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米教育、進化論を教えない影響   文科系

2019年03月30日 12時53分19秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 これも旧稿の再掲。ある国の宗教、死生観がそこの政治動向にも強く影響するという好例であると言いたい。アメリカという国は歴史的伝統が少ない、非常に新しい国で、言わば近代以前の体験が無く、これを知らない国と見ても良い。そういう国の大小の影響を最も半世紀以上にわたってまともに受け入れて来た日本で、マスコミなどアメリカ文化を一方的に受けるだけで良かったのか。そんなことを考えながらお読み頂ければ嬉しい。

【 米教育、進化論を教えない影響   文科系 2018年11月01日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)

 7月14日当ブログ拙稿に紹介した論文には、このような記述がある。
『 アメリカ人と進化論に関する統計(ギャラップ、2012年)によると、46%のアメリカの成人が、「現在の人間の形を創ったのは神だ」と答えています。それに対し、「人類は進化したが、それは神の導きによる」と考える人の割合は32%、「人類は進化した。そこに神は介在しない」と考える人は15%です』
『 全米の高校の生物学の教師を対象とする調査と分析(National Survey of High School Biology Teachers, Pennsylvania State University)によると、授業で進化論を積極的に取り入れようとしない生物学教師は60%にのぼります。
これらの先生たちは、進化論とともに、神が生命を創ったとする創造論(creationism)も生徒に説明し、「どれを信じるかは個人が決めることである」「各種試験には進化論が出る」等の補足をすることで、起こりうる問題を回避しているとのことです。そして、進化論を明確に教える教師は28%にとどまっています。 一方で、13%もの教師が創造論だけを授業で教えています』



 さて、進化論を教えず、聖書の創世記だけを教えるから、人間の生い立ちについて後者を信じている人が圧倒的に多いアメリカ! このことがアメリカ社会にもたらす影響は計り知れないほど大きいと、改めて述べてみたい。

 例えば、進化論否定根拠について、昔はこんな風なことさえ語られていた。「猿から進化ということは、道徳も罪もない、ただ欲望のままにということだろう」、とか。「(神から与えられた)人間の長所の一切を否定するものだ」、とか。これは、人間誕生の理論が当然のことながら、人間観、世界観など哲学の内容も決めていくということだろう。

 そもそも進化論を否定するというのは、人間の自然的成り立ちを否定するということだから、人間の営為の一切を、特にその美点の一切を自然から取り上げて、結局神に委ねていくということにもなる。その影響は計り知れぬほど膨大なものと考える。その国の教育だけではなく、人生観さえ偏ってくるというように。そういう偏向教育だと思う。人間の生い立ちそのものを誤解させることに他ならぬものだから。

 例えば、政教分離という考え方さえ、無いと言える。教育行政がそういう政教一致をやっているのであるから。

 アメリカの人種差別とか、イスラム蔑視とか、他民族への戦争とかに賛成する人々に、人間の誕生で創世記だけを教えているということが関わりがないはずがないとも言いたい。トランプの当選そのものがこのようなある宗教一派の貢献と言われている国なのだし。

 アメリカは歴史の浅い新しい国であり、基本的な政治思想の転換などは一度もなかったと言えるし、近代先進国の政治世界などで必ず起こった政治と宗教の激しい争いなども経験がない国である。一般の政治意識にも、政治と宗教のそういうナイーブな考え方が広く存在するということだろう。

 こういう影響の一つを最後に上げておく。最近まで米エスタブリッシュメントの資格を表すものとしてに、WASPという用語があった。ホワイト、アングロ・サクソン、プロテスタントの頭文字を取ったもので、広辞苑にさえ載っている。

 なお、日本人は意外に、こういうアメリカの負の面を知らない。戦後の日本マスコミは、アメリカを綺麗にしか描いて来なかったのではないか。 】
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アメリカの進化論教育   文科系

2019年03月30日 12時46分04秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 またまた旧稿の再掲だが、昨日一つの死生観に触れた機会にご紹介する。


【 進化論の教え方   文科系 2018年07月14日

 今日は、こういう米政治の「温床」ともなっていると思われるものの一つをご紹介してみたい。知る人ぞ知る、「アメリカ教育界における進化論の教え方」の問題である。トランプの支持者にはプロテスタントの宗教保守派が非常に多いからであるし、彼らこそ進化論を否定する人々が圧倒的に多いからでもある。いろんな関係文献を読んだが、まとまりのある一文献をご紹介する。以下の内容が、検索に引っかかることが圧倒的に多かったジャーナリスティックなだけの「書き散らし文」などの内容とほとんど矛盾しなかったことも付け加えておきたい。織井弥生(おりいやよい)という方の文章である。

