たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで(5)

2022年11月19日 13時06分22秒 | ミュージカル・舞台・映画


『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで(4)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/12e4c686d48870f89f7086a5cff4f6a8

(1995年『回転木馬』帝国劇場公演プログラムより)

「東宝のミュージカル上演史『マイ・フェア・レディ』から『回転木馬』まで-小藤田千栄子--

 70年代最初の東宝ミュージカルの新作は『プロミセス・プロミセス』(71年10月・日生劇場)だった。ビリー・ワイルダー監督『アパートの鍵貸します』のミュージカル化で、ニール・サイモン脚本、バート・バカラック音楽。北大路欣也・那智わたるのコンビで、ホロ苦いラブ・ストーリーが、原作同様に日本人好みだった。那智わたるのミュージカルではこれがベストではあるまいか。

 ついでの新作は『スィート・チャリティ』(72年5月・日生劇場)である。まだ宝塚在籍中だった真帆志ぶきの主演で、当時は、宝塚スターの東宝ミュージカルへの出演があったのだ。スータンこと真帆志ぶきが、シルク・ハットを手に「いまの私を見せたいわ」を、しなやかに歌い踊るところたステキだった。

 続いては『シュガー」(74年1月・日生劇場)の登場。これはビリー・ワイルダー監督『お熱いのがお好き』のミュージカル化で、ブロードウェイはビリー・ワイルダーがお好きという感じ。このワイルダー好みは、最新作『サンセット大通り』まで続いている。まあ、それはともかく日本の『シュガー』では由美かおるを中に置いて、堺正章と津坂匡章が女装した。

 以上3本とも、当時のブロードウェイの話題作で、いわばトレンド・ミュージカル。名作の再演を続けながらも東宝は、常に新作をマークしていたことが分かる。だがこれらの作品は、のちによそのプロダクションに移っている。

 同じ1974年には、久しぶり宝塚にブロードウェイ・ミュージカルが登場した。ジーン・ケリーの映画もで有名な『ブルガドーン』である。スコットランドのヒースの丘に、100年にいちど現れるというブルガドーン村の話で、ここに迷い込むニューヨーカーが鳳蘭。ロマンチックで、幻想的な味わいが宝塚にピッタリだった。村の若者役で、高汐巴と峰さを里が、ダブル・キャストで出演していた。星組公演で、宝塚大劇場11月、東京公演は翌年の3月だった。

 もう1本、1974年には『旅情』があった。これは言うまでもなく、キャサリン・ヘプバーン主演の同名映画のミュージカル化で、スティーヴン・ソンドハイム作詞、リチャード・ロジャース作曲である。デパートの三越と東宝との提携公演で、淀かほるの主演だった。

 70年代の後半には、新作が4本ある。まず『ピピン』(76年4月・帝劇)。これは神聖ローマ帝国の王子ピピンの青春の物語で、ブロードウェイではボブ・フォッシーが手がけたもの。日本では津坂匡章と草笛光子の主演だった。ついで『ザ・ウィズ/オズの魔法使い』(76年8月・日生劇場)。ブロードウェイのブラック・ミュージカル『ザ・ウィズ』の翻訳上演だが、中身は『オズの魔法使い』なので、これをサブ・タイトルとしてつけたもの。岡崎友紀主演だった。

 『グリース』(77年11月・日劇)も、日本初演は東宝ミュージカルだった。いま有楽町マリオンの所にあった丸い劇場=日劇での上演で、これも当時のブロードウェイのヒット作だった。日劇ではフィナーレに50年代のヒット曲(たとえば「ダイアナ」や「ヘイ・ポーラ」など)をつけて、なんだかウェスタン・カーニバルのような盛り上がりを見せたものである。あおい輝彦、由美かおる主演。

 そして『アニー』(78年8月・日生劇場)も、最初は東宝ミュージカルだった。夏休みのファミリー・ミュージカルとして上演され、ニッセイ児童文化振興財団が協賛している。主演のアニー役はオーディションだったが、宝塚・星組に在籍中だった愛田まちが選ばれた。身長152センチの小柄な女優さんである。ウォーバックスに若山富三郎、ハニガン先生にテアトル・エコーの平井道子。

 以上が70年代に初演された東宝ミュージカルで、全部で9本あるが、こう並べてみると、あらためてヒット作を、最初に押さえていたことが分かる。そしていまはそのプロダクションで、あらたな命を得ている作品もある。

 だがここで気がつくのは、60年代に比べると、やはり新作が少ないことだ。確かに話題の新作を押さえてはいるが、60年代の草創期ほどの勢いはない。だからといって、全体の上演数が減ってきたわけでhない。ということは、すでに初演した作品を育てていた時期だということが出来る。つまり再演の70年代であり、再演でさらに磨きをかけた70年代なのである。」
 

                                   →続く

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