天神湯
所在地:静岡市葵区浅間町1-29
建設年:?(創業は大正期、建物は戦後のものらしい)
構造 :木造
備考 :長谷通りに面した建物。
Photo 1997.5.4
母校のそばにある銭湯。
静岡には銭湯がほとんど無い。人口あたりの銭湯の軒数割合が全国最低だという話を、昔、聞いたことがある。逆に喫茶店の率は全国最高だという話もある。統計調査を見たわけではなく、伝聞なので怪しいのだが、少なくともいわゆる銭湯に関しては旧静岡市内には3軒しかないようだ。近年はスーパー銭湯なんてのもあるので、それを含めると多くなるが、昔ながらの銭湯は小さい頃からほとんど無かった。静岡では高台に上って銭湯の煙突を探しても、工場の煙突ばかりで、銭湯のそれはまず見つけられない。
そういう静岡で、数少ない銭湯がこれ。東京でよく見掛ける宮造りと呼ばれる、お寺のような外観ではなく、看板建築的で洋風。大型の表札のような感じで、縦書きで天神湯と書いてある。静岡にいた頃は銭湯の典型的な建物様式なんて知らなかったので、さほど違和感を持っていなかったが、東京型の銭湯を見慣れると、今度はこの銭湯のデザインがかなり奇妙に思えてくる。
通り沿いの両側はもともと小さな箱庭状だったのだろうか? 屋根が掛けられて目隠し壁が付けられてしまったので、1F正面のファサードが見えなくなってしまったのは残念。塩ビトタン屋根を突き抜けて樹木が生えているのがちょっとユーモラスだ。
銭湯が少ないのは内湯の率がほぼ100%だからで、逆にいうとここに銭湯があるのは、この周辺に内湯ではない長屋がそこそこ残っているからだ。静岡市内は大戦時の空襲で中心部が焼かれてしまい、中心部には昔ながらの住まいはほとんど残されていない。戦後の建物は内湯があることが多く、そのため銭湯も減ったのだろうが、この周辺は戦災で焼けずに戦前の家屋がそこそこ残っているため、昔ながらの生活空間構造と生活様式が残されている。
さて、この銭湯、いつまで残り続けるだろうか。言い換えれば、昔ながらの生活様式がいつまでこの周辺に存続するだろうかということでもある。