経済学でもマクロとミクロの両論がある。世界政治に関わる論で言えば、マクロは政治動向分析の観点、方法論としてあり、ミクロは実証的論議と述べても良いだろう。この両者はもちろん、ある論者の中で相互に影響し合って深まり、高まっていくもののはずだ。そして、現代世界政治ではアメリカの世界戦略、動向を抜きにしては何も語れないと付け加えたい。そこで、アメリカを巡る僕の今のマクロ論の一端を書いてみる気になった。
以下は、ノーム・チョムスキー、ロナルド・ドーア、進藤榮一氏らの著作から学んだものだと前置きしておく。
① アメリカ外交は終始国連を無視したり、己がこれに替わりたいというように行動してきた。国連無視の有志国連合しかり。すぐに国連分担金停止で国連に圧力を掛ける。「国連など不要」と振る舞うのに、抜けては行かず、悪用に励む。国連どころか、G20さえ軽視して、G7だけで動こうとも励んできたが、これももう限界点に達した。
② その結果、アメリカの戦争、難民対処、地球環境、金融などの政策で、世界がアメリカ批判ごうごうになるに至った。嘘の理由開戦イラク戦争とリーマンショックが大きなこの背景になった。今やこの批判は、BRICS諸国だけでなく、EUからも出てきた。メルケルの「アメリカ、頼りにならず」発言がその典型である。
③ そこでアメリカは何をやり始めたか。ネットを通じて外から各国の「世論」工作に励むようになった。イギリス離脱、EUポピュリズム形成工作などは、その現れである。アメリカ一部支配勢力は、ロシア経由でネットを使って自国大統領選をさえ左右させた。
④ 日本にも当然、そういう動きがあろう。今後これを注意深く観ていく必要がある。私見だが、自民党石破氏系による東京都知事選挙小池当選に陰陽両様のアメリカ・ネット工作を感じた。
⑤ ちなみに、米大統領選挙へのロシアのネットを通じた関わり方は、プーチン・ロシアが最近のアメリカのやり口に習っただけという一面もあるだろう。
⑥ 僕は以上のような世界政治マクロ論をもって、世界を観ている。アメリカはそれぐらいに今や必死なのだ。国家累積赤字70兆ドルというのは、簡単な問題ではない。日本のそれがGDPの2倍だと大騒ぎしているが、アメリカの同じ数字は4倍を越えるのである。日本のように、GDPの3倍ほどの個人貯蓄もなく、家計も含めて赤字だらけの国なのである。90年以降の戦争政策がこうさせたのだろうし、この政策をさらに続けるということなら、なおさら金が欲しい。
⑦ 以上のような問題を視野に入れぬアメリカ絡みの世界政治論などは、全部いーかげんなものと言ってよいと思う。アメリカは、相変わらず金融利益と特定商品の世界独占価格とを目指していくはずだ。シェールガスに将来的目途が立った原油などはさしずめその典型だろう。ちなみに、「パリ協定離脱は、シェールガスに目途がついたからだろう。アメリカはその程度の国なのだ」と述べたのは、麻生財務相。他にも、医療・医薬、穀物、食肉、小売りなども要注意だと思う。ただし、これらの分野で米国内独占を成功させてきたのは、各分野の業者というよりもゴールドマンとかモルガンとかの米金融なのである。トランプ政権に、ゴールドマン出身の幹部が多いことは周知の話だ。