OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

炎と言われたジミヘンのライブ

2011-09-25 16:05:15 | Jimi Hendrix

The Jimi Hendrix Concerts (CBS)

あまりに早すぎる、その突然の訃報ゆえに、ジミ・ヘンドリックス=ジミヘン(vo.g) の未発表音源は何時の時代も待望され続けてきました。

中でもライプステージの記録は、何かと本人の承諾を得ずに加工されたスタジオアウトテイクでは無い、生身のジミヘンに接することが出来るという点において、常に求められていたのですから、1982年に世に出た本日ご紹介の2枚組LPは相当な勢いがありましたですねぇ~♪

 A-1 Fire (1968年10月12日:ウインターランド / 1st show)
 A-2 I Don't Live Today (1969年5月24日:サンディエゴ・スポーツアリーナ)
 A-3 Red House (1970年7月17日:ニューヨーク)
 B-1 Stone Free (1969年2月24日:ロイヤル・アルバート・ホール)
 B-2 Are You Experienced (1968年10月10日:ウインターランド / 1st show)
 C-1 Little Wing (1968年10月12日:ウインターランド / 2nd show)
 C-2 Voodoo Chile (1968年10月10日:ウインターランド / 1st show)
 C-3 Bleeding Heart (1969年2月24日:ロイヤル・アルバート・ホール)
 D-1 Hey Joe (1970年5月30日:バークレイ)
 D-2 Wild Thing (1968年10月12日:ウインターランド / 1st show)
 D-3 Hear My Train A Comin' (1968年10月10日:ウインターランド / 2nd show)

上記演目は付記した録音データのとおり、今となっては以降に出されたCDやブートによって確実性の高い鑑賞も可能になっているわけですが、リアルタイムでは非公式だったソースが多く、しかもそれゆえに悪かった音質が出来うる限り改善されていたのが大きなセールスポイントでありました。

メンバーはご存じのとおり、ノエル・レディング(b)、ビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(ds) が随時ジミヘンとトリオを組んでの熱演ばかり!

と書きたいところなんですが、ちょいとした不満も無いわけではありません。

それは、もっと凄い演奏が残されているという現実が既にブートで明らかにされていたところから、何故、あのトラックが???

という疑問がジミヘン信者やマニア&コレクターばかりか、一般のファンでさえも心に蟠ったのです。

結論から言えば、それは権利関係の大きな壁であり、例えば1969年2月24日のロイヤル・アルバート・ホールの音源は、その代表格として、中途半端にしか使えないのが実情だったのです。

しかし、そんな雑念(?)は、やっぱりレコードに針を落した瞬間から霧散させられる勢いが、ここにはあるんですよねぇ~~♪

特にオーラスに置かれた「Hear My Train A Comin'」の捻じ曲げられたブルース解釈は圧巻で、これぞっ! ブルースから派生したロックの極北かもしれません。当然ながらノエル・レディングとミッチ・ミッチェルの堅実に先を読んだ助演も流石であり、緩急自在に緊張と緩和を繰り返しながらバンドとしての一体感を追及する展開は、名演の決定版だと思います。

また同じウインターランドの演奏では、短いながらも濃密な「Little Wing」が素晴らしすぎますよっ! 緩やかなテンポで繊細さとエキセントリックな表現を両立させるギターは、やはり天才ならではの証じゃないでしょうか。もちろんあまり語られる事の少ないボーカルの味わいも、サイケおやじはジミヘンの声質や歌い回しが大好きなんで、高得点♪♪~♪

さらにフィードバックと混濁したコードワークが強靭なサイケデリックワールドを構築する「Are You Experienced」も、これがパンクだとか、デスメタルだとかの戯言を封印するだけのエネルギーに満ちていますよ。

そして気になる人気曲「Voodoo Chile」は、例によってイントロからワウワウとのコンビネーションが冴えまくるギターカッティング、そしてリズムに対するアプローチが圧巻ですから、「お約束」のワイルドに泣きじゃくるアドリブにも、激情のフレーズがテンコ盛り! サイケおやじは、思わず一緒にギターを弾きたくなる衝動を隠せませんが、それは不遜というものでしょう。

なにしろ全篇から圧倒されるジミヘンの気迫が、実は自然体という真相にも触れる事が出来るように思いますからっ!

その意味でロイヤル・アルバート・ホールにおける「Stone Free」も、これまた強烈の極みで、大技と小技の使い分けは絶妙という他はありません。

ちなみにロイヤル・アルバート・ホールのライプは、ジミヘンの高額なギャラに対する埋め合わせとして映画フィルムに記録されながら、未だに公式な一般公開が出来ていないという???の現実があって、それゆえに音源だけが法的な盲点を潜り抜ける(?)形で様々なレコードやCDに収められ、出回っています。

もちろん映像も今日まで、ブート市場のベストセラーになってきましたから、きっちりとしたリマスターで公開されるべきでしょう。

ただし、実はジミヘンの未発表ソースはライプ音源も含めて、全てがファンを納得させるものでは無いという現実が、確かにあります。

そのロイヤル・アルバート・ホールのステージにしても、個人的には散漫な印象を否定出来ない部分が!?

それは、このアルバムに収められた「Bleeding Heart」や「Hey Joe」の物足りなさにも同様に感じられ……。

ですから、このアルバムを編纂したプロデューサーのアラン・ダグラスは1969年以降、ジミヘンの音源管理を任されていたという権利を行使し、実に上手くファン心理を誘導したと思いますねぇ。特にジミヘンには、まだまだ膨大な「お宝」が隠されている事実を明かしたところは快挙でしょう。

ということで、既に述べたように、その「お宝」はCD時代に入ると、例えば4枚組セットの「ステージ」とか、6枚組セットの「ウインターランド・コンプリート」、あるいはバンド・オブ・ジプシーズのライプ音源集成等々、夢の様な再発が繰り返されてきました。

そして近年では、そのほとんどがジミヘンの遺族によって管理される状況となり、なんとなくひとつの道筋がつけられた感があります。

ただし現在までのところ、その再発は必ずしも「良」と言えるものばかりではありません。件のウインターランドにしても、またまた新編集の如き再発盤が出るので、一応はゲットする所存ですが、本音は……???

