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老後ギター上達法、僕の場合   文科系

2019年03月31日 14時13分11秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 老後ギター上達法、僕の場合  文科系

 久々に僕のクラシック・ギター人生を振り返ってみたい。振り返る視点は、こういうもの。アマチュア音楽活動において楽しみを増やし、大きくする一つの方法ということである。

①人前で弾ける曲はないという拙い一人習いから、定年退職後の62歳に初めて先生について、16年ほどたった僕は、音だしの基礎習いの後はずっと、好きな曲を選び暗譜主義でやってきた。極端に言えば、1~2小節ごとにくそ暗記して、それをつなげていく。1ページの楽譜を1週間ほどかけた末に全曲暗譜し終えてから、おもむろに弾き込みにかかるというやり方だ。

②こういうやり方で、その都度技術的にとうてい無理な曲にも挑んで通し暗譜・弾き込みをしてきたが、そこで出てくる技術的難点は全部残っているという経過をたどってきた。これは、無理もないのである。習い始めて2年で魔笛やローボスのプレリュード1番を、3年でソルのグランソロなども暗譜群に載せて来たのだから。この暗譜群とはこういうものである。大好きな暗譜維持群目次を作り、それを月に数回りずつ弾いてきたということ。新たな曲を入れるためにここから落とした曲も多いし、魔笛の変奏曲とか大聖堂、アルハンブラとか、難点が残っていて人前では未だに弾く自信が持てない曲も含まれている、現時点では20数曲である。なお、僕の先生はこの特殊なやり方を全て認めて下さった。

③さて問題は、こういう音楽習得法のどこが良かったか。何よりも先ず、こんなことがある。大好きな曲、弾きたい曲をずっと暗譜し温めてきた前向きな気持ちから、技術的難点の自覚や克服へのエネルギー、「この曲は、音楽としてこう弾きたい」という改善、気持ちよさの深化などが、もたらされてきた。つまり、「読譜(弾き)という不自由」に費やす神経を、技術的難点の自覚、修正や、「その曲の気持ちよさの創出」などに自由に費やすことができたということである。

④そして今では、こんな喜びも生まれるに至った。人前で弾けなかった暗譜群曲や、暗譜群から落とした曲を復活させて、発表会で弾けるようになったこと。一昨年の発表会で弾いたバリオス「郷愁のショーロ」やタレガ「マリーア」がこの復活組に当たり、昨年のソルのエチュード作品6の11番(セゴビア編集ソルのエチュード20曲集の第17番)が今までは人前では弾けなかった暗譜群曲に当たる。そして、現在着手したのが魔笛の4回目のレッスン。今回気付いたことだが、この曲がもう一歩で、人前で弾けそうになっているのである。この曲に多い消音箇所とか、速いパッセージも含めてのことだ。

⑤さて、こんなやり方だと78歳になる僕がまだまだ上達できているのである。その主たる原因は、こう理解してきた。暗譜群のあちこちにある自分の技術的難点などと常に集中的に戦い続けていたという結果になっていること。「どれだけ苦労してもこの悪癖は直そう」としていくつかの基本技術的欠陥修正という結果を出してきたエネルギーもここから生まれたといって良い。たとえば、左手小指が薬指に連動してしまう硬さを苦労して直すことに成功しなかったら、郷愁のショーロもマリーアも、そして17番も、発表会では弾けなかったはずだ。

⑥最後になるが、高齢者のどんな活動でも最後は体力勝負。そして、活動年齢を伸ばしてくれる体力こそ、有酸素運動能力。酸素がよく回る細胞、身体は若いのである。ギターやパソコンの3時間ぐらいなんともないというように。ランニングが活動年齢伸ばしにこんなに効力があるとは、骨身にしみて感じてきたことであるが、これは今では世界医学会の常識になっていると言える。その証言がこのブログのいたるところにあるが、一例がこれ。『「よたよたランナー」の手記(222)走る、歩くで活動年齢が伸びる 2018年05月10日』。老後長くやりたいことがあるならば、有酸素運動(と活性酸素対策としてのポリフェノール摂取)は不可欠である。時速7キロ以上で歩ける老人は長生きすると医学界で言われるようになったが、これは血管や細胞が若いということだ。
コメント (7)
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掌編小説  魂は存在するか?   文科系

2019年03月31日 13時07分56秒 | 文芸作品
「いろいろ考えてみたんですが……、一番聞いてみたいことで……。Tさんは、人の魂ってあると思われてますか?」
 高校二年と聞いていた細い肩が目立つ小柄なその女の子は、予めMさんから僕が打診されていた相談話の一番の核心をいきなり切り出して来た。母方の祖母であるMさんが孫のRちゃんのことで僕に相談を持ちかけてきたのは、僕が大学院の哲学科を出ていることと、十数人で十年近く続いたギターパーティー常連同士で気心知れた仲とからのようだ。

