ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《鏡の前の女》
1515年頃
油彩/カンヴァス 99×76cm
パリ、ルーヴル美術館 絵画部門
ティツィアーノの美女、陶酔という日常。
「「デッサンのフィレンツェ」に対し、「色彩のヴェネツィア」といわれるように、16世紀には、豊かな色彩や大胆な構図によるヴェネツィア派絵画が、イタリア北東部の水の都、ヴェネツィアで隆盛をきわめた。緻密にデッサンを重ねるのではなく、直接、絵の具で描き始め、途中で構図や形態を自在に変えていく方法で、数々の名画が生み出された。とりわけ、みずみずしい裸体画を多く描いたティツィアーノは「色彩の魔術師」と呼ばれ、ヴェネツィア派最高の巨匠と讃えられた。また、ティツィアーノより30歳若いティンレットも、独創的な着想をもつ優秀な画家であった。これらヴェネツィア派の絵画は、ハプスブルク家が支配するスペイン王室や、18世紀にブルボン王朝が最盛期を迎えたフランスの王などに好んで収集された。王侯たちは、公然と裸の女性を鑑賞することができるヴェネツィア派の作品を、競って手に入れたのだった。」
「男が差し出す鏡に見入る女。虚栄を表すとされる鏡をモティーフにした「化粧する女」は、以後も多くの画家に描かれた。」
(週刊『世界の美術館-ルーヴル美術館』より)
会場で配布されていたルーヴル美術館展ジュニアガイドによると、当時のヴェネツィアでは「理想の女性の姿」を描いた絵が大流行した。この《鏡の前の女》も、そんな美人画のひとつ。
当時「理想」の女性とされたのは、この絵のような「金色に輝く豊かな髪」「大理石のような白い肌」が重要な条件だったようだ。他にも「女性らしいふくようかな体つき」「ルビーのように赤い唇」も大事なポイントだった。
鏡に女性の後ろ姿が描かれている。絵画は、ひとつの方向からしか鑑賞することができないけれど、こうするといろんな角度を見せることができる。画家の工夫が感じられる。
右手でたばねている髪の毛は、毛先の方が明るい色に見える。この時代は女性にも金髪へのあこがれがあって、苦労して色を抜いたらしい。この女性も髪の色を抜いたのかもしれない。
女性が左手で持っているのは香水?
男性がもっているのは、どっちも鏡。女性はもう一つの鏡に映った、自分の後ろ姿を見ているのかもしれない。鏡に映った自分の美しさに、思わずうっとりしているのかもしれないが、鏡はよく「美のはかなさ」とも結びつけられた。だれでもいつかは歳をとる、この女性もいつかはおばあさんに・・・。
でも、男性は女性に夢中になっているようだ。この男性は、女性の恋人と言われている。
パリ、ノートルダム大聖堂の尖塔が火災により崩壊してしまいました。ネットでみたニュースによると昨年12月に死去したアメリカの研究者が3Dデータを残しているので復元が可能とのこと。デジタルの力ってすごいですね。でも、使われていた木材は何十年にもわたって乾燥させたものなので同じ木材を調達して復元するのは現代では不可能との話も。ルーヴル美術館所蔵、ドラクロワ作『民衆を導く自由の女神』、わたしもルーヴル美術館でみました。右端の、『レ・ミゼラブル』に登場するガブローシュのモデルとなったと言われている少年の右手に描かれているのはノートルダム大聖堂とのこと。復元されても刻み込まれた年月は戻ってきませんね。
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