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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

2025-02-03 08:00:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・12.10】:袴田事件に全霊ささげ燃え尽きた 無罪判決30件以上、元裁判官・木谷明さん

 12月1日、浜松市で開かれた集会。無罪が確定したものの、いまだ現実の世界に戻り切れない袴田巌さん(88)が、この日は「こういう勝利の日が最後に来たというのが喜ばしい。事実がやっと実った」と力強くあいさつ。その後、会場の全員で黙とうをささげた。

 元裁判官の木谷明さんが亡くなった。86歳。木谷さんといえば、在任中に30件以上の無罪判決を出し、そのすべてを覆ることなく、確定させたことで知られる。

 いま思えば、9月26日、無罪判決にこぎつけた袴田事件に全霊をささげ、燃え尽きられたような気がしてならない。その日、私が静岡朝日テレビの特番に出ていると知って局を訪ねてくださって、その場でインタビュー。袴田事件の1審で無罪を主張、傷心の中、裁判所を去った司法修習同期生の故・熊本典道判事の思い出。そしてこの日の判決で明らかになった検察の証拠捏造(ねつぞう)とそれを指弾できない裁判官たちの勇気のなさ。

 さらに冤罪(えんざい)事件が多発する中、取り返しのつかない死刑制度を廃止すべきとする木谷さんに、国民の8割が死刑存続を支持しているわが国の現状を問うと、「廃止している欧州の国々も当然、反対が多かったの。それをじっくり説いて廃止にもっていく。これこそが、国のリーダーと司法の役割では」と、いつもの静かで柔らかい声が返ってきた。

 20年にもなる取材で、まさかこれが最後のインタビューになるとは…悔しくて、残念でならない。

 最後の著書となった「違法捜査と冤罪〔第2版〕」のあとがきには、証拠を捏造してまで人を死刑に追い込もうとする検察を「自浄作用のない国家機関」と指弾する一方で、この著書が「違法捜査の絶滅。さらには裁判所の優柔不断な態度の絶滅に少しでも役立つことを祈念する」とある。

 最後の著書となった「違法捜査と冤罪〔第2版〕」のあとがきには、証拠を捏造してまで人を死刑に追い込もうとする検察を「自浄作用のない国家機関」と指弾する一方で、この著書が「違法捜査の絶滅。さらには裁判所の優柔不断な態度の絶滅に少しでも役立つことを祈念する」とある。

 あとがきが書かれた日付は死のわずか40日前。いまは遺言となってしまったこの思いを重く、静かに胸に刻み込んでおきたい。

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2024年12月10日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

2025-01-31 02:01:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決 

 「障害者は健常者と同じようには働けない」との固定観念を取り払う画期的な司法判断だ。

大阪高裁判決後、記者会見に臨む、亡くなった井出安優香さんの父努さん(中央)=大阪市北区で2025年1月20日、井手千夏撮影

 聴覚障害があり、2018年に交通事故で亡くなった井出安優香(あゆか)さん(当時11歳)の「逸失利益」について、健常者と同額とする判決を大阪高裁が出した。

 逸失利益は、将来得られたはずの収入のことで、損害賠償額を決める際の重要な要素となる。未成年者は全労働者の平均賃金から算定される。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/31/20250131ddm005070108000p/9.webp?1" type="image/webp" />1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影</picture>
1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影

 しかし、障害がある場合は、労働能力に制約があるとして減額する判断が示されてきた。1審判決も平均賃金の85%とするのが妥当だと認定していた。

 高裁は、井出さんはコミュニケーション能力が高く、将来働く際の支障は少ないと認めた。その上で重視したのが、近年のデジタル技術の進歩と法整備の進展だ。

 人工知能(AI)の活用で補聴器の性能は向上した。音声を文字に変換するアプリが普及し、意思疎通の手段も多様になった。

 障害者差別解消法では、障害者が困る状況を改善するための「合理的配慮」が、行政や民間事業者に義務づけられている。障害者雇用促進法は、働きやすい環境づくりを事業者に求める。

 必要な措置が講じられた職場で、デジタル技術を活用して周囲と意思疎通し、仕事に励む聴覚障害者は少なくない。

 井出さんが就職する頃には、こうした状況になっていることが、事故当時から予想できたと高裁は指摘した。

 社会の変化や未来の可能性を見据え、障害の有無による格差を正した判決と言える。

 23年の厚生労働省の調査では、雇用されている障害者は約110万人で、5年間で25万人あまり増加した。

 一方で国の相談窓口には「事業者から差別的な対応をされた」「配慮を求めたが対応してもらえない」などの声が寄せられている。

 障害者が生活する上で困難があるのは、社会の側に障壁が存在するからだ。高裁の判断は、そうした考え方に基づくものである。

 障害の有無に関わらず権利が保障される社会をつくるため、「壁」を取り除く努力を不断に進めていかなければならない。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月31日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