結局、保守的なサイケおやじは、いつまでも邦題「炎のライプ」と命名された、このアルバムから逃れられない宿命を感じています。

もちろん発売された1982年といえば、洋楽の世界はロックがニューウェイヴになっていましたから、すっかり聴く新譜が少なくなっていた自分にとって、最高のプレゼントだったというわけです。

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ジミヘン未完の美学

2011-06-12 16:49:57 | Jimi Hendrix

The Cry Of Love / Jimi Hendrix (Track / Reprise)

1971年春、つまりジミヘンが天国へ旅立って後、最初に発売された公式アルバムではありますが、もちろん死んだ者は何も語れませんから、本人の意向にどこまで忠実な作品であったかは知る由もありません。

しかし今日、良く知られているように、当時のジミヘンは過密な巡業スケジュールの中にあっても、スタジオでのレコーディング作業は前向きに継続中ということで、未完成な素材も含めての音源は相当に残されていたわけですし、それを関係者各々の思惑が優先して仕上げられた1枚と言ってはバチアタリでしょう。

それは何よりも、このLPが世に出た時のファンの反応が全てであって、結局は良くも悪くもジミヘンの凄さが痛感されるのです。

 A-1 Freedom (1970年6月25日録音)
 A-2 Drifting (1970年6月25日録音)
 A-3 Ezy Ryder (1969年12月19日録音)
 A-4 Night Brid Flying (1968年10月~1970年8月録音)
 A-5 My Friend (1968年3月13日録音)
 B-1 Straight Ahead (1970年6月17日録音)
 B-2 Astro Man (1970年6~8録音)
 B-3 Angel (1967年10月、1970年7月23日録音)
 B-4 In From The Storm (1970年7月22日録音)
 B-5 Belly Button Window (1970年8月22~24日録音)

上記の収録演目には後年リサーチ公表されたデータを付しておきましたが、それはあくまでもベーシックなものでしょうし、様々なダビングや編集等々の作業には前後数日間が要されたと思います。また当然ながら、このアルバムを纏め上げる中で、同様の作業があった事は言わずもがなでしょう。

ですから様々な試行錯誤や未完成故の纏まりの悪さは否めませんが、しかし野性的でしなやかに躍動するギターやディランに影響を受けたと思しき独得の歌いっぷりは健在ですし、なによりも未だに着地点の見えない無限大の可能性は非常に魅力的ですよ。

それはリアルタイムで聴いた時から今も変わらぬサイケおやじの個人的な感想ではありますが、とても未完成作品とは思えぬ濃密な世界が確かに存在しています。

なにしろ冒頭、正調ジミヘン節の力強さがたまらない「Freedom」から一転、カーティス・メイフィールド風のニューソウルパラード「Drifting」へと続く流れが、もうクセになるほどツボですよ♪♪~♪ いずれも複雑多岐なギターのオーバーダビングや参加ミュージシャンの的確なサポートがキーポイントでしょう。

その意味でファンキーロックな「Ezy Ryder」が孤独(?)なギターバトルであったり、妙に明るい「Night Brid Flying」がフュージョンの元祖的な味わいだったりするのは不思議でも何でもなく、如何にジミヘンがギターミュージックに長けていたかの証明じゃないでしょうか? 特に後者の緻密な作りには何度聴いても圧倒されてしまいます。

またリラックスしたブルースセッションの「My Friend」にしても、実はかなり意図的に作り上げられたような感じが賛否両論だとは思いますが、これはジミヘン本人が企図したものとは言えない気がします……。

しかし、そうした「わざとらしさ」も芸の内というか、B面では再び安心感の強いジミヘン節の「Straight Ahead」、急きたてられるようなギターの至芸が強烈な「Astro Man」、さらに今もって大人気のスローバラード「Angel」という美しき流れが、これまた大いに魅力♪♪~♪

そしてニューソウルとハードロックの幸せな結婚とも言うべき「In From The Storm」が幾分怖い雰囲気であったとしても、またオーラスの「Belly Button Window」は弾き語りのデモ録音がモロ出しであろうとも、アルバム全体の価値が下がるなんてことは絶対にありません。

ちなみにセッションに参加したミュージシャンはビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(ds)、バディ・マイルス(ds) というお馴染みの面々の他、スティーヴン・スティル(p)、ユマ・サルタン(per)、ジミー・メイブス(ds) 等々の名前が散見されるのも興味深いところでしょう。

実は現代の一般常識として、当時のジミヘンはこのあたりの録音を完成させ、「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン」と名付けられた2枚組LPを作ろうと奮闘していた最中、突然の悲報……。その結果として急遽発売されたのが、このアルバムという経緯がありますし、なによりも件の新作がどうやって調べられたのか、ジミヘンの企画意図に極力近いというウリにより、同じタイトルのCDアルバムになっているとあっては、これまで聴いていたのは、いったい何!?

そんな無駄骨折りを体感させれる虚脱感も否定出来ません。

もちろんサイケおやじは、その新しいCDもゲットして聴きまくっておりますが、当然ながら曲順もこのアルバムとは違いますから、個人的にはプログラムしなおして楽しむのが常道になっているのですが……。

ということで、時空を超えて凄いのがジミヘンの世界!

さあ、もう1回、聴こう!

当然それはアナログ盤LPで、AB面をひっくり返す儀式が必須というわけです。

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ジミヘンで寿ぐ新年

2011-01-01 15:17:54 | Jimi Hendrix

Jimi Hendrix Live At Berkeley 2nd Show (Experience Hendrix = CD)

最近はすっかり心身ともに老成モードに入りつつあるサイケおやじ、と書けば、お前は若い頃からそうじゃないかっ! と周囲から失笑まじりの叱責を受ける自分を自覚するばかり……。

しかし新しい年を迎えても、例えば聴くのは古い音源ばかりだし、そこへの拘りのスピードは加速するばかりなんですねぇ。

さて、そこで本日ご紹介はジミ・ヘンドリクスが1970年に残してくれた優良ライプマテリアルのひとつとして、これまでにも公式盤&ブートで断片的に出回っていた音源から、その「2nd Show」を纏めたものですが、発売された2003年の時点では正式に遺族の管理下にある商品として、リマスターもきっちりとしています。

 01 intoduction
 02 Pass It On (Straight Ahead)
 03 Hey Baby (New Rising Sun)
 04 Lover Man
 05 Stone Free
 06 Hey Joe
 07 I Don't Live Today
 08 Machine Gun
 09 Foxy Lady
 10 Star Spangled Banner
 11 Purple Haze
 12 Voodoo Cheld (Slight Return)

録音は1970年5月30日、メンバーはジミ・ヘンドリクス(vo,g) 以下、ジミー・コックス(b) にミッチ・ミッチェル(ds) という「続・エクスペリペリエンス」ですから、上記の演目からも一目瞭然、新曲も披露はしていますが、十八番のヒットパレード大会の中で炸裂するジミヘンの歌とギターが、これぞっの名演!

