【社説②・12.19】:対日感情の悪化 日中が相互理解深めて
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.19】:対日感情の悪化 日中が相互理解深めて
日中両国で実施された共同世論調査で、日本に「良くない印象を持っている」と答えた中国国民が昨年比24・8ポイント増の87・7%に上った=グラフ。中国での日本の存在感も急激に低下している。
国際情勢の先行きに不透明感が増す中、隣国との関係改善は一層重要だ。両国間の往来と対話を重ね、相互理解を深めたい。
世論調査は2005年、日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際伝播(でんぱ)集団が始め、今年で20回目。両団体は日中の政財界人や有識者が一堂に会する「東京-北京フォーラム」を毎年主催するなど交流を深めており、厳しい世論に危機感を募らせている。
日本政府が尖閣諸島を国有化した翌13年の調査で、中国の日本に対する「良くない印象」が92・8%とピークに達した後、観光で訪日する中国人が増え、対日感情は改善に向かっていた。
日本側では中国に「良くない印象」との回答は13年以降90%前後で推移し、今年は89%だった。
日中間では昨年8月以降だけでも東京電力福島第1原発の処理水放出、中国軍機による領空侵犯、中国内の日本人学校周辺での殺傷事件など双方の国民感情を逆なでする事案が相次いだ。
中国政府が原発処理水を「核汚染水」と主張し続けた結果、中国内で主要な情報源となっているSNSやネット上には日本を中傷する投稿があふれ、反日意識をかき立てた可能性は否定できない。
日中関係を「重要」と考える人は日本では67・1%に上るが、中国では今年、33・8ポイント減の26・3%にまで急落した。
石破茂首相と習近平(しゅうきんぺい)国家主席は11月中旬に会談し、建設的かつ安定的な関係を構築することを確認した。今月4日のフォーラム開会式で岩屋毅外相は、中国政府が日本人の短期滞在ビザ免除を再開したことを評価。「日中関係は再び力強く進み始めた」と強調し、早期訪中にも意欲を示した。
米中対立をあおるトランプ氏の米大統領返り咲きは、日中関係が改善に向かう転機となり得る。両国政府は国民感情の悪化に歯止めをかける契機とせねばならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月19日 07:40:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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