都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

三田小山町あたり

2013-04-04 | 港区   

 小山湯階段を下りて旧三田小山町へ。

小山湯階段 正面は旧小山湯の建物
所在地:港区三田1-11   Google Map
型  :クランク
段数 :39段
幅  :0.9~1.3m
高低差:約7.5m
長さ :約15m
蹴上 :18~20cm
踏み面:28~30cm
傾斜 :31-36°
備考 :「東京の階段」p.112
Photo 2013.1.18

 小山湯じたいは2007年に廃業してしまったが、建物はまだ残されている。

旧三田小山町
撮影地:港区三田1-10   Google Map
Photo 2013.1.18

 旧町内の東側の2地区では、写真奥のように既に市街地再開発事業による2棟の超高層住宅が完成している。しかし小山湯を含む一番西側のエリアでは、「三田小山町再開発を心配する会」なるものができているようで、あちこちにのぼりが立っている。Webで調べてみたところ、やはり再開発反対関連のHPが作られていた。

小山町3・5地区 再開発を心配する会

 再開発に伴う金銭的な面の詳細は私には分からないが、従前の住人が費用をあまり負担せずに再開発が実現できるかどうかを危ぶんでいる、というのがメインのようだ。そして、その手段として超高層集合住宅が提示されていることに対する懸念も述べられている。

 この地区は老朽化した木造家屋が多く建ち並び、地震や火災時の危険性が言われている。また、古川沿いの低地で、過去においては何度も水害に遭っている場所だという。

 そんなわけで市街地再開発事業が検討されていて、実際、東側2地区では先行して再開発が行われたわけだ。ただ、その先行事例を見るにつけ、再開発のあり方が気になったりするのだろうなと、個人的には思う。

 超高層住宅はきれいで最新の設備も整っている。だが、見ていると生活感はかなり乏しい。それぞれの住戸が閉じている感じ。HPではあまりそのへんは多く述べられていないが、今までのライフスタイルとのギャップに戸惑っている面はあるだろう。

 タダで建て替えをやる、つまり従前からの住人が費用を負担しない、ないしは最小限の負担で建て替えを行うには、住戸を増やしてその分の売却収入等から建て替え費用を返済するという仕組みがどうしても必要になる。その場合、やはり超高層化の方が多くの住戸が造れるし、公開空地が取れるし、場合によっては容積率ボーナスが貰えて、より大きな延べ床面積の建物にすることができる。超高層建物は建設費が高いが、人気もあることだし、返済プランも比較的立てやすいのかもしれない。

 それからもう一つ、商業的な枠組みの中で再開発が企画される場合、どうしても規模を大きくしたいという意志が働くように思う。小規模なものだと設計上の自由度も低くなるし、完成後の話題性も少ない。ある程度の規模以上にならないと、開発コストが割に合わないのかもしれない。

 自治体など公的立場の側も、大きな再開発なら、災害対策の設備や集会場、公園・公開空地などの附置を依頼しやすくなる。大規模に再開発するのだから、そして大きな利益を上げるのだから、少しぐらい地域貢献して下さいということ。そして、危なっかしい木造住宅地はこの際だから一掃しちゃいましょう、という感覚もどこかに働く。

 そんなわけでタダでやろうとすると、現状では超高層しか選択肢がなくなってしまうようだ。

 しかし、地震や火災に強い街を作るのに、超高層化は避けられないのだろうか?

 耐震、耐火は個別の建て替えでも対応できるし、耐震補強をしたり、外壁を不燃材にするなどで簡易耐火化する手もある。もちろん自己負担は避けられないが、普通の住宅地の場合、所有者は自分で建て替えたり改築・改修をしている。

 だが市街地再開発が計画されていると、そこでは自力での建て替えもしにくい。やってはいけない決まりがあるかどうかは知らないが、せっかく建て替えても最終的に取り壊すことになったりして、お金が無駄になる可能性がある。超高層建物を建てて増えた分を売却すれば、自己負担は最小限で済みますよという、ちょっと手品みたいな案が出てくると、誰でもそれに乗っかりたくなる。そんな状況だと自力で建て替えようという人はいなくなる。従って、市街地再開発をやるかやらないかはっきりさせないと、ある意味やばい状況がいつまでも続く。

 HPによると、細街路は多くはなく、緊急車両の通行も可能で、建物が倒壊して道路を塞がない限り、救助・消防活動は可能なようだ。自己負担をしても良いのなら、大型の市街地再開発をやめるのも手だ。だが自己負担ができない、乃至はあまりしたくない人もいる。足並みが揃わないと危険な住戸が残り、地域の安全性はあまり向上しない。そのへんをどうするかは実に微妙だ。

 洪水に関しては、現在、古川の真下に地下調節池が建設中で、集中豪雨時に一時的に雨水を貯留する、延長約3.3kmにも及ぶ地下トンネルが建設されている。2016(平成28)年に完成予定だそうなので、3年後には、周辺のたいがいの洪水問題は解決することになる。再開発ビルができるよりも恐らく先だ。

 地盤の標高が5m程度なので、巨大津波が来たら超高層建物でも低層部は水につかってしまう。再開発をしなければ戸建て住宅は流されてしまうかもしれないが、南側の高台や隣の再開発ビルに逃げ込めば人命は助かる。そのぐらいの津波が来たら、中央区や江東区は全部が浸かることだろう。たとえ超高層ビルであっても、津波で基礎が浸されたり、地盤が大きく沈下・移動した場合、その後も使い続けられるかどうかは恐らく誰も経験がないのでわからない。巨大津波に対する安全性でもって、再開発の是非を議論するのは難しいのではないだろうか。

 というわけで、つらつら個人的に勝手に考えてみると、お金の問題をどう考えるか、そしてそこにできあがる街だか建物の住み心地と、コミュニティの状況をどう考えるか、というあたりが、鍵になるのではないかなぁと思われる。

#階段・坂 港区  #街並み 港区  #高層ビル  #路地 
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