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原発差し止め仮処分取り消し    大西五郎

2015年12月27日 18時57分31秒 | Weblog
福井地裁の高浜原発差し止め仮処分取り消しに対する新聞の論調

                     2015.12.27 JCJ東海 大西 五郎

 福井地裁(林潤裁判長)は24日、関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転を差し止めた同じ福井地裁(樋口英明裁判長)が再稼働を認めないとした仮処分決定を取り消しました。
 4月の仮処分では、原子力規制委員会が東北大地震を受けて原発の地震に対する安全性について
以前よりも厳しい原発稼働を認めるかどうかの新しい基準を満たしていないと再稼働を差し止めたのにたいし、福井地裁の今回の決定は新しい基準は合理性があり、高浜原発はそれを満たしていると、
一転再稼働を認めました。
住民側は金沢高裁に抗告しましたが、この決定に対する新聞の評価が分かれました。朝日、毎日、中日は疑問を呈し、読売、日経、産経は決定を評価ししています。各社社説のポイントを見てみます。

【朝日新聞】司法の役割はどこへ(12月25日)

4月の決定は05年以降四つの原発に5回も耐震設計の目安となる基準地震動を超える地震が来 たことや、使用済み核燃料プールの設備も堅固でないと指摘した。これらの点も今回の決定は「危険性は社会通念上無視し得る程度に管理されている」と述べた。
 原子力専門家の知見を尊重し、安全審査に見過ごせないほどの落ち度がない限り、司法は専門技術的な判断に踏み込まない――。92年四国電力伊方原発訴訟で最高裁が示した判例だ。この考え方を踏襲したといえる。
 だが、この枠組みで司法が判断を避け続ける中で、福島事故が起きたのではなかったか。原発はひとたび大事故を起こせば広範囲に長期間、計り知れない被害をもたらす。専門智に判断を委ね、深刻な事故はめったに起きないという前提に立ったような今回の決定は、想定外の事故は起こり得るという視点に欠けている。

【毎日新聞】絶対安全の保証でない(12月25日)

過去の訴訟で裁判所は原発の安全性を自ら判断するのに消極的だった。ところが福島原発事故は、国の審査に合格しても事故は起き、多数の住民の生命が脅かされることを明らかにした。行政側の判断について裁判所は、より厳しく審査する必要があるのではないか。
関電大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決は高浜原発の運転差し止めを命じたのと同じ裁判長だが、住民の生命を守る人格権を優先して「具体的危険性が万が一でもあれば差し止めが認められる」と述べた。大津地裁は昨年11月、大飯、高浜原発差し止め仮処分を退けつつ「避難計画策定が進まなければ再稼働はあり得ない」と釘を刺した。しかし川内原発の再稼働差し止めを却下した鹿児島地裁決定は、(原子力規制委の)新基準に不合理な点はなく規制委の審査も妥当と判断した。今回の福井地裁決定も規制委の裁量を広く認めており、従来の消極的姿勢に戻る傾向が見られる。今回の決定は「過酷事故が起きる可能性が全く否定されるものではない」とも述べ、国や電力会社に避難計画を含めた重層的な対策を求めた。そうした対策を取らない限り再稼働はできないはずだ。

【中日新聞】安全は“神話”のままだ(12月25日)

 逆回転が加速し始めたということか。「原発ゼロ」の歯止めが、また一つ外された。
今回の福井地裁の決定は、安全対策上規定すべき最大の揺れの強さ、その揺れや津波に対する関電側の対策、使用済み核燃料保管の危険性・・・。どれをとっても規制委の審査に「不合理な点はない」として、原発が周辺住民の人格権や、個人が暮らしや声明を守る権利を侵害する恐れはないと判断した。
 だがよく考えてもらいたい。裁判所は事業者の取った対策が「新規制基準に適合する」という規制委の判断を「合理的」としただけだ。規制委が何度も表明しているように、その判断は「安全」を保証するものではない。(再稼働に同意した)福井県西川知事の判断も同じである。安全確保は事業者の責務。事業者の規制は国の責務。県は監視するだけという、及び腰の最終同意である。事業者にも国にも“責任能力”などないことは、福島の現状を見れば明らかではないか。
 安全性も責任の所在もあいまいなまま、再稼働にひた走る。その状況は何も変わってはいないということを、忘れてはならない。

【読売新聞】差し止め覆す合理的決定だ(12月26日)

