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AIIBを巡るIMF前副専務理事(元財務官)の見解  文科系

2015年04月22日 13時40分56秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 日経新聞12日朝刊に、AIIBを巡ってこんなインタビュー記事が載っている。政府、外務省などとはちょっと違った見方と感じ、最近の日経にはAIIBについてこういうスタンスもあると読んだのだが、どうだろうか。日本財界の中にこういう意見もあるということだろう。また、この篠原氏がIMF前副専務理事であって、ここの総裁は代々西欧の人。AIIBにいち早く入った西欧諸国にこういう世界情勢分析が多いということでもあろうか。


【 日本、参加で役割果たせ IMF前副専務理事 篠原尚之氏(元財務官)
  米中心の一極構造に転機



 ――中国が準備作業をけん引してきたAIIBをどう評価しますか。
「アジアに新しいスタイルの開発金融機関ができる、という観点でとらえている。世界経済が多極化する中で、新しい構造の国際機関が出てくるのは当然のことだ。1997年のアジア通貨危機に際して、日本が主導しようとしたアジア通貨基金の構想は、米国の反対で頓挫した。今、中国経済は見方によっては米国を追い抜く勢いがあり、米国は抑えようとしても抑えきれなくなっている」

 ――日米が実質的な筆頭株主であるアジア開発銀行(ADB)と、新設のAIIBは並び立ちますか。
「補完関係にできると思う。互いに補完しながら、ある意味で競争する。インフラ計画を進める利用者の側に立てば選択肢が増えることになり、悪い話でない」

 ――日本は3月末の段階でAIIBへの参加表明を見送りました。今後どう対応すべきですか。
「タイミングの問題はあるが、参加せざるを得ない。AIIBはアジアの機関であり、アジアの一国である日本は米国と立場が違う」
「中国や韓国との関係は大事だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係は日本にとって『命綱』といえる。ASEANから見ると、日本と中国が拮抗し、けん制し合ってほしいはずだ。地域の枠組みの中で日本の役割を増やさないと、どんどん中国にとられてしまう。ましてや、参加しないなんてことになってはダメだ」

 ――日本がAIIB構想に乗り遅れたとすれば、政府の初動が失敗したとも映ります。実際はどうなのですか。
「答えにくい質問だ。AIIBの統治(ガバナンス)構造や審査について注文を付けるのは重要なことであり、最終的には内部からチェックするのが大事だ。そのためには参加を前提に議論すべきだろう」

 ――英国をはじめとして欧州の主要国がAIIBへの参加を相次ぎ表明し、日米との対応が明確に割れました。日米欧の主要7カ国(G7)の結束は揺らぎませんか。
「かつてはG7が世界経済における大きなシェアを占め、流れを決めてきた。しかし、主要な議論の場がG7から20カ国・地域(G20)に移ってきたように、G7の比重はかなり下がっている。特に開発や環境といった広いテーマはG7だけで対応できない状況になった。それなのにG7の結束を議論しても仕方ない。米政府は議会との関係でAIIBに否定的なままだが、欧州は是々非々で臨む判断をしたのだろう」

 ――中国が近年のユーロ危機に積極対応するなど、欧州との関係を深めたことも欧州各国が参加する判断の背景にありそうです。
「欧州と中国は距離が離れているため、両者の関係は地政学的な要素がなく、経済や貿易の比重が大きくなる。中国との関係を考えるとき、日本と欧州のポジションが違うことはある」

 ――中国は新興国の発言権を高めることを目的とした国際通貨基金(IMF)改革の遅れを批判しています。
「批判は当然であり、中国以外の国々からもさまざまな批判が出ている。加盟国が合意したにもかかわらず、拒否権を持っている米国のせいで実現できないことに対する不満は非常に強い。国際機関は加盟国の相対的な経済力を反映して発言権を与えていかないと有効性を失う。IMFだけでなく、ADBも投票権の配分が変わらず、(見直しに向けた作業を)サボってきた感じがする」

 ――日本は対米関係を軸とした経済外交の基本を見直すべきですか。
「ブレトンウッズ体制と呼ばれる、米国中心の一極構造の国際金融の枠組みが確立して70年になる。早い段階で先進国の仲間に入った日本は、この体制での既得権益を確保してきた。今は新興国がものすごい力を付けてきており、その勢いはしばらく続く。一極構造から多極構造へこの10年程度で変わった。ブレトンウッズ体制を見直すべき時期に来た」
「我々の頭の中には世界で第2位の経済大国だった日本のイメージが残っている。しかし、昔の栄光を追っても仕方ない。今の状況で日本の立ち位置をどう決めるかは本当に難しい作業だ。まだ答えは無いが、探っていかざるを得ない」

 しのはら・なおゆき 通貨外交の要の財務官として金融危機を経験。10年から今年2月まで国際通貨基金(IMF)副専務理事。62歳

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<聞き手から>対中戦略、思考停止脱却を
 AIIBを巡り、中国と日本が接触を始めたのは昨年春ごろだ。それから1年近く、政権内での詰めの議論は乏しく、3月12日に英国が参加を表明してから慌てて間合いを探り始めたように映る。与野党はともに財務省や外務省の対応を批判するが、日本の対中外交そのものが「どうせ中国のやることだから」と思考停止に陥っていなかったか。

 巨大な外貨準備を抱える一方、国内の成長力が陰る中国は、資源の確保や安全保障も絡めてアジア全域に活路を求めている。中国に対する好き嫌いに関わらず、その動きは止められない。

