昨日のバンド練習は、ちょっと浮かれ過ぎたか、本日は疲れが出ています。
こうなるとストーンズは現役で一晩に2時間近い演奏をやっているんですから、凄いなぁと思いますね。体力作りをしなければと、痛感しています。
ということで、本日は怠惰な春のボサノバを――
■Wave / Antonio Carlos Jobim (CTI)
1950年代のブラジルで生まれた新しくて、お洒落な音楽のボサノバは、1960年代初めにはアメリカで大流行♪ そして世界で人気のジャンルになりましたが、これには本場ブラジル純産のものと、特にアメリカでイージーリスニング性を強めたポピュラー系のふたつがあると思います。
もちろん、ブラジル産の素晴らしさは不滅であり、虜になれば抜け出せないイノセントな世界に耽溺してマニア道を極めんと志すわけですが、一方、私のような雑食性の者にとっては、後者にたまらない魅力を覚えてしまうのではないでしょうか。
このアルバムはボサノバのブームが一段落した後の1967年に作られた美しき1枚です。
リーダーのアントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノバを創成者したひとりで、元々は場末のピアノ弾きからレコード会社のプロデューサーにまで出世した偉人です。もちろん天才作曲家&アレンジャーでもありますから、ボサノバが世界に伝播していく上では重要な働きをしており、このアルバムも、その仕事のひとつです。
しかも、ここで手を組んだのが、常に良質な大衆音楽を作るクリード・テイラーという敏腕プロデューサー! 決して本質を見失うことなく、絢爛で親しみやすい音楽を作る2人の天才が邂逅してこその傑作盤になっています。
録音は1967年5月22~24日&6月15日、メンバーはアントニオ・カルロス・ジョビン(g,p,key)、ロン・カーター(b)、ドン・ウン・ロマン(ds,per) を中心に大勢のストリングスとブラスを導入し、そのアレンジは鬼才のクラウス・オガーマンですから、たまりません♪ そして演目は全て、この時点での新曲となっています――
A-1 Wave / 波
A-2 The Red Blouse / 赤いブラウス
A-3 Look To The Sky
A-4 Batidinha
A-5 Triste
B-1 Mojave
B-2 Dailogo
B-3 Lamento
B-4 Antigua
B-5 Captain Bacardi
何と言っても、初っ端の「波」ですねっ♪ メロディも最高ならば、トロンボーン主体の膨らみのあるホーン・アレンジと涼やかなストリングに彩られ、アントニオ・カルロス・ジョビンのピアノとギターがシンプルに歌います。短い演奏ながら、すぐさま、辺りは天国に変わります。
また「赤いブラウス」も歯切れの良いギターと黒人ノリのベース、さらにシャープな打楽器が渾然一体になって、素敵なメロディをひき立てます。もちろんストリングスも最高の美しさ♪
他にも、聴いていて泣きそうになるほどの「Look To The Sky」や耽美な「Batidinha」、そして脱力系名曲の「Triste」が続くA面の流れは、何度は聴いても昇天です♪ もちろんアレンジと演奏は完璧な美しさです♪
そしてB面に入っては優雅に躍動的な「Mojave」が、ちょっとフランス映画の洒落たサントラの趣があって気に入っていますし、気だるい「Dailogo」は真昼間からのワインの時間♪ また有名曲「Lamento」ではボーカルや演奏にジャズ色が強い大人の楽しみがあります。そしてフワフワした「Antigua」から、強靭なリズムとビートが本性を現す「Captain Bacardi」の流れは、けっして侮れない本質を突いていると感じます。
ということで、CDではもちろん、この全曲を通して聴けますから、全篇で31分ほどの桃源郷が、リピート機能ならば半永久的に続くという秀逸な作品です。
それはアントニオ・カルロス・ジョビンの力量もさることながら、プロデュース全体の成功というか、リーダー本人の度量の大きさとスタッフの優れた手腕の幸福な同居というべきものでしょう。
ちなみにジャケットは風景写真の巨匠=ピート・ターナーの秀作ですが、最近のジャケットは色が緑色になっているようですね。おそらく赤色がオリジナルと思いますが、まあ、中身の素晴らしさ優先ということで、これは付けたしです。
ボサノバは一般に夏のイメージですが、天邪鬼な私は春か秋に聴くことが多いのでした。
確かに仰るとおりです♪
CTIの諸作は、これに限らず、ダブルジャケットを広げて壁に飾ったりしていたこともありましたよ♪