というか、非常に安定感があるんですよねぇ~、演奏全体に。

言い替えれば、心地良いマンネリでもあるんですが、やはりミッチ・ミッチェルのロックジャズなドラミングとの相性はジミヘンならではの個性を存分に引き出していると思いますし、ちょいと地味な感じもするジミー・コックスのベースにしても、潜在的な黒人特有のファンクなビートを基本にしているようですから、さもありなんでしょう。

しかしジミヘンが本来持っている攻撃的なロックフィーリングは、一概にブラックロックなんていう言葉では括れない爆発力が否定出来ません。

ですから、マンネリとはいえ、ここに収められた演目が時には絶妙のメドレー形式で繋がっていく瞬間も含めて、スリルと興奮は期待を裏切らないと思います。

もしかしたら初めてジミヘンを聴かれんとする入門用の音源かもしれません。

それほど典型的なジミヘン節が堪能出来るのです。

実は告白すると、昨年秋に待望の発売となったボックスセット「ウエスト・コースト・シアルト・ボーイ」を、サイケおやじは未だ、その全て楽しんでいません。

正直言えば、既出音源と未発表マテリアルの組み合わせという、如何にも当然の企画で纏められた収録トラックが、昔からのファンには聴き比べとか、驚きを強要している感じがして、疲れるんですよ……。

おまけに付属のDVDにしても、ジミヘン本人よりは周囲が思い込みで語っているような部分が多く感じられるんですねぇ。

そこで新春を寿ぎ、ストレートにジミヘンを楽しみたいサイケおやじは、思わずこのCDを取り出したというわけです。

くうぅぅ~、やっぱりジミヘンのギターは最高だぁ~~♪

曇ったような歌いっぷりのボーカルも唯一無二!

今後の希望としては、映像も残されている「1st Show」のマテリアルも纏めた完全盤を、ぜひっ!

ということで、今では良く言われるように、ギターだってもっと技術的に上手いミュージシャンが大勢いる中で、ジミヘンは時代遅れとする評価は真っ当かもしれませんが、いえいえ、音楽を聴く楽しみは個人の自由意思でしょう。

少なくとも、拙ブログでは今年も「オールドウェイヴ」を貫き通す所存です。

そして皆様におかれましては、ご幸多き年になりますように♪♪~♪

本年も、よろしくお願い申し上げます。

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今回も凄かったジミヘンの発掘音源集

2010-04-04 13:12:24 | Jimi Hendrix

Valleys Of Neptune / Jimi Hendrix (Experience Hendrix / Sony)

兼ねてより予告されていたジミヘンの完全未発表音源集!?!

これを素直に喜んで聴いていれば良いものを、サイケおやじはその秘密になんとか迫ろうと、あてどない暗闘を繰り返してしまうのが、本当に悪いクセです。

正直に言うと、ソニー系列からの発売なので、日本盤をオリジナルとして買えば、翻訳されたライターや詳細な解説書が付属しているはずでしょう。しかし大手ソフト屋のネット通販で同じ中身のデジパック仕様輸入盤が、千円ちょっとで売られているとすれば、ついつい手が出てしまうのもご理解願えると思います。

よって、英文ライナーを読みながら、あれこれ手持ちの旧音源を引っ張り出し、唸りながら聴いていた一応の結果報告を、ここにさせていただきます。

まず収録は以下の12曲♪♪~♪

 01 Stone Free (1969年4月7、9&14日、5月17日録音)
 02 Valleys Of Neptune (1969年9月23日&1970年5月14日録音)
 03 Bleeding Heart (1969年4月24日録音)
 04 Hear My Train A Comin' (1969年4月7日録音)
 05 Mr. Bad Luck (1967年5月5日録音)
 06 Sunshine Of Your Love (1969年2月16日録音)
 07 Lover Man (1969年2月16日録音)
 08 Ships Passing Through The Night (1969年4月14日録音)
 09 Fire (1969年2月17日録音)
 10 Red House (1969年2月17日録音)
 11 Lullaby For The Summer (1969年4月7日録音)
 12 Crying Blue Rain (1969年2月16日録音)

曲名の後に記した録音年月日は付属の英文ライナーからの転載ですが、個人的には???という部分が打ち消せませんし、ジミヘンの死後にオーバーダビングされたパートもあるという記述も気になりますが、それは各々、後で触れます。

で、まず特筆したいのは、アルバム全篇を通してのリマスターの統一感ということです。

当然ながら、ジミヘンの死後には未発表作品集がゴチャゴチャ売り出され、中には詐欺まがいのブツもあったわけですが、1995年以降はジミヘンの親族によってその大部分が管理され、また素材への実質的な関わりには、リアルタイムでエンジニアを務めていたエディ・クレイマーが今も引き継いでいるという賛否両論があります。

と書いたのも、いろんな音源をひとつの流れに纏めたり、あるいは修復をした段階で、ここに収録されたのが本当にリアルな音だったのか、ちょいと疑問に感じるからなのですが……。

まあ、それはそれとして、このCDでは一番に古い録音とされる「Mr. Bad Luck」は、後にLP「レインボー・ブリッジ」やCD「サウス・サターン・デルタ(MCA)」等々で世に出た「Look Over Yonder」の原型と解説書にあるとおり、演奏メンバーはジミヘン(vo,g) 以下、ノエル・レディング(b) とミッチ・ミッチェル(ds) の初代エクスペリエンスです。

ちなみにノエル・レディングもミッチ・ミッチェルも、1970年代だと言われていますが、音源に関する自分達の権利を10万ドル程度で手放したという、なんともバカらしい裏話は本当なんでしょうか?