 日本がAIIB問題で米国に同調することは、中国にとっても想定内だろう。裏返せば、日本の出方は読みやすい。相手の意表を突かないと、戦略に影響を及ぼして自身の利益に転じることなどできない。対中戦略は単に「友好」を唱えるのでも、遠巻きに警戒するのでもなく、現実のリスクと利益を冷静に計算する時代に入っている。

(北京=大越匡洋)】


[日経新聞4月12日朝刊P.11
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随筆  「ハリルの魅力」   文科系

2015年04月22日 11時06分28秒 | 文芸作品
 新しいサッカー日本代表監督は、バイッド・ハリルホジッチ。過去の代表監督をずっと追ってきた僕だが、その中でもずば抜けて魅惑的な人間、監督と言いたい。そして、僕なりにこれを描く努力をしてみる。まず、完璧に近い当初二つのゲーム結果と、次いで、それに至った現状分析・チーム修正の見事さ。そして最後に、日本選手評、日本人評に出てきた魅惑的な着眼点や表現の数々。そんな順番で進んでいきたい。

 着任早々の最初の相手、世界二五位のチュニジアには、二対〇で勝利。第二戦、同じアジア勢でいつも苦戦するウズベキスタンは、五対一で負かした。この結果が先ず鮮烈だったが、それ以上に、ゲーム内容に現れた現状分析力とチーム修正能力に驚いた。第一の修正点が、守備陣形の厳しさ。特に、一対一の相手への寄せの甘さを徹底して直していた。第二の修正点は、縦に速い攻撃。横や後ろへの無駄なパスを減らして、タッチ数少なくボールも選手も縦に速く進むようになっていた。ブラジル大会監督ザッケローニもとても良い監督であって、着任直後にこの二つに目を付けた点は全く同じだ。が、指導し切る力に差があったと観る。厳しいハリルと温厚なザックと言えるのだろうが、日本選手には前者が合っているようだ。かと言って、ハリルが人格者であることは全く否定するものではない。それは、後に観る通りである。ハリルは、指導現場では厳しく、その外では一対一の人間としてと、選手との付き合い方を使い分けているようだ。「人としての信頼関係をまず大事にするが、プレーには厳しく。結果も出させてみせる」というわけで、非常に賢いやり方だと思う。

 ハリルのチーム分析などについての言葉、表現力を観てみよう。まず来日直後に日本選手を表現したもの。
『日本代表にはクオリティがある。ただ、ポジティブなものが多いなかで、複数の短所もあり、それらは改善していかねばならない。(中略)このチームは規律、信念、そして自信という面をもっと高めていかねばならない』
 日本選手の短所の筆頭に「規律」を上げた監督を。僕は初めて見た思いだ。ただ僕は、ザッケローニ時代末期にこれが幾分乱れていたと観ていたから、我が意を得たと感じたのである。特に攻撃に偏りがちで、守備陣形がおろそかになっていたはずだ。
 来日後十日ほどたった「報知スポーツ」には、こんな記事もあった。
『画面に映し出されたのは、苦い記憶の数々。失点シーンを流しながら、ハリルホジッチ監督は課題を列挙した。「寄せるレベルがまだまだ、寄せられていない」「マークを簡単に外している」「簡単にボールを奪われる。失点はそういうところから生まれている」「自信がなさそうにプレーしている」―。ダメ出しの言葉は辛辣(しんらつ)だった。
 午前中に行われたミーティング。新指揮官は昨年六月のブラジルW杯三戦や一月のアジア杯など過去の代表戦などを編集した約一時間の映像を用意した。(中略)「この短い期間で僕たちの問題点をしっかり捉えていることは正直、驚いた」とMF長谷部。過去の戦いを厳しく総括し、日本の弱点を代表戦士に突きつけた』
『ミーティング中、指揮官は選手にこう語りかけたという。「批判するために見せるのではない。君たちのクオリティーは分かっている。できるのにできていないから見せるんだ」。』

 さて、当初二ゲームが勝利に終わって、十日ほどたった評はもっと面白い。彼が得点王二回などと選手時代を過ごしたフランスのレキップ紙インタビューから取ったものだ。
『ーあなたはとても晴れやかに見える。
「これは夢のデビューだ。これほど早く、これほど気持ちがよく感じたことはなかった。私が好きなのは、選手たちが常に目を見ることだ。私はこれほどリスペクトのあるチームを見たことがない。ハードにトレーニングし、決して不平を言うことはない。これは並外れたことだ。この態度を見ながら、何かが起こるだろうと私は思っている」』

 最後に彼の日本人評。とても面白く、そこに彼の人格も現れて来る点が特に気に入った。
『ーあなたはすでに日本で有名な人物になっているのか?
「私は通りにでることさえできない! 私は信じられないことを体験している。新聞には至る所に私の写真がある。最初の二試合では、約十人のカメラマンがいて、大半がベンチの私の方へ向いていた! 信じられない。ある夜、事務所での仕事を終えた夜中の一二時ころ、ホテルに戻った。すると二人のファンが私に会いに来た。多分彼らは四歳か五歳ぐらいだった。その後、十分で約二〇〇人の人々がやって来て、夜中の一時まで私はサインをした! しかしリスペクト、心遣いがあるから断ることはできない」』

 仕事に前向きで、世界水準のサッカー指導能力を備え、人の誠意が分かって、それにはキチンと付き合おうとする人柄。そんな姿が浮かんで来る。同じ代表監督イビチャ・オシムが同国人なのだが、戦乱の国、旧ユーゴはボスニアが生んだ二人の「人物」なのだと思う。この二人、攻撃指導方法がそっくりと感じるのは僕だけではないはずだ。二人ともフランスで活躍したFWで、オシムの方が10歳ほど年上である。
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