ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

エッ、モンセラ・カバリエ76歳?

2009年07月20日 | 芸術
モンセラ・カバリエって何歳だろう、バースコフと歌っている動画は若々しいけれど、空港に着いたところのカバリエは完全に老婦人、ところが舞台ではまさか76歳なんて信じられない若さ、チャーミングさ、お茶目な高笑い、などなど。
バースコフとは倍以上の年の差なのに、年齢を感じさせないほどお色気があり、素敵なのです。

彼女の全盛期のオペラは何度も聞きましたが、一番最近カバリエを聴いたのは10年ほど前、リサイタルでした。
長く待たされてやっと登場、彼女はなんと杖をついて出てきました。
そしてかつての張りのあるビロードのような声ではなく、やっと聴き取れるような小さな声で歌いました。調子は最悪でした。
本当にガッカリしました。でもさすがカバリエ、ヴェルディ「オテッロ」の柳の歌は絶妙でした。特に高音も難しいパッセージもなく、平坦な歌ですが、彼女のひとつひとつのフレーズの歌唱の素晴らしさ、まぎれもない名歌手だけの持つ魅力がありました。

そしてボリショイから事実上追放の若きテノール、バースコフを暖かく受け入れ、
バックアップしている様子がよくわかりました。
彼女は舞台でも常に余裕があり、ゆったりとしていました。それに杖などなくて、とても艶やかな表情、楽しそうでした。

全盛期、東京では公演中に倒れ、急遽代役が立てられたこともありました。その時担架に乗せることが大変だったそうで、救急隊員の方々は苦労なさったそうです。共演のカレーラスなど「死んだ、死んだ!」と叫んでいたそうです。
(このへんの事情は、オペラで共演なさっていたわがブログのコメンテーター、ミー先生がくわしいです。)

もちろんカバリエは回復して、また舞台に立ちました。
後輩への面倒見もよく、苦労人のカバリエらしい思いやりのある人です。

弱い立場の人に手をさしのべるのも、彼女が昔「声がない、歌手をやめたほうが幸せですよ」といわれたほど、か細い声だったこと、そして長い間、脇役に徹してきたこと、やがて声に強靭さと流麗さが加わり、それがある日、「ルクレチア・ボルジア」で一大センセーションを巻き起こし、一気にスターダムに・・・そしてカラスのレパートリーをすべて網羅し、さらにドイツオペラもリートもこなす大物歌手として、「バルセロナの女神」とも讃えられた存在であったこと。
今でもスペインではカバリエは「神」のようだと言われていて、大御所的存在であり、ドミンゴもカレーラスも頭が上がらないそうです。

おおらかで優しいカバリエの指導に、ボリショイ出身の若きテノール、バースコフは大きく伸びることでしょう。
カバリエのもとに行ったバースコフのノビノビした歌の動画を、何度も楽しみました。

カバリエは笑ってこう言っていました。「私も若い時はもっとやせていて美人だったのよ。ある実力者が自分のいうことをきけば、役をあげよう、と言ったの。
私はキッパリといいましたわ。私はクリスチャンです、ってね。」
・・・フーン、としか・・・やせていて美人?・・・「まさか」なんて言えないし・・・。
コメント
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