思い出は美しいものばかりではありませんが、やっぱり青春の思い出は良いもんだと、最近、シミジミと感じます。
ということで本日は、そんな1枚を――
■Sailin' Shoes / Little Feat (Warner Bros.)
1970年代にアメリカンロックの大御所バンドとなり、現在も地道な活動をしているリトル・フィートの 2nd アルバムです。
内容云々を書き連ねる前に、これには個人的に、ちょっとした思い出があります。
それは昭和47(1972)年11月末にあった、ローリング・ストーンズの初来日チケット発売騒動で、もちろん私もしっかりと並んで買ったのは言うまでもありません。
場所は渋谷の東急本店、私は朝から並びに行ったんですが、昼前には夥しい人の列になってしまい、夕方近くになると、雨が降り出すという最悪の事態でした。
で、店側が事故を恐れて、地下駐車場へ列を誘導し、そこからはもう、ある種のどんちゃん騒ぎです。ストーンズの曲を合唱したり、麻雀やトランプをやるグループがいたり、毛布やダンボールに包まっている擬似ホームレスとか、未成年で飲酒してブッ倒れる者までいましたですね。
当然、婦人警官が補導に来て、制服姿の女子高生なんかは無慈悲に引っ張り出されたり、逆ギレしてポリ公を殴ったりする奴もいたほどです。
店側も整理券を出して帰そうとしたんですが、誰もそんなものは信用しないという態度でした。もちろん並んで騒ぐ連帯感、ストーズ命の前夜祭だったのです。
で、その時、私の後ろに並んでいた人が持っていたアルバムが、これでした。その人はサンフランシスコに住んでいる日本人でしたが、ストーンズのコンサートが日本であると知って、わざわざ里帰りして並んだとか、言っていました。
そして日本にいるミュージシャンの友人への土産として、当時リアルタイムで流行っていたアメリカのロックアルバムを数枚持参していたというわけです。
それらは当時の私には全く知らないアルバムばっかりでしたが、「一つ目お化けのケーキ娘」がブランコしているイラストジャケットは、物凄くインパクトがありました。それを作ったリトル・フィートというバンドは、なかなかの実力派で、云々という解説をしてもらったのも、鮮烈な記憶です。
で、結果的にストーンズは来日中止となり、せっかく手に入れたチケットは払い戻される事になりました。今、思うと、取って置けば良かった……、なんて後悔もあるんですが、当時はお金がなかったですからねぇ……。
そして、その払い戻したお金で買ったのが、このアルバムというわけです。もちろん日本盤なんて出ていませんから、輸入盤でした。
入手して、じっくり眺めると、やっぱりインパクトのあるジャケットです。それはネオン・パークという画家の作品で、このアルバム以降、彼等のジャケットを多く手掛けていくことになるのですが、中身も凄かったですね。
豪快なウネリと力強いビート、リーダーのローウェル・ジョージのスライドギターの凄さ、そして黒っぽくて屈折した曲の面白さ! もしかしたらブライアン・ジョーンズがストーンズをクビになった後に作ろうとしていたバンドは、こんなんだったかも……? と思わせるものがあります。
さらに特筆しておきたいのが、日本のロック界への影響で、このアルバムを元ネタにしたノリは、1970年代からの日本語ロックで沢山聴くことが出来ます。
一例として、名曲「Willin'」は、「大阪で生まれた女」だと思っているのは、私だけでしょうか?
というこれは、なんと今、紙ジャケット仕様の再発CDとして売っています。当然、私はグッと惹き込まれて、買ってしまいました。う~ん、やっぱり青春の思い出の音がします。