早稲田大学16号館(教育学部)
所在地:新宿区西早稲田1-6 Google Map
建設年:1967(昭和42)年
構造 :SRC
階数 :10F・B1F
Photo 2013.1.9
2年前の東日本大震災で、16号館は教室の間仕切り壁などに亀裂が入った。直後に応急措置が行われ、その後、耐震補強工事が行われた。
時々にしか訪れない建物なのでどのあたりが変わったのかよく分かっていなかったのだが、たまたま以前に撮っていた写真と見比べてびっくり。□に斜材が入ったフレーム補強は以前は無かったものだった。写真では見にくいが側面にも同様の補強が入っている。
早稲田大学16号館 耐震補強前の様子
Photo 2011.5.26
こうやってみると意外に以前の建物外観はすっきりしていて格好いい。柱は上階に行くにつれ細くされている。下層階ほど上の荷重が全部掛かってくるので太い柱にされていて、上層階はそれほど太い必要がないということで、昔のRC柱はしばしばわずかずつ細くなっている。これはまた、遠近感を強調してスラッとした感じを出すのにも役立っている。最近の建物もやっていないことはないと思うが、それをデザイン的に見せることはあまりないようだ。
また、細かい話だが、以前は左から2スパン目の玄関上部に時計が付いていたが、ここに補強フレームが来てしまったため、時計は中央柱間に移され、遠くから見ると左右対称になったように見える。
地震で倒壊してしまっては困るので、デザインの格好良さは二の次で、補強は仕方ないことだ。
壁面全面に補強が入らなかったのは、これで十分だという判断からだろう。中央の柱間に補強が入っていないのは、建物中央は階段室やEV他のセンターコア部分になっていて、壁体が多いからだろうか。側面の方も中央あたりは下層階にしか補強が入っていない。その他の部分も補強は交互に市松模様状にされている。これは補強をした部分の隣は、周囲に補強があることによって変形が抑えられるという理屈らしい。
知らない人が見ると、変なデザインに見えるかもしれない。また少しでもそういう事情を知っていると、最小限の補強で済ませたようにも見えて、ちょっと安っぽく感じられてしまうかもしれない。
そのあたりは、将来の建て替えを見越した暫定的、緊急措置だからかもしれない。すぐに建て替える話があるわけではないが、耐震面のみならず機能面でもやや見劣りがする建物になってしまっているのは残念ながら事実だ。教室棟でたくさんの学生が出入りする10階建て建物であるにもかかわらず、この建物には小さなEVが2台しかない。建物の外側に足場を組んでEVを新設して欲しいとさえ思う。中央部の階段も狭く急で、授業の開始、終了時はキャパシティを遙かに超えた人が集中し、階段が渋滞してしまう。それこそ災害時の避難は不安だ。
そう考えると、10年ほどの内になんとかしようと考えているから応急措置で済ましたのかなと思えてくる。まあ、とりあえず地震で崩れることはないはずなので、地震が起きても焦らずゆっくり階段を下りて退避すべしというところか。
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