それゆえに死後に残された音源が放埓に扱われ、また今日、ようやく統一されようとしているのは悲喜こもごもでしょうね。

で、肝心の「Mr. Bad Luck」はアップテンポのジミヘンロックで、秀逸なリマスターによってグッと重心の低いリズムとビートが炸裂する中、歪み気味のギターが暴れるという、まさに血沸き肉躍る演奏です。幾分コミカルな歌詞を歌うジミヘンのボーカルも良い感じ♪♪~♪ ただし元々の素材テープが痛んでいた所為でしょうか、解説書によれば、1987年にベースとドラムスがオーバーダビングされたとのことですが、それが誰だったのかは不明……。

そんな諸々の情報から個人的に推察すれば、おそらくはセカンドアルバム「アクシス:ボールド・オブ・ラブ(Track)」制作中のデモ音源に手が加えられたんじゃないでしょうか? ちなみに前述した「レインボー・ブリッジ」に収録され、1971年に世に出た「Look Over Yonder」は、1968年10月22日の録音とされています。

次に1969年2月16&17日録音の5曲、「Sunshine Of Your Love」「Lover Man」「Fire」「Red House」「Crying Blue Rain」は、ブートながら映像も出回っている同年18&24日のロイヤル・アルバート・ホール公演のリハーサル音源です。もちろんメンバーは前述のエクスペリエンスですが、ここではストーンズとも関わりの深いロッキー・ディジョーン(per) の特別参加が、ちょいと注目かもしれません。

そしてスタジオでのリハーサルながら、バンドのテンションは最高潮! ご存じ、クリームのヒット曲だった「Sunshine Of Your Love」はインストですが、中盤にはベースソロを設定したり、クリームの他の演目も断片的にやってしまったりと、なかなか憎めません。その意味でジミヘンのライプステージでは公式デビュー当時から定番だった「Lover Man」が、グッとテンポを落としたエグ味の強いものになっていたり、逆に疾走感満点に突進する「Fire」という感じで、なかなか意欲的です。もちろんジミヘンのギターは痛快至極! ボーカルパートを挟んで前後に激しくギターを泣かせる「Lover Man」、シンコペイトするミッチ・ミッチェルのドラミングや必死で存在感を認めさせようとするノエル・レディングのバックアップボーカルを置き去りにして宇宙へと舞い上がる「Fire」でのアドリブソロには、完全KO請け合いです。

そしてさらに凄いのが、「Red House」での情念の呻き! 最初は十八番の思わせぶりながら、そのエロスさえ感じさせるギターでの表現力は、ボーカルパートでの合の手も含めて、全く余人の入り込むスキがありません。もちろん後半のギターソロは、とてもリハーサルとは思えない熱の入り方で、本当にフェードアウトが勿体無い!!! う~ん、それでも至福の8分20秒♪♪~♪

しかし一応は新曲扱いの「Crying Blue Rain」は、完全に試行錯誤なブルースジャムというか、手さぐりでお約束のリックを積み重ね、ジミヘンの歌も「イェ~、イェ~」と唸るだけ……。しかし粘っこいブルースロックの枠組みの中で少しずつ形を作っていくバンド演奏の面白さは、ジミヘンがやっているがゆえに興味深々で、特に中盤からテンポを上げていく場面の乱れ方とか、いろんなコードを試し(?)弾きするところは、なんともリアルです。ちなみに付属解説書によれば、この演奏にも後年、ドラムスとベースがダビングされたことになっていますが、う~ん……。

そういう現場主義は、ステージの定番であったにも関わらず、死後になってようやく有名になったジミヘンがオリジナルのブルース「Hear My Train A Comin'」も同様で、1969年4月7日録音という、初代エクスペリエンスの結束が微妙な時期だけに、殊更ガチンコな演奏が楽しめます。おそらくはスタジオでの完成を目論んでいたんでしょうが、このド迫力な混濁した熱気をレコード化するのは、当時としては無理があったのかもしれません。それを今日、こうして聴ける喜びは至上のものです。いゃ~、本当に凄いですよっ!

そして同日に録音され、様々な手直しが施された「Stone Free」は結局、ノエル・レディングから交代参加したビリー・コックスのペースを得て、さらにファンキー&ワイルドに作り直されたお馴染みの人気曲♪♪~♪ 1966年に録音されたシングルバージョンに比べると、グッと黒人感覚が強くなっていて、まさにブラックロックの誕生というところでしょうか。新しく付け加えられたエンディングも、不思議な魅力かと思います。

それと、これも同日録音とされる「Lullaby For The Summer」は完全未発表のスピード感溢れるインスト! とにかくジミヘンの纏まりの良い暴れ方は何回ものオーバーダビングによるものとはいえ、その確信犯的な快感に酔わされますよ。ただし演奏メンバーは初代エクスペリエンスとされていますが、個人的には些かの疑問も……。

また、その最中の1969年4月14日に録音された「Ships Passing Through The Night」は、これも死後に発売されたLP「クライ・オブ・ラブ(Track)」に収録されていた名演「Night Bird Flying」の原型と各方面で言われていた幻のトラックですが、その軽やかに舞い踊るフィーリングに比して、この「Ships Passing Through The Night」は重心の低いハードロックがジミヘンそのもの!?! 幾層にも重ねられたギターの様々なリフやアドリブソロ、さらにベースやドラムスとの絡みも相当に練られていて、これがオクラ入りとは、流石に同時期の初代エクスペリエンスは爛熟していたんだなぁ~、と感慨もあらたなものがあります。

しかし1969年4月24日録音の「Bleeding Heart」は、それが完全に崩壊した後のセッションで、共演メンバーはビリー・コックス(b) とロッキー・アイザック(ds) という新顔組!?! 他に2人の打楽器奏者が参加とクレジットされていますが、同曲のエルモア・ジェイムスの古典に敬意を表したカパー演奏を披露していた同年3月18日の録音、つまり後に出たCD「ブルース(MCA)」収録のバージョンと比べると、実にブッ飛んだファンキーロックに変換されているのは痛快! いゃ~、このアップテンポのアレンジ、ジミヘンのカッコ良すぎるリズムカッティング、刹那的なボーカルと狂おしいギターソロ♪♪~♪ もちろん未完成なんですが、もう、最高ですよっ!