2025-01-24 07:05:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・01.21】:現職自衛官が実名・顔出しで国を提訴

 射撃訓練で難聴になった陸上自衛官が国に賠償を求めた裁判の口頭弁論が1月中旬、札幌地裁で始まった。原告の男性自衛官は名前と顔を隠さずに地元報道の取材に応じ、「法律を知らずに声を上げられない隊員がたくさんいる」「国は安全配慮義務を果たして欲しい」と訴えている。被告の国は請求の棄却を求めて争う考え。

 ■訓練で難聴に ― 組織の安全配慮義務違反追及

 昨年7月に国を訴える裁判を起こしたのは、陸上自衛隊北部方面総監部(札幌市中央区)に勤務する中村俊太郎・1等陸尉(50)。1993年に入隊した中村さんは、長年にわたる射撃訓練で難聴を発症。21年には公務災害の認定に到ったが、自衛隊からは充分な配慮を受ける機会がなく、適切な健康診断も受診できなかったという。

 訴状によると、入隊直後の機関銃訓練では号令外の動作に足蹴りをしてくる指導者がおり、耳栓が外れてもつけ直すことができなかった。翌年から参加した84ミリ無反動砲の訓練では射撃時の爆風で耳栓が飛ばされることもしばしばだったが、下半身にも衝撃波でズボンが裂けるほどの痛みがあり、耳栓を気にする余裕がなかったという。そもそも隊から支給される耳栓は粗悪品が多く、自費で市販品を手配せざるを得ない状況。現在も手離せない補聴器の購入費53万円はのちに国から支給して貰うことができたが、当初は隊員が自腹で用意するのが当たり前と思っていたという。

 現場で難聴を防止する取り組みが不充分だったのみならず、必要な検査を受ける機会も乏しかった。耳鳴りなどを訴える隊員に医療受診や公務災害申請を促すような配慮はなく、被害防止のマニュアルも不在。騒音業務に伴って必要と定められている「特別な健康診断」も適切に行なわれていなかった。

 中村さんがこうした状況に疑問を覚え、組織内外の友人・知人らに相談を寄せ始めたのが23年6月ごろ。実情を知った人たちは「安全配慮義務違反では」「国民に真実を知らせるべき」「自衛隊がそんなことでは国民が困る」などと驚き、組織内の同僚や後輩たちからも「訴えないと自衛隊が変われない」などの声が上がったという。中村さん自身も「問題に気がついているのに何もしないのは『責任の不履行』ではないか」と考えるに到り、今回の提訴に踏み切った。

 今まさに難聴に悩んでいる自衛官は中村さんが把握できるだけで50人ほどおり、しかしながら公務災害の認定に到ったのはそのうち4人しかいないという。提訴の目的は、こうした被害の周知と再発防止をはかることにある。

 「防衛省や陸幕は、現場の隊員の多くが法律に詳しくないのをよいことに安全配慮義務を果たしていません。なぜ特別健康診断を実施しないのか。なぜ予防教育に力を入れないのか。なぜ充分な装備品を用意しないのか。国はこれらの背景をあきらかにした上で、被害の実態を調査して国民に説明すべきです」

 ハラスメント被害を受けた自衛官の家族や退職後の元隊員が実名を明かして組織を訴えたケースはこれまでにもあるが、現職の自衛官自身が顔と名前を晒して裁判を起こすのは珍しい。当初半年間ほど非公開の弁論準備手続きで進められた裁判は年が明けた1月14日午前、札幌地方裁判所(小野瀬昭裁判長)で最初の口頭弁論を迎えた。被告の国は指摘される安全配慮義務違反などを否定、難聴の原因は本人の安全管理・健康管理の過失にあると主張し、訴えの棄却を求めている。

 「難聴の隊員たちも見た目は健康なので、問題があかるみに出にくい」と、原告の中村さん。次回弁論は2月20日午後、札幌地裁で開かれる。

 なお札幌ではハラスメント通報を理由に不利益な取り扱いを受けたという現職自衛官の裁判も始まっており(既報)、2月26日にはこれの3回目の口頭弁論が設けられることになっている。(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【裁判・射撃訓練で難聴になった陸上自衛官が国に賠償を求めた裁判の口頭弁論】  2025年01月21日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

2025-01-14 16:00:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.14:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.14】:再審の法制度 欠陥直視し速やかに改正を

 司法の公正と人権を損なっている制度の欠陥は明らかである。速やかに改めるべきだ。

 刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを、法務省が今春にも法制審議会に諮問するという。

 近年相次いだ再審無罪判決は、刑事司法と再審制度に放置できない問題があることをあらためて浮き彫りにした。

 捜査機関が証拠をほぼ独占し、開示手続きの定めがないことや、再審開始決定が出ても検察の不服申し立てにより、やり直し裁判まで極めて長期に及ぶことなどである。

 確定判決の誤りを正すことを妨げ、えん罪救済を遠のかせる重大な問題にほかならない。

 静岡県一家4人殺害事件で死刑判決を受けた袴田巌さんは2014年に再審開始決定が出たにもかかわらず、検察の抗告で再審までに9年を要し、昨年10月の再審無罪の確定までに58年を費やした。