『 アメリカ人と進化論 織井弥生

アメリカの学校では生物の進化論を教えないという話を聞いたことがありますか?
今回はその現状をお伝えします。

進化論を信じないアメリカ人は約半数

日本人はダーウィンの進化論(creationism)を教科書で習い、特に疑問を抱くことなく受け入れている人が大多数ですが、アメリカではかなり事情が異なります。
アメリカ人と進化論に関する統計(ギャラップ、2012年)によると、46%のアメリカの成人が、「現在の人間の形を創ったのは神だ」と答えています。
それに対し、「人類は進化したが、それは神の導きによる」と考える人の割合は32%、「人類は進化した。そこに神は介在しない」と考える人は15%です。
アメリカ人の約半数が進化論を信じていないことになります。
過去14年の推移を見ても、この割合にはさほど大きな変化はありません。
また、学歴の高い人ほど進化論を信じ、宗教心の深い人ほど進化論を信じないという顕著な傾向が見られます。
アメリカ人の宗教と科学の考え方には深い関係があるといえます。

キリスト教と科学

アメリカは、キリスト教を信じる人が人口の76%です。
特に多いのがプロテスタントの信者で、各派を合わせて人口の51%にもなります(U.S. Census Bereau, 2008)。
聖書には、神による天地創造の記述があります。
その聖書を重視するプロテスタントから1900年代はじめにキリスト教原理主義が登場し、政治的社会的背景と相まって、次第に進化論の思想は危険だという考えが保守的な人々の間で広まっていきました。
そして、1920年代には公立の学校で進化論を教えることを禁じる法律が各州で制定されました。
以来、数十年にわたり、このような法律はアメリカ合衆国憲法に反するとして、裁判が繰り返されてきました。
特に有名なのは、進化論を禁じていたテネシー州の公立校で進化論を教えた教師が逮捕された1925年のスコープス裁判です。

教育が州の管轄であるアメリカでは、進化論と創造論の扱いは、現在では各州に任されています。
また、米国科学アカデミー(National Academy of Science )は、学校教育で進化論を明確に教えることを強く推奨しています。
しかし、つい最近まで進化論を教えることのなかった州もありますし、どのように教えるかは教師の自由として、いまだに教室で進化論を取り上げない教師が多い州もあります。
全米の高校の生物学の教師を対象とする調査と分析(National Survey of High School Biology Teachers, Pennsylvania State University)によると、授業で進化論を積極的に取り入れようとしない生物学教師は60%にのぼります。
これらの先生たちは、進化論とともに、神が生命を創ったとする創造論(creationism)も生徒に説明し、「どれを信じるかは個人が決めることである」「各種試験には進化論が出る」等の補足をすることで、起こりうる問題を回避しているとのことです。
そして、進化論を明確に教える教師は28%にとどまっています。
一方で、13%もの教師が創造論だけを授業で教えています。
私の住んでいるカリフォルニア州は、進化論の扱いが定着している数少ない州のひとつです。
実際に、私の子どもは、公立の学校の理科の授業のなかで、科学的理論として進化論を習いました。
また、厳しいカトリックの学校に移ってからも、進化論は科学の授業でしっかり習いました。
先生の手作りのプリントにも進化論についてかなり詳しく書かれていましたし、テストにも出題されました。
というのも、カトリックは、科学を柔軟に受け入れているからなのです。
理科の先生は、生徒たちに次のような説明をしました。
「進化論は、科学の理論です。一方で、私たちは、聖書に書かれてある神の創造を、宗教的に信じているのです。」
私は、宗教と科学の受け止め方の違いをはっきりさせるこの教え方には共感を覚えました。
いずれにせよ、宗教が教育の現場に大きく影響することは、日本人にとってはなかなか理解しがたいことです。

宗教国アメリカ

アメリカは、キリスト教に基づいて建国されました。
国家をひとつにまとめるための価値観として、宗教=キリスト教が必要でした。
もともと、ピューリタンたちが新大陸を目指したことを、旧約聖書の「出エジプト記」になぞらえました。
毎朝、子どもたちは学校で星条旗に向かって手を胸に当て、Pledge of Allegiance (忠誠の誓い)のなかで’One Nation Under God’(神のもとの一つの国家)と唱えます。
アメリカのドル紙幣には、’In God We Trust’(我ら神を信ず)と書かれています。
これらに対する議論があることは事実ですが、今すぐ修正されるような気配は全くありません。
アメリカは自由の国ですが、宗教に関してはキリスト教、それもプロテスタント中心の国なのだと認識することは、アメリカ社会を理解するためにとても重要なことなのです。』 】
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