全くの春の陽気♪ 早起きしてバイクでブッ飛ばしという、年甲斐も無い行動でした。
ということで、本日は――
■Nigeria / Grant Green (Blue Note)
密かな楽しみから全く当然の行いとなった「ジャケ買い」からは、遠く離れた場所に位置するアルバムですが、中身は最高という1枚です。
その実態は、1970年代終盤からボツボツと発売されていた、ジャズの名門レーベル「ブルーノート」の未発表音源発掘盤のひとつということで、ある程度のレベルは保証されているのですが、全然イケてないジャケットを裏返してメンツを確認した瞬間に震えがきました!
なんとグラント・グリーン(g)、ソニー・クラーク(p)、サム・ジョーンズ(b)、そしてアート・ブレイキー(ds) ですよっ! しかも録音が1962年1月13日という、とても良い時期ですから――
A-1 Airegin
ソニー・ロリンズ作曲によるハードバップ定番曲が、ブリブリ豪快に演奏されます。もちろん、その原動力はアート・ブレイキーの豪胆にして繊細なドラムス! またソニー・クラークもツボを押えた伴奏からアドリブソロも冴えわたり、サム・ジョーンズはがっしりと土台を支えていますから、悪いわけがないのです。
当然、グラント・グリーンも奮闘していますが、まあ、リズム隊の快演に酔ってしまうのが本音かもしれません。
ちなみに曲タイトルは「Nigeria」の逆綴りですから、アルバムタイトルは本末転倒の二重奏というオチで、ニヤリとさせてくれるのでした♪
A-2 It Ain't Necessarily So
このアルバムの目玉演奏がこれです! あぁ、この黒っぽさは尋常ではありません。
ミディアムテンポでグルーヴィに盛り上がっていく演奏は、本当にネバネバ・ギトギトの世界です。う~ん、アート・ブレイキーのゴスペルドラムが恐いほど!
ですからグラント・グリーンは本領発揮のファンキー節に加えて、十八番の針飛びフレーズを連発! また誰かの掛声とかソニー・クラークのネクラな合の手があって、ギューッと心臓を鷲掴みにされるような臨死体験的快感が味わえます! こんな演奏がオクラ入りしていたんですから、当時のブルーノート、あるいはモダンジャズ界は超充実の極みだったんでしょうねぇ。
全く聴いているうちに震えて眠れの恐ろしさにシビレます♪
ソニー・クラークが、また最高なんです♪ 聴かずに死ねるかの名演とは、当にこれです!
B-1 I Concentrate On You
B面ド頭は一転して軽い雰囲気というか、グラント・グリーンやソニー・クラークの軽妙な歌心が存分に楽しめる演奏になっています。
特にグラント・グリーンは、こういう歌物の解釈も実に上手くて脱帽です。
B-2 The Things We Did Last Summer / あの夏の思い出
力強いワルツテンポのイントロから、泣きを含んだ魅惑のテーマメロディがスローで奏でられていくという、凝った仕掛けがニクイところ♪
グラント・グリーンはここでも絶好調で、歌心に満ちたフレーズを出し惜しみしていませんし、ソニー・クラークも負けじと美メロのアドリブ♪ もちろんリズム隊も要所を締める好演です。
B-3 The Song Is You
オーラスもまた、快テンポでブッ飛ばす熱演です。
素材はもちろん有名スタンダードなので安心感がありますが、まずグラント・グリーンのテーマ解釈が素直で好感が持てますし、ブレイクからアドリブに突入する刹那には、ソニー・クラークが十八番のギュ~ンというコード弾きでアクセントをつけてくれるあたりが、良いですねぇ~。もちろんこのワザは伴奏でも存分に楽しめますよ♪
肝心のグラント・グリーンは本当に絶好調! 力強く、しかも流麗な単音弾きで美メロのアドリブを連発すれば、ソニー・クラークはファンキー味もたっぷりの黒~いフレーズで対抗していくのでした。
ということで、A面がファンキー・ハードバップ、B面がスタンダートという上手い構成のアルバムです。しかしジャケットが完全にトホホなこともあって、リアルタイムではほとんど話題にもなりませんでしたし、その所為か日本盤はグラント・グリーンをイメージしたイラストを使って発売されていました。
しかし中身は極上! 特に「It Ain't Necessarily So」は、ハードバップファン必聴の名演で、これ1曲の為に入手しても後悔しないはずと思います。
そんなこんなで、オリジナル盤は案外入手が難しいようですが、どうやらCDでも再発されているようなので、騙されたと思って聴いてみて下さいませ。必ず熱い魂が高揚しますよ。