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随筆紹介 万葉からだ歌(むすび)   文科系

2015年12月31日 11時49分26秒 | 文芸作品
 万葉からだ歌(むすび)  N・Rさんの作品です


 からだの部位を表す言葉こそが基礎語。人のからだの形や機能は変わるものではない。千数百年前の万葉人が手、指といえば現代人も手も指も同じものをさす。
 そこで『万葉集』を読む時、基礎語で重ねていけば古典歌の一首、一歌の理解がすすむはず──これを視点に、この一年、目、眉、手、足、指、胸などを数えながら歌を検証してみた。

 特に「生活用語にこそ基礎がある」と、性にかかわる歌まで紹介してしまった。おかげで、万葉人の活気あるおおらかで、ためらいのない真っ正直な生活空間に触れることが出来た。

 結びにきて、万葉の人々が親しんだ”からだ言葉”は、時代の変化に対応しながら、今に息づいていると知らされた。なかでも、後年の小説『坊っちゃん』では、主人公が万葉人とほとんど同一の言葉でしゃべっているあたりも面白かった。髪だけが出てこないと思ったら、マドンナを「ハイカラ頭の、背が高い美人だった」と髪型のモダンさを描いていた。

 いま一つ、名古屋と岐阜の一部では子守歌にからだ言葉でうたう詩があった。母たちは、目、鼻、口と指でかるく触れながらうたい、子どもに大切なからだの部位を教えていた。
─────────
 あつたさん(熱田神宮)まいって頭をさげ
 松原(まつ毛)越えて目医者へ寄って
 鼻一本折られ
 みっともない(耳)ことよ
 ほうぼう(頬)で笑われ
 口おいしことよ、むね(胸)んなことよ
 知り(尻)もしないに
 おへそが笑う
   ──────────
 節回しは、手鞠歌に似ていて、私はいまもふと口ずさむことがある。


 
 この連載はこれで終わります。なお、この作者は僕等の同人誌の創設者にして、主宰であられたお方でして、2014年に亡くなられています。ここの読者の中にお心当たりの方がいらっしゃるかも知れませんので、略歴を少々。ただし、以下の内容は全く僕個人の主観に依存したものとお断りしておきます。

 あの敗戦を、鹿屋の特攻隊基地で迎えられました。その頃の事をたびたびこう語られていたものです。
「死に損なった。天国、雲に向かって詫びてばかりいたよ」
 当時までは軍国少年を自認されていましたが、その反動からか文学を志し、某国立大学の国文科を卒業されたかと記憶しています。職業は中日新聞の記者で、確か文芸部であられたとか。「テレビドラマなどの脚本の原稿料などが給料よりも多くなった時期がある」ということで、定年まで数年を残して退職されたと聞きました。そのころのプロ脚本家時代のことを度々こう語られていたのを、僕はとても印象深く想い出すのです。
「あのころは、浮かれて、売文、駄文ばかりを書いていたなー」
 それもあってか、このささやかな同人誌には心血を注いでおられたと、ずーっとそんな気がしていました。
 ここまで転載してきたものは、僕等の月例冊子に2013年2月まで15回ほど連載されたものです。この冊子は今月で実に289号まで出ています。この間24年と1か月、ずーっと1度の欠刊もなかったはずで、ここにも主宰の執念が乗り移っていたかとふり返っています。
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慰安婦問題、旧軍部通達  文科系

2015年12月31日 00時36分57秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 慰安婦問題「決着」なるものについて、天木直人のブログにこんな文章があったが、この認識は誤っている。以下に先ず、天木の文章自身を見ておこう。

【 軍の関与を認めてお詫びした安倍首相の衝撃> 2015年12月29日 天木直人のブログ

 日韓外相の共同記者会見における岸田外相の発言を知って驚いた。
 次のように明確に語ったという。
「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題で、かかる観点から日本政府は責任を痛感している。安倍首相は日本国の首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する・・・」(12月29日日経)
 これは安倍首相とその子分たちが繰り返してきた従来の主張の全面的撤回であり豹変だ。
 きょうの朝日新聞の社説もまっさきにこの発言を取り上げて次のように書いている。
「きのうあった外相会談の後、岸田外相は慰安婦問題を『軍の関与のもと多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題』と定義し、『日本政府は責任を痛感している』と明言した・・・安倍首相は日本の首相として元慰安婦に対し、『心からのおわびと反省』を表明した。かつて慰安婦問題をめぐる『河野談話』の見直しに言及した事もある安倍首相だが、岸田外相を通じてとはいえ、談話の核心部分を韓国で表明したことには大きな意味がある・・・」
 大きな意味どころではない。
 これまでの方針の全面否定であり、完全な転換である。
(以下略)


 この天木の認識は、この点で誤っている。慰安婦設置への軍の関与などは、既に歴史家が証明済みの事なのである。当時の軍部のこんな文献さえ再発見・公表されているのだから。拙稿で恐縮だが、去年の9月22日エントリーの転載をまたぞろしなければならない。