そしてお待ちかねっ! アルバムタイトル曲の名誉を勝ち得た「Valleys Of Neptune」は、録音データからしてジミヘンが新しい展開を求めての模索という雰囲気も濃厚というか、なんとも不思議な心持にさせられる王道ロックです。それは如何にもという曖昧な曲メロと投げやり気味のボーカル、相当に難しい伴奏系のギター等々が、一応の纏まりは聞かせてくれるのですが……。

もちろん公式に発売されるのは初めてでしょうし、リマスターによって迫力満点の音作りにはなっているのですが、例え本人自らの手によって完成されていたとしても、これは……??? う~ん、なんだかなぁ……。

ということで、肝心の目玉曲が私にはイマイチだったんですが、他は文句無しの優良発掘でした。ただし冒頭でもちょっと書きましたが、全体のリマスターに統一感を持たせようとした所為でしょうか、些かの作為は賛否両論かもしれません。

しかし、そんな不遜な暴言を反省する間にも、押さえきれない胸騒ぎがするのは確かです。つまり今日でも、これだけ凄い未発表音源が残されていたということは、次なる発掘と再発が本当に楽しみ!

前述したロイヤル・アルバート・ホール公演はプロショットの映像として映画用に撮られたものがブートで昔から出回っていますから、これの公式版は絶対でしょう。さらに分散しているライプ音源の統一や新しいソースによる復刻も期待するところです。

本当にジミヘンの音源は、何時までも楽しみがいっぱいですね♪♪~♪

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こんな幸せなジミヘン

2010-03-09 15:43:14 | Jimi Hendrix

Crosstown Traffic / Jimi Hendrix (Track / 日本グラモフォン)

今更なんですが今日、これ、買いました♪♪~♪

有名な裏焼き写真が使われたジャケットがマニア泣かせの1枚です。

しかも値段が4百円!?!

夢じゃないかと手が震えました。

お金を払って店を出た瞬間から、足が速くなったというか、ほとんど走って逃げた感じでしたよ。店主が追いかけてくるような気がして、です。

あぁ、こういうツイている日もあるんですねぇ~♪

申し訳ないんですが、気分が良いです。

でも、後が怖いなぁ……、一生分のツキを使い果たしたとしたら……。

一応、厄払いで後輩に昼飯、驕っておきましたです。

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ジミヘンの虹の架け橋

2010-01-15 15:07:19 | Jimi Hendrix

Rainbow Bridge / Jimi Hendrix (Reprise)

ジミヘンの死後、確か1971年末頃に出た未発表テイク集で、ジャケットには「レインボウ・ブリッジ」という映画のサントラみたいな記載もありますが、中身は全くの別物!

実は後にビデオですが、その映画を観た印象は、確かにジミヘンのライプステージも映ってはいたものの、ほとんど意味不明……。画質が悪いなぁ……、なんていう嘆きのほうが強かったですね、正直。

しかし、このアルバムは当時としては内容が充実の極みでした。

 A-1 Dolly Dagger / 1970年7月1日録音
 A-2 Earth Blues / 1969年12月19日録音
 A-3 Pali Gap / 1970年7月1日録音
 A-4 Room Full Of Mirrors / 1969年11月17日録音
 A-5 Star Spangled Banner / 1969年3月18日録音
 B-1 Look Over Yonder / 1968年10月22日録音
 B-2 Hear My Train A Comin' / 1970年5月30日録音 (live)
 B-3 Hey Baby (New Risinig Sun) / 1970年7月1日録音

まあ、今となっては各曲が様々な復刻CDに纏められ、なんか個人的には分散という気もしているんですが、とにかくこのアルバムは無かったことにされています。

それでもサイケおやじは、ジミヘンの死後に出た作品群の中では、些かの詐術も憎めないほどに愛聴した1枚です。

まず冒頭の「Dolly Dagger」からしてジミヘン流儀のファンキーロックが敢然と披露され、もちろんこれは未完成ながら、本来はシングル曲候補になっていた真相も理解出来るところです。本当にジミヘン自らの手で作られた完成テイクが聴きたかったですねぇ~。しかし、これでも相当に熱くなれるんじゃないでしょうか。

そして続く「Earth Blues」が、フィル・スペクター関連の黒人女性コーラスグループというロネッツを迎えての演奏として、その周辺のマニアからも熱い注目を集めたテイクなんですが、結論から言えば、彼女達はキメのコーラスフレーズを短く歌う程度です。しかしジミヘンの歌とギター、そして強靭なドラムスやベースと共謀した、しなやかな感性がたまりません。

それはフュージョン前夜祭という感じの「Pali Gap」へも受け継がれています。

ちなみに参考として記載したセッション年月日には様々な諸説があり、また後年に出たCDのプックレット等々を勘案しつつ、全くの個人的推察なのを御断りもしたうえで書きますが、このアルバムの中で一番に古いと思われ録音の「Look Over Yonder」はもちろん、またウッドストックでの強烈な陶酔演奏が印象的だった「Star Spangled Banner」にしても、その前向きな姿勢が実に潔いというあたりは感服するしかありません。

特に後者はアメリカ国家というよりも、ギターの執拗な多重録音や各種効果音の複合ダビングが本当に熱い、聴けば納得の反逆のテーマ!

そんな流れの中で違和感があるライプ録音の「Hear My Train A Comin'」でさえ、やっぱりジミヘンは、これでなきゃ~~ねっ!

ということで、これまたリアルタイムでの思い入れがなければキツイ作品集かもしれませんが、逆に言えば、今日の纏まった編集CDは音が良いかもしれませんが、私のような者にはちょいと構えて聞かされるのが正直な気持です。

ご存じのように、ジミヘン関連の音源は本年より契約会社がソニーになったとかで、またまたこれまでのオリジナルアルバムや編集盤が出直しになるようですが、もちろん様々なお楽しみやお宝の御開帳が予定されているとはいえ、実は初出の形態が無視されていくのは、いかがなもんでしょう。

それらは確かに、ジミヘン本人の意思とは無関係に節操なく出されたものではありますが、歴史であることも否定出来ないでしょう。

個人的には音質や音圧に幾分のバラツキも散見されるこのアナログ盤が、紙ジャケ仕様で当時の雰囲気を大切にしたリマスターによって発売されるなら、買ってしまうでしょうねぇ。

