アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

ピアノとバイオリン、楽器の重み

2015年12月18日 | ピアノ
私がバイオリンを習っているというと、「お子さんには習わせていなかったのですか?」などと聞かれることがあるが、まったく冗談ではない。バイオリンは、我が家には「分不相応」な楽器である。

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私が「一生もの」と思える楽器を買った場合に、バイオリンは80万くらい、ピアノは260万くらい、となるとピアノのほうが高いのでは?? と思われるかもしれないがそれは違う。子どもに習わせる場合、バイオリンという楽器は「一生もの」ではない。

当然だけれど、体の成長に合わせて、分数楽器から買い換えていかなければならない。かかるお金もさることながら、その面倒、メンテナンス…

ピアノだってメンテナンス(調律)は必要だけれど、そのシンプルなこと。健康な楽器、ある程度安定した環境があれば年一回、調律師さんを呼ぶだけの話だ。それ以外は、蓋も開けっ放し、弾きたいときに弾くだけで、またろうを頭に不注意な子どもたちが三人いても、まったく壊れない頑健さである。

一方、バイオリンの壊れやすさはほんと、うちには分不相応としかいいようがない。子どもがきゃーきゃーはしゃいでドンとヒッププレスしたらそれで終わり(-_-;; そんな緊張感にはとてもじゃないけど耐えられません。

日々の調弦や、ケースにしまったり出したり、弦替え、弓張り替え、調整などまで「子どもの人数+自分」分の目配りするとか無理。

という具合に、低レベルな観点からも非常に贅沢な楽器なのだけれど、バイオリンの「特別感」はここに起因するわけではない。

私は今回、めるちゃんを入手して、いそいそと会社から急いで帰ってはきれいな音色に浸っているけれど、よく考えてみたら、このきれいな音色は発表会会場に連れていけるわけじゃないのよね。あくまで、おうちで弾く場合の美しさ。

バイオリンを買い換えて、今のチョビくんを入手したときには、発表会で弾いたバイオリンの音も、突然向上するんだからすごいよね(財力にモノを言わせて技術を補う的な)。

これは、本気で音楽をやらせたいって場合にはまったくシャレにならない差なのであって、音大に行くならとりあえずは300万くらいの楽器を持ってなけりゃ話にならんとか。さらに上を見ればもうとてつもなくキリがないわけで(o_o) ピアノでいえば、音大いくならまぁグランド持ってたほうが、というくらいのことは言われるだろうけど、コンクールにピアノを持参するわけじゃないからだいぶ気は楽である。

だから、子どもにバイオリン習わせるって人は、勇者だなぁ(あるいは、お金も時間も貧乏でない人?)と思うんだけれども、千住さんちって、金持ちではないんだそうで、「千住家にストラディヴァリウスが来た日(千住文子)」を読むと、この…まったく金持ちではないけれど「何か」目に見えない人間的リソース? を持っていて、結果的には一流のヴァイオリニストを育てるだけではなく幻のヴァイオリン、デュランティを入手するところまで来てしまった成り行きの凄味が、もう読んでいて背筋ぞくぞくなのである。

千住真理子が成長してプロとしての楽器が必要になったとき、千住家として可能なせいいっぱいの楽器を用意したのだけれど、でもそれが酷使に耐えかねて老朽化してしまい、ここからどうしていこうかと先が見えなくなったとき。

スイスの大富豪が亡くなって、隠されていたストラディヴァリの名器が出てくる。

遺言により、オークションなどに出して値段を吊り上げられるのではなく、バイオリニストに正当な値段(いうても億単位)で譲られることになる。

候補となるバイオリニストの元へ順繰りに渡され、試弾。ところが、千住真理子より前に並んでいた人々は、次々トラブルに遭って購入できず、千住さんの番が回ってくる。

無事、試弾はできたけれども、買うあてはなく、それだけで終わる(と思われた)。

しかし、日本からの出国時にトラブルがあり、ストラディヴァリの日本滞在が延長される…

なんだか、楽器に意思があるような不思議な成り行き、そして楽器と人の響き合い、作り出される音色…

このドラマの濃さは、まったくもってピアノでは起こりようのないものである。「魔」の文字を当てるにふさわしい。

これは、バイオリニストの技量というか演奏の価値が、所有楽器と切っても切り離せない関係であること、バイオリンと人の物理的距離が近い(密着している)ことと、新品楽器よりそんな昔の楽器が良いとされていることなどが複雑に絡み合っているのだろうけど。

まったくもってバイオリンは「重い」(物理的な重さは当然逆)。

ピアノの名器を巡って殺人事件とか、あんまりイメージできないよね。
(ピアノの「騒音」を巡っての殺人ならあったみたいだけど)

とにかく、千住真理子さんは、一流のバイオリニストではあるけど、稼いだ分をすべてこの魔物(大借金)に吸われるようなことになってしまったわけで…

ほんと、子どもにバイオリンを習わせるなんて、勇者だなと。

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