曲がジミヘンの歌とギターしか使っていません。そしてそこにジェフ・ミロノフ(g)、ボブ・バビット(b)、アラン・シュワルツバーグ(ds) という超一流のスタジオミュージシャンがバック演奏をダビングしたわけですが、凄腕の彼等にしても、これは壮絶な仕事だったと、後に語り草になったほどの荒業でした。
そして1975年に発売されたこのアルバムは、忽ち大ヒット! その内容は、あまりの凄さに陶然とするほどです――
A-1 Message To Love / 恋のメッセージ
この曲にはほとんど手が加えられておらず、ジミヘン(g,vo)、ビリー・コックス(b)、バディ・マイルス(ds,vo)、ジューマ・サルタン(per) というバンド・オブ・ジプシーズが中心のスタジオセッションです。録音はおそらく1970年頃でしょう。
その演奏はブラックロックの極致で、しなやかなジミヘンのギターが圧巻! 全体の荒っぽさが逆に魅力で、これはあえて残したものでしょうか?
ちなみに女性コーラスが後のダビングだと思われます。
A-2 Somewhere Over The Rainbow
さて、こここからがスタジオミュージシャンが仕上げた演奏です。
オリジナル演奏は1968年3月頃とされていますが、そこからジミヘンのギターと歌だけ取り出し、ジェフ・ミロノフの非常に上手いギターで全体が装飾してあります。流石に間奏のギターソロはジミヘンでしょうが、オカズやリズムギターはジェフ・ミロノフでしょう。
とても混濁した仕上がりですが、実は最高の素晴らしさです。
A-3 Crash Landing
オリジナルは1969年に録音されたデモテープとされており、そこにダビングで様々なギターとコーラスを被せ、リズム隊をダビングするためにテープスピードの操作もあるようです。
しかしこれが、本当に強烈な仕上がりで、おそらくジミヘンが生き続けていたら、このセンをねらった!? という説得力があります。元祖ファンキーロック♪
A-4 Come Down Hard On Me
これも強烈なファンキーロックです。
その源はダビングされたドラムスとベースによる16ビートのグルーヴですが、ギターもほとんどジェフ・ミロノフが弾いているように思います。
つまりジミヘンはボーカルだけ……? しかしこれまた、最高なんですねぇ~!
B-1 Peace In Mississippi
このアルバムのハイライト!
初っ端からシャープで重いジミヘンのギターが大爆発です!
これには凄腕のスタジオミュージシャンも付いていくのがやっと、という雰囲気が充満していますねぇ~♪
オリジナルは1968年10月の録音とされており、もちろんノエル・レディング(b) &ミッチ・ミッチェル(ds) によるエクスペリエンスの演奏でしたが、きっとジミヘンのギターが凄過ぎたのでしょうかねぇ~、リズムが乱れまくったらしいです。
したがってここで再生された演奏がベストなんでしょう。実際に物凄い出来です! 必聴ですよ!
B-2 With The Power
これは「A-1」と同時期・同様のメンツによるバンド・オブ・ジプシーズの演奏ですが、明らかにダビングと手直しが入っています。
う~ん、それにしてもジミヘンのボーカル♪ 実はギターよりも好きなほどです。もちろんギターも発狂しそうに凄いですよっ! あくまでも推察ですが、「A-1」とカップリングでシングル発売を目論んでいたのかもしれません。
B-3 Stone Free Again
これはもう、有名な演目の再演バージョンです。
演奏は完全にスタジオミュージシャン達で、ボーカルだけを加工してオリジナルの別テイクから持って来たのでしょうか?
なかなかスマートなファンキーロックです。ちょっと綺麗すぎるほどですけどね……。
B-4 Captain Coconut
さてこれが問題の演奏で、元々は映画「レインボウ・ブリッジ」のためのサントラ音源を加工したものですが、実はそのオリジナル音源にジミヘン本人がどこまで演奏に加わっていたか、明らかにされていないようです。
しかし実際に聴かれる演奏は非常に魅力的で、宇宙とサイケの有機的化学変化とでも申しましょうか、伸びやかで煮詰まったジミヘンの二律背反するギターが強烈です。もしかすると色々なセッション音源から集めてきたものかもしれません。
とにかくアルバムの大団円には相応しく、スタジオミュージシャン達も各々の立場をわきまえた好演を聴かせてくれるのでした。
ということで、その経緯から、現在では全く無かったことにされているアルバムで、もちろん廃盤状態かと思われますが、実はこれ以上無いほどに最高の仕上がりです。
イノセントなファンからは忌み嫌われていますが、リアルタイムでは大ヒットしていますし、無残な出来とはいえ、忽ち続篇までもが作られたのですから、天才は死しても名盤を残すという証明の1枚です。
魔界からの贈り物かもしれませんが……♪
機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。アナログ盤なら入手は比較的容易かと思います。