 この日僕がMさん宅のベルを鳴らしたのは、七月上旬午後の猛烈な日差しの中の、ジャスト二時。白に近いベージュ地に濃いダークブラウンのアクセントを付けた洋風の家は、ここを永住の地と決めて六年前に建てられたばかり。玄関から続く三メートルほどのアプローチ左脇の真っ赤なカンナの花がすくっと伸びた姿に歓迎されるようにして通い慣れたリビングダイニングに通されたのだった。このリビングは二階までの吹き抜けになっているのだが、これも含めて、ギターのホーム・パーティー会場などにと目論んだ空間なのである。

「先ず、君の意見とその理由を聞きたいな。今日は聞き役に回る積もりで来ましたから」
「私は、無いと考えるようになりました。人間の心だけが他の動物のそれとは違うって、おかしいと思うんです。旧約聖書の創世記のような考え方がおかしくって、進化論が正しい訳なんでしょうし……」。
 単刀直入のこんな物言いに驚いた僕は、この子の勉強ぶりをもっと知ってみたくなった。
「アメリカのかなりの州が進化論を教えず、旧約聖書の創世記だけを教えていることも、そして、例えばドーソンの曙人を巡る考古学上の論争史なんかも、勉強されてご存知なんですね? そして、人の魂が無いなら神は居ないと?」
 彼女の目を見ながら話したから、この全てを彼女が肯定しているのは明らかだったが、Rちゃんはすぐにこの世界史に残る大偽造事件、曙人論争部分を引き継いでくれた。
「人類の頭頂骨を古い類人猿の下顔骨にくっつけて考古学的な化粧を施した化石を一九一〇年頃に発見したという事件で、当時の学会を大騒ぎさせてまで人間の心だけが神の似姿なのだと抵抗してきた論争で、人類化石五百万年の発達解明でも完全に否定されたのでしょうし、……… ある人の魂と言っても〇歳と九十歳とでは、全く変わっていく。老人の認知症なんかも含めてみれば、魂って何歳のソレって感じですよね。そして何よりも、神が居なくなる。人間の肉体を離れて魂がないとすれば、その魂の特別な造物主も不要になるからで……」

 いろんな周辺知識をネットで調べる現代っ子流儀から得られた限りのもので何回も予行練習を重ねてきたような話しっぷりに若く健全な好奇心、探求心が伺われて、僕は嬉しくって仕方なくなった。紅いセイロン紅茶を運んだ後、顔が見えるキッチンから耳を傾けているやのMさんも、気持ち良さそうな微笑みを彼女に投げかけている。僕は、自分の意見は抑えて聞き手に回ると決めたギリギリの応答内容を今ここで語って、彼女を励まそうと思い立った。

「どんな新聞などにも宗教欄はありすぎるほどあっても、神とか、人を超越した神聖な存在とかを否定する議論の紹介って、君も見たこと無いでしょ。これってやっぱりおかしいと、僕はいつも思ってきたよ。アメリカのいくつもの州みたいに地球や人類の誕生について創世記だけを教えるのと大して変わらないよね。無神論にも一応触れなきゃねー。ところで、神がいないとなった時には、罪とか愛、人生の価値とかはどうなるのだと、この事も考えたんでしょ?」
「はい『それら』もこの世の人間関係の中から生まれたんだと思います。島国に一人で生きてたら、便不便はあっても罪はほぼないのだろうし、物の価値の世界とは別の正義とか愛とかいうのは、他の人や擬人化されるような動物に対してのものなんじゃないかと……」 
 鉛筆を舐め舐め人生そのものへの答案を書いている真っ最中のような彼女は、僕の人生をも洗い直してくれるようだ。

「人の死は、どうなの。神の王国がなくってこれが待っている以上、人生の一切が無意味だという人もいるけど……」
「はい、私がこんなことを考え込むようになったのは、中学時代の親友が一年ほど前突然亡くなってしまったから。彼女はもうどこにも居ません。もちろん、自分がどこにもいないことも知りません。夢も見ない永遠の眠りですから、彼女を覚えている人もやがて誰もいなくなるでしょう。生きている私たちは、そこに至るまでは色々考え、悩むかも知れませんが、たった一度の人生を精いっぱい頑張って良いものにしようということでいいんじゃないでしょうか。Tさんたちがギターを一生懸命やっているように、私もピアノを頑張ってますし、勉強も楽しくやれてます」

 ここにいたって、見事至極と以外の言葉を僕は思いつけなくなっていた。この子は人文系学問の天才である。何よりも言葉による思考の整理・推進力が。こんな力を持っている子なら学科などは授業だけで分かってしまうに違いないのである。ある授業の焦点をすぐに嗅ぎ出して、そこの周辺だけを集中して学ぶことによって。Mさんも語っていたように、あらゆる種類の読書やネット検索を猛然と重ねて来た結果なのだろうが、それにしても……。
コメント (2)
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