【商品券問題】:支持率急落も「石破は生かさず殺さず」与野党、奇妙な”思惑”一致のウラ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【商品券問題】:支持率急落も「石破は生かさず殺さず」与野党、奇妙な”思惑”一致のウラ
新人議員に10万円分の商品券を配っていた問題をめぐり、窮地に追い込まれた石破茂首相。問題発覚直後の週末に実施された読売、朝日、毎日といった新聞各社の世論調査での支持率は軒並み10ポイント前後下落し、自民党内からは「参院選を戦う改選議員はたまったもんじゃない。下野しちゃうんじゃないか」と失望の声が聞かれる。ただ、永田町でささやかれる最有力シナリオは、石破政権がしばらくは延命するというもの。いったい、どういうことなのか?
◆立憲内からは「弱腰」と不満も、野田代表の「生かさず殺さず」戦略
「ケチ」「付き合いが悪い」との評判もありつつ、その分「政治とカネ」に関してはクリーンなイメージがあったはずの石破首相が起こした商品券問題。
発覚直後から永田町では、予算が年度内に成立せず、野党が内閣不信任案を提出し、4月下旬や5月上旬〜中旬に衆院選が行なわれるというシナリオがささやかれ始めた。
ただ、すぐに不信任案を提出するという機運はしぼみつつある。立憲の野田佳彦代表は、不信任案の提出よりもまずは政治倫理審査会での首相の弁明を求めている。
「少数与党なので野党が一致すれば不信任案を可決できるが、立憲としては、いま不信任案を出して衆院を解散されても、国民民主に反自民票を奪われてしまうという危機感が強い。
それに、参院選も人気のない石破首相と戦いたいのが本音。石破首相を『生かさず殺さず』で参院選まで戦ってもらう戦略に出た」(全国紙政治部記者)
立憲議員からは「党執行部はこれまで野党第一党ということに安住しすぎて、いつの間にか国民民主に政党支持率で抜かれて、焦っているのが見え見え。弱腰の姿勢だ」とあきれ声もあがるが、不人気な石破首相のまま参院選を戦いたい立憲の思惑と、自身の招いた問題を乗り越えてなんとか延命したい石破首相の願いが一致した形だ。
◆自民党全体に飛び火…やはり後始末は石破首相になすりつけ?
一方、自民党内でも一気に石破おろしが起きているというわけでもない。
西田昌司参院議員が「予算を通したら、もう使命を果たしたのだから、退陣されるのが正解だ」などと発言するなど、参院を中心に首相の退陣論も出て、党内に不満は山積しているが、現在のところ、石破おろしの動きは限定的だ。
その背景には、これまで自民党内で商品券の贈答はめずらしくなく、タイミングが悪かったとはいえ石破首相を表立って糾弾できる議員も少ないということがある。
朝日新聞など各社は19日、岸田文雄前首相が在任中に商品券を政務官に配っていたことを報道。岸田氏は「会合は法令に従い適正に行なっている」などとして、商品券の配布を明確には否定しなかった。
実際に自民関係者も「お土産、役職への就任祝い、お礼などの形で、商品券を贈ったりもらったりすることは、長く当たり前に行なわれてきた」と話す。
◆商品券問題で、ポスト石破候補も身動き取れず?
また、商品券問題を受けたポスト石破候補の動きも目立ったものはない。
小泉進次郎元環境相は「自分たちが選んだ人を苦しいときも支える組織だったら、少しは信頼回復のきっかけをつかめるのでは」と発言し、あくまでも石破首相の続投を支持する考えを示している。
ポスト石破候補としても、参院選前に首相になったところで、参院選は厳しい戦いとなり求心力が低下する可能性は高いため、そこまでは石破首相に戦ってもらい、責任をとってもらうのが得策という考えだ。
さらに「もし今、石破首相が退陣して総裁選が行なわれても、ポスト石破候補も『商品券を贈ったことやもらったことがないか』と追及されてしまう」(自民党関係者)という事情もある。
そして自民党全体が裏金問題に加え、商品券問題でさらなるダメージを負ったことで、ポスト石破レースはますます混沌としてきた。
高市早苗前経済安保相はタカ派色が強く、安倍派議員すら「主張についていけない」とこぼす。ただでさえ穏健保守の支持を国民民主党に奪われつつあるなか、参院選で広い支持を集めにくい高市氏を担ぐことは難しい、というのだ。
そして林芳正官房長官は実務能力に定評があり「ピンチヒッター」としての呼び声が高いが、「今回、商品券の原資となった可能性が指摘されている官房機密費は、官房長官が管理する。しばらくは『商品券の原資として官房機密費を使うことを了承していたのでは』と言われてしまう」(自民党関係者)という課題を抱える。
ほかにも、自民党のイメージを一新するなら小林鷹之元経済安保相や小泉元環境相もポスト石破候補として名前が挙がるが、「重要閣僚や党幹部の経験がほぼなく、少数与党として野党とうまく向き合い、駆け引きできるかが微妙。
石破首相が、気脈を通じる維新の前原誠司共同代表と話し、予算案の賛成を取り付けたような動きは難しいだろう」(同前)とされている。
また、国民世論も石破首相の交代まで求めているとは言い難い。
朝日新聞の世論調査では、商品券問題を受けた石破首相の辞任について「必要ない」とする声が60%。内閣支持率は政権の危険水域とされる30%を割り込み26%に急落しているものの、辞任を求める声が強まっていない背景には、「誰が首相になっても同じ」というあきらめや、政治不信があるとみられる。
「ケチ」と言われ続けてきた評判を払拭したいがためにとった行動の代償は大きかった石破首相。
延命はできても、それは「ほかに適任がいない」という「消去法」によるもので、夏には参院選の厳しい結果の責任をとることになるのだろうか。
■取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
元稿:集英社 主要出版物 集英社オンライン 政治・経済・社会 【疑惑・政局・自民党・政治とカネ問題】 2025年03月22日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。