OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

やっぱりジョー・ニューマン

2007-05-06 15:44:55 | Weblog

さて、上海に無事到着です。

それにしても思ったのは、中国人のケイタイ好きというか、ひとりで2~3台持っているビジネスマンが少なくないということです。かえって非効率な気がしますが……。

ということで、本日はジャンルを越えて楽しい――

Joe Newman At Count Basie's (Mercury)

ジョー・ニューマンという黒人トランペッターは、1940年代中頃にカウント・ベイシー楽団に入り、以降、出入りを繰り返しますが、1950年代の所謂「アトミックバンド」ではバリバリの看板として大活躍した人気者です。

そのスタイルは中間派と称されるモダンスイングなんでしょうが、実はそんなジャンル別けを超越した存在で、実際、ビバップ~ハードバップのセッションも全く自己のペースで吹いて、何の違和感も与えない名人ですし、夥しいスタジオの仕事では、ポピュラー系に止まらずR&B~ソウル、ロック~フュージョンまで楽々とやっている真の実力者です。

このアルバムも、そのあたりの長所が存分に発揮された名演集でしょう。

録音は1961年、ニューヨークにあった「カウント・ベイシーの店」におけるライブ演奏で、メンバーはジョー・ニューマン(tp)、オリバー・ネルソン(ts)、ロイド・メイヤーズ(p)、アート・デイビス(b)、エド・ショーネシー(ds) という、一見怖ろしいまでのミスマッチになっていますが――

A-1 Caravan
 デューク・エリントンの、と言うよりも、我国ではエレキバンドのヴェンチャーズが十八番の演目として有名な、エキゾチック系の名曲です。
 それ故にジャズでは、けっこう悠長な演奏になることが多いのですが、しかし嬉しいことに、ここではヴェンチャーズっぽいノリという白熱のハードバップ♪ 初っ端からエド・ショーネシーのド迫力ドラムスに煽られて、ジョー・ニューマンが快適に飛ばします。
 さらに続くオリバー・ネルソンのパートになると、雰囲気が一変というか、突如としてモード系の演奏になり、奥深くシンプルなリフも導入して、パワフルに突進するテナーサックスが痛快です! エド・ショーネシーのドラムスもジミー・コブのようなメリハリがあって、最高ですねぇ~♪
 またロイド・メイヤースが黒~いピアノに撤しているあたりも高得点! ジュニア・マンスのような小気味良いファンキー味が、なんとも言えません。終盤にはモードの「マイルストーン」をやらかしてしまうんですねぇ~♪
 そしてアート・デイビスが驚異的にミスマッチなベースソロを聞かせてくれます。この人は前年までジョン・コルトレーンのバンドでレギュラーだったという、当時最前線の新感覚派ですからねぇ~、さもありなんです。
 演奏はこの後、ジョー・ニューマンのミュートトランペットが見事にラストテーマへ引き戻す荒業を発揮して終わりますが、バンドの一体感も見事だと思います。

A-2 Love Is Here To Stay
 これはジョー・ニューマンがミュートトランペットで一人舞台♪ 和んで泣ける、スタンダードの名解釈になっていますが、このあたりはマイルス・デイビスと比較して、優るとも劣らない味の世界だと思います。
 控えめなリズム隊も流石に強靭なビートを出していますし、アート・デイビスが地味に凄いです。
 ワイワイガヤガヤのお客さんも楽しさの証でしょうか……?

A-3 Someone To Love
 これは有名なブルースバラードですから、黒~い泣きの世界に、たっぷりと浸れます。もちろんジョー・ニューマンはミュートで熱演! ここでも一人舞台で演じるタメとコブシの世界は、ギリギリのクサ味が満点です。
 またここでもリズム隊が秀逸で、自由奔放なアート・デイビスのベースに対し、じっくりとビートを醸し出していくエド・ショーネシーの存在感が光ります。

B-1 The Midgets
 カウント・ベイシー楽団でも自己のショーケースにしていた、ジョー・ニューマンのオリジナルブルースですから、当然、ここでも大熱演! 野太いアート・デイビスのベースとビシッとキメるエド・ショーネシーのドラムスにリードされ、最初っから熱くなっているパンド全体のグルーヴが強烈です。
 アドリブパートでは、もちろん先発のジョー・ニューマンが十八番のフレーズを出し惜しみせずに突進すれば、続くオリバー・ネルソンは先走ってバランスを崩しつつも、独特のモード系ソロに徹していきます。
 ちなみに当時のオリバー・ネルソンはモダンジャズ屈指の名盤「ブルースの真実(Impulse)」を製作していたという上昇期でしたねっ!
 演奏は後半になってピアノとドラムスの大暴れで盛り上がりますが、唐突な終わり方は、ちょっと勿体無い感じです。

B-2 On Green Dolphin Street
 おぉ、ジョー・ニューマンがミュートでマイルス・デイビスに挑戦という企画ですかっ! しかも見事に答えを出していますから、たまりません。
 まず、テーマメロディの歌いまわしがマイルス・デイビスと似て非なる味の世界♪ 続くオリバー・ネルソンはウェイン・ショーターっぽい表現になっていますが、これも結果オーライでしょうか。
 実は2人のフロント陣よりも、ドラムスのエド・ショーネシーがビシバシにキメまくりで、実に良いです。この人も中間派~ビックバンドや歌伴まで幅広い活躍をしていますが、このアルバムのような尖がったセッションでも凄いという、本当の名人だと思います。
 演奏は続いてアート・デイビスの素晴らしいベースソロに繋がりますが、ここはテープ編集でピアノソロがカットされた疑惑が濃厚……。まあ、いいか……。

B-3 Wednesday's Blues
 さてオーラスはファンキーな大ブルース大会です♪ エド・ショーネシーがゴスペル調のドラムスに撤しているのも憎めません。
 そしてまずロイド・メイヤーズが、俺に任せろのファンキー節を存分に弾きまくりです♪ あぁ、この暗黒のグルーヴは最高です。
 すると、ジョー・ニューマンが、俺ならこう出るという、最高のオトボケ節! そのまんま自分だけの節を吹きまくりという、完全な味の世界を展開してくれます。リズム隊との息の合い方にも、グッときますねっ!
 すると続くオリバー・ネルソンが、全く自分だけのモード節♪ 書き譜のようなシンプルなフレーズの積み重ねで山場を作るという遣り口は、前述した「ブルースの真実(Impulse)」で聞かせる手を同じではありますが……♪
 またアート・デイビスの悠然たるベースも素晴らしく、ラストテーマでの熱血演奏を見事に導いていくのでした。

ということで、これはモダンジャズの楽しさに満ち溢れたアルバムです。というよりもジョー・ニューマンは、その名のとおり、古くて新しい人♪ 中間派とか、そんな呼称は必要ないですねぇ。

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