【 慰安婦問題、当時の関連2通達紹介  文科系 2014年09月22日
 以下二つは「日本軍の慰安所政策について」(2003年発表)という論文の中に、著者の永井 和(京都大学文学研究科教授)が紹介されていたものです。一つは、1937年12月21日付で在上海日本総領事館警察署から発された「皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件」。今ひとつは、この文書を受けて1938年3月4日に出された陸軍省副官発で、北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」です。後者には、前に永井氏の説明をそのまま付けておきました。日付や文書名、誰が誰に出したかも、この説明の中に書いてあるからです。

『 皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件
 本件ニ関シ前線各地ニ於ケル皇軍ノ進展ニ伴ヒ之カ将兵ノ慰安方ニ付関係諸機関ニ於テ考究中処頃日来当館陸軍武官室憲兵隊合議ノ結果施設ノ一端トシテ前線各地ニ軍慰安所(事実上ノ貸座敷)ヲ左記要領ニ依リ設置スルコトトナレリ
        記
領事館
 (イ)営業願出者ニ対スル許否ノ決定
 (ロ)慰安婦女ノ身許及斯業ニ対スル一般契約手続
 (ハ)渡航上ニ関スル便宜供与
 (ニ)営業主並婦女ノ身元其他ニ関シ関係諸官署間ノ照会並回答
 (ホ)着滬ト同時ニ当地ニ滞在セシメサルヲ原則トシテ許否決定ノ上直チニ憲兵隊ニ引継クモトス
憲兵隊
 (イ)領事館ヨリ引継ヲ受ケタル営業主並婦女ノ就業地輸送手続
 (ロ)営業者並稼業婦女ニ対スル保護取締
武官室
 (イ)就業場所及家屋等ノ準備
 (ロ)一般保険並検黴ニ関スル件
 
右要領ニヨリ施設ヲ急キ居ル処既ニ稼業婦女(酌婦)募集ノ為本邦内地並ニ朝鮮方面ニ旅行中ノモノアリ今後モ同様要務ニテ旅行スルモノアル筈ナルカ之等ノモノニ対シテハ当館発給ノ身分証明書中ニ事由ヲ記入シ本人ニ携帯セシメ居ルニ付乗船其他ニ付便宜供与方御取計相成度尚着滬後直ニ就業地ニ赴ク関係上募集者抱主又ハ其ノ代理者等ニハ夫々斯業ニ必要ナル書類(左記雛形)ヲ交付シ予メ書類ノ完備方指示シ置キタルモ整備ヲ缺クモノ多カルヘキヲ予想サルルト共ニ着滬後煩雑ナル手続ヲ繰返スコトナキ様致度ニ付一応携帯書類御査閲ノ上御援助相煩度此段御依頼ス
(中略)
昭和十二年十二月二十一日
         在上海日本総領事館警察署 』


『 本報告では、1996年末に新たに発掘された警察資料を用いて、この「従軍慰安婦論争」で、その解釈が争点のひとつとなった陸軍の一文書、すなわち陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」(1938年3月4日付-以後副官通牒と略す)の意味を再検討する。
まず問題の文書全文を以下に引用する(引用にあたっては、原史料に忠実であることを心がけたが、漢字は通行の字体を用いた)。

支那事変地ニ於ケル慰安所設置ノ為内地ニ於テ之カ従業婦等ヲ募集スルニ当リ、故サラニ軍部諒解等ノ名儀ヲ利用シ為ニ軍ノ威信ヲ傷ツケ且ツ一般民ノ誤解ヲ招ク虞アルモノ或ハ従軍記者、慰問者等ヲ介シテ不統制ニ募集シ社会問題ヲ惹起スル虞アルモノ或ハ募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法、誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサルニ就テハ将来是等ノ募集等ニ当リテハ派遣軍ニ於イテ統制シ之ニ任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実地ニ当リテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連携ヲ密ニシ次テ軍ノ威信保持上並ニ社会問題上遺漏ナキ様配慮相成度依命通牒ス』

 さて、これを皆さんはどう読まれるでしょうか。なお、この文書関係当時の北支関連国内分募集人員については、ある女衒業者の取り調べ資料から16~30歳で3000名とありました。内地ではこうだったという公的資料の一部です。最初に日本各地の警察から、この個々の募集行動(事件)への疑惑が持ち上がって来て、それがこの文書の発端になったという所が、大きな意味を持つように僕は読みました。】

 後者の文献に関わって、今回の一言。
「募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法、誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサルニ就テハ」
 陸軍省が上記不祥事を認めたということと、今後起こらないようにこの通達を出すということとの両方を述べているわけである。つまり「誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル」ことははっきりしていたのである。つまり、例え後にこれを禁じた(文書を出した)としても、誘拐に類する不祥事があって、それが陸軍省の責任になる事は明らかなのであった。
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