そんな儚い夢をジミヘンは許してくれるでしょうか。

最後になりましたが、前述した映画の「レインボウ・ブリッジ」に映し出されていたジミヘンの演奏は、全くこのアルバムには入っていません。しかし今日では準公式盤として、その1970年7月30日のライプ音源が出回っていますし、映画の演奏シーンだけ纏めた30分程度のビデオやLDも存在しています。

もしも願いが叶うなら、そうした未確定の音源や映像も抱き合わせて復刻し、リアルな「レインボウ・ブリッジ」アルバムの登場も熱望しているのでした。

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2枚目に買ったジミヘン

2009-10-15 11:59:18 | Jimi Hendrix

真夜中のランプc/w賭博師サムのサイコロ / Jimi Hendrix (日本グラモフォン)

偉大なジミ・ヘンドリックスは天才ギタリストというイメージが一番強いと思いますが、どっこい、サウンドクリエイター及びボーカリストとしての魅力も絶大! 個人的にもジミヘンのボーカルは大好きで、あの声質とボブ・ディランの影響が色濃いような歌いっぷりは、サイケおやじの感性にジャストミートしているようです。

さて、本日ご紹介のシングル曲「真夜中のランプ / Burning Of The Midnight Lamp」は、そうしたジミヘンのもうひとつの魅力が存分に味わえる名演でしょう。

いきなりイントロから意表を突かれるチェンバロの響きは、もちろんジミヘン独得の不可思議なエレキギターとユニゾンのダブルトラックになっていますが、これを最初にAMラジオのモノラル放送で聴いた時には、一瞬にして魔界へブッ飛ばされたような衝撃がありました。

そして続くドロドロにヘヴィな演奏本篇には、当然ながら重心の低いドラムスとピンピンのエレキベースが入っているものの、その音の録り方が意図的に潰したような手法ですし、ジミヘンのギターも出たり引っ込んだり!?!

実は、これはモノラルミックスでの印象で、しかし例えば傑作アルバム「エレクトリック・レディランド」あたりに収録のステレオミックスになると、ギターは左右のスピーカーを自在に浮遊し、全篇に不可解な彩りを添えているチェンバロの響きが、尚更に強烈なスパイスになったサウンドを楽しめるのですが、やはり45回転のシングル盤に特有の音圧の高さがあってこそ、ここに表現された歌と演奏は真価を発揮しているように思います。

もちろん強引に被せられた女性(?)コーラスが、サイケデリック期には欠かせないミステリアスなムードを増幅していますし、幾分棄てばちな感性さえ漂うジミヘンのボーカルは、ギタリストとしての本分よりも私は好きです。

ちなみにイギリスで発売されたのは1967年の夏、録音は7月頃とされていますから、メンバーはジミヘン(vo,g,key) 以下、ノエル・レディング(b)、ミッチ・ミッチェル(ds,per) という黄金のエクスペリエンス! しかもセッションの直前には、あのモンタレー・ポップ・フェスティバルに登場し、世界中に大衝撃を与えていたという、非常にテンションの高い時期でした。

ただし当然ながら、ジミヘンがスタジオで作り出していた歌と演奏には、プロデューサーのチャス・チャンドラーや録音エンジニアのエディ・クレイマーの働きも無視出来ないものがあると思います。しかし、そんな諸々を遥かに凌駕したジミヘンの創造力の充実が、このシングル曲には感じ取れます。

そしてB面に収録された「賭博師サムのサイコロ / The Stars That Play Laughing Sam's Dice」が、これまた強烈! こちらはジミヘンだけの正統派ハードロックなんですが、A面の「真夜中のランプ」に比べて、ちょいとばかり隙間だらけの音作りが、逆に粗野な雰囲気でバンドの強靭なグルーヴを演出しているようです。

実際、最初は軽く飛ばしている感じが、中盤からは毒々しいものへと変化し、過激に唸るジミヘンのギターが興奮を煽ります。あぁ、ガンガンに突き進む、この勢いが最高ですねぇ~♪ 随所に挿入される効果音や擬音という作り物めいた詐術も、ここでは結果オーライでしょう。一般的なイメージのジミヘンは、むしろB面にあるといって過言ではありません。

ということで、例によってアルバムが買えない若き日のサイケおやじは、このシングルを買いました。時は昭和43(1968)年末、我国ではGSブームが爛熟し、同時に昭和歌謡曲の全盛時代でもありましたが、洋楽の世界は明らかに別の次元が広がりつつあったのです。

ただし、それを感じていながら、やはり古い体質の私は、そうした日本の大衆音楽とニューロックを当時並行的に楽しめたのでしょうし、周囲の音楽好き、つまりロックファンからは軽視されていた歌謡曲の対極にあるジミヘンの歌と演奏にシビれる自分に、ある種の自己矛盾さえ感じていたのも、また事実です。

まあ、そんなこんなが、若さの特権だったかもしれませんね……。

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とにかく初めて買ったジミヘン

2009-08-09 12:05:43 | Jimi Hendrix

Hey Joe / Jimi Hendrix (Track / 日本グラモフォン)

カリスマミュージシャンにして、サイケおやじも心底敬愛するジミ・ヘンドリックスも、しかし私は最初っから偉大な故人の魅力を理解していたとは言えません。

最初に聴いたのはラジオから流れてきた、おそらく「紫のけむり」だったと思いますが、それは昭和43(1968)年のことでした。そして正直に言えば、頭を抱えたというか、曲を決定づけるリフのカッコ良さにはグッと惹きつけられるのですが、ギュンギュンに唸ってばかりのギター、暴れるドラムスと蠢くベースからは、当時の常識的なロックのビートが感じられません。しかし全体としては、なんか凄いっ!?! と痛感させられる、所謂サイケデリックロックの神髄が溢れ出ているのです。

このあたりはリアルタイムでジェファーソン・エアプレインやザ・バーズといった、アメリカ西海岸系のトップバンドの歌と演奏、あるいは音楽雑誌やテレビ&ラジオ等々を通じて、ある程度の免疫が出来ていたはずなのに、中学生だったサイケおやじには理解不能の世界になっていました。

もちろんビートルズがやっていたスタジオ加工のサイケデリックとも明らかに違う、フレッシュなライプ感覚が極めて自然体だなぁ~、とさえ思う他はないというか……。

と同時に、いろんな写真で見るジミ・ヘンドリックスの風貌がド派手な衣装! それは名前のジミとは正反対じゃねぇのか!? なんていうシャレにもならない強烈なイメージでしたし、なによりも黒人がバリバリギンギンのロックを演じるという、当時としては常識外れの行動が、ますます得体の知れないものに直結していたのです。

しかも左利きのギタリストというのも、なんか、しっくりせず、おまけに歯でギターを弾くとか、ライプステージで楽器に火を付けたとか、背中に回したギターを曲芸のように鳴らしてみせるとか!?!