 1986年の福井市中3女子生徒殺害事件は、検察の証拠開示で有罪立証の誤りが発覚し、再審開始が決まった。

 高まる批判の世論に押されて再検討する姿勢を見せたといえよう。

 一方で、えん罪問題に取り組んできた弁護士や当事者、家族などからは法務省の動きへの疑念の声が上がっている。

 超党派の国会議員でつくる「再審法改正を早期に実現する議員連盟」による法案提出との関係からだ。

 議員連盟は昨年3月に設立され、昨年11月の総選挙を経て現在は過半数を超える361人の与野党議員が参加している。

 法務省の方針転換には議連から法改正の主導権を奪う狙いがあるのではないか。

 そう指摘されているのは、これまでかたくなに後ろ向きの対応だったからだ。

 1980年代に免田、財田川、松山、島田の4事件で死刑判決を受けた人たちが相次いで再審無罪となって以来、法改正の機運が度々高まった。しかし、法務省が主導した協議は中途半端な形で放置されたままになっている。

 2022年には刑事司法の在り方を検討する協議会を設けたものの、初の会合は設置から1年以上が経過してからで、計3回しか開かれていない。

 その同省が委員の人選も含めて主導する審議会が、証拠開示の制度化や検察官による不服申し立ての制限などに正面から切り込めるのか。骨抜きにならないか。法務省は十分に情報を公開し、説明責任を果たさねばならない。

 この審議会は法改正の必要性から議論するため、先送りや結論をまとめるまでに時間を要する懸念も拭えない。

 えん罪の防止は喫緊の課題である。議員立法と並行して議論を加速させ、法の不備を正す必要がある。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月14日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.12】:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を

2025-01-14 16:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.12:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.12】:懲役の廃止 立ち直り支援の場に変革を 

 日本の刑罰のかたちが今年、大きな転換を迎える。

 懲役と禁錮刑を廃止し、「拘禁刑」とする刑法改正が6月1日から施行される。

 明治時代からの懲役刑では刑務作業は罰であり、働くことは苦痛として科された。今回から創設される拘禁刑は、自由の制限にとどまり、刑務作業はあくまで受刑者が立ち直る「改善更生」の手段の一つである。

 収容者を呼び捨てにせず「さん」付けで呼ぶことや、刑務官を「先生」と呼ばせないなど、法務省は拘禁刑導入に先立ち、秩序維持を重視して人権意識が希薄だった組織風土の改善に乗り出している。

 受刑者が自分のことを語り、刑務官と対等に向き合う一般改善指導も導入された。人間関係を築き直すことこそ、社会復帰の一歩になるだろう。

 それには刑務官が、これまでの規律や管理の仕事を脱し、社会復帰への支援者であるとの意識改革を進めることは不可欠だ。さらに広く社会全体が、応報的な罪と罰についての固定観念を見つめ直し、罪を犯した人の立ち直りに心を寄せる必要があろう。

 改正法による刑務作業と改善指導の位置付けを巡っては、条文の解釈次第で人権侵害につながり、かえって重罰化になる危うさがあると刑法学者らが懸念している。

 刑務所長らの権限で、嫌がる人に懲罰を科すような運用をすれば、懲役と実態として変わらない。本人の主体性や意欲を重視し、刑務官との関わりの中に人間関係の温かさを感じられる処遇への転換こそが問われている。

 刑務作業は、働くことのやりがいに気付く体験を基本とすべきだ。就労につながる技能習得になるよう、今まで以上に工夫してほしい。

 矯正施設の実態に照らすと、制度上の課題は山積している。受刑者の高齢化率は上がり、認知症の受刑者も増えている。医療や福祉との連係は一層充実させる必要がある。立ち直りと更生を目的とする以上、認知症の人を拘禁し続けるのか、改めて議論する時期ではないか。

 懲役が廃止されるが、無期刑は存続する。併せて仮保釈の制度設計も検討すべきだろう。

 2021年に京都で開かれた「第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)」で採択された京都宣言では、再犯防止施策の充実も盛り込まれた。

 立ち直りの支援を「保護司」として、ボランティアが担う日本独特の制度についても、大津市の殺人事件を踏まえ、見直しの議論が進んでいる。

 日本の再犯率は47%と高止まりしている。元受刑者の立ち直りを阻む社会の壁を少しでもなくすよう、さまざまな職種や団体、市民社会が継続的に関わっていくことが求められる。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月12日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.10】:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠

2025-01-10 16:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説①・01.10:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.10】:袴田さんの捜査 第三者の検証が不可欠 

 なぜ無実の死刑囚を生み、58年もの歳月を奪ってしまったのか。その重大性への反省を欠き、二度と同じ過ちを繰り返さないという真摯(しんし)な姿勢が感じられない。

 1966年の静岡県一家4人殺害事件で、再審無罪が確定した袴田巌さんに対する捜査や裁判手続きの検証結果を、最高検と静岡県警がそれぞれ公表した。

 静岡地裁が昨年9月の再審判決で「非人道的」と指弾した取り調べについて、最高検は「検察官が犯人であると決め付けたかのような発言をしながら自白を求めた」と認め、県警は深夜まで長時間に及ぶ取り調べが「不適正だった」とした。

 しかし、判決で認定された捜査機関による「証拠の捏造(ねつぞう)」については反発し、自己弁護に終始している。

 事件の約1年2カ月後にみそタンクから見つかり、犯行着衣とされた5点の衣類の捏造に関し、最高検は「現実的にあり得ない」と強く反論した。だが、具体的な根拠は示しておらず、感想に等しい。まったく説得力がない。

 最高検は、公判資料などにとどまり、当時の検察官らに新たな聞き取りもしていない。責任の所在も明確ではなく、何を検証したというのか。

 県警は、当時の捜査員らから聴取したが、捏造の具体的な事実や証言を得ることができなかったと結論付けている。

 再審手続きの長期化についても、踏み込み不足が目立つ。袴田さんは、最初に再審請求を申し立ててから開始決定まで42年を費やした。

 最高検は第1次、第2次の請求審の対応に問題はないとし、2014年の再審開始決定を不服とした抗告も必要だったとして、「不当に長期化したとは認められない」という。長期化の要因には、裁判所が積極的に審理する方策が十分でなかったことを挙げた。

 居直りと責任転嫁ではないか。

 罵声を浴びせる、自白を強要するといった取り調べはいまも相次ぎ、問題化している。

 取り調べ中の録音・録画が十分な抑止にもつながっておらず、旧態依然の状態が残っていることを、捜査機関は直視しなくてはならない。

 判決から3カ月の検証結果はおざなりで、内部調査では限界があることが浮き彫りとなった。第三者の視点を加えた本気の検証に取り組まねば、地に落ちた国民の信頼は取り戻せまい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月10日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

2025-01-08 05:00:40 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.07】:袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

 再審無罪の確定まで何十年もかかるような現行の法制度に、不備があることは明らかだ。裁判の長期化をいかに防ぐか、国は早急に議論を進めなければならない。 

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪を受けて、最高検と静岡県警が昨年末、捜査や公判の問題点をまとめた検証報告書を公表した。

 最高検の報告書は、当時の検察官の取り調べについて「袴田さんを犯人と決めつけたような発言で自白を求めた」と認定した。県警も、取り調べが連日12時間に及び、トイレにも行かせなかった点などを「不適正だった」とした。

 容疑者に自白を強要する取り調べは、過去のものではない。最近も、相手の人格をおとしめるような取調官の暴言が次々と明らかになっている。捜査を巡る長年の課題が解消されないことを、当局は重く受け止めねばならない。

 現在は一部に限られている取り調べの録音・録画(可視化)を拡充し、容疑者の弁護人も映像をチェックできるようにすべきだ。事件の参考人らに対する任意の事情聴取にも、積極的に可視化を取り入れていくことが欠かせない。

 再審の長期化を防ぐためには、検察側が保管している証拠を弁護側に開示するよう義務づける必要がある。袴田さんの再審では、無罪に結びつく重要な証拠が開示されるまで約30年かかった。

 証拠開示に消極的な検察の姿勢は、何度も問題になっている。

 福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件を巡り、殺人罪で服役した元被告の再審開始が昨年決まった。この事件でも、検察が重要な証拠を開示するまで約20年かかっている。

 どちらの事件も、証拠が早期に開示されていれば、再審の期間は短くて済んだはずだ。

 検察官は「公益の代表者」である。重要なのは事件の真相解明であって、容疑者をただ有罪にすればいいわけではない。そのことを改めて肝に銘じてほしい。

 裁判所の責任も重い。袴田さんの再審無罪を言い渡した裁判長は「長い時間がかかり、裁判所として申し訳ない」と謝罪した。

 再審の進め方に明確なルールはなく、基本的に裁判官に任されている。判断が難しい再審は、裁判官が積極的な訴訟指揮を行わず、審理が進まないケースもある。

 袴田さんは逮捕から無罪確定まで58年を要した。教訓を今後の刑事司法に生かすことが大切だ。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下

2025-01-08 00:09:20 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【米国】:トランプ次期大統領の不倫口止め料事件、量刑言い渡し延期要請をニューヨーク州地裁が却下 

