10日に東京証券取引所で取引が始まってすぐに日経平均株価が20001円45銭をつけました。2万円台に乗ったのは2000年4月以来15年ぶりというので、テレビは昼のニュースで一斉に大きく伝えました。証券会社でミニくす球を割ったり、社員に大入り袋(中味は500円だそうです)が配られたりする様子や、菅官房長官が「安倍政権2年間の実績だ」という談話などが繰り返し深夜のニュースまで続き、まるで「これで景気回復が本物になった」といわんばかりの報道ぶりでした。
株価は一時2万0006円まで行きましたが、やがて当面の利益を確保する売りが優勢となり、この日の終値は1万9900円台と前日を下回りました。
このテレビの熱狂ぶりに比べて新聞の報道は冷静でした。夕刊段階では2万円突破という事実を中心の記事でしたが、翌11日の朝刊では「手放しでは喜べない」という基調になっていました。
朝日新聞は「強気の陰に失速リスク」と伝え、「公的マネー、株高下支え 年金運用資産が流入 消費への好影響限定的」(時時刻刻)と手放しの楽観を戒めていました。
毎日新聞は「緩和マネーが押し上げ 主役は外国人投資家 実態経済と隔たり」(クローズアップ)と分析し、異例の金融緩和であふれ出た巨額のマネーが株高の根底にあるとして、「浮かれてはいられない」という社説を掲げました。
中日新聞は「官製相場バブルの懸念 恩恵乏しく格差拡大」(核心)で大手企業は円安や原油安を追い風に業績を伸ばしているが、消費税増税の痛みが残る家計に株高の恩恵は乏しく、格差を拡大させていると現状を分析しています。そして社説は「危うい緩和マネー相場」です。
経済紙の日経新聞は「世界の金融緩和であふれ出た投資マネーが日本に向い、アベノミクス始動からの2年半で海外投資家による日本株の買越額は18兆円にのぼり、株価が2倍以上と世界でも突出している」として「急ピッチに警戒感」も出始めていることを指摘しています。
値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割って算出する「騰落レシリオ」というのがありますが、日経新聞によりますと、「騰落レシリオ」は10日の時点で107%でした。値上がり銘柄がやや多かったものの、「買われ過ぎ」とされる120%よりは低く、急ピッチな上げに対する警戒感も市場には生まれているということです。
「読売新聞」はこれらとやや違う論調です。「緩和や円安業績改善 景気好循環期待の声」とアベノミクス礼讃です。「経済の活気が出ているのを実感する。もっと良くなる兆しを感じる」(大成建設村田社長)や「デフレ脱却に向っている一つの指標だ」(三菱ケミカルホールディングス越智社長)など経済界の声を紹介していますが、ある電機大手は「実際の業績と株式市況の高揚感には温度差がある」と見る人もいます。
この原稿を書いているきょう12日は日曜日で証券市場は開かれていませんが、ネット上のYAHOOファイナンスの予想では、日経平均は1万9、907円63銭、前日比約30円安となっていました。テレビは報道の仕方について反省が必要のようです。