そうした場面の写真や映像に直面するほどに、サイケおやじは焦りを感じてしまうのでした。

そこで意を決して買ったのが、本日ご紹介のシングル盤で、本来はイギリスでのデビュー曲でしたが、我国では多分、4枚目の発売だったかもしれません。とにかくレコード屋の店員さんは、これが良い♪♪~♪ とか太鼓判でしたし、なによりもジャケットの雰囲気がサイケデリックのど真ん中!

しかし実際に針を落として聴いてみれば……。

ジミ・ヘンドリックスは皆様がご存じようにアメリカで活動していた黒人ギタリストで、その仕事は有名R&Bスタアの巡業バンドメンバーが主でした。その中にはリトル・リチャード、アイズレー・ブラザース、サム・クック等々の大物との仕事も含まれていて、現在ではその頃の貴重なレコーディングも聞かれるようになっていますが、概ねは下積みだったのです。

ところが1965年秋、アメリカに巡業に来ていたイギリスの人気グループ=アニマルズのペース奏者だったチャス・チャンドラーに発見され、そのまんま渡英したのが世の中を変える第一歩となるのです。

多くの伝説によれば、ジミ・ヘンドリックスはバックバンドのメンバーでありながら、既に相当派手なギタープレイを演じていたそうですし、前述したような曲芸もどきの演奏にしても、黒人芸能のひとつの方法論として昔から確立してたものだと言われていますが、それをジミ・ヘンドリックスは完全にエンタメ系から最先端のロック&ソウルの手法へと進化させていたようです。

そして紆余曲折あっての1年後、1966年の秋にはノエル・レディング(b) にミッチ・ミッチェル(ds) というジャズ出身者を従えた自分のバンドを率いて、いよいよデビューしたのが今日の歴史です。

で、サイケおやじは、それでも分からないなりに、このシングル盤を聴くという、ちょっと修行ような日々が確かにありました。

しかし救いだったのはB面に収録された「Stone Free」のスピード感に満ちたファンキーロックな演奏で、ここに書いたような表現は完全に後付けなわけですが、とにかくギンギンに突き進んでいくバンドの勢いは圧巻! これまで全く未体験だったギターの音色と歪んだようなフレーズ、R&Bとロックのビートがゴッタ煮となった白熱のノリ!

正直、ドロドロしたA面の「Hey Joe」よりは、数段ストレートに楽しめましたですね♪♪~♪

ちなみに私の周囲には、その頃にジミ・ヘンドリックスを聴いていた仲間は皆無でしたから、既に出ていたアルバムを聴けたのは後の事ですが、それでもクリームやエリック・クラプトンよりは先に、ジミ・ヘンドリックスって、なんか凄い! と思わされたのです。

まあ、このあたりはロックの歴史とは逆なんですけど、それが当時の実情の一端だと、ご理解願います。

そしてサイケおやじはジミ・ヘンドリックスが通称、ジミヘンと呼ばれていることを知り、その絶頂期に無限の可能性を残したまま、天国へ召された悲しみを体験するのですが、それは後のお話として、まずは最初に買ったのが、このシングル盤ということだけで、本日はお開きとさせていただきます。

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9月になればジミヘン

2007-09-20 17:06:40 | Jimi Hendrix

今日は完全に残暑にやられました! う~ん、地球はどうなっているのか!? 暑さ寒さの彼岸まで、なんていう諺は通用しないのが、今の日本です。

そういえばペルーには大隕石が落ちて有毒楽が発生したとか!? ほとんどSFの世界に近くなってきました。

ということで、本日は――

LA Forum 26th April 1969 / Jimi Hendrix (Alchemy Entertainment)

9月になるとジミヘンを思い出します。

1970年9月18日、突然あの世に旅立ってしまったジミ・ヘンドリクスは、言うまでも無く不世出の天才ギタリストであり、音楽の革新者でした。

ギターでの表現力はもちろんのこと、私はジミヘンのボーカルが大好きです。ボブ・ディランの影響に黒人本来のブルースっぽい息遣いが混じって、もう最高♪

さてこのCDは、ノエル・レディング(b)、ミッチ・ミッチェル(ds) で構成されていたエクスペリエンス解散直前という1969年4月26日に行われたLAフォーラムでのライブ音源完全盤! 音質もリマスターも良好です――

01 Introduction
02 Tax Free
03 Foxy Lady
04 Red House
05 Spanish Castle Magic
06 Star Spangled Banner
07 Purple Haze
08 I Don't Live Today
09 Voodoo Chile (Slight Return)
10 Sunshine Of Your Love
11 Voodoo Chile (Slight Return)

――という演目は全てお馴染みの手慣れた演奏ばかりとはいえ、ほとんどの曲がドロドロのジャムに変質していく過程が恐いばかり! 手数の多いミッチ・ミッチェルのドラムスも冴えまくりですが、かなりジャズっぽいビートを叩いてもジミヘンやノエル・レディングが全然、動じていないのは凄いです。

やたらに盛り上がりすぎる観客を制してクールな情熱を爆発させる「Red House」、張り切りすぎて息切れしている「Spanish Castle Magic」、そしてクリームの「Sunshine Of Your Love」を間に挟んだ「Voodoo Chile」はスピード感あふれる大熱演です。

このバンドの十八番であるアメリカ国家をイントロにした「Purple Haze」も、わかっちゃいるけど止められない状態♪

全体には、もちろん前年までのテンションの高い纏まりの良さなんて望むぺくもありませんが、やっぱりジミヘンのギターが炸裂する瞬間の濃密な空気は、たまりません。

最初は観客の方が熱くなりすぎていた雰囲気も、終盤にかけてはバンドもグイノリのパワーが張ってきて結果オーライ♪ 当時の熱気が存分に楽しめます。

さて、このCDには、もう1枚がオマケでついていて、それはジミヘンが公式では最後のライブ出演となった1970年9月6日の「ラブ&ピース・フェイティバル」におけるライブ音源です。