 トランプ次期米大統領が有罪評決を受けた不倫口止めに絡む事件でニューヨーク州地裁は6日、10日の量刑言い渡しを延期するよう求めたトランプ氏の要請を却下した。

トランプ前大統領(2019年5月撮影)トランプ前大統領(2019年5月撮影)

 トランプ氏は、次期大統領にも大統領としての免責特権が適用されるとして州地裁での評決無効を要求し、控訴のための時間が必要だと主張。地裁は予定通り10日に量刑が判断されても被告の権利を「妨げるものではない」と説明した。

 トランプ氏が起訴された4つの事件のうち、議会襲撃などは起訴が取り下げられたが、不倫口止めではトランプ氏の有罪評決が維持されている。量刑言い渡しが20日の大統領就任までに間に合わない場合、2029年の任期終了後に大幅にずれ込む可能性があった。

 州地裁の陪審は昨年5月、トランプ氏が16年大統領選の直前、06年に不倫関係にあったと訴える女性に口止め料を支払い、不正に会計処理をしたと認定した。大統領選への影響も考慮し、量刑言い渡しは再三延期されてきた。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・国際・米国・トランプ次期大統領】  2024年01月07日 09:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」

2025-01-05 05:03:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.05】:国民常識との乖離 「法律、バカじゃない?」 

 見出しは、昨年12月16日付本紙、シンガー・ソングライターのさだまさしさんの「月曜コラム」からの転用である。

 さださんは、一般道を194キロで走行して衝突事故を起こし、相手を死亡させた事故の大分地裁判決を論じ、当初は「過失運転致死罪」として起訴され、後に「危険運転致死罪」に訴因変更された経緯や判決が同罪としては短い部類の懲役刑だったニュースに、スタッフがついたため息の言葉を見出しとしたものだ。

時速194キロの乗用車による死亡事故を巡る判決が言い渡された大分地裁の法廷=昨年11月28日(代表撮影)

 弁護側の「真っ直ぐの道路を走ることが出来(でき)たのだから自動車を『制御』出来ていて、危険運転ではない」との主張に対して「制御出来ないから事故を起こしたのだろうに」というさださんの疑義は、まさに国民的常識にかなうものである。

 社会秩序を維持するための規範である法律だが、同様の齟齬(そご)は方々に散見される。

 例えば「ストーカー規制法」は「つきまとい行為」に電子メールやSNSが想定されていなかったとして、悲惨な事件の発生ごとに法改正を重ねている。時代の変遷に追いつけず、人を守るための条文が訴えや捜査をしばり、改正を繰り返す姿は情けなくさえ映る。

 国の基本となる最高法規の憲法も同様だ。福岡高裁は同性婚を認めない民法などの規定について「違憲」とした。法の下の平等を定めた憲法14条や幸福追求権を保障した13条に違反するとの判断だが、一方で婚姻の自由を定めた憲法24条1項で、婚姻は「両性の合意のみに基いて成立」すると規定している。

 国語辞典を引けば「両性」は「男性と女性。雄性と雌性」と出てくる。同性の2人との解釈は日本語にない。適用対象が広い一般法より対象が特定される特別法が優先されるのは法の常識であり、この場合、24条が優先される。福岡高裁の判決は、24条を違憲としたに等しい。憲法の自己矛盾である。

 憲法の制定時に同性による婚姻は想定外だったとするなら、事情はストーカー規制法と同じだ。時代への適合を言うのであれば、改憲を唱えればいい。

 《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》とある憲法の前文が誤りであることも明らかだ。憲法で議論すべき点はたくさんある。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察

2025-01-03 06:18:10 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・12.17】:北海道のヒグマ裁判に弁護団|狩猟免許持つ弁護士が駆除現場視察 

 北海道・砂川市のハンターが自治体の要請でヒグマを駆除したにもかかわらず猟銃所持許可を取り消されたとして地元公安委員会を訴えている裁判で12月中旬、新たにハンターの代理人に加わった三重県の弁護士が当時の駆除現場を訪れ、付近の地形や発砲時の状況などを確認した。札幌高等裁判所の控訴審で一審原告側の逆転敗訴が言い渡された結果が報じられて以来、新たに2人の弁護士が代理人に名乗りを挙げており、長く続く裁判は上告審に到って「弁護団事件」となる動きだ。

             ◆   ◆   ◆

 12月12日午前に砂川市郊外の宮城の沢地区を訪ねたのは、自らも狩猟免許を持ち当地の猟友会で活動しているという津市の伊藤正朗弁護士(三重弁護士会)。報道を通じて砂川の事件の二審判決を知り、11月に入ってから代理人参加を申し出た。ヒグマを駆除したライフルの銃弾が「跳弾」して周辺の建物や立会人などを傷つける可能性があったと認定した高裁判決について「有害鳥獣駆除の現場に全国的に影響を及ぼす」と、その余波を危惧しており、実際すでに「発砲が難しくなった」との声を聴いているという。砂川の現場では駆除時の「バックストップ」となった高さ8メートルの崖の形やクマとの位置関係などを確認し、「充分に発砲できる状況」と判断した。

