それについて、安倍外交の失敗という、こんな文章を見つけました。
11月10日に行われた安倍晋三首相と中国の習近平(シー・チンピン)国家主席との会談に先立って、
7日に日中両国の合意文書が発表された。
注目すべき点はそのなかに「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて
異なる見解を有していると認識」しているという一文が挿入されたことである。
朝日新聞によると日本外務省幹部は「異なる見解」について、「『緊張状態が生じている』にかかっている」とし、
尖閣の領有権をめぐるものではないと説明しており、「日本の立場が後退したとか損なわれたとかは一切ない」と
強調したとのことである。しかしそれは少々苦しい弁明のように聞こえる。
と報道している。さらにはニューヨーク・タイムズ( ≪ウェブサイト版≫ )でさえ、
中国の識者の言葉を引用しながらではあるが、「異なる見解」が尖閣諸島にかかっていると、
とらえて「日本による重大な譲歩を含んでいる」と指摘している。
日本は中国に対して「外交敗北」を喫したと言わざるを得ないだろう。
「外交敗北」を喫したのだろうか。その要因は色々考えられるだろうが、筆者は安倍政権が真剣に韓国との関係改善を
図ってこなかったことをその一つとして挙げたい。
勢力均衡が崩れたのは、中国の国力が急速に増大したためばかりではない。
中国・ロシア・北朝鮮 対 日本・米国・韓国という3対3の均衡が、特に韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権による
中国への接近によって、少なくとも対日関係に関しては4対2とも言い得る不均衡な状況に至ったためでもあるだろう。
安倍首相は好むと好まざるとにかかわらず、中国に対して「譲歩」するよりほか選択肢がなかったと言えるだろう。
ロシアや北朝鮮との関係を打開しようとしたり、中国の台頭を警戒する東南アジア諸国、インド、オーストラリアなどと
緊密に連携しようとしたりしてきたのはその一例である。しかしロシアや北朝鮮との間には北方領土問題や拉致問題があるために、
その接近にはおのずと限界がある。
東アジア域外の国々と緊密な連携を図ったとしても、東アジアにおける勢力均衡の回復に直接結び付くわけではない。
3対3の均衡を回復すべきではないだろうか。
日本側の誠実な対応を求めてきた。しかしながら昨今の河野洋平官房長官談話(1993年)に対する検証や、
朝鮮半島における慰安婦の強制連行を証言した記事を取り消した朝日新聞への過度な批判などに見られるように、
「従軍慰安婦」問題に対する安倍政権と自民党の対応は、朴政権の要求に応えているものとはとうてい言い難い。
「従軍慰安婦」問題やヘイトスピーチ問題などの諸懸案に早急かつ全力で取り組むべきであろう。
たとえ日本の「名誉」を傷付けるものであるとしても、領土という国家の主権の根幹部分に関わる「譲歩」に比べれば、
はるかに日本へのダメージは小さいだろう。
傷付いた日本の「名誉」は将来的に挽回(ばんかい)され得るかもしれないが、ひとたび失われた領土が戻ってくる可能性は
ほとんどないからである。
(このあと、慰安婦問題はアメリカの後押しもあり、一応の政治的決着はついています。)
柴田さんは愛知学院大学の先生。こんな自己紹介をされています。
フランスの親独政権であるヴィシー政府との比較をもからめて、研究しております。
目下、汪政権下の「大東亜戦争博覧会」について調べています。
また現代中国政治に関する研究も行なっており、あくまでも学術的な観点からポスト共産党の行方をウォッチングしています