メンバーはベースがビリー・コックスに代わった新編トリオですが、ハードロックから一歩進んだファンキーロックに踏み込んだジミヘンの演奏が強烈ですから、全く、突然の訃報が悲しくなります。

ちなみにこれはオーディエンス録音の海賊盤として昔から有名だった音源ですが、最新リマスターによって音質も改善され、かなり聴き易くなっています。まあ前述のLAフォーラム音源とは月とスッポンではありますが、充分に聞けますよ――

01 Killing Floor
02 Spanish Castle Magic
03 All Along The Watchtower
04 Hey Joe
05 Land Of The New Rising Sun
06 Message To Love
07 Foxy Lady
08 Red House
09 Ezy Rider
10 Freedom
11 Room Full Of Miller
12 Purple Haze
13 Voodoo Chile (Slight Return)

――上記の演目の中では、「Freedom」や「Room Full Of Miller」といった当時の新曲が、なかなか良い出来だと思います。またデビュー当時からの「Killing Floor」はブルースロック味を大切にしつつも、一層のファンキー感覚が出ていて、これも凄い演奏ですねぇ。

それと「Land Of The New Rising Sun」での思わせぶりなところは、既に実現が決まっていたギル・エバンスとのコラボレーションの前哨戦という雰囲気♪ 突然の死の3日後に予定されていたセッションが、どう展開されたのか、ますます罪作りな演奏になっています……。

ということで、やっぱりファンには欠かせないアイテムですし、ジミヘンという強烈な個性を楽しむためにも絶好のアルバムだと思います。三面見開きのデジバック仕様というジャケットも、私にはジャストミートでした。

ちなみにジミヘンは別格の存在ですが、そのスタイルとか雰囲気は真似しやすいといえば、あきらかに不遜でしょう。しかし精神やテクニックは別として、私のような者でも宴会芸として「ひとりジミヘン」が演じられるのは、自己満足の世界でも特別の事です。

ジミヘンが使っていたギターはフェンダーのストラトキャスターという、なかなか扱い難いエレキギターです。ノイズがビンビン出るんです。そしてご存知のようにジミヘンは左利きですから、弦を逆に張っていましたので、右利きの私は安物の左利き用ギターを買い、ジミヘンと同じ要領で使います。ストラトは、これがあるのが嬉しいところ♪ とは言え私のは、東南アジアで入手したバッタモンです。

そして「ヴードゥ1」という、ジミヘンが作り出していた音を簡単に出せるエフェクターとワウペダルさえあれば、後は練習してOK! それも簡単なキメのリフだけ覚えて、あとはフリーフォームで弾きたおし♪

私の場合「Voodoo Chile」のイントロから入って「水戸黄門」の主題歌に繋げ、「ワークソング」に変奏してから、後はエアギターに近いノリで押し切ります。

こんな不遜な私を、ジミヘンは決して許してはくれないでしょう。

そうだ、「ジミヘン」なんて呼ぶのも止めるべきなんでしょうねぇ。

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ジミヘンのライブ箱

2007-01-10 17:26:32 | Jimi Hendrix

やはり、雪国ですねぇ。本日はかなりの雪になりました。

私が借りている家のあたりは、朝方から積もって1時間位で40センチほどになっています。

う~ん、きっとこれじゃ、帰ってから除雪しないと車を入れられないかもなぁ……。

という諦観の中、頼んでいたブツもドカッと届きましたので、まずは、これを聴いて燃え上がっています――
 
3 Nights At Winterland / Jimi Hendrex (Reelamation)

出たっ!

ジミヘンが1968年10月10~12日にサンフランシスコのウンターランドに出演した時のライブ音源集大成ボックスです。

それは1日2ステージ、計6回のパフォーマンスを6枚のCDに纏めたもので、既にブートの世界では有名音源でしたが、今回は一応、オフィシャルということなんでしょうか、マスタリングの統一感もありますし、コンパクトで美麗な紙製の箱と簡単な紙ジャケットに入れられた仕様は、嬉しいものがあります。

メンバーはもちろん、ジミ・ヘンドリクス(vo,g)、ノエル・レディング(b,vo)、ミッチ・ミッチェル(ds) という黄金のエクスペリエンスですから、悪いはずがありません。

そしてこの音源は、これまでにも「ライブ・アット・ウインターランド」を筆頭に、幾つかのオムニバス盤に抜粋収録されていますから、今回の集大成は待望のという以上に、世界遺産としての価値があると断じます。

肝心の演目は――

Are You Experienced 
Voodoo Child (Slight Return) 
Red House 
Foxy Lady 
Like A Rolling Stone 
(This Is America) The Star Spangled Banner 
Purple Haze
Tax Free 
Lover Man 
Sunshine Of Your Love 
Getting My Heart Back Together Again (Hear My Train A Comin') 
Killing Floor 
Hey Joe
Spanish Castle Magic
Fire
Drum/Bass Jam
Wild Thing
Manic Depression

――という十八番のナンバーがステージ毎、日替わりで演奏され、大体、1ステージが1時間ほどです。これは当時の興行形態がパッケージショウという、所謂タイバンとして3つほどのバンド&歌手が1回の興行に出ていたからだと思います。

ちなみにロック全盛期に2時間を超えるステージが展開されるようになったのは、1970年代になってからの事でした。

さて、気になるこのボックスの内容は、凄いです! この一言!

どの曲がああだ、こうだという前に聴いて悶絶、感涙に咽び泣きというが、私の真実です。もちろんハードロックとジャズ、ソウル、ブルースのゴッタ煮という指摘は易いところですが、そんなジャンルが全て、「ジミヘン」という名の元に集約されているのでした。ギャオスの叫びのようなギター、唸るベース、千手観音のようなドラムス! そして、鈍色の迫力のあるジミヘンのボーカルが、大好きな私です。

さらにこのブツは、世界2000個限定という、マニア泣かせの逸品でもあります。

私はこの仕掛けに捕らわれて、速攻で買ってしまいましたが、なんか追加プレスがあるような気がしています。まあ、怒りたいような、嬉しいような……。

ということで、気になる皆様には逸早い入手をオススメして、まずは、ご報告まで致します。

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