 「この状況で『跳弾』の可能性を言われると、かなりの部分で撃てなくなってしまう。北海道に限らず、クマを撃てるハンターは多くありません。そういう中で、撃てる人が安全と判断し、実際に安土(バックストップ)のある状況で撃った行為に『建物に当たるおそれが』と言われると、本当に有害鳥獣駆除ができなくなってしまいます」

 裁判を起こした猟友会砂川支部長の池上治男さん(75)はこの日の視察に立ち会い、改めて「裁判は私一人だけの問題ではない」と訴えた。

 「私に限らず、今ハンターがやっていることに対して『駄目だ』という判決。これを放っておくわけにはいかないし、このまま確定したら現場に立ち会う警察官だって困るだろうと思います」

 現場近くに住む男性(86)によると、裁判で問題とされている駆除行為があった後も近所では複数回、クマが目撃されているといい、「早く鉄砲を撃てるようにしてもらわないと住民が困る」と不安を吐露する。

 提訴時から池上さんの代理人を務めている中村憲昭弁護士(札幌弁護士会)は、先の控訴審判決を「公安委が正しいという前提でそれを補強する証拠のみを集め、そうではない証拠を無視した判決」と批判、求めている上告審については「事実審ではない点でかなり厳しい闘いになるが、あの高裁判決を確定させるべきではない」と語り、厳しい状況下で参戦した伊藤弁護士の思いを受けて士気を高めているところだ。裁判では両弁護士に加え、行政法に通じた首都圏の弁護士も代理人に参加を表明しているといい、上告人側代理人は現時点で3人の弁護団となっている。

 池上さん側は12月20日までに最高裁へ上告理由書を提出する予定。

 *2021年12月の札幌地裁・一審判決と本年10月の札幌高裁・二審判決は、ともに裁判所の公式サイト内で公開中。
・【地裁判決
・【高裁判決

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【事件・疑惑・裁判・自治体の要請でヒグマを駆除した猟友会のハンターが公安当局に銃を取り上げられた事件】  2024年12月17日  05:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・12.31》:冤罪と刑事司法 誤りを直視すること

2024-12-31 09:30:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・12.31》:冤罪と刑事司法 誤りを直視すること

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.31》:冤罪と刑事司法 誤りを直視すること 

 この国の刑事司法のあり方が根本から問われた年だった。逮捕から58年を経て、袴田巌さんが再審で無罪を得た。その年月の重さをあらためて受けとめたい。

 「巌だけが助かればいいのではない」。袴田さんを支えてきた姉のひで子さんは繰り返し述べている。同じことが二度と起きないようにしてほしい、と。

 何より欠かせないのは、冤罪(えんざい)を生む構造的な要因を徹底して検証することだ。同時に、被害回復の妨げとなっている法制度の不備を改めなくてはならない。

 ■裁判所も問われる 

 再審の判決で静岡地裁は、犯行時の着衣とされた「5点の衣類」や袴田さんの自白調書を、捜査機関の捏造(ねつぞう)と断じた。検察は控訴こそ断念したが、検事総長が談話を出し、強い不満を表明した。何ら具体的な証拠や根拠が示されていないなどと反論している。

 先週、最高検察庁が公表した検証報告もその延長上にある。無実の人に死刑を科す重大な冤罪を引き起こし、再審による被害回復にも立ちはだかった責任に向き合う姿勢は見えない。組織内部での検証の限界があらわだ。

 検察とは別に静岡県警が公表した調査結果も、元捜査員らから一通り聞き取りをしたにすぎない。独立した機関を置き、事件の全体を検証し直す必要がある。

 裁判所も重い責任を免れない。そもそも確たる証拠を欠く事件だったにもかかわらず、地裁が死刑の判決を出し、高裁、最高裁も支持して確定した。再審を申し立ててから無罪を得るまでに、さらに40年余りを要している。

 証拠を見極め、有罪か無罪かを認定するのは裁判所だ。誤った判断を重ねたのはなぜか。裁判所の責任に目を向けずに、冤罪の究明はできない。司法のあり方に踏み込んだ検証が必要になる。

 ■憲法に照らして  

 死刑事件が再審で無罪になったのは5件目だ。1980年代に免田栄さんの事件をはじめ4件が相次ぎながら、公的な検証はなされないまま今日に至っている。ここでまた、誤りを直視せずに済ますことがあってはならない。

 袴田さんの再審無罪の判決は、過酷な取り調べによる自白の強要があった事実を認定した。虚偽の自白に追い込まれるまで、19日間にわたって、取り調べは連日十数時間に及んだ。

