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「パナマ文書」、その名解説の要約   文科系

2016年06月15日 14時20分15秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 本日の中日新聞に、標記のものとしてご紹介したい記事があった。13面「カルチャー」面に、社会学者・経済学者で東京大学大学院総合文化研究科教授、松原隆一郎氏による、「租税回避の実態」「違法ではないが不適切」と見出しされた記事である。簡単な要約をする前に一言。
 人生にも今後への大きな岐路になる重大局面があるように、社会にもそれがある。重大とは何を指して言うか。非常に「長期にわたって」、その場面(人生なり社会なり)を「根源的に左右する」度合いの大きさ、根深さを指している。まして、今の世界経済は物作りを金融が支配している世界だ。そういう金の行方、働きは、時代全体の根源的問題と言える。トマ・ピケティが世界で大いに騒がれたのにも、まさにこの理由が働いたということだ。以下、内容要約を進める。これが世界、日本に及ぼしている影響がいかに全面的・根源的であるかということ、そのことをお分かり願えれば嬉しいということで。

 パナマの一法律事務所から漏れ出た租税回避行為の実態を顕すパナマ文書は、一言で言えば「違法ではないが一部不適切」。都知事問題ともあいまったこの言葉は、今年の流行語大賞に選ばれそうな勢いである。消費税延期がアベノミクス腰折れを防ぐためと叫ぶならば、租税回避を制限して富裕層税負担を増やせという声が高まるのが当然であろう。

 因みに日本でも、富者の税を少なくする数々の施策が進んできた。累進課税率の緩和と、株式所得の軽減税率など優遇措置とが、近年執り行われてきたからだ。年収1億を境にして高所得者の所得税率が下がるようになっており、株を売った所得などには優遇措置がとられることにもなっている。関連して、日本企業が外国企業買収などを大いに進めてきたが、その受取配当金なども、課税対象外なのだそうだ(ここで松原氏は、こんな注釈を付ける。これでは企業が国内設備投資に励む訳がない、と)。

 ところで、給料生活者や海外に出て行けない中小企業には不公平になるだけのこれらの法律、制度は、そもそもどんな狙いで作られたのか。英米などが、物作りよりも金融立国に移行し、日本もこれを取り入れたからである。そういう対外収入の稼ぎ方、道を選んだから、そのための手段、基地が世界各所に数々生まれたということである。

 以上全体に対して、こんなまっとうな批判を示すことによって、この文章は終わっていく。
『国際金融取引が金融危機を起こせば、各国は税を用いて防衛する。その税源に低所得者に負担が重い消費税を充てるのは、虫が良すぎるというものだ』
『近年顕著になってきた格差の原因もこうした税構造にあり、多国間で協調しつつ包括的で透明性の高い租税構造を再構築することが求められる。それが望み薄であることは、パナマ文書に政治リーダーの名前が登場することから予想されはするのだが』

 

 今年に入って、長い世界的株暴落が続いているが、今はイギリスのEU離脱と日米の円高下攻防と西欧銀行の不透明感などが、その要因だそうだ。去年から続いているこんな長期の株安や円高下の原因には、このような目先の原因よりもはるかに大きなものが潜んでいるはずなのだが、この英国離脱要因にEU残留派キャメロン首相のパナマ隠し財産暴露問題が絡んでいるのは明らかである。また、この「遙かに大きなもの」については、90年以降の世界で度々起こっている「バブル崩壊」の一つ、今は原油・シェール・バブル崩壊であるとは、ここで何度も述べてきたところだ。近年各国が金融緩和などによって懸命に株価を支えても長い目では下がっているという現状は、そういうことなのである。つまりバブル破裂に対する決死のふらふら下降飛行、軟着陸狙いだろう。日銀やGPIFが不正常な投資は止めると宣言するとか、アメリカが8000兆円の国家赤字を目にすれば軍事費を年3000億ドルほどに半減せざるをえないとかになったら、たちまち世界の大失業者群が何倍にもなるという危ない綱渡りということだ。職を作る物作りを軽視した、金融優遇本位の世界の行き方が招いた光景というのは明らかなことだが、なんとかならないものか。

 なお、パナマ文書を扱った拙稿は、ここにこう存在する。4月12~14、25日などだ。

コメント (2)
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