 専門性が極めて高い原子力発電所の安全審査について、行政の裁量を尊重した妥当な決定だ。(高浜原発)3、4号機は今年2月、東京電力福島原発の事故後に厳格化された新規制基準に基く安全審査に合格した。ところが4月に福井地裁の当時の樋口英明裁判長が「新基準は緩やかに過ぎる」と独善的な見解を示し、再稼働を差し止めた。「ゼロリスク」に固執した不合理な決定だったと言うほかない。
 今回、林潤裁判長は「新基準や規制委の判断に不合理な点があるか否かの観点から審理・判断するのが相当だ」と指摘した。その上で、「危険性は社会通念上無視できる程度にまで管理されている」と結論付けた。
 原発の安全審査について、最高裁は1992年の四国電力伊方原発訴訟で、「最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との考えを示した。司法の役割を抑制的に捉えたこの判例が、原発訴訟での司法判断の基準となっている。今回の決定も、判例に則った常識的な内容だと言える。
 一方で、林裁判長は決定の中で、関電と規制委が安全神話に陥ることなく、高い安全性を目指す努力を継続するよう求めた。全ての電力会社に当てはまる注文だ。

【産経新聞】差し止めの解除は当然だ(12月26日)

 極めて妥当な判断だ。これを受け、3号機では来年1月下旬の再稼働目指しての燃料装荷が25日から始まった。それを可能にした仮処分命令の取り消しを、電力安定供給や地球温暖化防止につながる賢明かつ順当な決定として歓迎したい。
 林潤裁判長も指摘しているが、原子力発電には常に科学技術の最新知見を反映し、高いレベルでの安全性の追求を継続する努力が欠かせない。これを肝に銘じることが重要だ。

【日経新聞】注文受け止め万全の再稼働を(12月26日)

 (今回の決定が)原子力発電所に絶対の安全はないとしたうえで、リスクを最小限に抑えるよう求めたことは、現実的な判断といえる。争点となった安全審査の妥当性についても「専門性や独立性が確保された規制委が十分に審査しており、不合理な点はない」とした。過去の原発訴訟で最高裁が出した判例を踏まえたものだ。
 一方で、国や電力会社が重く受け止めるべき点も多い。地裁は「規制基準は安全神話に陥らないよう最新の知見を反映し、高い水準の安全性をめざす努力が求められる」と注文をつけた。
 一方で、同原発から30キロ圏には京都府や滋賀県の一部が含まれ、事故が起きたときの住民避難などになお課題が残る。国や関電は再稼働に万全を期すべきだ。
  
 
 
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随筆紹介  万葉からだ歌(十三)  「身」こころとひとつ   

2015年12月27日 11時47分07秒 | 文芸作品
万葉からだ歌(十三) 「身」こころとひとつ  N・Rさんの作品です
 
 朝影に吾が身はなりぬたまかぎる
 ほのかに見えて去りにし人ゆえ
 ──あなた恋しさゆえに、わが身はやつれて朝影のようにやせ細りましたわ──。

 万葉集に、あふれるほど多様に出てくるのが「身」という表記。日本人は古代から”身と心はひとつのもの”として使い込んできた。「身を入れて」は、心をこめて──の意。「身」の字は、女が身ごもり、体内に子どもがいる実のあるかたちで生まれた文字。社会への一歩も”身を立て名を挙げ”の歌詞で踏み出した。
 「身分」「出身地」「自分自身」「身のほど知らず」とか「身を捨てる」「身を粉にして」「肌身離さず」など。さらに「転身する」「独身」「身支度」「身辺整理」「身投げ」「この身にかえ」と、それこそ身のまわりには整理しきれないほどの歌ばかり。
 そんななかでも「身のこなし」「身につける」と頭より身についたものの大切さを表記したものが一番多い。

 あしびきの山の雫に妹待つと
 わが立ちぬれぬ山の雫に
 ──待ちわびて、わが身は山の雫にぬれてしまいましたよ──
 これに対し相手の女性からは〈私は山雫になって恋しいあなたにまとわりつきたいね〉と返歌がくる。この身を何々にかえてでも的な表現が連発。

 後年、樋口一葉の名作『たけくらべ』のなかでは、主人公の少女のことを〈身のこなし活き活きとして、色白く声も清くさわやか〉と身だしなみの美をこまごまと描き語っている。
 つまり、頭でおぼえたものではなく、からだでおぼえる、身のついてこその”美”なのである。”身のこなし”という言い方は、近ごろあまり使われなくなってしまったが……。
一葉のいう「身のこなし」は、語源からみて”身を粉にする””熟す””こなす”という字にあてはめていたにちがいない。”着こなす”がそれ。

 験なき物思わすは一杯のにごれる酒を
 飲むべくあるらし
──か弱い人の身、くよくよ物思いにしずむより、酒に身をゆだねた方が楽しいぞ──
 大伴旅人、酒の歌集中の第一首の秀歌。

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