 長く身柄を拘束して自白を迫る「人質司法」の悪弊は今も続いている。取り調べに弁護人が立ち会うことは認められず、家族との接見も禁じられて被疑者は孤立し、追いつめられていく。

 黙秘の意思を示しても、取り調べには応じる義務があるとされ、憲法に基づく黙秘権の保障が防御の盾になり得ていない。長時間にわたる取り調べで威迫や侮辱を受けたと訴える裁判が相次ぎ、弁護士らが、取り調べを拒む権利の実現に向けて動いてもいる。

 憲法は刑事司法の手続きに関して、諸外国に類を見ない手厚い人権保障の規定を置いた。戦前の旧憲法下で、拷問や、人身の自由を奪う苛烈な弾圧が繰り返されたことへの反省が土台にある。

 国家の刑罰権を担う捜査当局は強大な権限を持ち、被疑者に対して圧倒的な優位に立つ。適正な手続きと権利を確保することは、不当な権限の行使から無実の人を守るために欠かせない。

 しかし、捜査上の必要や便宜を優先する実務の下、権利の保障がないがしろにされ、冤罪を生む温床にもなっている。刑事手続きのあり方を、憲法に照らして点検し直さなくてはならない。

 新聞を含むメディアも、報道によって冤罪に加担した当事者である。事件報道のあり方を自ら絶えず検証し、刑事司法の現状に報道機関として厳しく向き合っていく姿勢を再確認したい。

 ■再審制度を改める 

 刑事裁判で最も大事なのは、無実の人を処罰しないことだ。冤罪は一日も早く晴らす必要がある。不備が明らかな再審制度の改定を棚上げにしておけない。

 再審の手続きを明文で定めること、裁判所の再審開始決定に対する検察の不服申し立ての禁止、証拠の開示―が柱になる。早期の制度改定を目指す国会議員連盟に与野党の360人余が加わり、議員立法を視野に入れている。

 法務当局は、確定した有罪判決を覆すことは司法の安定性を損なうとして背を向けてきた。法制審議会に諮る動きもあるが、当局が主導権を握り、議員立法を封じる意図すらうかがえる。注意深く見ていかなくてはならない。

 冤罪による死刑が現実になりかねなかった事件はまた、死刑制度を存続する是非を問うている。元検事総長や元警察庁長官を含む学識者らの懇話会は、制度を根本的に再検討する会議体を国会、内閣の下に設けることを提言した。

 死刑は、国家が人の命を奪う究極の刑罰であり、誤って執行されれば取り返しがつかない。社会に議論の場を広げ、国会、政府を動かす働きかけを強めたい。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月31日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.30】:袴田さん再審無罪検証 冤罪生まぬ改革が必要だ

2024-12-31 04:00:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説・12.30】:袴田さん再審無罪検証 冤罪生まぬ改革が必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.30】:袴田さん再審無罪検証 冤罪生まぬ改革が必要だ 

 1966年の静岡県一家4人殺害事件で、袴田巌さんの再審無罪が確定したことを受け、最高検と静岡県警は捜査や公判に関する検証結果を公表した。新たな冤罪(えんざい)を生み出さぬよう今後の捜査に生かせるかが焦点だ。

 最高検の報告書では、県警の取り調べが連日深夜まで長時間に及ぶなど任意性を欠いたとし、検察も袴田さんを犯人と決めつけたかのように自白を求めたと指摘した。捜査資料や証拠の保管、把握も不十分だったとも判断した。

 取り調べ時の問題点が明らかになったと言えよう。袴田さんに再審無罪を言い渡したことし9月の静岡地裁判決は、自白をさせた検察官調書が「強制、拷問または脅迫」に基づいていると痛烈に批判した。判決によると、袴田さんは1日平均約12時間の取り調べを受けており、弁護人との接見も限られるなど「肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べ」だったと断じている。

 事件発生段階で適切な取り調べが行われていれば、冤罪は生まれなかったのではないか。日本の司法制度を巡っては、罪を認めなければ身体拘束が長引く「人質司法」の問題が指摘されており、現在でも罵声を浴びせるなど旧態依然とした捜査が一部で残っているという。冤罪を生まないためには「自白偏重」からの脱却が重要だ。踏み込んだ改革が求められよう。

 今回の検証結果には課題も残る。静岡地裁判決では、検察側が提示した有罪を示す証拠3点を捏造(ねつぞう)と認定した。これに対し最高検の報告書は「5点の衣類」の捏造について「合理的な根拠を欠いていると評価せざるを得ない」と反論した。

 最高検は、「捏造」との指摘に一貫して反発している。控訴を断念した際の検事総長談話でも、地裁判決が捜査機関による証拠の捏造を認定したことについて「強い不満を抱かざるを得ない」とした。

