7月の参院選に向けて、4野党による政策協定が結ばれた。市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が仲介したからこそ成立した、以下に見るように歴史的偉業だと思う。
まず、ここから生まれた1人区野党統一候補の見通しを、サンデー毎日6月19日号が安倍政権の眼から見た状況として、こう語っている。
『32ある1人区については、野党が統一候補でまとまり、14選挙区でリードされてしまった』
次いで、こういう動きと見通しとがあったからこそ、安倍首相はダブル選挙で一挙に改憲へという企みを断念せざるを得なかったのである。それも、よく知られているように、消費税延期の大義名分を賢島サミットに与えて貰おうとした姑息この上ない企みに各首脳から軽蔑と言って良いような大失笑を浴びてのことだった。
こうして、7月選挙序盤戦ですでに、市民連合による野党政策協定成立が重大なインパクトを与えた。自民党政権には既に、大変なダメージだろう。
さて、この政策協定をざっと眺めてみたい。特に与野党が激しく対立する部分を中心に。
安保法制に関わっては、これ自身の廃止の他に、「改憲勢力3分の2の阻止」と「辺野古中止」。原発に関わっては「原発に依存しない社会の実現」。保育に関する与野党の政策は似ているが、教育について真っ向から対立するのはこの点だ。旧民主党政権が掲げ続けて時間切れになった「高校完全無償化」である。また、この保育・教育問題は、超格差時代の中の「貧富の世襲」をなんとか減らそうという方向であるのは明らかなことだ。「公正な税制の実現」は、安倍政権が勧める法人税減税を意識していることも、また明らかだろう。法人税減税問題はまた、少ない賃金の伸びをずっと抑え続けて貯めた内部留保、企業の現金・預金が、パナマ文書を巡る脱税問題とともに国庫をいかに圧迫しているかをも意識したものだろう。
さて、以上のうち、このところ直近3回の拙エントリーが、期せずしてこの政策協定に沿っていることに気付いた。11日「子ども甲状腺癌、新調査結果数発表」、10日「酷すぎる格差、自民党政権の産物」、7日「参院選の最大焦点(憲法改悪・安保法制問題)」である(8、9日は欠稿)。
11日分は、官僚・自民党政権による原発事故処理の酷さを、世にあまり知られていない数字で顕した積もりだし、7日分はイラク戦争(総括)が主題になっている。イラク戦争への日本参戦「実績」の酷さこそ、安保法制による「未来」を如実に物語るものであると展開した積もりだ。未来は過去に宿っており、未来に向けては空約束があり得ても、過去は打ち消せないというそんな意図、狙いで書いた拙稿だ。なお、11日拙稿も未来の話ではなく、原発事故処理で現実に起こっている酷さを顕している、現在進行形の「実績」である。いずれも、未来への演説が、過去の実績とは重大な区別をされるべきという、そんな意図を持って書いたものだ。裁判では、事実を裁き、意図、犯意の重大さなどはその事実から証明していくものであると愚考するからである。
以上、市民連合が主導した4野党政策協定に関わる読み物として改めてお読み願えれば、幸いだ。なお、これらのエントリーは右の方々も非常に「関心」があるらしくて、こんなに多数のコメント応酬があった。7日に24、10日が33である。11日の福島甲状腺癌については、右の人々が最近全く触れないできたもの。最初のころ「スクリーニング理論」とやらで「反撃」したつもりが「いい加減さのやぶ蛇」に終わって、以降何の反論も出来ないでいることだ。
福島の「過去実績」問題は、現在進行形でどんどん醜悪さが浮かび上がってくるから、彼らとしては避けて通りたい問題になっていくのかも知れない。「風評被害」というのも、「楽観的風評被害」として、あちら側の問題になっていくはずだ。そんな兆候がどんどん起こり始めているように見える。「地下水」問題は結局、小出さんが「無限に続く」と警告していた「冷却水」問題。どんどん後手に回っていくばかりである。いつになるかの目処も立たない燃料取り出しまで、無限に続くのであるが。最初からそうであったように海に流してばかりいれば、日本の世論操作の及ばない国連などで問題になっていく可能性も大きい。原発輸出どころではない、現在世界が非常に敏感になっている国際環境問題になるだろう。