 静岡県警の検証結果でも、「5点の衣類」については、当時の捜査員らから「具体的な証言が得られなかった」とし、捏造の有無は確認できなかったと結論付けている。

 最高検の報告書に、捏造を否定する具体的な根拠が示されたとは言い難い。静岡県警の検証結果についても、多くの関係者が亡くなっていることなどから、捜査員の聴取対象は6人にとどまり、いずれも当時は衣類にかかわる捜査に携わっていなかった。

 「身内」での調査に限界がなかったか。地裁が捏造認定したにも関わらず、否定の主張を繰り返したり、曖昧なままで終わらせたりしては、国民からの信頼は得られない。検察、警察の双方には、第三者を含めた再検証を求めたい。

 免田事件などこれまで再審無罪となった事件では、警察などによる検証がなされたか不明なケースもある。冤罪を生まない対策を講じるためにも各事件の検証が必要だ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月30日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・12.28》:袴田さん捜査の検証 冤罪を直視しない不誠実

2024-12-29 02:03:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・12.28》:袴田さん捜査の検証 冤罪を直視しない不誠実

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.28》:袴田さん捜査の検証 冤罪を直視しない不誠実

 罪なき人を死刑囚にするという重大な過ちに、誠実に向き合っているとは思えない。

 再審で無罪となった袴田巌さんに対する捜査・裁判について、最高検と静岡県警が検証結果を公表した。1966年にみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で、一旦は死刑が確定していた。

後楽園ホールでボクシングを観戦後、記者会見に臨む袴田巌さん(前列右)と姉秀子さん(同左)=東京都文京区で2024年11月29日午後6時57分、田原和宏撮影

 連日、深夜まで長時間に及んだ取り調べに問題があったと認めた。取調室で用を足させることもあり、県警は「不適正だった」と結論づけた。最高検も、検察官が犯人と決めつけるような発言をして自白を迫ったと言及した。

 しかし、今年9月の再審判決が認定した捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)に関しては、最高検は否定した。事件の1年2カ月後にみそタンクから見つかり、犯人のものとされた「5点の衣類」などだ。

 それまでの捜査や立証の方針と矛盾するとして「現実的にあり得ない」と反論した。だが、説得力のある根拠は示していない。 

 県警は、当時の捜査員やみそ会社従業員への聞き取りを実施したが、捏造の有無を判断できる証言は得られなかった。

 いずれの検証も冤罪(えんざい)を生んだ理由の分析には踏み込んでいない。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/12/28/20241228k0000m040006000p/9.webp?1" type="image/webp" />最高検と静岡県警の検証結果について記者会見する小川秀世弁護士=静岡県庁で2024年12月26日午後4時11分、最上和喜撮影</picture>
最高検と静岡県警の検証結果について記者会見する小川秀世弁護士=静岡県庁で2024年12月26日午後4時11分、最上和喜撮影

 最高検は「無罪の結論を否定するものではない」としながらも、「逮捕、起訴に問題はない」と言い切った。最後まで有罪だと主張したことを含め、裁判への対応もおおむね適切だったと強調した。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月28日  02:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【飯塚事件】:「袴田事件の教訓はどこへ」 検察が証拠公開拒否、第2次再審請求の弁護団「あまりにも傲慢」

2024-12-28 06:05:30 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【飯塚事件】:「袴田事件の教訓はどこへ」 検察が証拠公開拒否、第2次再審請求の弁護団「あまりにも傲慢」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【飯塚事件】:「袴田事件の教訓はどこへ」 検察が証拠公開拒否、第2次再審請求の弁護団「あまりにも傲慢」

 1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」の第2次再審請求を巡り、検察側は27日、福岡高裁の証拠開示勧告を「ゼロ回答」で一蹴した。

 前日には最高検が、66年の静岡県一家4人殺害事件で袴田巌さんの再審無罪が確定したことを受けた検証結果を公表したばかり。

 「真相解明に必要だからと...、

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 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【事件・疑惑・裁判・1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」の第2次再審請求】  2024年12月28日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【飯塚事件】:証拠公開、検察側が拒否 「必要性ない」福岡高裁の勧告従わず

2024-12-28 06:05:20 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【飯塚事件】:証拠公開、検察側が拒否 「必要性ない」福岡高裁の勧告従わず

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【飯塚事件】:証拠公開、検察側が拒否 「必要性ない」福岡高裁の勧告従わず

 1992年に福岡県飯塚市で女児2人が殺害された「飯塚事件」の第2次再審請求の即時抗告審で、福岡高裁が開示を勧告していた証拠について検察側は27日、女児の最後の目撃証言を巡る捜査報告書は調査した上で存在しなかったと述べ、存在を認めていた証拠の目録は「必要性、相当性がない」として開示を拒否した。弁護側が同日、明らかにした。

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 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【事件・疑惑・裁判・1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」の第2次再審請求】  2024年12月28日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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